フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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シミュレーションで時計塔のマスターを追いかける藤丸たち。
少しずつ時計塔のマスターは消耗していって……。
そして訓練後の癒しの時間もまた重要、ゆったりふわりとくつろごう。


しばらくぶりの更新となりました
みなさんからコメントやスタンプいただけると嬉しいので、是非ともよろしくお願いします。
感想知りたいです。


第46話 藤丸、追いつめる

 クソっ、クソっ、何だっていうんだ。

 俺はアイツから特異点の核を奪った、命惜しさにビビって投げ捨てたのを拾ったら、あとは時間まで逃げるだけのハズだった。

 なのに、何故俺は追い詰められているんだ!? 

 

「マスターよ、どうするのだ」

「うるさい!」

 

 既にバーサーカーは脱落判定で強制離脱、アベンジャーは休まず降る遠距離からの炎弾と、脚を止めれば襲ってくるシールダーにじわじわ削られる。

 

「!?」

「おっと、今のは惜しかった」

「Tooth!」

「ガンド!」

 

 しかもそうやってアヴェンジャーがすぐに対応できない状態になれば、魔術師気取りのマスターが武器で奇襲してくる。

 俺が魔術で反撃すれば一工程(シングルアクション)でそれを防いですぐ逃げて、出した追手はサーヴァントが叩くのかまったく手応えがないまま弾切れだ。

 

「離脱まであと、5分か……」

 

 向こうは未だ追撃の手を緩めず、こちらを捕捉してまた炎弾が降ると行く手を遮るよう森が燃え上がる。

 それを避け、追手から逃げる俺たちは崖っぷちに追い込まれてしまった。

 

「ようやく追い詰めたよ」

 

 背後の崖が飛び降りて無事でない高さであることを確認した俺に、カルデアのマスターの声がかかる。

 油断なくシールダーを前に、フォーリナーを側に置いているが姿は全員薄汚れ、サーヴァントの霊衣には傷もある。

 少なくともバーサーカーは無駄に散ったわけではなさそうだが、目立った手傷を与えたわけでもないか。

 

「まるでどこかに追い詰めたかったみたいだな」

「いつまでも追いかけっこ、って訳にも行かないからね。何処でもいいから逃げられない場所には行って欲しかった」

 

 右手に強化した木の棒、左手には小さいが十分な魔力を保持したアイツは自分も動けるようにしつつサーヴァントに指示を出した。

 

「マシュ、楊貴妃!」

「アヴェンジャー!」

 

 最初に動いたシールダーはアヴェンジャーに吶喊して迎え撃った一撃を大盾で防御、そのままインファイトに持ち込んでも器用に盾を操って不自由さを感じさせない。

 

「星辰の導きよ」

「下がれ!」

「ぬぅ……」

 

 その上にフォーリナーの炎弾が降り注ぎ、アヴェンジャーの身を焼こうとするのをどうにか指示してやり過ごしたのも束の間、今度は俺に向かって木の棒が突き出された。

 

「!?」

「甘い!」

 

 当然、俺に攻撃してきたアイツは更に連続して突き、薙ぎ払いを放ち、躱してた俺が礼装の短剣を抜くと警戒して距離をとった。

 

「お前、魔術師が使い魔戦わせてる時に突撃とかバカなのか!?」

「使い魔が戦ってるならマスター潰せば勝ちだって俺は習ったけど」

 

 


 

 

 〜シミュレーター管制室〜

「流石主殿です、源氏が練れていますね」

「いや、あの突撃思考はケルトだろ」

「魔術師相手に槍一本で挑むとは、我が弟子は中々に勇敢なものだね」

「流石に前は……。いや、人間相手なら魔術師でも突っ込んでたし、たまに英霊相手でもやってたな」

「オケアノスでエウリュアレを抱えてヘラクレスから逃げた、なんて記録で見るまでジョークかと思っていたよ」

 

 ワイワイガヤガヤとシミュレーション中の藤丸を見て好き勝手言い合うのは順に牛若丸、キャスターのクー・フーリン、司馬懿ことライネス、モードレッド、ジキル。

 だが、今の戦い方を見て批判する声は1つも無い。

 藤丸の師匠筋は武術ならスカサハと李書文、戦術戦略はエルメロイⅡ世とヘクトール、魔術は名だたる英霊達である。

 その教育と孤立無援も当たり前というこれまでの経験、特に聖杯戦線形式が本人も戦力という前提で作戦を組むのを当たり前としていた。

 そして、それで以て戦い抜いてきた英霊達は贔屓目があっても今の戦いを良いものと見ている。

 

「ここまでの運び方は悪くないとも。帰還までの10分、長くはないが逃げ続けるには厳しい時間だ」

「むしろ1番の賭けは洞窟出たところだったな、アソコでガチンコ勝負になったら分が悪かった」

 

