フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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夏季研修も終わり南極・カルデアを発った藤丸たちは経由地のオーストラリアに到着。
特異点も含めて初の国で束の間の観光を楽しむのだった。

暑いですが体調を崩さずに頑張りましょう、’24年水着イベントはすぐそこ。


第49話 藤丸、寄り道にて観光

 カルデアでの夏季研修も無事完了、ささやかな送別会も終えた藤丸たちはオーストラリアに居た。

 

「着いたー!」

「ちゃんとした形では初めてのオーストラリアだね」

「ハワトリアはサバフェス特異点でしたし、ワンジナさんのときは彼女のなかでしたからね」

 

 南極を発って6時間、メルボルンに降り立った俺とユゥユゥ、マシュは機上で固まった身体を解しながら空港の外へ出た。

 季節は日本と真逆の冬、しかも南極から吹く風で余計に低い体感気温を凌ぐため俺たちはカルデア縫製部特製の冬服に身を包み、日本行きの便が出るまで観光に出掛ける。

 という訳で最初に向かうのはメルボルン動物園。

 空港からタクシーで30分というアクセスの良さに助けられ、あっという間に到着した俺達は園内を一路 Australia Bush を目指す。

 

「いきなり居た」

 

 そして目当てのコアラは入ってすぐのユーカリの枝に跨って、冬毛なのか本当に大きなぬいぐるみのような見た目で眠っていた。

 

「見てください先輩、とてもモフモフで生きたぬいぐるみのようで可愛いです」

「そうだねマシュ、本物コアラはワンジナのよりモフモフで可愛い」

 

 マシュ共々驚かせないように声を潜めているがあの可愛さはヤバい、ユゥユゥに至ってはあまりの可愛さに口を抑えたまま顔を輝かせている。

 時々ピクリと動かす大きな耳や身じろぎをする丸い体の可愛さに魅了されていると、ユゥユゥが俺の身体を突いて自分のスマホを差し出してきた。

 

「立香くん、私とコアラのツーショットをお願いします」

「了解、可愛くても柵の中はダメだからね」

「さすがにそれくらいは守りますよぉ」

 

 それでも物音を立てぬよう、僅かに浮遊したユゥユゥは出来るだけ近くに寄って手すりに腰

 掛けた。

 現代風だがオリエントな雰囲気の服を身に纏った彼女がそうすればユーカリと砂礫の土地も不思議と中華の雰囲気を漂わせ、そんな彼女とコアラのツーショットを何枚か撮る。

 次いで自分もと撮ったマシュにはコアラ共々どこかのんびりとした可愛らしさを感じ、当然俺もということで2人に撮られて、最終的には3人と1匹での写真をスタッフさんに撮ってもらった。

 

「Thank you」

「No problem, enjoy your stay」

 

 スタッフさんに別れを告げて向かうは次のエリア、コアラのエリアと逆に開けた芝生の上には少し大きなネズミのような動物たちが居た。

 

「いきなり近付いてこんなに触らせてくれるなんて、もうコレはお持ち帰りしたい」

 

 コアラはNGだがこの子たち、気持ちよさそうに撫でられているクオッカはお触りOK。

 なのでマシュもユゥユゥも寄って来た子を撫でたり身体を擦り付けられたり、コアラで出来なかったふれあいを満喫している。

 俺が顔を寄せても逃げるどころかシゲシゲと眺め返されて、脱力系癒やし動物の極致だ。

 

「クオッカは世界一幸福な動物とも呼ばれていますが、この顔を見ているとさもありなんですね。フォウさんの満腹顔に匹敵する幸せ顔かと」

「フォウ君だと新所長が代わりに不幸顔だけど、この子たちならそういうことは無いしね。だけど、マシュの幸せそうな顔の方が俺は好きかな」

 

 クオッカを撫でるマシュの幸せそうな顔を見ていると俺も幸せになり、何時でも見返せるように写真を1枚撮っておく。

 好きと言ったせいかマシュは顔を赤くして恥ずかしそうだが、それに構わず俺は彼女をジッと見つめる。

 

「先輩、ブリュンヒルデさんではありませんが、あまり見つめられると困ってしまいます」

「ならもっと困らせたいんだけど、ダメ?」

「困らせるのは、先輩でも駄目です」

 

 そう言われては仕方が無いので程々し、ユゥユゥのことを構うとしよう。

 隣で俺たちのやりとりを愉快そうに眺めていた彼女に視線を向けるとクオッカを顔の傍に抱きかかえ、自身の顔と横並びにして笑みを浮かべた。

 

