という訳で天狗基準の遊びに翻弄されるカルデア一同、といっても彼らも慣れたものでそれなりにこなしていく。
だが、時計塔のマスターは……。
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夏の特異点第5エリア、鬼一法眼が治める【満励遊山】(まんれいゆさん)で立香たちカルデア一行はマスターとサーヴァントのペアに分断させられて、山を登っていた。
山で遊んで修行せよとのことだがその基準は天狗や牛若丸、 遊び気分では大怪我に繋がりかねないのだが、約1組を除いて以外とそれなりに楽しめていた。
~side 藤丸立香・マシュ・楊貴妃組~
巨熊を撃退してからしばらく、蜂型魔獣の巣の傍を通って襲われたり。
「マスター、私の後ろに」
「任せたマシュ! 楊貴妃は三千寵愛在一身(夏)と極冠の冰輪で蜂の動きを止めて、そしたら私が炎で焼くから!」
「飛んで
そのあと、巣から蜂蜜を見つけたり。
「立香ちゃん、幼虫じゃなくて良かったね」
「想像するから言わないで欲しかった……」
食材:蜂蜜を手に入れた。
唐突に巨大烏が楊貴妃の侍女たちを攫ったり。
「ターゲット集中、無効のようです」
「ガンド! ガンド! ガンド!」
「私の侍女がーーー!!」
立香がソレを魔力カツカツになりながら、どうにかガントで叩き落としたら侍女は何か籠を持っていたり。
「真理の卵、ではなさそうですね」
「烏の卵?」
食材:卵を手に入れた。
「卵泥棒して攫われたなら自業自得です」
【我等探食材】【要褒】【虎穴虎児】
そんな侍女の抗議を何故か立香はマシュの耳を塞いでシャットダウン中。
「先輩?」
「ちょっと今ドロッとしてるからマシュは聞かない方がいいかも」
「はぁ」
楊貴妃の侍女、忘れがちだが邪神の欠片のようなモノなのでSAN値に響くのである。
配偶者の立香はともかく、マシュには少し刺激が強い。
他にもマシュの盾で川下りしたり、楊貴妃のスキルで喉の渇きを癒したり、結構な修行というか遊びというか、そんな感じで進む一行の前にまた別の問題に遭遇した。
「これが天狗クオリティ」
「マシュさん、慌てなくて良いからね」
今、私達がいるのは樹木が密集したエリア。
地面は岩や隆起で荒れてるけど、木々の枝はしっかりしているのでそこを使って移動中。私やユゥユゥは身も軽いし、敏捷値高めだからヒョイヒョイとその上を跳んで行くけど問題はマシュ。
「敏捷重視、私が1番苦手なものです……」
そう、マシュの敏捷ステータスはDランク。鎧を解いて身軽になったとはいえ、Bランクのユゥユゥやそれ相当の私と比べれば、その、飛んだり跳ねたりといった動きが苦手。
なので私達はテンポの遅くなるマシュに合わせてゆっくりと木々の間を跳ねていた。
「いっそ私が抱えようか? 鎧全部を解除してⅡを使えば余裕だよ」
「いえ、それでは私にとって修行になりません。確かにあの力は強力ですがすぐに頼らず、まずは自力でやらなければいけないかと」
マシュの言うことは確かに正論、アレは私の持ってる3つの力の内で一番強くて一番自分の物じゃない。咄嗟の時や必要な時ならともかく、今みたいに修行なら出来るだけ使わずに残り2つでどうにかするべきか。
「じゃあ私はユゥユゥと少し先で待ってるね。修行なんだから、全開ギリギリで行かないと」
「あっ、ちょっと、先輩!?」
「おっさきー!」
「えっと、私も失礼しますね」
マシュには悪いけどこれも修行なのです。
アレ以外の2つの力を総動員、ただ枝を蹴るだけじゃなくてその接触を介して少しだけ木のオドを喚起、それをバネのようにして跳ぶ用意をしながら次の着地点を決定、もちろんその間も警戒の気配察知は緩めずに全周警戒。
スキルを2つ並列起動しながら壊れないよう身体強化に気を配ると、ペースを抑えていたさっき以上に疲労が急速に溜まっていくのを実感する。だけど自分の力を揮えるのは心地よくて、行けるとこまで行ってみたくなる。
「とはいっても、ここまで、かな」
