フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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ジャンヌ・オルタとのデートを終えた翌日、立香たちカルデア一行の姿はとある山の麓にあった。
これより登るは天狗の御山、東の師匠の修行とは?


久しぶりの感想を頂き、その上楊貴妃の新グラでテンション上がってます。
よろしければ、皆さまもお気軽にどうぞ。


第31話 藤丸、山に登る その1

立香がジャンヌ・オルタへの報酬として1日を捧げた翌日、彼女と路展照街で別れた立香は他の皆との合流のため、第5のエリアに向かっていた。

 

「という訳で到着と」

どうせ誰も見てないし、と身体を慣らすのも兼ねて近くまで飛んで来た立香へ真っ先に声を掛けたのはマシュ。

「先輩、おはようございます」

「おはよう、マシュ」

ペコリと頭を下げたマシュに合わせて私も頭を下げる。その隣に居るユゥユゥは自分の番を待ってコチラに視線をチラチラ。

「ユゥユゥもおはよう」

「はい! おはようございます、立香ちゃん」

うーん、守りたいこの笑顔。

そんな感じで他の皆とも挨拶をして、千代女さんの先導で辿り着いてしまった第5エリア。

「マクラーレンさん、死なないようにね」

「いきなりだな」

未経験&私や先輩程しぶとく無いマクラーレンさんには辛かろう未来がみえた私はそう言って、東の師匠の到来を待つ。

「かんら、から、から! 師匠を待つとは殊勝な心掛けだな、マスター」

「主殿、ようこそお越しくださいました!」

「鬼一師匠! 牛若丸!」

直後にぶわりと颶風が巻いて、闊達な笑い声と共に現れたのは鬼一師匠、そしてそのすぐ後ろに居るのは牛若丸。2人共よく似たセパレートの水着と髪飾りの面を身に着けている。

違いといえば水着の色と天狗の面。鬼一師匠は普段の姿と似た茜色に烏のような黒い羽飾りが付いた面で、牛若は第1再臨の紺で面も一般的な天狗。

しげしげと2人の違いを観察していると鬼一師匠が愉快げに話しかけてきた。

「どうした弟子よ、水着の僕に惚れ直したか?」

さすが大妖・鞍馬天狗、惚れてる前提の尊大さが今日も眩しい。

「いいえ、師匠と牛若の違いを観察していただけです」

「つれないな〜と、それよりも此処の課題とエリアの名前だな。よく来たな皆の者、僕の【満励遊山(まんれいゆさん)】の課題は彼処にある小屋まで行き、一晩を明かすことだ」

葉団扇で指された場所には何軒かの山小屋。造りもしっかりしていそうで、コテージという方がしっくり来る。

「遮那王、お前はそこの新顔を手伝ってやれ」

「はい、師匠!」

そう応えるなりマクラーレンさんの側に行く牛若、これはもしや?

「皆バラバラな感じですか?」

「レイシフトでの分断などよくある事だしな。マスターはよく知っているだろう?」

よーく身に沁みてますと、コクコク何度も首を縦に降る。サーヴァント不在でないことが事前に分かる、今の状態が有情だと思える事態に何度遭遇したことか。

「では、この山で思う存分に遊ぶが良い!」

バサリと振るう天狗の葉団扇。ソレの起こした竜巻に呑まれた一行はその言葉を餞別に、山の各所へと飛ばされて行った。

 

 


 

 

~Side 藤丸立香~

 

 

「よっと」

いやぁ、竜巻で飛ばされた時はどうなるかと思ったけど、スカイダイビングじゃなくて良かったー。

「ご無事ですか?」

「五体満足で怪我もないよ、それにマクラーレンさんも居ないからアッチも使えるし」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべた私にマシュは仕方なさそうな顔。

不満気なマシュにそんな場面は何度も無いと告げると、一先ず納得してくれたらしい。

「ところで、ユゥユゥさんは何処に?」

「……確かに!」

この流れなら何処かで話に入ってくると思っていた彼女が居ないことに気付いたらしいマシュと周囲を見回すが不在。

「上でーすー」

もしかして置いてきぼり? と思った時に頭上から降って来た声の方に顔を向ければ、木に引っ掛かったユゥユゥが居た。

「どうしたの?」

「降りられないんです!」

浮遊ができるユゥユゥが何故かと事情を聞けば、地面から一定高度以上離れられない術式がこの山一帯にかけられているらしい。

仕方がないので私が受け止める形で飛び降りてもらって、どうにか着地。途中から浮遊で減速したとはいえ、目測15mからの落下はなかなかの衝撃だった。

「さて、まずは山小屋の方向は……。ユゥユゥ、さっき見えた?」

「……見てません」

「仕方ない仕方ない、慌ててたもんね」

見えないでは無く見てない、それに事情を察したけど、後の祭りなので責める必要もなし、試しに飛ばしたユゥユゥの侍女には高度制限が無くて、方角も分かったから問題も無かったし。

