ここでしか出来ないことを過ごすため、藤丸・マシュ・楊貴妃の3人は別々に過ごしていた。
3人個別の1幕です。
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それにしてもイドヤバかったですね。
辛い、けど先に進むための別れ……Fateって感じでした。
フィニス・カルデア
「じゃあいくよ、マスター」
「いつでも良いよ」
ビリーが手に持ったストップウォッチから始まりの合図が出るのを待ち、腰のホルスターに手を添える。
いつ出るか分からない合図を適度な緊張感と共に待っていると、不意にソレが出された。
抜いた拳銃を出された標的に向かって撃つ、撃つ、撃つ、しっかりと構えたまま常に次の標的を探して撃つ。
そして残弾が不安になったタイミングでマグチェンジして再び発砲、拳銃が終わったら今度はアサルトライフルに持ち替えて指切りの短連射を標的に浴びせていく。
「はい、終了」
最後の標的を撃ち終えた俺にビリーがそう言って時間を測り終える。
銃声で多少聞こえづらくなっていたのを考えてか、耳元で大声を出されたのに顔を顰めるが彼に悪気があった訳ではない。
「久々だから遅いでしょ」
使った銃から弾を抜き、ばら撒いた薬莢を片付けながらそう言った俺に見せられたタイムはやっぱりベストより遅い。
「現代の日本じゃ撃てないから仕方ない、それに狙いは正確だった」
落胆する俺に背後から声を掛けたのは3代目・雑賀孫一こと蛍。
「蛍も来てたんだ、カッコ悪いところを見られちゃったかな」
とはいえ遅くなったのは事実であり、そこを自分より年下にも見える彼女に仕方がないとフォローされるのは少しヘコむ。
「格好悪くなんてないよ、それに遅いと言ってもベストとの比較だから平均より十分早い。あと、マスターが強くなり過ぎると私が無駄飯食いになっちゃう」
「俺としては皆が美味しい無駄飯を食べて、のんびり出来るくらいが丁度いいなぁ」
人理の危機を救うなんてことはなく、たまに数日で解決出来るような極小特異点を解決して微小特異点も年に数度、関わる事件なんてそのくらいで良い。
とはいえ時計塔から来たマスターがカルデアに馴染むまでは暫く忙しいだろうし、当分ののんびりは人理漂白比でとなるだろう。
「とりあえず休憩しようよ。マスターそうだけど、先に来てたマゴイチも結構撃ったんでしょ?」
「だね、弾の記録もつけないと」
「お言葉に甘えて、そうさせもらう」
余談だが、一応シューティングレンジは一般職員も利用可能だ(弾は天引き、銃はNFFかヤヤウキカンパニーまで)。
暴発や管理不行届を避ける為に弾は管理されているので、今やっているように余った弾と空薬莢を揃えて返すのが一応のルールでもある。
「でもマスターもマメだよね、たまに現物使うけどやったことないや。はい、コーヒー」
「私は紙薬莢だから数えようがない。……砂糖とミルク取ってくるね」
「いってらっしゃ~い。サーヴァントの皆は自前で弾を用意出来るからその辺り緩いよね」
銃も弾もサーヴァントなら魔力で編むことで用意でき、撃ってしまえば弾痕しか残らない。
ちょっとした揉め事での発砲は人理修復中には加減したものとはいえたまにあったな。
「人間が増えたから仕方がないけどさ、魔術の方が危ないよね」
「それはアレ、人間とか外の都合ってことで」
自分も正直そう思うけど、魔術に無関係な表向きの天文台としてはそうも行かないのだろう、たまに来る本物の一般人な査察官とかもいるし。
「今日は此処迄にしておきましょうか、楊貴妃」
「謝謝呂尚先生。疲れましたぁ、生前の記憶があるとはいえキャスター霊基じゃない私に道術はやっぱり難易度高過ぎますね」
無数の札や八卦盤、香炉や法鈴、竹簡の束がならぶ机の上に頭を乗せても、眼に入るそれらに今日学んだ内容が想起されて頭が休まらない。
眠るつもりはないけれど、少し目を瞑って情報を遮断しないとキツイですね。
「こら! 何を寝ようとしとるのじゃ
「あイタっ!? 寝てません、寝てませんよ
けれども、その休息は瞼を閉じた刹那にぺちりと感じた微かな、それでいて鋭い痛みが手の甲に走ってすぐに止める羽目になりました。
仕方が無いので叩かれた部分を擦りながら上体を起こしましたけど、冤罪ですよ。
「嘘を言うでないわ、だらしない顔で机の上に寝そべって目を閉じておったじゃろう」
「それはそうですけど寝てません、ちょっと目を閉じて休憩していただけです」
