フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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まさかの転校生に驚くばかりだが、嬉しいのも事実である藤丸。
案の定話題の人ともなるわけで……?

お気に入り、評価いただきありがとうございます。
良ければ感想もいただけると嬉しいです。


第4話 藤丸、話題になる

藤丸の元にマシュと楊貴妃の二人がカルデアから護衛兼社会勉強ということでやって来た。

当然3人の関係は転校初日からクラスの話題となり、藤丸とマシュは恋人同士で楊貴妃は藤丸に想いを寄せる共通の友人ということになったが、男子は美少女に好かれる藤丸を妬み、女子はどちらにも良い顔をしていると見た藤丸に非難を向けていた。

もっとも、当の3人が全く問題の無いどころかかなり仲の良い様子を見せたことで、その日の午前にはそれも表面上は収まりを見せていた。

 

 

「先輩、お昼はどうなさいますか?」

「学食にしようかなー」

「でしたら」

 

そう言ってマシュが自身のカバンから取り出したのは3つの包み。

 

「私達の分と一緒に先輩の弁当もお持ちしましたので、よろしければご一緒しませんか?」

「ユゥユゥとマシュさんで作ったんだよ」

 

用意周到だけど、もし俺が弁当を持って来ていたらどうするつもりだったんだろう?という疑問を抱きながら弁当を受け取る。

 

「それじゃあ、ありがたくいただきます」

 

周りの連中が愛妻弁当とか煽ってくるけど無視しながら椅子を借りて、俺の机の上に3つの弁当が並ぶ。

 

『いただきます』

 

蓋を開けるとそこにあったのは唐揚げと麻婆豆腐にサラダと白米、カルデアの中華定食で見慣れたラインナップである。

おそらくだが麻婆豆腐はユゥユゥ、唐揚げはマシュの手によるものだろう。

まずは唐揚げを一口、冷めているがジューシーで味が染みていることもあってご飯が進む。

サラダで口をリフレッシュさせて麻婆豆腐を食べると辛めの餡と甘めの豆腐が口の中で合わさりほど良い塩梅となる。

 

「んー、二人とも美味しいよ」

「喜んでもらえたようで何よりです」

「麻婆は私で、唐揚げはマシュさんが作ったんだよ」

 

事前の予測は当たり。

 

「お茶も如何ですか」

「何から何までありがとうございます」

「いえいえ」

 

楊貴妃が水筒から注いたお茶を口に含んで立香は一息つく。

そして、まだ半分ほど残っている弁当を味わいつつポツリとこんなことを呟いた。

 

「俺、こんなふうにしてていいのかな?」

それはすぐ近くにいたマシュと楊貴妃の耳にしか届かなかったが、その意味を理解する2人は1度食事の手を止めて藤丸へ静かに告げる。

 

「良いに決まっています」

「こうして良いんですよ」

 

本当の意味で自分達のマスターでもある彼の心情を理解することは出来ないが、それでも慮ることは出来る。

人類最後のマスターとして多くの世界とそこに生きる生命を剪定した自分に人並みの幸福を感受する資格はあるのか。

それは今後永遠に藤丸へ付きまとう問答、そしてその度にそれを良いと肯定するのが自分たち2人の役目だ。

 

「ありがとう。っと、昼休みも無くなっちゃうし早く食べちゃおう」

「ふふ、ゆっくり食べないと喉に詰まらせてしまいますよ」

 

そう言いながら楊貴妃はお茶のお代わりを注ぎ、マシュはそれを見て笑みをこぼす。

そんな3人に周囲はよく分からない、とだけ感想を抱くのだった。

 

 

放課後、本日最後の授業も終業のホームルームも終わったとなれば他のクラス・学年からも噂の美少女転校生を見ようと幾人かが藤丸たちのクラスに訪れていた。

 

「なんだか緊張してしまいますね」

「そうですか? 後宮(むかし)はこんなもんじゃありませんでしたよ」

 

注目されることに不慣れなマシュと慣れたものの楊貴妃は注がれる視線の主たちをチラリと見ながら、帰り支度をしていく。

 

「ねぇねぇ楊さんは放課後ヒマ? 中国の話とか聞きたいんだけど」

「私もキリエライトさんからロンドンの話を聞きたいな」

 

そんな中で距離を詰めようと果敢に話しかけて来た同じクラスの女子2人に楊貴妃とマシュはそれに応じて設定に基づいた話をする。

現代の四川省やロンドンにも滞在したことがあるとはいえ実際にそこで育った訳ではなく、ボロが出ない程度に当たり障りの無いものだが話を聞いているクラスメイトたちにはそれで十分らしい。

 

「2人とも人気、というか注目の的だね」

「その2人と仲の良いお前もだよ」

 

クラスメイトの言葉通り、どうせなら一緒に帰ろうと待っていた藤丸の周囲にも人が集まっている。

 

「で、キリエライトさんとの馴れ初めは〜?」

「ユゥファンちゃんとはどういう関係なの?」

 