そうやって10分ほど移動して上がった息を整えながら足を止めると、すぐにユゥユゥが隣に降り立って心配そうに私を見つめる。別に限界までやった訳ではないので大丈夫だと笑うと、ユゥユゥも安心してその顔を解いてくれる。
「いやー、こうやって全力出すと疲れるけど、スッキリするね。偶には全力で暴れさせろって言う人たちの気持ちも、ちょっと分かったよ」
木の幹に身体を預けて、マシュが追い付いてくるのを待つ間に小休憩。
鬼一師匠っぽいのも一瞬気配がしたし、森を抜ければもうちょっとかな。
事実、マシュと合流後にそこからもう1つ全力で跳んで行くとコテージは目と鼻の先。一行はようやく見えた目的地に、黄昏時の山道を急ぐのだった。
~side 鬼一法眼・望月千代女~
一行が苦戦している中、水盆に映してその様子を見ている鬼一法眼は愉快そうに笑っていた。
「うん、マスターも他の皆も存分に遊んでいるようだな。新入りは遮那王に振り回されているようだが、まあ良いだろう」
彼女にとってマクラーレンは死ぬと弟子が面倒なことになるから気遣ってやるか程度の存在に過ぎない。ある意味同類の虞美人、立香の理解者で肩を並べたカドックと比べれば絶対的に優先度は低い。
どれほど姿が似ていて藤丸立香や牛若丸を弟子として可愛がっているとはいえ、その本性は大妖怪。人の子などは塵芥、興味のある相手でなければ別に死のうが生きまいがどうでもいい。
「鬼一殿、米と野菜はどのように?」
「持って来たな。マスターたちも順調に食材集めているようだし、並べておいてくれ」
「はっ」
そんな訳で、鬼一法眼が望月千代女にこの山で手に入らない食材を持って来させるのは当然の成り行きだった。
「にしても何で合宿とやらはカレーと相場が決まっているんだ?」
地味にまともな人間は少数派のこの山、虞美人や立香は言うに及ばず、カドックも色々あってこんな事態には慣れている。そんな状況で普通の人間であるマクラーレンに食わせる飯など、彼女には分からなかった。
「以前エミヤ殿に伺ったのですが、『米さえ炊ければ失敗が無く味付けもルーで完結、その上具材を選ばないカレーライスはこういった場に向いている』と言っていたでござる」
「カレーライス、意外と合理的なんだな」
何ともズレた感想を抱いた鬼一法眼だが、その視線がピタリと止まる。
「鬼一殿?」
「やれやれ、覇王と姫君は思った通り一番乗りか」
そう、この山は遊びという名の修行の山、一応それなりの課題をクリアしないと進めないのだが何事も例外はある。具体的にはこれ以上成長しない真人躯体と真祖とか。
~side 虞美人・項羽(+徐福)~
正直なところ、こんな茶番に付き合ってやる義理は無いのだけど、少しは楽しかったから付き合っていた。
「けどもう無理、さっさと休みたい!」
そりゃ最初は出て来た獣を狩って肉にしたり、後輩たちのために一寸くらい果物を集めてやったりもしたけど無理。暑いしジメジメするし、その上いつの間にか徐福がくっついてそれが増す。
「項羽様、宝具にて一気に進みませんか?」
「流石ぐっさま、効率を優先した最短思考」
「というかアンタはどっから湧いてきた!」
なんで私が突っ込み役してんのよ……。
「承知した虞よ、これより妨害を排除し目的地までの最適経路の算出に入る。済まぬがその間の護衛を任せる」
「はい! 項羽様の御身体に傷一つ付けさせません!」
項羽様に任されたこの役目、必ずや果たして見せましょう。
そこから先は一方的な蹂躙劇、というほどでもなく、徐福のサポートを受けて時たま湧く小物退治ばかり。
しかも食う部位すらないようで得るものが無い。
「虞よ、コレより最短距離にて吶喊する。私の身体に乗るが良い」
「では、失礼いたします」
項羽様の背に乗って山を駆けるとは、今年の夏の思い出がまた増えたわね。
「失礼しますね、項羽さん」
と、思いに耽っていると背中に徐福が張り付いてくるってどういう事なのよ。
「降りなさい」
「えっ!? ぐっ様直々のご命令、けど項羽さんに自力でついて行きたく無いんですけど」
せっかく2人きりでのタンデムデートになると思ったのに徐福め、余計な真似を……!
