果たしてどんな結果になるのか、初の試みだけに一歩一歩着実に進めた結果は?
バレンタイン、相変わらずヤバいですね
新規組ももう一回読んだのも、シナリオの破壊力が凄まじい
さて、世界を超えてサーヴァントの皆と移動するために霊基を俺の身体に刻むことになった訳だけど、具体的にはどうするのだろうか。
「藤丸君が乗り気なところで第1工程を始めようか。先ずは君の身体を液体にして、1滴ばかりココに入れてくれるかい」
「はいはい」
言われるままにダヴィンチちゃんが差し出したフラスコに【身体変生】で液化した身体を垂らすと不思議な感覚におちいる。
1滴とはいえ俺の身体なので感覚は共有され、そこだけ急に巨人に囲まれたような気分だ。
「感覚とか
「歯医者さん的な?」
言っても止める訳ではないものの代名詞を挙げるとダヴィンチちゃんは首を横に振り、ちゃんと処置の影響を確認しながら進めたいので伝えて欲しい旨を告げられた。
そこからダヴィンチちゃんが俺の様子を見ながらキルケーが用意した素材と混ざってからモルガンにいい火加減で煮込まれて、太公望がそれを成形したのを晴明が様々な魔術の要素が混ざった魔法陣の上で仕上げれば、一口サイズの紅い氷砂糖のような物が出来上がった。
「本当に不快感とか無かった? 計算上では大丈夫だけど万が一とか……」
その間ずっと無言でその様子を眺めていた俺を心配してダヴィンチちゃんはそう言うけれど、せいぜいキルケーが混ぜる時と太公望が成形する時にむず痒かった程度だった。
「不快なのは無かったよ、むず痒いくらいであとは気持ち良いか無感覚だったし」
実際モルガンの煮込みはいい火加減で、ホンの一欠片だけの身体だったが気持ち良かった。
「ふむ、なら次のステップに進もう。出来上がったコレ、便宜的に【
「加工されるのは初めてだったけど、まだ俺のまま生きてるよ」
「なら大丈夫、最終段階としてシャルロットには契霊血晶を呑んでもらうよ。もちろん丸呑みでも噛み砕いても、舌の上で転がしても好きな摂取方法で構わないとも☆」
最後の舌の上云々を愉快そうに言いながらダヴィンチちゃんは契霊血晶をシャルロットに渡し、シャルロットは赤面したままソレをじっと見つめる。
俺はというと分体といえど自分をジッと見つめられることや生きたまま摂取されることに気恥ずかしさを覚え、そんなシャルロットから目を逸らしていた。
「では立香さん、いただきます」
「……」
シャルロットの口に俺の分体が呑み込まれた。
感覚系は既にシャットアウトしているものの、生きたまま呑み込まれたそれは再臨素材同様に彼女の霊基へと溶け込んでいき、俺との間に新しく一層強い経路を繋ぐ。
「どうですか立香さん、何か変なところとか具合が悪くなったりはしていませんか?」
「悪影響は今のところ、代わりにシャルロットととの間に新しい魔力経路が出来てるね」
「えぇっ!?」
水着のキャスター霊基なら気付いたかもしれないが、普段のアサシン霊基な上に近世の英霊である彼女は経路が出来ていた事に気付いていなかったようで慌てて探り出した。
そんな彼女をキルケーとモルガンが診て、晴明さんと太公望が俺を診る。
「ふむふむ、君自身の魂に問題はなくシャルロットとの霊基接続も確立しているね」
「コレで準備は完了、あとはマスターがシャルロットさんの霊基をご自身に刻みつけるだけですね」
いよいよ最終段階、違うと分かっていても目の前の太公望に言われたことが気になってしまう。
シャルロットに俺の分体が取り込まれたとはいえ彼女にするのはその真逆、自分自身に彼女の霊基を全て取り込むことにどうしてもORTに捕食されていった時の姿を想起する。
「立香さん」
「ん、シャルロット?」
そのせいで若干アンニュイな気分でいた俺の手をシャルロットが両手で握り、落ち着いた笑みを此方に向ける。
「大丈夫ですよ、魔術に関しては私なんか足元にも及ばないような皆さんが編み出したモノなんですから。立香さんのサーヴァントを信じてください」
まぁ、落ち込む原因の今はティアマトもククルカンもカルデアの仲間として一緒にいるし、自分自身もそのごった煮のような状態なので今更だ。
「そうだね、ここ迄来たらあとは信じてドーンといってみようか」
半端なところで止まるより突き抜けてから失敗した方が得るものが多いし、ケイオスタイドもORTの体質も今では自分の力の一部だから嫌わずに使ってみよう。
