フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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ようやく残暑も落ち着いた頃、学校の授業で武道を習うこととなった3人。
普段の戦闘と少し勝手の違うそれを各々どう受け止めるのか。


大変久しぶりの投稿となってしまいました。
pixivの方で色々書いていたのですが、こちらのシリーズに手が付けらませんで……。
お待ちいただいた皆様、真にありがとうございます。


第53話 藤丸、武道の時間

残暑の候も過ぎて朝夕は快適な風の吹くこの頃、通学路で藤丸・マシュ・楊貴妃の3人が話していたのは今日から始まる武道の授業についてだった。

 

「それにしてもユゥユゥが武道選ぶのは意外、ダンスの方に行くかと思ってたよ」

「そうですね、ユゥユゥさんならそちらに行くものだとわたしも思っていました」

俺とマシュが言うとおり、武道はダンスとの選択制で男女が半数ずつに別れて行う。

最初から武道を選ぶのを決めていた俺とマシュと同様、踊りの好きなユゥユゥならてっきりダンスを選ぶとばかり。

「1人なら良かったんだけどね、みんなで踊ると周りに合わせてレベルを落とさないと駄目だから」

「「なるほど」」

その答えに2人揃って納得の声を上げる。

確かにダンスは5人程のグループで行うため、英霊の中でも踊りはトップクラスのユゥユゥがその中に入っても納得いくレベルの踊りは出来ないだろう。

「それに、見せたい人が居ないのに踊っても虚しいだけですから」

クルリと舞うように俺の前に飛び出た彼女の言葉に心臓が跳ねる。

この場に居るのは3人だけなのに、わざわざ俺の前で言ったということは……。

「そういうこと言われると、勘違いしそうになるな」

「勘違いじゃありませんよ」

「「ふふっ」」

後ろ歩きのユゥユゥと声を合わせて笑う。

マシュは首を傾げていたけど、少し経つと意味を理解したようで同じように笑っていた。

 

 

そして始まる体育の授業、ジャージに着替えて武道場に行くと竹刀と薙刀がカゴの中に収まって準備が整っていた。

「まず剣道と薙刀の説明をするぞ」

体育の教師に変わって剣道部・薙刀部の顧問が始める座学を聞きながら、こうやって武道という形で武術を修めるのは初めてだと気付く。

カルデアにいた頃はスカサハ師匠やケイローン先生、柳但先生、書文老師といった師範組はもちろん、武蔵ちゃんや巴さん、ポルクスといった特に秀でた皆から武術を教えてもらった。

でもそれは実戦的な面や回避を重視したもので、こういった競技的なものではない。

そういう意味じゃ、自分も武道初心者だ。

「しっかり、初歩から固めていこう」

学習への決意を新たにしているうちに説明は終了、男女で剣道と薙刀に分かれたら竹刀を受け取って実技の開始だ。

「それにしても軽い……」

「いや結構重いぞ、これ」

クラスメイトの高橋はそう言うけれど、1キロ近い真剣やら樫の木刀と比べればせいぜいその半分以下、約400グラムといったところで軽すぎる。

そんな不安を抱いて竹刀を持ち、最初の練習に。

「先ずは素振りを15本、このように声とともに1本ずつしっかり打ち込むように。面っ!」

ブン、と顧問が見本で打つ素振りをクラスメートたちと見てから竹刀を正眼に構える。

”心は静かに、無駄な力が入らないよう”

柳但先生の教えの通り、最低限の力だけで竹刀を構えて顧問の号令を待つ。

「始め!」

『面!』

ヒュッ、という風切り音とともに上げた竹刀を仮想した相手の脳天から肩まで振り下ろす。

『面! 面!』

その間に顧問は俺達生徒の間を通って腕が低い・手首で打つなと指導をしていき、俺のところに来たときは丁度最後の15本目を打つところだった。

「面!」

「ヤメっ! 藤丸と原、前に出て来て5本ばかり打ってみろ」

剣道部の原は分かるけどなぜ俺が、という疑問を抱きながら一緒に皆の前に出て正眼に構える。

「始め!」

「「面!面!」」

とはいえやる事は変わらない。

振り上げて、振り下ろす、仮想した頭を両断するイメージのままで5度繰り返して竹刀を納めた。

「よし、今の素振りで2人がどう違うと思った?」

その質問に挙手した生徒の中から指名された何人かが答える。

「藤丸の方が振り下ろした位置が低いです」

「原は上で止まってるけど、藤丸は振り抜いてるように見えました」

出てきた答えにそこまで違ったんだと思い、前で素振りをするよう言われた理由に納得する。「その通り、藤丸と原だと打つ高さが違う。原は相手の面を打つことを、藤丸は相手の頭を斬ることを考えているからだ」

その解説の後に顧問から再び声を掛けられた。

「藤丸、剣道をやったことは?」

「剣道ではないですけど、古武術をやってる知り合いから剣術を少しだけ教わりました」

皆から広く基礎だけを教わったのでコレという流派は無いけれど。

「なるほどな。剣道が初めて者は藤丸と同じようにしっかり振り下ろすように、ソッチのほうがちゃんと打てる」

どうやら俺は図らずもみんなの見本になったようだ。

 

 