「陣形はマシュを先頭に私、ユゥユゥの順で気配察知と侍女たちの警戒陣、異論は?」

「「ありません」」

「よし、出発」

鬼一師匠は山登りで自然に触れ合い、遊びながら小屋まで来いと言っていたけど、絶対にハードな訓練並みだ。現に通信は途絶してるし飛んで地形は無視できない、ついでに言うなら水も食料もない。取り敢えずは水の有りそうな方へ移動しながら行きますか。

「天狗の遊び基準、怖い」

「先輩、マクラーレンさんは牛若丸さんと一緒で大丈夫でしょうか」

出発からしばし、私達はそんな会話をしながら岩壁を登っている。サーヴァントなマシュとユゥユゥは勿論だけど、私も強化で身体能力を上げているので2、3mくらいはひとっ飛び。

何も知らない一般人から3年で、随分と逸般人です。

「最低限の無事を祈ろうか、うん」

どこに居るかも分からないし、仕方無い。

マシュも溜息をつくけれど、どうしようもないのは変わらないからそれ以上の追求はなかった。

えっと、水の方向はこのままで合ってるね。

そう思って岩壁を登りきったあとの小休止で水の気配があった方角を確認していると、侍女から報告があったらしくユゥユゥから警告の声が。

「お2人とも、2時の方向から物音です」

「了解、2時ね」

それに合わせて戦闘態勢を取りつつ気配探知をそちらに集中、感覚的には魔獣よりも野生動物っぽいけど魔力は若干ある。

「おそらく獣、追い払っても効果がないなら此処で撃破するよ」

「「はい!」」

多少の効果はあるかと鳴らしたユゥユゥの楽器も、マシュの盾を打ち鳴らす音も無視して出て来たのは熊。

即座に追い払うのは無理だと判断したけど、その異様な体躯はちょっとヤバい。

「ホッキョクグマ、いえ、それ以上です」

「超巨大特効入りそう……」

「コレは想定外過ぎません?」

4脚の状態で体高は私達の身長とほぼ同じ、立ち上がれば優に4mに迫りそうな熊は一吠えすると真っ先に私を狙って来た。

「させません!」

当然ソレをマシュが許すはずも無く、盾で突進を受け止めるとそのまま押し合いに持ち込む。

「吹きすさんで!」

「いっけえ!」

その隙に私達が氷炎を生成して撃ち込むと、直撃を受けた熊は後ずさるようマシュから距離を取るけどダメージは軽そう。

「やっぱり毛皮相手は氷だと分が悪いですね」

「だね、思ったほど減ってない」

刻命の魔眼を起動して寿命を見ても減りは思った程では無い。私もユゥユゥも物理より魔術寄りの攻撃が主体だし、申し訳ないけどココは。

「マシュ、パラドクス・ゴートをお願い!」

「はい! 逆説増幅(パラドクス・アンプ) 起動(イグナイト)!」

パラドクス・ゴート、デミ・サーヴァントとして受け継いだギャラハッドのとも、不足した霊基を補ったオルテナウスのとも異なる、サーヴァント・マシュ本人のスキル。

アマルガムゴートとパラドクス・シリンダーを併せた名前の通り、マシュが自身に投射するターゲット集中と無敵付与はしばらくの間攻撃をマシュに引き寄せる。ついでに強力なターゲット集中は攻撃の隙を作ってくれるため、全体的に致命傷を与えるチャンスを増やしてくれる。

「楊貴妃、今のうちに」

「はい、やれます!」

ただ、無敵の持続時間はターゲット集中のそれよりも短い。いくらマシュが防御に特化したシールダーで相手が神秘を帯びた程度の巨熊とはいえ、恋人に要らない傷まで負って欲しくない。

「速攻で行くよ、Ⅰの■■!」

なのでこの特異点で2度目の■■スキル。不出来な元一般人マスターでいる間は使えないコレらも、こうやって監視の目がない所なら安心して使える。発動に応じて増えた魔力を2人に注ぎながら、私も再び黒と赤の礼装と褪せた体色に変化。

その恩恵で楊貴妃と私の氷炎は密度と大きさ、マシュもその身に纏う魔力防御が厚みを増す。

「氷の舞いで!」

「これならどう!」

そこに楊貴妃は蒼いバトン2本に氷炎を集束してマシュに夢中だった熊の顔面を強かに打ち付け、私のも【(ハガラズ)】と【(ソーン)】を重ねた棘の様な雹で毛皮を貫いて一気に寿命を削る。それでも熊はターゲット集中の効果でマシュに攻撃を続け、無敵の解けた彼女は少しずつダメージを負う。

だが、マシュも防御姿勢のまま隙を伺っており、立ち上がって文字通りのベアハッグを仕掛けようとした熊の懐に入ると、盾を手甲のようにして思い切り右ストレートを放つ。

「はあっ!」

気合と共にその一撃が腹に突き刺さり、華奢な細腕からは想像もつかない勢いで熊は吹き飛び樹に叩きつけられる。

「マスター、楊貴妃さん!」

「はい」

「オッケイ」

マシュの声に合わせて楊貴妃が氷弾、私は【(イーサ)】・【(ソーン)】・【(ナウシズ)】のルーンで編んだ氷の荊で再び攻撃。先程よりも更に鋭さを増した私たちの攻撃が残りの寿命を削り、首に巻き付けた荊を締め付けると少しずつソレは肉に喰い込んでいく。