「まぁまぁ、講座も終わっていることですから許してあげてください武則天。勉強中に起きていれば無問題ですとも」
普段よりも背の高い水着の道士霊基、それでも同じくらいの高さにある不夜姐姐の顔を見ながら反論すれば太公望様からも予想外の援護。
「じぃ……」
それを盾に無言抗議をさせていただきましょう。
「ぬぅ、それもそうじゃが怠惰はイカんのじゃ。休むならばそうと定めた場所で休む、その分別は大事であろう」
「机を寝台にするのは賢明とはいえませんからね、貴女の言うことも確かに正しいです」
「分かりました、ちゃんとお部屋でお休みしますね」
ワガママも此処迄にしておきましょうか。
あまりにも言い過ぎると本気で怒られてしまいますし、疲れているのは事実ですから。
「では楊貴妃、コチラが次回までの課題ですので最後までちゃんと読んでレポートを書くように。もちろん読んでいないことが分かる術を掛けていますから、サボりは駄目ですよ」
「竹簡ドサリですね、手伝ってもらうのはダメですか?」
「自力でお願いしますね」
さらっと言われた無慈悲な言葉に挫けそうになりましたが、侍女たちが課題や勉強道具を片付ける間にどうにか立て直して、もう今日はオフにしましょう。
マリー様、クレオパトラ様とのお茶や美容に関するガールズトーク、立香君をふんぐるいふんぐるいするフォーリナー会、少し残った夏休みの宿題、自分に責務として課した以外のことをしたいですね。
「ところで楊貴妃、1つ個人的に尋ねたいことがあるのですが」
「ほえ? 改まって何ですか?」
既に不夜姐姐は酷吏たちに片付けを任せて退出済み、2人きりになったタイミングで個人的なこととは穏やかではない気がしますね。
「カリオストロ伯爵が貴方のことを避けているのですが何故ですか?」
「あぁー、ソレですか」
ポンと手を叩いて納得したのは道満さんと似た、けれども何処か残念な空気の漂うフランスの伯爵。
モレーさんやマリー様と同じフランスの方なので多少の面識はありますが、避けられているのはアレですね。
「プリテンダーのカリオストロ様との戦い、全部で3度あったその全てで私がゴウっと焼き尽くしたからです」
1度目はゴッホちゃんとマリー・オルタ様に頂いた無数のバフに【三千寵愛在一身】と【星月夜】の行動阻害、2度目は容赦なくアルトリア・アヴァロンさんとLA様のArtsバフと対粛正防御と無敵で完封しての【
3度目はスカディ様方のQuickバフを受けた2人の巌窟王様がメインではありましたが【傾国の寵姫】で宝具を不発させ、私の宝具を種火にして御2人のを燃え上がらせましたね。
「幻炎も元より狂気の底にあって自我を保つ私たちフォーリナーと火傷無効のBBちゃん様には効きが極端に悪いですし、プリテンダー方のなかでも特にフォーリナーとの相性が悪い方ですよね」
私とBBちゃん様は身に帯びた神性、ゴッホちゃんは呪いの自縛、モレーさんはフランス全般への怨み、北斎さんは弱体耐性、邪神系フォーリナーで相性が良いのはアビーさんくらいでしょうか。
「あの方が露骨に避けるのは貴方と道満殿くらいなので不思議に思っていましたが、クラス相性もさることながらそのような理由があったとは。いやぁ、カルデア人間関係は面白いですね」
「人間関係といえば、実は私とオベロン様は互いに気を付けてるのは知っていましたか?」
「おや、マスター好き同士で特に因縁も無さそうなのに?」
実際に個人的な不和も無く、普通に話をしたりもしますが不意にかち合ったりしないように気を付けていたりします。
「そーこーせーでしたっけ? オベロン様が連れていたブランカ様が光に惹かれて私の侍女に飛び込んでしまうという事故がありまして……」
「文字通りに”飛んで火に入る夏の虫”だったと……」
「はい、燃えたりはしなかったのですが焦りまして、以降はちょっと互いに距離を取っています」
ブランカ様も気を付けてはいるようですが君子危うきに近寄らずと言いますし、致し方ありませんね。
「僕もツングースカでコヤンスカヤには無礼を働いたせいで未だに弄られますし、妲己と玉藻の前殿のアレコレとかタマモナインの皆様とか、カルデアの人間関係は結構複雑ですよね」
「それも全て立香君に惹かれた自業自得、なんですけどね」
「確かに、違いありません」
私の愛しい人は善も悪も、人も神も魔も、そして私のようなツギハギでも、在るがままを受け入れた上で自分を曲げない人。
