フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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夏のしめは盆踊り、気楽に踊って騒いで一段落
とはいかない用で……



第36話 藤丸、いざ盆踊り その2

ドンドッドドン♪ ヒョロ~♪

ドッドンドドン♪ ヒョ~♪

酒呑童子の先導で着いた中心部。

そこでは櫓の上で鬼が力強く和太鼓を打ち、人が流麗に笛を吹いて音頭を奏で、周囲では踊る・小規模な屋台を楽しむ・小川のほとりで涼をとるなど、思い思いの形で多くの人と鬼がこの場を楽しんでいた。

「えぇとこやろ? 普段なら人なんて飽きたら喰ってまうけど、旦那はんが怒るさかい皆にも泳いだり宝探ししたり、他にもいろんな遊びで発散できるようにしたんよ」

「つまり、ここに来るまでの6つのエリアは全部鬼種のみなさんのストレス発散のために作った、という訳ですね」

マシュの言う通りにどこのエリアも遊び場という感じだったし、人も鬼も楽しんでいるように見えた。

課題も大体が遊びと一体になったもので、結構楽しめたしね。

例外と言えるのは鬼一師匠と牛若丸のいた山と茨木童子の宴会場だけど、あそこだってコテージまで辿り着きさえすれば純然たるキャンプ場だし、宴会場も普通に立ち入ればあんな荒事をする場所でもない。

「それでも溜まってしまうもんはあるけどな、それは此処に集めて適当に散らしとるんよ」

「なるほど、この特異点の鬼が反転しないのはそういう仕掛けがあったわけだ」

盆踊りに供養や勧請の意味があるのは私も知っているので、酒呑ちゃんの説明に納得して周囲を見つめるていると、大勢が浴衣や法被姿で拍子に合わせて踊るのがなんとも盆踊りらしくて、私もそこに混ざりたくなってくる。

