フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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コテージで一夜過ごす間も肝試しと称して怨霊エネミー退治をした翌朝、一行は少し気楽に次のエリア、茨木童子の宴会場に向かう。

サバフェス2023やってて更新が遅れました。
水着メリュ子、最高……。

そして感想・評価・お気に入り下さった方々ありがとうございます!
何時でもお待ちしております。


第33話 藤丸、宴席にのぞむ その1

鬼一師匠の山小屋で一晩を過ごした翌朝、夕食後も肝試しと称した怨霊退治をしたカルデア一行は若干寝不足気味ながらも起床していた。

そのうちの1人、藤丸立香は眠い目を瞬かせながら歩いていた。

 

「この、身体は元気なのに眠い感じが辛い」

山にはマナが充満しているから、一晩寝て十分回復できた。

でも睡眠欲を満たすほど眠れたかというと否で、起きても未だに寝床が恋しい。

「コーヒーでも飲もうかな」

背伸びや軽いストレッチをしても取れない眠気にそう決めて、炊事場に向かいながら目録からドリッパーや豆などを出して準備をする。

あとはポットが沸くまでに豆を挽いて、沸いた湯を注いでドリップと。

「んー、良い気持ち」

山小屋の朝にのんびり一服、特異点にいるとはいえ実に贅沢な時間を味わってる。

「後輩、私も貰えるかしら?」

「ぐっ様が飲むなら私にも」

そうしていると匂いに誘われたのかぐっちゃん先輩と徐福ちゃんがやって来た。

断る理由も無いのでカップだけは持ってきてもらって、そこにコーヒーを注ぐ。

「それにしても、時計塔のマスターは駄目そうね」

コーヒーを啜りながら先輩の言う時計塔のマスター、マクラーレンさんはグロッキー。

到着もカドックから2時間遅れの日没後だし夕食も食べられず、そこに怨霊退治で戦闘となれば致し方無いというか、慣れている私達がおかしいというか。

「今回が初めてだし、アレじゃ仕方無いですよ」

「元一般人のマスターは初回から特異点ソロクリアだったのに、だらしねーです」

私からすればこの変な特異点で良く頑張ったなと思っているけど、徐福ちゃんはそうじゃないらしい。

「まぁ、あの時は死に物狂いだったからね」

「でも時計塔のは途中で潰れて、マスターは潰れなかったから偉いの」

頭を上着の袖で叩かれながら言われるコレ、褒められてるのかな?

「ふふ、ありがとう徐福ちゃん」

「マスターは自己評価低過ぎるんだよ」

そうかもしれないけど皆がちゃんと評価してくれるなら別に良いかな、私からしたら自分しかできない事を生き抜くため、必死にやってきただけだし。

「そのぶん褒められるから許して」

「仕方ないなー」

そうしていると声を聞きつけた鬼一師匠や牛若丸、マシュやユゥユゥもやって来て、カドックが来るまで褒め責めにあってしまった。

皆が褒めてくれるのは嬉しいけど、褒め過ぎ……。

 

 


 

 

朝の【自分を褒めない先輩を代わって褒める会】はカドックさんが来てお開きとなってしまいました。

わたしとしてはまだまだ褒め足りなかったのですが。

「みんな、これ以上はストップ。褒められすぎて恥ずかしい……」

と顔を真っ赤にして恥ずかしがってしまったので仕方ありませんね。

そんな先輩を鬼一さん、徐福さん、虞美人さんは愉快そうに見ていましたが、わたしとユゥユゥさんはやり過ぎてしまったと反省、牛若丸さんは褒められて恥ずかしがるのが理解できないようでキョトンとされています。

「先輩、大丈夫ですか?」

「無理、皆に褒められて嬉しいけど、こんなに一度に褒められると恥ずか死ぬ」

体育座りで顔を隠している先輩も良いですが、これは回復するまで時間が掛りそうですね。

一先ずその間に疲れ果ててしまったマクラーレンさんをカルデアに帰還させてしまいましょう。

「手間をかける」

「いえ、先輩たちが居ますので今はゆっくりとお休みください」

ここで回復を待ってもよかったのですが新所長から帰還命令が出てしまっては仕方がありません。

この山は鞍馬天狗としての側面が強く出ておられる鬼一さんの領域、そのせいか現代に比べてマナが濃くて先輩や虞美人さん、慣れているカドックさんならともかく、マクラーレンさんには厳しい環境ですからね。