 ライネスとクー・フーリンの読みは正しいのは現状が示しており、追い詰められ疲弊しながらもヴィンセントとアダムは藤丸、マシュと楊貴妃に不利であっても圧倒されてはいない。

 コレが万全な状態、それこそ洞窟を出たところで聖杯の雫を無視してガチンコとなればクラス相性を考慮しても、ヴィンセントに幾ばか有利が付いた。

 

「フランは当然としてアダムだったか? アイツもアヴェンジャーで火力は十分、マシュも楊貴妃も強いけど基本は受けだからな」

「アタッカーを簡易召喚出来れば別だけど今回は禁止、今回のマスターの弱みはそこだからね」

 

 またモードレッドとジキルの言う通り、今回藤丸は攻め手を欠いている。

 だからこそ聖杯の雫を1度捨ててまで各個撃破を狙える追撃戦を挑み、遠距離戦・機動力に欠けるヴィンセントたちに嫌がらせのような襲撃を掛け続けた。

 結果、ほとんど狙い通りの状況で藤丸は決戦に挑んでいる。

 

「そこです主殿! あぁ、惜しい……」

「やってしまいなさい藤丸、私のスタッフの強さを見せつけるのよ!」

 

 戦況を見守る背後で、藤丸が追撃で疲労したヴィンセントを追い詰める姿に牛若丸とオルガマリーが喝采を上げる。

 そして。

 

『ガンド! ついでに【幻想強化】で楊貴妃も一気に決めて!』

『まかせて、全力で奏でるよ! 勅令、天帝の貴妃・楊太真の名に於いて発す。紫微宮は北落師門の御門を開き、羽林の軍勢をや此処に招来せん! いざや舞い、護りて踊り、打ち掛かりては琴弾きましょう! 【霓裳羽衣・比翼連理】!!』

 

 藤丸が零距離でガンドを撃ち込んで昏倒させ聖杯の雫を奪還、更に楊貴妃が支援を受けて宝具を放ったことでアダムもすぐには動けない。

 この状況でも油断することなく、藤丸は逃走のため崖から飛び降りた。

 

『楊貴妃、着地任せたよ』

『ハオハオ〜』

『先輩をお願いします、楊貴妃さん』

 

 逃亡先に選ばなかったなら追撃することもすぐには出来ない、そんな藤丸の読みは的中して第3再臨の楊貴妃に空中で優雅に抱かれ、崖上のヴィンセントを見上げながら一足先に帰還の時間を迎えた。

 

 


 

 

 ユゥユゥに抱かれたまま、先に帰還した俺はシミュレーション室の殺風景な空間に降り立った。

 

「ユゥユゥ、もう降ろして良いよ」

 

 無事に着地したのでもう大丈夫だとの意を込めて言うと、少しばかり彼女の顔が曇る。

 

「天子様は玉環に抱かれるのがお嫌いですか?」

「そうじゃないけど、そういうのはマイルームでゆっくりと、ね」

「もう、約束ですからね」

 

 午前中はマシュと一緒だったし、少しばかりユゥユゥに独占させても問題ないだろう。

 チラとマシュに伺うよう目線を向けると柔らかく微笑みながら首肯してくれたので、感謝も込めて少し頭を下げて楊貴妃の抱擁から抜ける。

 

『藤丸、イチャイチャしてないで終わったら報告に戻りなさい』

「あっ、はい」

 

 長引かせなかったことで多少はお目溢しをもらったらしく、終わるまで待ってくれた所長に応答して管制室に戻った。

 

「無事にシミュレーション完了しました、所長」

「良くやったわ藤丸、これであの死霊術師も暫くは大人しくしているでしょう」

 

 少し嬉しそうな所長に苦笑いで応じつつ、いつの間にか集まっていた皆に気付くとモーさんが脱落したフランを連れて来た。

 

「マスター、フランになんか言うことあんだろ」

「……?」

 

 何のことか分かっていないフランを俺に押し付けるモーさんが言わんとすることは分かる。

 先程のシミュレーションでフランを結構本気で攻撃しており、そのことを言っているのだろう。

 

「さっきはごめんね、フラン。手抜きはできないけど、やり過ぎじゃなかった?」

「ん」

 

 首を横に振ったフランだけど不満があったのを思い出したのか、額飾りの角をごりごり擦り付けてきてチョット痛い。

 宥めるように頭を撫でればすぐに機嫌は直ったのだが、自分と背が同じくらいの彼女に体重を預けられるのはチョットきつい。

 

「フラ〜ン、そろそろ離れてよぉ」

「うぅ……」

「ありがとう、ごめんね」

 

 残念そうな彼女をモーさんに引き渡し、再び所長にマシュ、ユゥユゥと共に向き合う。

 

