フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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帰り支度の準備中、急な招集がシミュレーションへ藤丸たちを呼び出す。
はて何事かといえば時計塔のマスターの訓練相手、他に相手以外ないならと始まった訓練の行き先とは?

お読みいただいてありがとうございます、評価やコメントはいつでもお待ちしています。


第45話 藤丸、追いかける

《業務連絡 マスター藤丸立香はサーヴァント楊貴妃、職員マシュ・キリエライトと共にシミュレーションルームまでお願いします》

カルデアの夏季研修もそろそろ終わりということで、日本での魔術修練について師匠・先生方から指導を受けていた俺たちに不意の呼び出し。

何か忘れているのかと今日のスケジュールを脳内で反芻しても思い当たる節は無く、念の為マシュに確認しても結果は同じ。

「本日の先輩の予定は、午前中に素材回収を兼ねた特異点の残滓のエネミー討伐とコヤンスカヤさん・シバの女王さんと経営学の座学、午後はこの魔術指導です。空いた時間も契霊血晶の作成と先輩の内面世界構築を行うので、シミュレータを使う予定はありませんね」

「ありがとう、マシュ。俺のスケジュール管理、完璧だね」

「い、いえっ、先輩の専属ファースト・サーヴァントとして当然のことです!!」

ちょっぴりドヤ顔で嬉しそうなマシュが可愛いくてつい頬が緩むが、立ち上がったユゥユゥがもう片方の腕を引っ張った。

「それも良いですけれど、早くシミュレーションルームに行きませんか? 2回呼ばれるとさすがに気まずいと思います」

そのまま俺を立たせたユゥユゥに引かれるまま工房を出た背後で、マシュが慌てた様子で片付けと謝罪をするのが聞こえる。

「玉環〜?」

角を曲がったところで足を止め、少し低い声で彼女の名前を呼ぶ。

少しばかり込めた怒りと戒めの色に彼女が気付かぬ訳もなく、申し訳無さそうに俺の方へと振り向いた。

「うぅ、だって」

「だってもかっても無し、不満があるならちゃんと言わないと駄目だよ」

2人の恋人を同等に扱うと決めて付き合う以上、こういう身勝手を許すのにも限度がある。

今みたいに一方がもう一方に負担を押し付けるようなことは特に。

「……はい」

「誰に言うの?」

「マシュさんに、褒められたことが羨ましくて先に立香君を連れ出しました、と」

「分かってるなら問題なし、マシュが来るまで待ってようか」

生前が貴妃という立場故に奔放な態度をとりがちなユゥユゥで俺もそこが好きだし、彼女が俺とマシュのことを引っ張って行くことも多々あるので、こういう時でなければ問題は無い。

追いついて来たマシュにユゥユゥが謝って、俺も流れに任せて2人に気まずい思いをさせたのを謝ったら、コレで決着。

「うぅ、やっぱり後宮時代の感覚が抜けませんね。私も1番、マシュさんも1番、互いに引き立てあって天子様にお仕えする身と思わないと」

「少しずつ慣れていけば良いと思いますので、あまり気に病まないでください。生前の身分を考えれば、先程の行動はユゥユゥさんにとって当然のものでしょうし」

マシュがフォローしてるけどユゥユゥは引きずり中、俺もフォローした方が良いかな。

「さっきは強く言い過ぎたかもだけど、切っ掛けがあれば自分で気付けたんだから大丈夫だよ」

「はい、立香君のお手を煩わせないよう、今度は自力で気付いてみせます!」

「うん、その意気だ」

少しユゥユゥの気持ちが上向いて来たところでシミュレーションルームに到着、普段どおり中に入った俺たちを出迎えたのは不満顔でマイクを掴んだオルガマリー所長だった。

「失礼しました?」

「別にいいわよ、2度めの呼び出し前に来たのだから遅刻だなんだ言うつもりもありません」

セーフ、所長直々の呼び出しはなんとか回避。

互いに一息ついて落ち着いたところで他に誰が居るのか見回せば、ジキルとモードレッドの姿が。

視線が合うと手を振って来たのでそれに応えると、此処にいない人の声がスピーカーから聞こえた。

《ロード・アニムスフィア、リツカ・フジマルはまだ来ないのですか?》

……誰だっけ?