「というわけで皆、あとは何をすればいいの?」
空元気、虚勢、そんなところだが自分の力をきっちり使って皆の期待に応えてみようか。
「最後の仕上げは実に単純、その経路を糸のようにしてシャルロットの霊核を君自身の裡に手繰り寄せるんだ。ORTの補食に近いけど蜘蛛が糸に掛かった獲物を引き寄せるのでは無く、紡いだ縁で英霊を君の中へ導くように」
晴明さんの言葉に従い、シャルロットとの経路を縁の形で強く意識して自分の裡へ導こう。
少し緊張した面持ちの彼女との間にあるソレを軽く引くようにして気付かせ、霊子分解されていく彼女を引き寄せていく。
魔術はイメージが大切、自分の魂から伸びた糸とシャルロットの霊基がつながっているのを想像しながら、糸状になった彼女を構成する霊子とその先の霊核を手繰り寄せる。
速過ぎず遅過ぎず、決して引き剥がしたり零れ落ちたりしないようにシャルロットの霊基を導くように進めて、残るは霊核のみ。
「……」
「いくよ」
言葉を発することのない光球でもシャルロットには違いないので一言告げて裡に取り込むと、何やら自分自身の何処かにシャルロットが居ることを感じる。
漠然とした感覚だが彼女は間違いなく自分の中に居るのだ。
「えっと、シャルロットを俺に刻み込むのは成功したっぽいんだけど、ここからどうすれば良いのかな?」
「ごめん藤丸君、今ソレの最終確認中だからちょっと待って」
次なる指示を求めれば、ダヴィンチちゃんが答えてくれたように皆は魔術式や術具を見て何やら確認中の模様。
仕方ないので自分の中に居るシャルロットの方に意識を向けるが、なにか戸惑っているような気がする。
「待たせたねピグレット、最終確認の結果は完璧さ。君の中にシャルロットの霊基は自己を維持したまま、しっかりと刻まれているよ」
「良かったぁ、なんだかシャルロットが不安になってるような感じがして」
俺の感覚をそのまま伝えて皆がもう1度確認するなか、モルガンは何か確信を得たらしい。
「ふむ、確かに霊基の微かなブレはありますね。我が夫、こちらに」
招かれるままモルガンの指し示す椅子に座った俺をジッと彼女が視る。
血で曇ったと自嘲してもバーサーカー霊基の妖精眼はAランク、そんなモルガンの眼には果たしてなんと視えているのだろう。
「立香の言う通り、シャルロットの感情にも不安や困惑が視えますね。本来はこのまま経過観察をしてから再現界してもらうつもりでしたが仕方ありません、此処で現界させて訳を訊きましょう」
「勝手に出て来れる訳じゃないんだ」
意識がハッキリとあるなら出て来れるものかと思っていたが、今のモルガンの話しぶりでは違うようでダヴィンチちゃんが補足する。
「勝手に出て来る英霊もいるかもしれないけど、基本は藤丸君が呼び出す形になるよ。契約がカルデアを介さないから現界を維持する為に君が負担する魔力も相当なモノになるし、普段暮らしている最中に飛び出したら大変だからね」
「事情は分かったけど申し訳ないです」
魔力に関しては鍛錬して伸ばせるとはいえ貧弱な自分が悪いし、急に飛び出したらというのも常時現界できれば解決する。
獣角モードという抜け道もあるが常用はできないので、現時点では補助無しで現界を維持できない自分のせいだ。
「気にする必要はありませんよマスター。霊基トランクも聖杯を幾つか詰めて簡易魔力炉にして補助に充てる予定ですから、今のカルデアと同じような状態までは持っていくつもりです」
太公望への自嘲を見抜かれた気まずさと先に言って欲しかった呆れ、そんな複雑な気分でいる俺に晴明さんから1枚の紙が差し出された。
「コレが君の中から英霊を呼び出す呪文だ、覚えたら燃やしてしまいなさい」
「……うん、これならすぐに覚えられそう」
普段の召喚詠唱よりも短いそれに目を通したら小声で何度か暗唱したら碧い【外神の火】で灰すら遺さずに燃やし尽くし、令呪の刻まれた右手を前に突き出しながら魔力を回して朗々と詠唱する。
「
通常の召喚から大幅に省略したような呪文をシャルロットを強く想いながら詠唱すると身体の中から外へ路が繋がった感覚がして、戸惑っていた彼女がソコから押し出されるようにして俺の前に再度召喚された。
「召喚に応じ、再び参上しました。というかあんな所に行くなんて、私聞いてなかったんですけど!? 広くて何も無いし時間もよく分からなくて、立香さんの中だって知らなかったらパニックでしたよ!」