「どうでしょうか?」

「うん、ユゥユゥの笑顔も好きだ」

「私も今みたいに笑っている立香くんの方が好きですよ。笑顔はとっておきの宝具ですから」

 

 こんな幸せで楽しそうな2人の恋人を見て俺も笑顔になって、それを見て2人は更に幸せになる。

 何を気にする事も無く、こうやって過ごせることが本当に嬉しい。

 

「2人共、手を繋いで良いかな?」

 

 だからこの時間が確かなモノであるという証が欲しくて、マシュとユゥユゥにささやかな我儘を言ってみる。

 今この時間を共有していることを直接身体で感じたいというその我儘は、あっさり叶えられた。

 

「はい、先輩」

「手だけではなく腕も組みましょう」

「ずるいですユゥユゥさん!」

 

 右にマシュで左にユゥユゥ、手だけで十分なのにユゥユゥが指を絡めて腕を組んだので、マシュも対抗して両手で握り締めながら身体を寄せる。

 しかも、マシュは無自覚に胸で腕を挟むようにしていたので俺の心拍が一気に上がった。

 

「あの、マシュさん、当たっています……」

 

 Bright Voyagerの厚着の上からでも分かるマシュの柔らかさと体温を感じ、胸の鼓動が沸き上がると顔が紅潮して敬語で喋ってしまう。

 俺に言われて気付いたマシュも同様で、一度下ろした視線をまた上げたときには顔を真っ赤にしていた。

 

「申し訳ありません、先輩! けっしてわざとでは無いのですが、より先輩にくっつきたい一心だったといいますか」

「別に嫌じゃないから謝らないで、というかむしろドキドキするというか、マシュが嫌じゃないか心配で」

 

 流石に他の人の目もある場所なので過度なスキンシップはよろしくないし、マシュ的にもずっと胸に触られているのは嫌ではないか不安になったのだが、顔を紅潮させたままのマシュは首を横に振った。

 

「恥ずかしくはありますが、嫌ではありません。わたしも先輩と同じように、ドキドキしています」

 

 マシュがそう言って俺の腕を抱く力を少しだけ強めれば普段よりも早い鼓動が伝わり、俺が頷くとそれを緩めて胸が当たらないように腕を組み直した。

 

「り〜つ〜か〜く〜ん〜」

「ユゥユゥ?」

 

 そんな様子を眼の前で見ていた楊貴妃は不満たっぷりの声で藤丸を呼び、応えて振り向いた途端に行動でそれを示した。

 

「えい」

「!?」

 

 意図せずとはいえマシュがやったならということで、楊貴妃も藤丸の腕を胸で挟むように抱き締めて感触を刻み付ける。

 それに藤丸とマシュが驚いている間に再び腕を組み、唖然とする2人を余所に何事もなかったように楊貴妃は微笑んでみせる。

 

「感想はあとで聞かせてね、立香くん♪」

 

 ただただ黙って頷く俺を見つめる笑顔は愛らしく、これが傾国スマイルかと思う一方で自分にだけそれが向けられたことに満足感を感じる。

 ある種の独占欲というか、恋人から想われることへの強欲さが満たされるからだろうか。

 

「では次なる動物を見に行くとまいりましょう、ウォンバットとかどうです?」

 

 楊貴妃はこれで満足かと言うかのように藤丸とマシュの手を牽き、次の動物を見に行こうと2人を引っ張って行くのだった。

 そうしてウォンバットにカンガルー、エミュー、カモノハシ、オーストラリアの動物たちを堪能した一行はカフェで休憩。

 

「沢山の動物を見ましたが、不思議な動物ばかりでしたね」

「袋がある動物も不思議だったけど、カモノハシは幻想種かと思っちゃいました」

 

 マシュとユゥユゥはレイシフト先でも見たことのないオーストラリアの動物たちに驚き、その姿や生態について楽しそうに語りあっている。

 藤丸もその様子を満足気に眺めつつ、自分の感想も述べる。

 

「俺も実物を見るのは初めてだから感動というか衝撃だったよ、でもウォンバットとクオッカは本当に可愛かった」

 

 あの可愛らしさと癒やしを日本に持ち帰るため、藤丸はギフトショップでぬいぐるみを買うつもりだ。

 

「思ったよりも、動物園を堪能してしまいましたね」

「初オーストラリアは8時間じゃ流石に無理があったか」

「ユゥユゥ、オーストラリアの温泉も行ってみたかったです」

 

 そして飛行機の出る2時間前、ぬいぐるみを【旅路の目録】(ブック・オブ・ジャーニー)に仕舞った俺たちは空港に戻って来た。

 飛行機は出発時刻の数時間前にはチェックインしなければならないのが辛いところ、温泉は無理でも市街地観光はしたかったがマシュの言う通り、動物園をタップリ楽しんだのでタクシーの車窓から眺めるに留まった。