聞き覚えはあるのだが名前が思い出せない、確か時計台からマクラーレンさんと一緒に来たマスターのはず。

「ちょうど今来たところよ。それとヴィンセント、ココは時計塔ではなくカルデアです。私のことはロードではなく所長と呼びなさい」

《これは失礼しました、オルガマリー所長》

嫌味だなぁ、なんて柄にもない悪感情を抱いてしまうような喋り方だったけど名前を聞いて顔を思い出す。

フランケンシュタインのアダムを召喚したは良いけど暴走、その後は治療兼謹慎で医務室にいたらしいけど出て来たんだ。

「はぁ、面倒くさい男ね。ちょっと捻り潰して力関係分からせてやろうかしら」

「オルガマリー所長、Uさんのようなことをおっしゃらないで下さい」

マシュの言葉に所長以外の全員がウンウンと首を縦に振る。

所長もUも構成要素は同じで環境が違うだけだから発想するのは仕方ないけれど、カルデア内で暴れないで下さい。

所長の魔術も膂力もカルデアのバックアップで結構ヤバいんですから。

「やっぱり色々伝染ってるというか、基が同じだから表に出てきちゃうのよ。それで藤丸、準備は良い? あの思い上がった死霊術師(ネクロマンサー)にカルデアのマスターの力を見せてやりなさい!」

「いいえ全く! というかなんで、呼ばれたかもさっぱりなので事情説明を求めます」

「ざっくりでも良いかしら?」

「ざっくりでも良いですから」

というわけで、ふわんふわんぐだぐだっと説明。

 

 

 

 

 