という訳でわたしの盾をビーコン代わりとしてレイシフトをスタート、無事にカルデアへと帰還したのも確認できました。

「マクラーレンも戻ったし、結局はいつもの面子か」

「気楽で良いけどね。虞美人先輩も取り繕わなくていいから、楽じゃありません?」

戻ってくると先輩も無事に復帰なされて朝食の準備中、昨日カドックさんが仕込まれたベーコンやパンケーキの焼ける良い匂いがします。

「そうね、アンタ達相手に今更取り繕う物も無いし」

そうして出来上がった朝食を食べながら、話題は次のエリアへ。

千代女さんによると茨木童子さんの治める次のエリアは宴会場、鬼も人も呑んで食べて騒ぐ、夜限定のエリアだそうです。

「全く課題の予測がつかないけど、宴会芸とか考えておいた方が良いかな」

「お前、早着替えとか得意だものね」

虞美人先輩のおっしゃる早着替えは礼装を瞬時に切り替える為の技術なのですが、確かに芸には入りますね

「じゃあ私は人形劇でもしようかしら、徐福も一緒にどう?」

「皇女殿下のお誘いなら仕方無いか。マシュちゃんも語り手として一緒にやりましょうよ」

「先輩の一座でもつとめさせていただきましたし、構いませんよ」

セイレムの演劇での語り手も懐かしいですね。

他にもユゥユゥさんと虞美人さんは短い舞と演奏をするそうですが、中華四大美人のうち2人とは豪華過ぎます。

「カドックはどうするの?」

「パス、というのは無いんだろ? それなら顔でも隠して楊貴妃と芥と一緒に楽器でも弾くさ」

「まぁ、芸をするって決まったわけでも無いから良いか。オモシロ系を期待したのに……」

「お前!」

カドックさんのオモシロ系の芸、やるとしたらどんなものをされるのでしょうか。

 

 


 

 

それから時は暫し経ち、どっぷりと日も暮れた第5エリアにカルデア一行の姿があった。

そこにはカルデアより追加でレイシフトしてきた渡辺綱の姿もあり、もしもの時に備えて戦力も増強されている。

「しかし主、鬼の芸が人の思うような芸だと思っているのか?」

「可能性くらいかな。この特異点の鬼はそこまで反転する感じもないし、他人を傷付けるのも見たことないしね」

本人達から聞いた大江山の鬼退治がそうであったように鬼の宴が血腥いものだというのは立香も分かっている。

でもまぁ、可能性として穏便に済むなら済ませたいと宴会芸という憶測をしたのだ。

「だから、もしもの時も殺さない程度に留めて欲しい」

その反面、碌でもない宴に備えて渡辺綱(自分)という鬼にとっての切札を喚んでいるのは主なりの警戒心か、と渡辺綱は思う。

「主の命とあれば、警告として手足の1本で許すとしよう。だが」

「うん、危ないと思ったら斬って」

一般人そのものの感性で敵とも理解を望むが、力で以て決するならそこに容赦はない。

その一線の引き方を迷わない主に、渡辺綱は少しばかり顔を歪ませた。

 

 

「着いたでござるよ、お館様」

「ココが茨木童子の宴会場……」

茨木童子のエリアで最初に見えたのは大きく【人】・【鬼】と書かれた門、そしてグルリと外周を囲む壁。

一体どんなエリアなのか先ず【鬼】の門へ入ろうとした時、辺り一帯が急に炎で照らされた。

「よく来たな、マスターたちよ!」

ドン! と打ち上げられた花火に照らされたのは見事な金髪の鬼、特異点の元凶の片割れにしてこのエリアの主、茨木童子の姿がそこにはあった。

「吾が領域【 宴断享会(えんだんきょうかい)】に正面から乗り込んで来るとは天晴れだ! って、綱! 綱ではないか!」

仁王立ちで口上を述べることに手一杯だったのか、どうやら1度カルデアの全員を見渡すまで気付いていなかったらしい。

「どうかしたか、茨木」

「ええい、どうしたもこうしたもあるか! 綱は反則であろう、綱は。気が変わったから吾は奥で待つ、課題をクリアしたければ最奥まで来るが良い!」

そんな捨て台詞を残した鬼の棟梁は門から飛び降りてその姿を隠してしまう。

「ではお館様、我々も」

「結局はコレかー」

【鬼】の門が開くと一気に鬼やそれに類する魔性の気配がする、っとその前にと。

「マシュ、ユゥユゥ」

Ⅱの■■を発動してから2人に口付け、ドロリとした液体を舌で押し込んで2人に飲ませる。

キスになるけど、ロマンチックさの欠片も無いその行動の意図を察した2人はソレをゴクリと飲み込む。

「コレで半日くらいは大気中の毒を無効化できるから、前みたいに酒気に中てられることは無いはずだよ」

今2人に飲ませたのは私の身体を変生させたモノ。全力かつ同意アリなら他にもイロイロできるけど今回はちょっと違う用途、というか男の姿の時にイロイロしたマシュとユゥユゥの2人にしか使えない。

「アレが居なくなった途端に遠慮ないわね」

「まぁ、一応は目立たないようにしないといけないんで」

虞美人先輩に突っ込まれたけど、管制室からは普通にキスしたようにしか見えないはず、というか鈴鹿御前のエリアの後で文句言われてないからセーフ!