そんな人に惹かれて、思わず現界してしまうので仕方がないのですけどね。
古今東西様々な紙やインクの少し湿った、けれども決して不快ではない書物の匂いに香ばしい苦味が不意に混ざります。
ページを捲る手を止めて視線を本から上げるとテーブルの上にはカップに入ったコーヒーがあり、それを持ってきたであろう人が対面に座っていました。
「巌窟王さん、このコーヒーは頂いても?」
「構わん、そして改めて謝罪をせねば」
何のことかと戸惑っているわたしに、ポークパイハットを胸元に当て頭を下げた巌窟王さんは謝罪の訳を話してくれます。
「疑似東京、廃棄孔でのことは共犯者から聞いていよう。彼の地にて俺はお前の姿を与えた者を殺し、立香に復讐の熱と甘美を味合わせるための呼び水とした」
そのことは1度、巌窟王さんたち大半のアベンジャーとカルデアの間で座とのリンクが切れた時、何故そうなったのかを先輩から教えてもらう過程で聞かされました。
不可逆廃棄孔イド、先輩の内面世界に構築された特異点・疑似東京で復讐と訣別するに至ったオーディール・コールの一幕。
「真白キリエさん、先輩の幼馴染で後輩として配役された方のことですね」
「そうだ。立香に最も親しく、奪われた時に最も憤り絶望する者、その姿にお前を使ったことを謝罪しよう」
「……」
揺れるコーヒー水面に映るわたしの顔、それとまったく同じ顔の見知らぬ人が目の前に居る人に殺された。
その悲劇・惨劇をより一層悲惨なモノとする為だけに、先輩を傷付ける為の道具としてわたしは容姿を利用され、与えられた人は殺されたのです。
「1つ質問があります。キリエさんはわたしの姿でなければ、巌窟王さんに殺されずに済んだのでしょうか?」
既に過ぎたことではありますが、先輩の中で幼馴染の後輩として生きていた人に他の結末は無かったのか。
その問いに対して巌窟王さんはゆっくりと、だけどハッキリと首を横に振りました。
「仮に異なる姿と名であったとしても、あの立ち位置に居た時点で結末は決まっていた。立香の為の贄として俺に殺される者であり、最も効果的であれば他の者の姿となっただけだ」
「最も、効果的な姿……」
わたしの姿が先輩の中では最も奪われたくない人の姿だったことに感慨を覚えると同時に、他の人にもなり得たことに何か引っ掛かりを感じて黙考する。
しばらくの後、その引っ掛かりは揺れるコーヒーに一瞬、後ろを通り過ぎた紫式部さんが映ったことで解決しました。
「巌窟王さん、わたしは謝罪を受け入れることができません。そもそも、わたしにはその資格が無いように思えるのです」
「そうか」
「はい。先輩を傷付ける為にわたしの姿を使ったのではなく、先輩を傷付けるモノがわたしの姿となったのなら、ソレは不幸な偶然です」
仮にキリエさんが紫式部さんの容姿で異なる名前だったとしても先輩を傷付ける為の立ち位置に居たことに変わりは無く、巌窟王さんは殺めていた。
ならば悪であるのはキリエさんが殺されたことで容姿を使われたことに善悪はなく、わたしには許す・許さないを決める権利自体がない。
「クハ、クハハハハッ、不幸な偶然と我が共犯者が最愛の写し身を害されたのを断じるとはな。なるほど確かにそうだ、関係故に殺されたのであればお前に謝ること自体が滑稽であったな」
悩んだ末に違うと思った理由を言っただけなので滑稽だとは思いませんが、巌窟王さんにとっては予想外の答えだったようでかぶりを振ってしばらく沈黙し、目を細めながら口を開きました。
「全く我が共犯者といいお前といい、恩讐に焼かれた俺には眩しすぎるほどの善性だ」
「わたしを眩しいと感じるならば先輩のおかげです、わたしの輝きは先輩に頂いたものですから。コーヒー、いただきますね」
口に運んだコーヒーは少し冷めていましたが、チョコレートのような甘い香ばしさがホッと一息つかせてくれました。
メイン3人がバラバラに過ごす時はどうなのか、そう考えながら書いた一幕でした。
だけど! なんで! 楊貴妃どころかブラダマンテのPU来なかったんですか!? CBCでもメインの女性キャラ(あとついでにエジソン)のPUくらい許してよ。
いつも読んでくださる方ありがとうございます、楊貴妃PU無かった嘆きの作者です。
代わりにマリーオルタとモンテ・クリスト伯頑張って引きました。
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