「ほな、うちらも踊りましょか」

一瞬、私の心を読んだのかと思うようなタイミングで酒呑ちゃんが私たちに告げて手招きすると、真っ先に飛び出そうとしたのはユゥユゥ。

私の手を取ると今すぐにでもと言いたげな視線を向けてくる。

「早く行こう、立香ちゃん」

「焦らないの、マシュも一緒じゃないとダメだよ」

というわけでもう片方の手をマシュの方へ差し伸べ、彼女を誘う。

「マシュ、私と一緒に踊ってくれる?」

ダンスなんてものじゃないけど、恋人を踊りに誘うならちょっとくらい格好付けても良いだろう。

マシュはそれに応じて私の手を両手でしっかり握り、真っ直ぐな視線を向けて答えてくれた。

「はい、初めてですがよろしくお願いします」

私はまさしく両手に花といった気分で輪に加わり、見様見真似で音頭に合わせて踊る。

ユゥユゥは流石に上手いもので¼周する頃には周りの誰よりも上手くなり、衆目を集めていた。

そんな彼女は隣の私の視線にだけ応えてくれて、少しだけ優越感を覚えてしまう。

「立香ちゃん?」

「ふふ、見てただけー」

もっとも、気持ちは口には出さずに内心に留めておくけどね。

そのあと半周する頃には私とマシュも慣れてきて、ようやく会話する余裕が出てきた。

「先輩、こうして大勢で踊るのは初めてですが楽しいですね」

「うん、私もマシュと踊れて楽しいよ」

音頭に合わせて向き合ったとき、満面の笑みのマシュにそう言われた私は嬉しくて、同じ表情を浮かべて答えていた。

「立香ちゃん、私も居るんですよ?」

でもユゥユゥはそのやり取りに嫉妬したようで、踊りを中断して柔らかそうな頬を膨らませて私を見つめる。

「もちろん、ユゥユゥと踊れるのも楽しいよ。それにユゥユゥの踊りはとっても上手で、見てて綺麗だなって思う」

だからこそ、私が彼女の踊りを邪魔しないように一歩引いたところで眺めていたのだけれど、逆効果だったかな。

「褒めてもらえるのは嬉しいけど、せっかくなら私も隣で踊りたいな」

やっぱりそうだったようで、眉を下げたユゥユゥは悲しげな雰囲気を出して私へ迫る。

絶世の美女な上に恋人なら、その誘いを断れるわけがない。

即断した私が無言で頷くと彼女は花が咲いたような笑みを浮かべて私の隣に立ち、次の音頭が始まったタイミングでマシュと一緒に3人で踊りだす。

上手な人にリードされて踊ると不思議なもので、ユゥユゥと踊ると先程までよりもリズムに乗れている気がする。

音と体の動きが合わさる心地よさに身を任せていると不意にひんやりとした気配がやって来た。

「皇女殿下?」

「見ていて面白そうだから、私もカドックと来たのよ」

気配の持ち主、アナスタシアは事実楽しそうな笑みを浮かべて彼女のマスター、カドックの手を引いていた。

「あまり乗り気じゃないが、踊るのがココの課題なら仕方ないだろう」

「ちなみにぐっちゃん先輩たちは?」

気になる残る一組、ぐっちゃん先輩たち3人がどうしているのかと問えばカドックは黙って櫓の反対側を指し示す。

指につられるように揃って顔を向ければ、そこにはユゥユゥにも負けない見事な舞を唯一人、愛する項羽に披露する虞美人先輩の姿があった。

「……邪魔しちゃ悪いね」

「賢明な判断だな」

多分、刺される。

ともあれ櫓のてっぺんで酒呑も楽しそうにしてるし、このまま踊って溜まったものを全部祓えば課題完了。

あとはこの特異点が消えるまで夏休みを……?

「なに、今の?」

一瞬感じた嫌な気配、他の皆は平気そうだけど何だろう?

 

 


 

 

「先輩?」

「立香ちゃん?」

不意に感じた怖気が気になって、足元から来た感覚の源を探ろうと片膝をつくと心配になったマシュとユゥユゥが声を掛けてくるけど、大丈夫と頷き気配察知を続ける。

櫓の真下、まさにこの特異点の中心に源があると探り当てた瞬間、ソレは地表へと動き出した。

『!?』

今度の怖気は私だけじゃなくマシュやユゥユゥ、カドック、皇女殿下に加えてこの場に居る全員が感じたらしく、踊りや祭り囃子といった一切の動きと音が止まった。

「あかんな、抑えきれんかったか」

嫌な静寂の中、酒呑童子の声だけが響いた。

「みんな!早う逃げ!」

酒呑童子がそう言えば、この場にいる全員は我先にと悲鳴や怒号をあげながら出口へ向かう。

でも、人の波が櫓の周りから消えないうちに怖気の源は地表まで上がって来て、酒呑童子が飛び降りた直後に櫓を崩しながらその黒い靄のような全容を顕した。

靄の塊はそのまま集まると姿を変えて、まるで痩身の大鬼のようなカタチをとったが、その存在感というか身体を構成する物の密度・質で鬼のような生物ではないと、アレは不味いモノだと直感で理解る。