そんな伴侶の反応も演算済みだったのか、項羽は間髪入れずに口を挟む。
「徐福、何時でも私の背に乗るが良い」
「ほら、乗りなさい徐福。項羽様がそのお背中に乗せてくださると言うのよ、有り難くその乗り心地を霊基に刻み付けなさい」
虞美人、項羽の言にて秒で言を翻す。
そんな茶番を終えて2人を背に乗せた項羽は宝具にて吶喊せんとする。
「力を以て山を抜き、気迫を以て世を覆う!我が武辺、此処に示さん!セリャァ───ッッ!」
まさに疾風怒濤の覇王蹂躙、山への影響を最小限としつつも木々も岩も砕きながら進む彼らは、あっという間にコテージへと到着した。
場面は少しだけ戻ってコテージ。
項羽の吶喊を予期した鬼一法眼は建屋や食材を守る結界を張って彼らを待つ。
「鬼一殿!」
「来たか、上手く合わせんだぞ」
木の上で見張る望月千代女が接近を告げると結界をより強くする。手加減したとはいえ宝具の吶喊、周囲に飛ぶ砂利や枝でも家一軒をボロ家に変えるのは造作もない。
「───ッッ!」
「「はぁっ!」」
項羽自身はコテージの手前で宝具を解いて空走しているが、それでも余波で多くの砂利や風が襲い来る。それから夕食と寝床を守るべく、2人は薄く広げた結界でそれを受け止めるのだった。
〜藤丸立香・マシュ・楊貴妃組〜
そんなことがあったとは欠片も知らないこちらの一行。
森を抜けてコテージエリアに到着すると、彼女たちは夕焼けをバックに寛ぐ徐福と虞美人に迎えられたのだった。
「遅かったわね、後輩共」
「絶対にぐっちゃん先輩が早過ぎただけだと思います」
あまりの寛ぎっぷりに出た言葉にマシュと楊貴妃も無言で頷く。なにせ山道を歩いて多少は汚れた自分たちと違って、塵1つない身体でドリンクを楽しんでいるのだから。
「だからぐっちゃん、まぁ良いわ。途中で鹿だか何だかに襲われて肉を採ったから、それで晩御飯は任せるわよ」
「虞美人さんが自らというのは……」
そんな虞美人に料理を一緒にしたいとマシュが言葉をかけると、少し悩んで席を立つ。
「まぁ、良いわよ。マシュと私で肉やるから、後輩は野菜を任せるわ。徐福は楊子と一緒に米、穀物と火なら得意分野でしょ」
ちなみに米と野菜は?と立香が尋ねようとした時、不意に風が吹くと鬼一法眼が現れた。
「かんら、から、から。無事に山を抜けたようで安心したぞマスター、マシュ、玉環、十分遊んだか?」
「……遊びという名の修行だったけど、十分堪能しました」
相応にキツかったが、楽しく無かった訳ではないので何とも言えない立香の回答。それでも道中を視ていた鬼一法眼に問題は無く、一先ず汗を流して来いと水場を示される。
その言葉に甘えて立香たち3人は水着に着替えて水浴び、戻ってくる頃には望月千代女が米と野菜、カレールーなどを用意してくれたので、そのまま夕食準備に入る。
「それにしても鬼一師匠、完全に合宿の夕飯ですね」
「む、やはり定番なんだな。調味料はルーの籠に入れてあるから好きに使え、僕も食べるから美味しいのを頼むぞ」
「はーい」
そうして調理している内にカドックとアナスタシアも到着。こちらも同様に猪肉を持って来たため、肉沢山のカレーが出来そうだ。
「余ったお肉は明日の朝食べる?」
「ゴルドルフから預かった
「じゃあマシュ、そのまま捌くのお願い。ハーブとかあったら私の方で切るから」