 

「それにしてもメルボルン空港が2つあって、もう1つの方がアヴァロン空港なんて。タクシーで訊かれたときは驚いたよ」

「いきなり”Tullamarine or Avalon?”では無理もありませんって、マシュさんが咄嗟に”International”と答えてくださり助かりました」

「わたしもあの後調べたのですが、どうやら地名自体がアヴァロンらしいです」

 

 アヴァロンといえば星の内海にある妖精郷、それが常識になっている3人はサプライズとなった出来事を思い出しつつ、制限エリアの店を物色する。

 ギフトショップには如何にもオーストラリアといった物が並ぶが、その中の1つに藤丸は目を留めた。

 

「ブッシュ・タッカーの詰め合わせ……? へぇ、面白いな」

 

 オーストラリアで食用にする自生の動植物の加工品、その詰め合わせだなんて珍しい。

 カンガルーやエミューのジャーキー、ナッツ類といったメジャーなものから、初めて名前を見るようなハーブ、フルーツのキャンディや砂糖漬け。

 日本に持ち込めないのもあるけど、ちょっと小腹を満たしながら話のネタにするには丁度いいから1つ買ってみよう。

 

「立香くん、何買ったの?」

「ブッシュ・タッカー」

「色々と入っていますね」

 

 別に美容品を眺めていたユゥユゥとそれに付き合わされていたマシュとも合流、お土産に加えて各々が物色した戦利品を披露することとなった。

 

「わたしはクラスの皆さんへのお土産にコアラ型のマカダミアチョコを、オーストラリア原産なので丁度いいですし。あとは自分にコアラのぬいぐるみと、先輩の琥珀を飾る小物入れを買いました」

 

 マシュは手堅い定番商品に加えて夏の微小特異点から持ち帰った色の変わる琥珀のケース、最近では配慮からアボリジナルと呼ばれる先住民の伝統模様が独特の雰囲気を出している。

 

「ユゥユゥは日本のお家で飲むお茶の詰め合わせですね、メルボルン発祥なので品揃えもとても良かったです。私達の分と立香くんのお家の分で2つ買いました。それとお肌のケアに発酵パパイヤのクリームとマヌカハニーのパックです」

 

 対してユゥユゥは自分たちで使う物を購入、見た限りでは同じ家に住む2人で公私のお土産を分けたようだ。

 そして残るは自分の分。

 

「俺はクラスの皆にクッキーで家族にはラミントンっていうチョコレートケーキ。クッキーはオーストラリアにしか店が無いやつだから喜ばれそうだし、ラミントンはオーストラリア発祥だから選んだんだ。ブッシュ・タッカーはまぁ、気になって買っただけ」

 

 俺のチョイスは当たり障りの無いがオーストラリアらしさが溢れるもの。

 定番商品でも旅先にしかない限定品というのは、旅行土産として外れないので安定のチョイスだ。

 

「なんだかお茶会の準備みたいになっちゃいましたね」

「ユゥユゥ、そこは思っても言わないべきでは?」

「ですがラインナップ的に間違いではないと思いますよ、先輩」

 

 チョコ、クッキー、ケーキ、そして紅茶、確かにそうなのだが、こう思わざるをえない。

 

「これもイギリスの影響か……」

 

 オーストラリアもまた、英連邦の構成国だということを思い知る。

 その後はブッシュ・タッカーの品評会をして時間を潰し、無事に帰国の途についたのであった。

 




-藤丸立香
 特異点も含めて初めてのオーストラリアなので少しテンション高め、クオッカの人懐っこさにはちょっとビビった。
 ブッシュ・タッカーの中ではカンガルーのジャーキーが気に入った模様、脂肪少な目で意外と獣臭くなかった。

-マシュ・キリエライト
 同じく初のオー(略、コアラのモフモフ具合が痛く気に入った模様、自分の胸の凶器には無自覚。
 ブッシュ・タッカーのマカダミアナッツの方が単体で食べるのには気に入った。

-楊貴妃
 同じく初の(略、カモノハシの訳分からなさが面白かった。
 無計画なようで狙ってる、狙ってないときは大抵やらかす。
 意外と豊富なオージーコスメにの方がブッシュタッカーよりも気に入った。




怒涛の復刻イベントラッシュで林檎が美味しい作者です、ガチャは水着に備えて控えてます。
皆さんはガチャどうですか? 周回のティアマト、高難度のドラコーと強いですよ。

感想お待ちしてますので、何卒よろしくお願いします。

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