男女とも、2人の女子と藤丸から聞き出そうと詰問口調だが。

 

「朝も話したけど2人とは天文台で知り合ったんだよ。ユゥユゥは俺と同じで研修に、マシュはお父さんがそこで働いててね」

 

あとはマシュと楊貴妃から聞いた設定通りに楊貴妃とは同じ東アジア出身で年齢も近いことから、マシュとは父親から話し相手になって欲しいと頼まれて相互に友人となったということを伝える。

そのうちにマシュとは相思相愛になって、退院して南極に来たときに告白されて付き合い始め、楊貴妃はその時に同時告白。

その時にマシュが「私と先輩のどちらかが自分から離れた時は」ということで片思いを許した、ということで一応の説明を終える。

実際は2人から同時に告白されてどっちも本気で好きだったから答えられないでいた藤丸に「悩むなら2人とも娶ればよかろうて」と武則天が告げ、狂と剣のランスロットに土下座して許してもらったのだが。

なお、ランスロットは不倫をした自分にソレを断る資格はないと消えそうな感じで言っていた。

 

「キリエライトさんが健気すぎる」

「お断りしないとか藤丸君サイテー」

「割と最低なのは自覚してるから言わないで」

 

クラスメイトたちは割と非難寄り、2人から告白されて片方にイエスと言ったのにもう片方にノーと言っていないのは本当なので藤丸は何も言えない。

 

「お人好しの藤丸らしいけどさ、他にも告白されてる」

「お断りすべき所はキッチリお断りしています」

 

流石にそこまで女性も弄んではないので食い気味に反論する。

まぁ、実際は恋人じゃなくても愛されたり恋されたりしている相手はいるが、マシュとユゥユゥから許しは得ての交際である。

 

「やっぱり俺は女性にノーと言い切れないクズだ」

 

自嘲の笑みを浮かべた藤丸が放つ雰囲気に非難も若干止む。

 

「先輩はクズではありませんよ!」

「悪いのはマシュさんとお付き合いしているのに横取りしようとしているユゥユゥですからね!?」

 

そんな彼氏の様子を見かねた2人が質問を打ち切ってフォローに入るが復活まではしばらくを要する。

 

「でも、1番偉いのはキリエライトさんだよね」

「何がでしょうか? それとキリエライトではなく名前のマシュの方で呼んで頂いて結構ですよ」

「私も、嫌じゃないから玉環(ユゥファン)とかユゥユゥとかで呼んで良いよ」

 

もともと名字では呼ばれ慣れていない2人に名前で呼ばれることの抵抗は少なく、それならばと周囲は早速名前で呼びはじめる。

 

「マシュさんは気にならないの、ユゥファンさんのこと?」

「ユゥユゥさんは基本的には良い方ですし、先輩のことも奪おうとはされていないのであまり深くは」

 

そもそもカルデアで告白したタイミングも一緒、複数愛する人が居てもそれが真摯なものであれば問題無いと今のダブル彼女状態を認めたのは自分なのでマシュは然程気にしていない。

楊貴妃にも自分を振らずに次の恋を邪魔している、もしくは予備としてとっておいているのではともとれる現状を質問されるが。

 

「私はマシュさんと藤丸君に割り込んだような感じだから今のままでも幸せかな。それに、居ないとは思うけど藤丸君よりもいい人が居たらソッチにいっちゃうかもしれないし?」

 

傾国で混沌な楊貴妃らしい回答に周囲もなんとなく納得してしまう。

 

「結局は付き合ってる当人たち次第かー」

 

そんな誰かの一言でその手の質問は打ち切り、あとはそんなに質問も出てこなかったのでそろそろ下校しようかというタイミングで誰かが教室に入ってきた。

 

「へぇー、噂通りの美人さんだね」

 

入ってきたのは茶髪に染めた見るからに軽そうな、しかもイアソンと違ってどうにもならなそうなタイプの男子。

 

「ユーファンちゃんとマシュちゃんだろ、俺は3組の渋井っていうんだけどさ」

 

しかも入ってくるなり今まさに帰ろうとしていた2人に話しかけて、無下にするのも流石にとやんわり断ろうする2人を無視して自分の話をすすめる。

 

「2人とも藤丸なんて冴えない奴より、俺が側で学校を」

「「「ハイ?」」」

 

あ、地雷踏んだなとその声を聞いた全員が思った、そして間近でソレを浴びた渋井は3人の瞳を視てしまった。

 

「ヒィッ!?」

 

赤黒の終わり、黒紫の死、碧青の狂気。

時間にしてほんの一瞬だが3つのこの世ならざる瞳を視た渋井はその場から脱兎のごとく逃げ出し、他の全員はそれ程のことか? と疑問に思いながらも教室から家路につくのだった。




読んでいただきありがとうございました。
最後のは一体? という尤もな疑問には後々明かしていきますのでこうご期待。

今週はペット関係で土日執筆に充てられていないので、更新おくれるかもしれません。

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