「お、落ち着いてシャルロット、深呼吸深呼吸」
「すぅーっ、はぁーっ、すぅーっ、はぁーっ」
広くて何もないし時間間隔も曖昧、まさか自分の中がそんな場所だったとは思わず、ソコから戻って来て不安を吐き出した彼女を落ち着かせる。
そして、彼女から聞き取った俺の中にいたときの様子は以下の通り。
・ひたすらに広くて何も無い
・マスターとの繋がりは常時感じる
・体感時間は不明だが極端に長い、短い訳ではない
・再現界は外に繋がる通路が出来て、そこから促される感じ
ダヴィンチちゃんがホワイトボードにまとめた内容を見ながら、俺の中で自分の世界を持っている2人にも意見を求める。
「エドモンとアビーはどう思う? 俺の中のことだから何かある状態にはできるよね」
俺の声に応じて影から湧き出た炎と触手を扉のようにして2人が現れ、膝の上に乗ったアビーを恨めしそうに見つめる視線を一緒に受け止めばがら事情の説明は不要だという2人にアドバイスを請う。
「何も無いのは当然だろう、ただの場所でしかない共犯者の内に入っただけだからな。自らの手で定義しなければ何も現れぬさ」
「私や伯爵さん、オベロンさんは居るならこういう場所っていうのがハッキリしているから、マスターさんの中に居る時はそのイメージを広げているの。草原でシートを広げるのと同じだわ」
間違いなくトップクラス魔術師である皆も俺の内面世界については2人の言葉に納得するしかなく、今後は俺と契約の切り替えを進めながら一つの場所、俺の中のカルデアというべき場所を皆で共有できるような魔術も組んでいくこととなった。
「それにしてもアビーさん? いつまで立香さんの膝に乗っているんですか?」
「我が夫はマシュと妖星の貴妃の2人、次いで私たち6人の物。貴女が乗っても構いませんが、求められたら譲るように」
一応年下の子なのに大人げないシャルロットとモルガンを宥めつつ、若干怖がるアビーを背後に寄せると馴染みのある気配が一つ急速に迫って来る。
「立香君、なにやら薔薇の匂いがするのでやってまいりましたがやはりアビーさんでしたね!」
扉を開いてアビーごと俺を背後から抱き締めたのは察知した通りのユゥユゥで、2人分の重みとアビーがあわあわしているのにさっきまでの重い空気も吹き飛んだ。
皆も無事に俺の中に霊基を記録して意識を保ったままでいられるのと再現界が出来るって分かったので、今回の実験は成功で幕を下ろしたと言ってるしね。
「しかし楊貴妃は恐るべし、一体どうやって知ったのか興味が尽きないね」
「それはあれなのです、立香君が使った【外神の火】の火の粉が舞っていましたのでソコからです」
ダヴィンチちゃんへの回答に火の粉がどこかに燃え移りはしていないかと見回せば碧い一片が空中に留まっており、俺が見ていることに気付いたように消えてしまった。
あの火の粉はユゥユゥの侍女だったのでは? と思わないでもないがそこは後で直接訊こうとしよう。
「興味が尽きないといえばダヴィンチちゃん、何でシャルロットが最初のサーヴァントだったの?」
「私も気になります。ピンポイントで私というのはどうしてだったのでしょうか?」
そしてもう1つ、この実験が始まった時からの疑問を出せばシャルロットも同じ疑問を抱いていた。
塩基契約を既に結んでいるマシュとユゥユゥを除いてもこのカルデアには多くの英霊が居るし、別格の6人の中から選ぶにしても何故シャルロットだったのだろうか?
「シャルロットが1番普通でしたから。私やアルトリアと異なり汎人類史由来で、メルトリリスやテノチティトランのように神霊の要素を含まず、ジャンヌ・オルタと異なる真性の普通の英霊。他の英霊の多くが当て嵌まる要素ですが、私達の中では唯一貴女だけです」
「普通というのがこんな所で役に立つとは……。異常に囲まれる中では普通の方が異常ということですね」
モルガンの解説で疑問もスッキリした所で、俺は冷やかしを受けながら愛する3人の機嫌をとるのだった。
これにて夏のカルデア編が一段落となる43話、如何だったでしょう?
気付けば5万UAの大台を越えて感想も多く頂きありがとうございます
これからもご愛顧、感想などをよろしくお願いします
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