「ごめんね」

正当防衛とはいえ申し訳ないと思いつつ、一気に荊を締め上げると不意にその感触が軽くなった代わりに首が落ち、それが地面に落下する音と大量の血の匂いが辺りに充満する。

「……」

自分がやったこととはいえあんまりな光景に少しばかり気が滅入るけど、一先ず合掌して簡単に熊を弔ったらどうしたものか。

「とりあえず、捌こうか」

食べる分をとって残りは埋める、この巨体をそのまま持ち運ぶという訳にもいかないので捌くとしようか。

「あの、立香ちゃん、マシュさん、お願いしても……」

とりあえず残った血と内臓を抜くために斜面で首を下、足を上になるようにしていると、若干顔色の悪いユゥユゥから辞退の申し出。

「大丈夫ですよユゥユゥさん、私と先輩でやりますので終わるまで休んでいてください」

「無理してまでやるものでもないし、気にしないで」

こういうことはマシュと私の方が人理修復や特異点に行ったときに散々やって慣れてるし、嫌なことでもやるという場面でもないしね。

そうしてユゥユゥがちょっと離れた場所に行ったのを確認して、臭いや血が付かないように簡単な魔術を掛けたら■■モードを解除して熊を捌き始める。

まずは末端に残った血を抜くために両手首を切って放血、それが済んだらマシュに手伝ってもらいながら簡単に毛皮を剥いで開腹、中身が零れないようにしながら内臓を抜いたら終わりと。

「こんなところで良いかな」

「あとは部位ごとに切り分けてしまいましょう」

「そしたらユゥユゥに頼んで冷凍してもらおっか」

そうして出来上がった冷凍熊肉はマシュの盾の収納スペースに納め、残った所は血で濡れた土を掘って埋める。

「お肉は美味しくいただきます」

「なむなむ」

「安らかにお眠りください」

最後にもう一度3人で合掌して山登りを再開。水を目指して歩くと、ほどなく岩裂から湧き出た水が溜まったような泉に到着した。

時刻は凡そ12時、一先ずここで休憩しながら軽い昼食とするために火を熾してお湯を沸かす。出来るなら冷たい清水をそのままいきたいけど、衛生上の都合もある。生水ダメ絶対。

「ユゥユゥ、山小屋の方向を侍女に見ておいてもらって」

「では、行ってきてね」

小さな灰の火精がフヨフヨ飛んでいくのに癒やされつつ、湧き水で淹れたコーヒーと携帯食で素っ気ない昼食を取る。

「先輩」

「うん、どうかした?」

あっという間に昼食を終え、食後のコーヒーを淹れていると不意にマシュが後ろから抱き締めてきた。その腕に私の手を重ねて、マシュに分かりきった理由を尋ねる。

「あの姿と力を使って戦うのは良いですけど、やっぱり心配です」

「気持ちは分かるけど、私だってマシュやユゥユゥだけを戦わせたくないんだよ?」

頬を掻きながら答えてもマシュの身体は離れない。

「そこはその、お互い様な部分ではあるのですが……」

「マシュは私に前へ出て欲しくないもんね」

「はい」

随分はっきり言われたけど、仕方無いか。

強くなって戦えるようになっても私はマシュにとって護りたい対象で、私もソレが嫌というわけじゃない。けど、マシュだけが戦って余計に傷付いて欲しくないとも思っているし、今はそれを実現できる力もある。

「でも必要なら一緒に戦いたいから、マシュには私を護る為について来て欲しいな」

そう言ってマシュに体重を預けながら上を向けば、背中に感じる柔らかさと呆れ顔に迎えられた。

「それならまぁ、ギリギリ許します。その代わり、私と一緒に居る時は1人で無茶をしてはいけませんよ!」

お互い1度ずつ別れた以上、遺すのも遺されるのもその気持ちはよく分かってる。無茶をして逝くも還るも今度は一緒に。

力強い視線と共にマシュが言った言葉は、そんな想いを強く喚起するものだった。

 




そんな訳で始まりました第5エリア、東の師匠が遊んでやろうと準備してます。
以下は簡単な水着・鬼一法眼とマシュの新スキルの解説。

●鬼一法眼(水着)
クラス:プリテンダー
西の師匠は水着霊基でランサーからアサシンになる、なら僕は何になる?
という感じで自分を打出の小槌で叩いたところ、山で遮那王を鍛えていた鞍馬天狗要素強めのプリテンダ―となった。
そのせいもあって普段より鍛えるのが好き、そしてどうでもいいものへの執着が薄い。

●パラドクス・ゴート
サーヴァント、マシュ・キリエライトのスキル。
自身の防御を一時的に最大化して無敵化すると同時に、刻転の魔眼で「攻撃が通らないから攻撃しない」という事象の反転を自身に付与、「攻撃が通らないから攻撃する」と誘導する。
ゲーム的には
自身に無敵状態を付与(1ターン)&ターゲット集中を付与(2ターン)&防御力をアップ(3ターン)+スターを獲得。


前回のぐだ邪ンで湿っぽいと言われたの、実はちょっと想定外でした。

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