「若者の人間離れ、ってやつね」

呆れ気味に私と、ついでにカドックを見て人外の先輩が言うと説得力あるのが困る。

「僕は真っ当な人間のつもりなんだがな」

「カドック、幾ら肉体的に普通でもヴィイに憑かれたり、限定的とはいえその視界を借りたりするのは普通じゃないんだよ」

厳密には異聞帯アナスタシアと契約→異聞帯ヴィイに憑かれる→再召喚した異聞帯アナスタシアにヴィイ返還→その経路で記憶復活&魔眼限定共有だけどね、ついでに視界だけなら3人分で共有らしい。

「……」

「まっ、気楽に真面目に攻略と行こうよ」

そうして屋敷に踏み入った途端、むせ返るような酒の臭いと無数の鬼の視線が私達に突き刺さる。

「茨木に会いたいから、通してもらえるかな?」

「やっかましいわ、小娘! 酒を呑んで楽しんどるいうんに、ナニが茨木童子様に会いたいじゃ!?」

おかしい、私普通の声で言ったのに皆さん相当酔ってらっしゃる?

《マスターよ、言い忘れていたが此処の鬼は皆酔っているから気を付けよ!》

何処からか聞こえてくる茨木の声だけど正直言って遅い、というか皆さん怒気が見えるよう。

そして手近にあったものを投げたのか、白い物が飛んでくる。

「マスター!」

「ありがと、マシュ」

宴席で武器はないけど代わりに投げられた大皿をマシュの盾が防ぐと、ソレを合図にしたように結構な数の鬼がこちらに向かってくる。

「仕方無い、穏便に済ませたかったんだけどね。マシュ、楊貴妃、綱さん!」

「「はい!」」

「はっ!」

手順を踏んで最初は穏便に行こうとしたのに先に手を出したのは向こう、それなら加減する理由は無いよね。

「結局カチコミじゃないのよ。まったく、項羽様に舞を見てもらおうと思っていたのに」

「遺憾であろうが仕方あるまい。鎮圧戦闘を開始する」

「ぐっ様の舞を見れなくなった怨み!」

虞美人先輩、それについてはユゥユゥも落ち込んでるので後でお願いします。

「ヴィイもせっかく人形劇の練習したのにね」

「アナスタシア、余裕なのは良いが真面目に頼むぞ」

アナスタシアも落ち込んでるけど、私もマシュの語りを聞きたかったんだよ!

というわけで乱戦、前に進もうとする私達に機嫌を損ねた鬼達が襲いかかってくるけど、ソレはだいたい半分くらい。

「ハァッ!」

「マシュ、次は左の!」

「イイぞ嬢ちゃんたち、別嬪さんの戦いは良い肴だ」

残りはそれを見ながら宴会続行中。

見世物みたいになってるけど元々は宴会芸見せるつもりだったから、あんまり変わらないか。

「主、伏せろ」

と、暢気に考えてる場合じゃなかった。

綱さんの声で慌てて伏せると、すぐに頭上を綱さんが飛び越えて鬼の腕を受け流す。

そのまま峰打ちで強かに肩を打ち付けると鬼は崩れ落ち、周囲からは喝采と野次が飛ぶ。

「無礼な真似をして済まない」

「ううん、助かったから問題ないよ」

そのまま戦い続けること暫し、一先ずこの部屋の鬼にはこれ以上戦う気のある者は居ないようで鬼は全部寝てるか酒を呑んでいるかとなった。

となれば当然酒を勧められることとなり、せめて1杯は呑まなければとなり皆が受取るがそこは鬼の酒。

「強っ!!」

「ガッハハハハッ! そうじゃろ、儂らも甕1つ呑んだら倒れちまうもんだ。茶碗一杯でも良く呑めたな!」

「せ、せんぱい、こりぇは~」

「りつかひゃん~」

単なるアルコールの強さに加えて呪いじみた酔いの効果が含まれており、対策をしてきた3人にも酩酊感を味あわせている。

それに加えて場酔いしやすいマシュは戦闘を終えて気が抜けたこともあって一気に酔っぱらったようになってしまった。

「マシュ落ち着いて、気分、気分だけだから。だぁっ! ユゥユゥも泥酔したふりで抱きしめないの、着替えにくい」

顔を赤くして呂律が怪しいマシュを介抱すべく、オシリス院制服に着替えようとした立香に楊貴妃がまとわり付く。

初心な後輩と勝ち気な先輩、そこに妖艶な美女が絡むとなれば男ばかりの鬼達にとっては極上の観物。

とはいえ近くで渡辺綱が居るので黙って酒の肴にするだけに留めるが、その衆人環視の中で服装が浴衣から紫の制服に瞬間着替をした時は喝采の声と拍手が上がった。

「イシスの雨」

それを浴びながら礼装を起動すると黄緑の光がマシュを包み込み、酔いの呪を洗い流す。

「申し訳ありません先輩、どうしても場の空気に流されてしまいまして」

「戦闘が終わって気が抜けちゃうとね……。というか私も呪いの方は耐性低めだから気を付けないと」

この先の戦いは常に酩酊と背中合わせ、はてさてどうなるのか。

 




という訳で茨木童子のエリアに突入、酒に塗れた宴会場でどうなるか。


それにしてもサバフェス2023良かったですね。
妖精國組の救済や作家鯖のワイガヤ、ワルキューレ6姉妹と北欧ゲルマン夫婦、大型バイクやトレーラーを乗り回す藤丸、皆が描いた数々の同人誌。
水着鈴鹿御前が来たときは焦りましたがどうにかなりました……。

よろしければ、こちらのSSにも感想評価をいただければと思います。

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