という訳でカレーを煮込んでいる間に明日の朝食を仕込みをし、米が炊けるまでしばし休憩。その間も楊貴妃とアナスタシアは何かを作っているようで、微かに甘い香りがする。
「デザートかな……。疲れたらやっぱり甘味が欲しくなるよね」
「今日はこれまでで一番運動しましたからね、それに先輩は昨日ジャンヌ・オルタさんとお出掛けしていましたし」
そう言って隣に座ったマシュがピタリと身体を合わせると、立香も負けじと腕や手指を絡ませる。
「ちょっぴり怒った?」
「いえ、怒ってはいないのですがジャンヌ・オルタさんと何をされたのか気になりまして」
そんなことかと、別段隠すことでもないの立香は昨日のことを掻い摘んで説明する。
流石に生々しい部分は端折ったが、宝石探しとその後同室で一夜を共にしたことは白状していた。
「先輩」
「うん」
ソレでも何となく伝わってしまったのか、顔を羞恥に染めたマシュが立香に要望を出す。
「今夜はその、2人きりで……」
「……他の皆も居るから寝るだけだよ? あと、ユゥユゥとの調整はしっかりね」
2人がそんな小さな約束をしているとは欠片も知らない楊貴妃が呼びに来たのは、それから少し後のことだった。
という訳で本日の夕食、ジビエのカレーとサラダが出来上がったけど、マクラーレンさんと牛若丸たちが遅い。
「アイツらはまだ時間が掛かるから先に食べてしまうぞ。ほら、暇だろうしこれでも見るといい」
そう言って鬼一師匠は手元のお盆を大きくすると、テレビか何かのように私たちの前に置いた。
「私たちのこともこうやって見てたんですね」
「一応師匠だからな、死なない程度には配慮はするさ」
ラインが死なない程度なのは、はい、慣れました。
にしてもマクラーレンさん、牛若丸に振り回されてるしヘンリー5世は居ないし大変そう。
ヘンリー5世、流石に逃げたかな?
「マスター、先に食べてしまうぞ。早く師匠に味の品評をさせろ」
「じゃあ、マクラーレンさんたちには悪いけど」
『いただきます』
その後のことは、うん、正直に言うとなかなか混沌としていた。
マクラーレンさんの四苦八苦する様子を先輩と徐福ちゃん、鬼一師匠、ユゥユゥ、アナスタシアは楽しんで、私とマシュは牛若丸がやらかさないか、カドックはマクラーレンさんが無事かを心配しながらカレーを食べた。
途中からそれなりに楽しんでしまったし、無事に辿り着いたときは感動したのはココだけの秘密だけどね。
「これにて皆課題は完了だ、あとは此処で一晩過ごした後に下まで送ってやろう。寛大な僕に感謝すると良い!」
げっそりしたマクラーレンさんと艶々の牛若丸は置いておいて、これにて5つ目のエリアもクリア。残すはいよいよ、黒幕の鬼2人のエリアか……。
という訳で時計塔のマスターが脱落しそうな気配が……
感想・評価お待ちしております。
そんなことよりも、FGO夏祭り行ってきました!
謎丸の「分からない!」「なーんもわからん」が生で聞けたり、公式レイヤーさんや宝具を生で見れたり、メチャクチャ堪能してしまいました。
そして何よりも水着サーヴァントですよね、弊SSでは水着で鈴鹿御前が被り、クラス違いとはいえトネリコで被り、と綱渡りな気分でした。
私はまだ水着楊貴妃を諦めていませんから!!!!!
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