先輩が皆さんの前で素振りをするのを遠目に見ながら、私も素振りをします。

重く大きな普段の盾と異なり軽く細長い薙刀は扱い慣れていないですが、レオニダスさんに教わった槍の要領でいきます。

「メン! メン!」

両手でしっかり握って正しいフォームで振るのは中々に難しいですね。

重心が中央にあるので遠心力も上手く使えませんし、何よりも軽過ぎて振った手応えが頼りないです。

ユゥユゥさんは……何やらぎこちないようで先生から指導を受けていますね。

「どうですかユゥユゥさん、先程は先生からご指導を受けていたようですが?」

「結構難しいですね。(生前)は武術と縁もなかったですし、(英霊)でもこうやって両手持ちの武具を扱うことはありませんでしたから」

「笛や琵琶を使われることはあっても長い武器は使いませんからね」

素振りが終わってからの防具を付けた打ち込み稽古、半数ずつが交代で行うので順番を待つ間にユゥユゥさんと少しお話。

普段の戦闘での琵琶や笛を用いて炎を操り舞うように打撃を撃ち込む姿と、薙刀と防具を身に付けた今の姿は正反対なのでよく分かります。

「マシュさんはどうですか? そちらの防具姿もたいへん似合ってますけど、いつもとは違うじゃないですか」

「やはり安心感は違いますね。防具も薙刀も、普段の物と比べると華奢に感じてしまって」

礼装と比べて重さや厚さといいますか、身を預ける武装としては心許ない感じですね。

「ヤメ! 次の組に代わって」

『はい!』

そんな話をしているうちに前半の皆さんが終わって後半の私たちの番。

「ではユゥユゥさん、よろしくお願いします」

「こちらこそ、ですけどお手柔らかにお願いします……」

 

 

打たれる一瞬、小手を庇いそうになるのを抑えて打ち込まれる。

「小手っ!」

コレは授業で相手は竹刀を持った同級生だと分かっていても、心身に染み付いた反応は黙っていてくれない。

優先は頭と胸と右腕、他は最悪でも止血さえすればあとからどうにでもなる。

「メェンッ!」

脳と心臓と令呪と、あまりにもあんまりな取捨選択だけど、残っていれば最悪でも死だけは確実に避けられた部位だ。

「胴!」

逆にお腹はそれほどでも、内臓が溢れても痛みでショック死さえしなければ仕舞えば良いだけだし。

そんなことを考えている内に今度は俺が打ち込む番、力まず正眼に構えて相手が空けてくれるのを待つ。

「小手ぇっ!」

相手が小手を空けた瞬間、そこに一歩踏み込みながら竹刀を振り下ろすと防具越しに肉を打つ感覚が伝わる。

「面! 胴っ!」

そこから大上段に振りかぶって面、胴と打ち込んで相手の脇をすり抜けていく。

あくまで軽くやったつもりだったけれどもそれなりに響いたらしく、相手は顔を顰めながら右手を振っていた。

そのあとの打ち込みは少し加減したけど互いに打ち合う互角稽古ではそうもいかず、だからといって空いてる所を狙わないなんてことも出来ず、体育の時間を終えた俺は休み時間にその不満をぶつけられていた。

「ふーじーまーるー、マジで痛かったんですけどぉ」

「だから、ごめんってば」

「許すけどさ、打たれた瞬間はマジで感覚ないくらいだった」

幸いアザにはなっていないが、赤くなった手首は見るだけで痛々しくて申し訳無い。

一先ず湿布をもらいに行くのに付き合って、冷やしてから帰るというソイツを保健室に置いて教室に戻る途中で、マシュとユゥユゥと出くわした。

「お疲れ様です、先輩」

「マシュもお疲れ様、ユゥユゥも慣れない武道はどうだった? って聞くまでもないか」

普段通りに制服をきっちり着こなすマシュに変わった様子もないけれど、その隣にいるユゥユゥはお団子ヘアが疲れたと言わんばかりに低めにセットされ、げんなりとした表情で身体を揺らしていた。

「うぅ、お相手がマシュさんだったので手加減は不要でしたけど、やっぱり武芸に縁の無い人生だった私にはなかなかキツイものがありました……」

その姿をマシュ共々苦笑しながら見ていると、不意にもたれかかって来たユゥユゥを受け止める。

「その疲れを癒やす為、立香くんから元気を補充させていただきます」

やっぱり軽いなと思いつつマシュの方をちらりと見て、大丈夫か目配せをすると口パクで『放課後わたしも』と伝えて来たのに頷いてからユゥユゥのことを軽く抱き締めた。

「他の人に見られて騒がれないようにちょっとだけだよ」

「はい、マシュさんもいますから少しだけです」

求められたら可能な限り、それが1人だけを選べなかった俺なりの皆への報い方だけど、今こうしているのがマシュとユゥユゥの2人だけなことに罪悪感を感じてしまった。

「むぅ……。やっぱり早いうちにモルガンやアルトリア、メルトやテノチにジャンヌオルタに来てもらわないと」

というよりも早く準備しないと我慢できずに来てしまう可能性が高いし、10月に入って早々にある学校公開日や中旬の学園祭に合わせて来てもらった方がいいかな。

「皆さん先輩のことを愛してらっしゃいますから、いつコチラに来られてもおかしくありません。わたしも負けませんが、先ずは同じフィールドに立つところからですから」

「残り半年しかない学生生活の間、立香くんのお傍に居たいというのも当然のこと。皆様とご一緒に立香くんをたっぷりと愛しますから、よろしくね?」

他の人に聞かれないよう小声でそんな話をして、十分に元気を俺から補充したユゥユゥたちと教室に戻る。

だけど、カルデアのみんなが来たら事件だよね。

 




というわけで波乱含みの10月のフラグを立てていますが、奏章Ⅲも波乱のフラグ祭りですね……。
アース嬢の本格参戦、テノチの処遇、アノ方々はどう実装されるのか、楽しみにしております。
よろしければコメント、評価の程をよろしくお願いします。

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