「3人共ご苦労さまでした。カルデアのマスターとサーヴァントの実力、敵が居るフィールドワークの厳しさをヴィンセントも理解したことでしょう」

 

 所長らしく講評をする所長へ、ヴィンセントが戻ってこないうちにマシュが質問を1つ。

 

「オルガマリー所長、本音はどうですか?」

「見たか時計塔のマスター、コレがカルデアのマスター・藤丸立香と専属サーヴァントの実力よ!」

「はい、コレが先輩の実力です!」

 

 ドヤ顔の似合う所長と嬉しそうなマシュが見れるのは嬉しいけど、堂々褒められるのは少し恥ずかしい。

「所長もマシュもほどほどで……」

「んんっ、はしゃぎ過ぎたわね。藤丸たちは後日この訓練のレポートを出すこと、ヴィンセントに敗因解析と今後の訓練について話をするから、貴方たちは出ていって良いわよ」

 

 羞恥に顔を若干染めながら発した抗議は受理させて、所長から退室を許可された俺たちはそそくさとマイルームに戻った。

 

 

「では天子様、お約束どおりに抱かせて頂きますね」

「はーい」

 

 というわけで俺は第3再臨ユゥユゥに空中で抱かれる。

 ふつう逆では、と思わなくもないが彼女の要望なのでフワフワ浮かぶまま抱かれるのを堪能しよう。

 足が地につかない不安はあるものの不安定さはなく、ユゥユゥに身を任せ方が良さそうだ。

 

「重くない?」

「ううん、ぜんぜん問題ないよ。それに立香君が私に身体を預けてくれてるから、とっても楽に浮かべます」

 

 ただ、そうするとどうしてもユゥユゥと身体を密着させる必要があるので、生身のような衣服のような不思議な四肢を彼女自身の身体と共に感じることになる。

 

「ユゥユゥ、ちょっと失礼」

「ひゃう、くすぐったいですよ〜」

「おぉ、こうやって触るとますます不思議な感じ。ツヤツヤ・スベスベで肌と違う心地よさ」

 

 さすがに脚ではなく腕を見た目の境界を指でなぞるとくすぐったそうな声が上がるけど、拒否はされないのでそのまま続けさせてもらう。

 ヒレのような円環は消えてるけど、ロンググローブのような部分は少しヒンヤリとしたゴムと肌の中間のような感触だ。

 

「そんなに気になりますか?」

「なんだかねー、フォーリナーの皆の霊衣って動くし生っぽいから」

「実は半分生身です」

 

 衝撃発言だな……。

 

「本当?」

「他のフォーリナーの皆さまもですけど、邪神寄りの霊基で霊衣を編む際に半分くらいは肉体を編むのと同じくらいの感覚なんです。だからなんとなく生っぽいと言いますか、ボンヤリ感覚がありますね」

「そうとは知らず申し訳ないことをしました」

 

 半分とはいえ生身のようなものを不躾にも触りまくってしまった。

 

「いえいえ、立香君が触ってくれるのはユゥユゥ的にはオッケーです」

「先輩? そういうご趣味でしたら私の霊衣のインナーも……」

 

 おっと、眼下のベッドに居るマシュが変な勘違いをしそうだから止めないと。

 

「でしたらマシュさん、ぜひインナー姿で御一緒に」

「ユゥユゥも余計なこと言わないの! あとマシュ、俺にそういう趣味というかいやらしい目的があったわけじゃなくて、気になっただけだけら!」

「ほぅ、安心しました」

 

 興味深そうに触った俺もだけど煽ったユゥユゥもまさかのマシュの食付きに反省しつつ、まだ暫くは宙でユゥユゥに抱かれるのだった。




・藤丸立香
 聖杯の雫に付けた楊貴妃の侍女や気配察知で居場所を把握しつつ、楊貴妃の炎弾をバラ撒いて進路妨害や休息のいとまを与えなかったり、マシュと一緒に近接で奇襲をかけて追い詰めてたカルデアのマスター。
 実際、ガチンコ勝負は分が悪かった。
 その後は楊貴妃の身体を触りつつふわふわたいむ。

・マシュ
 オルテナウスのローラーダッシュで機動戦、森の中では慣れもあって神出鬼没気味に攪乱。
 シミュレーション中はだいたい藤丸を背負ったり抱えたりしていたので密着度高め、求められるならインナー1枚でもOKとか暴走しがち。

・楊貴妃
 結構森を燃やしたり、最後はマスターをキャッチしたりしていた寵姫。
 もっと太腿とか二の腕の布と肌の隙間に指を入れるとかされてもよかったのに、控えめだったのは優しいなと思った。



まほよコラボからのサマーアドベンチャー、素材がおいしいイベントが続きますね。
そしてリリム・ハーロット、神シナリオなのでぜひ再び味わいたいです。


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