謹慎明けのヴィンセントさんが現地訓練としてレイシフトと素材収集を希望したが経験不足、特にサーヴァントの連携やフィールドワークのそれを指摘されて却下。

ならば自分が十分にこなせることをカルデアのマスター相手に示すと意気軒昂に告げ、ダヴィンチちゃんや所長が無理だけどやってみれば、ということで今に至るという。

うん、ナニコレ。

「なんでそれを俺にやらせるんですか……。ぐっちゃん先輩ならともかく、カドックとか居るじゃないですかー」

ぐっちゃん先輩だと『面倒くさい』の一言で断りそうだけど、カドックならやってくれそうと期待を込めて言ったのだが、帰ってきたのは不機嫌な声。

「仕方ないでしょ、芥には案の定断られて、カドックに『カルデアのマスターなら藤丸のことだろ』なんて言われたんだし」

「狡い断り方するなぁ、カドック」

そう言われては断りづらい、腹を括ってやるとしようか。

「マシュ、ユゥユゥ、行くよ」

「はい、いつでも行けます」

「立香君の仰せのままに」

礼装はOCを使わない想定で極地用制服呼び出し、霊衣を纏った2人を連れてシミュレータ内に入る。

中には先客のヴィンセントが自身のサーヴァントであるアベンジャー、フランケンシュタインのアダムに加えてストッパー役であるフランと共にいた。

フランがいたからジキルとモードレッドも、おそらくは時計塔のマスターが自分たちの友人になにかいしないか心配で、この部屋にいたのだろう。

《対象者の入室を確認、これよりフィールド訓練を開始します》

流れるアナウンスによれば想定は次の通り。

観測された微小特異点にレイシフトし詳細を調査、必要ならば敵性存在を撃破しつつ特異点の核を確保と、いつもと同じ内容。

ただし今回は別勢力、俺とヴィンセントが互いに敵対しているためレイシフトからの帰還まで核を護衛し続ける必要がある。

「調査・戦闘・確保・逃走・護衛と詰め込み過ぎな気もしますけど、実力を計るためでしょう」

「面倒な現地の方と交渉事をしなくて良いのは楽かもですね」

マシュとユゥユゥの言葉通りやることは多いが面倒事はない、フィールドワークの集大成的なものだ。

他にも俺はサーヴァントの簡易召喚禁止が付けられてシミュレーションスタート、軽いレイシフトの浮遊感を感じて到着したのは草原と森林の境目のような場所。

先ずは全景を把握するためマシュに解析してもらう形で俺は気配察知、ユゥユゥは侍女で情報収集していく。

「とりあえず近くに大きな魔力は無し、エネミーも居ないし此処から調査範囲を広げていこうか」

「侍女たちからも同じく異常なしとのことです、ひとまず安心して良いですよ」

その後はマシュが展開した広域探索魔術で魔力の高い場所を探りつつ遭遇したエネミーを撃破、特異点の核らしき聖杯の雫を確保するところまでは問題なくクリア。

ここまで動きのないヴィンセントに警戒しつつ、開けた場所に出たところで強襲を受けた。

「奪い取れ、アベンジャー! バーサーカーはシールダーを抑え込め!」

「っとぉ!」

「先輩!!」

「立香君!?」

ある意味で予想通りの襲撃、地面から伸びた骨に足を止められた俺から聖杯の雫を強奪しようとフランケンシュタインのアダムが接近しマシュはフランに足止めされる。

獣角モードを使うわけにもいかないので雫を放り投げてアヴェンジャーの気が逸れたのを利用して回避、雫はヴィンセントさんが確保したけどその隙にユゥユゥが俺のカバーに入ってアダムを牽制し、俺も俺で足元の骨に(ケイナズ)の火を放って拘束を破壊する。

「逃げるぞアベンジャー、バーサーカー」

「命令ならば従おう」

「うぅ」

アダムとフランはマスターの命に反することなく、フランだけはちょっと申し訳なさそうな気配を見せてから逃げ出し、時間稼ぎに撒かれた数体のスケルトンを相手にしている間に奥の森へと姿を消した。

「立香君、雫を取り返したり足止めしなくてよかったの?」

「うん、ここでダラダラ戦ったり俺がダウンしての敗北は避けたかったから。それに雫にはユゥユゥの侍女を付けてもらったから場所も分かるし」

「途中での強奪までは先輩の想定通りですが、此処からの奪還プランは?」

マシュの言う通りこの展開は織り込み済み、先に俺たちが確保したなら相手は奪いに来るので時間があれば渡す、無ければ持ったまま逃げるのが今回の作戦。

フランもアダムもサーヴァントの中では脚が速い方ではないし、俺を抱えたマシュとユゥユゥでも制限時間までに追いつくのは余裕。

なので奪還プランはこう。

「帰還時間ギリギリまでちょっかいを出し続けて疲弊したところを大火力で一斉撃破、そしたらマシュの宝具で時間まで籠城。普段は追いかけられる側だけど、今回は追いかける側で頑張ってみようか」

この勝負のキモは如何に雫を帰還開始時点で手中にしているか、持っている側はそれまで守り切らなきゃいけないし、持っていない側はそれまでに奪い取る必要がある。

この場合は碌な拠点を持たずに守る方が不利というのが俺の考え、なので時間はギリギリまで状況を整えるのに使って持っている時間を最小限にしておく。

「という訳で嫌がらせの時間。マシュは俺と遊撃でちょっかい掛けたらすぐ逃げて、ユゥユゥは侍女たちで緩く包囲しながら全方位から音や火を飛ばして休ませないようにしよう」

「「うわぁ……」」

2人が引くけど仕方がない、撤退戦や防衛戦で効くのはこういうエゲツナイ戦い方だって軍師・武将系(みんな)に教わったので実践してるだけだもん。

 

 




気付けば1か月振りの更新となっていました……
今回の藤丸君は少し意地悪モード、普段追いかけられてばかりなので追い掛け回す側です。
大暴れ、とはいきませんが仕込まれた手練手管が次話炸裂するかも?


始まりましたまほよコラボ、下手すると第5魔法の情報はまほよ本編よりも多いので葉とか思っています。
活動報告ではありませんが、これとは別の小説もpixivに投稿しております。
要望あればこちらにも投稿しますので、コメントなどでお教えください。

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