肌で感じる濃厚な殺意は以前にオガワハイムで対峙した死の蒐集装置と似た、それでいて決定的にナニかが違う存在だ。

「酒呑童子、アレは?」

刻寿の魔眼で観測しながら目の前の相手をひとまず評価して、動き出さないうちに近くに着地した酒呑童子に詳しい説明を求める。

「アレはそうね、殺意の澱みたいなもんや。どうしても散らしきれへんから固めて特異点(此処)の維持に使っとたんやけど、抑えきれずに溢れてもうた」

「つまり、アノ黒い敵性体は純粋な殺意の塊ということですね」

「せやね、言うなら澱殺鬼(でんさっき)とでも名付けよか」

マシュが騎士鎧に身を包みながら刻転の魔眼を起動して言ったのに酒呑童子が応じて名前をつける。

その名付けに反応するほどの理性があったのかは分からないけど、澱殺鬼はこちらに視線を向けて口にあたる部位を開いた。

「ArGHHhhhhaaaaaa!!」

『!?』

濃密な殺意を帯びた咆哮、澱殺鬼は自身が放ったそれを浴びて身体が竦む私たち目掛けて飛び掛かり、唯一影響を受けなかった酒呑童子が迎え撃つ。

私も酒呑童子に続くように怖気を振り払って動き出すけど、澱殺鬼は酒呑童子を無視して此方目掛けて走って来る。

殺される、ただその感覚に従って逃げようとして気付いた。

不慣れな殺意をマトモに浴びてしまったカドックは動けず、鬼の狙いは彼だと。

「カドック!」

「!?」

気付いてしまえば不思議と身体は勝手に動き、カドックを突き飛ばした私は彼のいた場所に。

だから、その爪が代わりに私を捉えるのは当然で、マシュやユゥユゥがその顔を悲痛に歪めるのも当然だった。

「はぁ、やっちゃった……」

 

先輩が、カドックさんを庇ってあの鬼に引き裂かれた。

急な出来事に一瞬思考が止まった私にそれはスローモーションのように見えて、だからこそ次の動きは迷わなかった。

「ハアっ!!」

「凍てつき散れ!!」

それは楊貴妃さんも同じ、鬼に渾身の一撃を放ち、何も出来なかった怒りをぶつける。

「先輩!」

「立香ちゃん!」

そうして相手が怯んだ瞬間、先輩とカドックさんを引きずって瓦礫の陰に退避をする。

「すまない、キリエライト」

謝罪を口にするカドックさんに首を振り、何度も先輩を揺する。

「先輩、目を開けてください」

「立香ちゃん、起きて」

でも先輩はピクリとも動かず、傷口には赤が見えるだけ。

その状況に先ずは傷口を、と応急キットを開けた私を止める人影が。

「その必要はないわ、マシュ」

「でも、虞美人さん」

首を横に振った虞美人さんは応急キットを閉じると、思い切り先輩の頬を張ってこう言いました。

「さっさと起きろ後輩! 一度死んだくらいで何時まで寝てんの!?」

「芥……」

「虞美人様……」

カドックさんと楊貴妃さんはその言葉に呆れたようにして虞美人さんを見ます。

いえ、その、言うとおりではあるのですが……。

「痛っいんだけど虞美人先輩! 私死んで蘇生中、先輩と違って即再生蘇生な訳じゃないんだけど!! あと傷口塞ぐまで待って、意識戻ると滅茶苦茶に痛いぃっ!?」

「そんな口利けるなら大丈夫ね、さっさと戻しなさい」

「コレが、パワハラ……」

うぅと言いながら、先輩の痛みの元凶である傷口は肉のような見た目から赤い水晶のように変化すると繋がり始め、それと同時に【7つの獣角】の全てを背に負った先輩は褪せた体色に変化、切れた礼装も黒と赤に染まりながら復元します。

「よし蘇生完了、というかアノ時死んで以来だから初蘇生?」

獣角を一度格納した先輩は身体の調子を確かめる様に動かすとそんな事を言いますけど、先ずは!

「先輩」

「立香ちゃん」

「「無茶をし過ぎです!!」」

「そのことについては言い訳のしようがなく」

いくら先輩が個体として不死の、ORTと同じ体質の尸解仙だとしても無茶が過ぎます!




ちょいと急転直下な今話、いかがだったでしょうか?
詳細は次話以降で語っていきますのでお待ちください。

よろしければ感想も……

ところでワンジナ引けました? 私は3万で0、爆死ですね。
ドゥムジ実装してほしいと思いつつ、レイシフト組の家族感にほっこりしています。

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