フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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大変お久しぶりの投稿となってしまいました。
仕事が忙しかったり、別編の執筆をしていたりでコチラまで手が回らず……。
お待ちいただいた皆様、ありがとうございます。


第54話 藤丸、授業を受ける その1

9月某日、南極のフィニス・カルデア地下秘匿ドックには無数の人影が、一部完全な人型でないのも含めて、集っていた。

「良いかい皆、此処でコレから行う決議は非常に重要なものだ。そして確実に最終案は皆の意見を反映したものにはならない、それでも良いかい?」

便宜的に議長を務めるのは技術顧問の小さなダヴィンチ、その言葉に無言を以て是と返したのはカルデアで藤丸と契約した英霊の大半と幾人かの人間の職員。

最終確認を終えたダヴィンチはコレから始まる議論が荒れることを予感して、そしてその後のことも考えて嘆息した。

 

 

10月の或る日曜日、俺、マシュとユゥユゥの3人は俺の部屋で車座になって或るプリントを見つめていた。

「学校公開日が、ついに来てしまいましたね」

「今度の水曜から金曜までの3日間は授業中の教室と部活が見学自由、カルデアのみなさまもいらっしゃいますよね」

マシュとユゥユゥの言葉に頷いた俺は1通のメール、このお知らせがネット上に公開されてから数秒で送られて来たものを改めて読む。

「『この件は此方で処理する』、つまり俺たちじゃなくてカルデアにいる皆で誰が来るのか決めるってことだけど」

『……』

揃って沈黙が重たい。

それはもちろん人数が多いこともそうだけれども、神秘の秘匿といった魔術協会がうるさそうなこと、来たら何かしら騒動になるからだ。

「端的にまずみんな美人、1人でも騒ぎになるようなレベルなのに何人も来るなんて写真や動画を絶対に撮られる」

例えばケルト組が来たときスカサハ師匠とメイヴちゃんは男子から、フィンとディル、クー・フーリンは女子から確実に黄色い声が上がり、授業の合間に盗撮されるだろう。

「撮った人のスマホ、壊れちゃいそうですね」

「スマホだけならマシな人も多々いるし」

ユゥユゥの言うとおり、スマホを邪視返しやその辺りの応用で壊しそうなサーヴァントには多数心当たりが有るが、太陽王とか英雄王は機嫌次第で不敬罪となりかねないので撮らせる訳にはいかない。

「皆さんの容姿もそうですが、先輩との関係も問題かと。流石に何人もの方をカルデアでの研修で知り合ったと誤魔化すのは、無理があると思われます」

それもまた頭が痛い、加えるなら皆からの呼ばれ方も騒動を引き起こしかねないものだ。

「ランスロットや水着霊基のふーやーちゃん、あと2、3人はマシュとユゥユゥの親とカルデアの関係者で誤魔化せても、それ以上は厳しいよね」

「ですけど皆さんが先輩の日常を覗き見る機会を逃すとは思えませんし、少なくとも数十名は来てしまうかと」

見られるのは嫌じゃないけど余計な騒動は御免被りたい、しかし誰がいつ来るのかはカルデア側で決めるという。

コレは出たとこ勝負に賭けるしかないのでは?

「俺の両親にカルデアの人が来るかも、って言うくらいしかできることはないか」

「頑張ってください先輩、わたしとユゥユゥさんもフォローしますから」

「アジア系の皆さんは私の知り合いで押し切っちゃいましょう」

鬼が出るか蛇が出るか、そのどちらも居るカルデアではそこに神も仏も獣も加わるので始末におえないと思いつつ、この件は先送りとなった。

 

 

やって来た水曜日、カルデアからは何の連絡もありませんが、ソレが何を意味するのかはわたしたちにも分かりません。

無言で普段よりも緊張と不安を抱えたまま、朝礼が始まるまで窓際で誰か来ていないかと眺める様子はクラスメイトの皆さんに不審がられていましたが仕方のないことです。

そして始まった授業、まだ1時間目ということで親御さんや高校見学に訪れた中学生らしき方が数人ほどしか来ていませんが、それでも普段と状況に皆さん緊張というかそわそわしていました。

「1時間目は誰も来なかったのかな」

「俺としては時間をバラバラにして来て欲しいから早く来て欲しいような気もする」

ユゥユゥさんが言う通りに1時間目は一見一般の方だけ、先輩の気配察知を回避できる気配遮断を持つ方が来ていたなら別ですが、その場合はただ見ているだけで問題ありません。

「ハサンや忍者の皆さんが来ていた可能性はありますが、過ぎたこととしましょう。先輩も気が休まらないでしょうから、気配察知は無しです」

「ならありがたく、ソワソワしながら来るまで待つよその分誰が来てもサプライズになっちゃうから気が休むかはトントンだけど」

微妙に後ろ向きな先輩にユゥユゥさん共々苦笑いすることしかできませんが、2時間目の授業がもうすぐ始まります。

チャイムより少し早く席に着いて始まった授業の最中、教室の戸が開く音に後ろを振り返った方がヒソヒソと話す声が聞こえてきました。

「あの人すごいカッコ良くない」

「一緒の人も美人だよね、夫婦なのかな」

話の内容からどうにも他人のような気がしないでいると、一足先に後ろを見たらしい先輩から念話が繋げられました。

”マシュ、ユゥユゥ、巌窟王とマリー・オルタが来てる”

ひそりと伝えられたその言葉はひとまず安堵したようなもので、アヴェンジャーとはいえ良識派の2人が最初に来られたのは幸いでした。

授業も数学なのでなにか気に触るようなこともなく、多少のざわつきはあれど平穏に終わろうとしたとき、不意に念話が。

”共犯者、マシュ、楊貴妃、暫し話をしたい”

”巌窟王、もしかして今日のこと?”

”そうだ、我らはその一番手となる。基本的に我らから話しかけはせず、後方より普段のお前達を見て帰る”

一応配慮なさっているようですが、それではこの教室にサーヴァントの皆さんが来ることによる弊害、具体的には人数や外見といったもの、が解消できないのではと思っているとマリー・オルタさんから補足が。

”他の教室も見て帰るから、もう暫く学校にはいるわよ。最初の授業も別の教室を見てたし、此処だけにサーヴァントが集まらないようにね”

なるほど、数が多いのなら集中させず分散させることで注意もということですね。

それならこの教室だけ注目されることはありません。

”しかし、お2人が揃ってというのは驚きです。あまり仲が良いとは思っていませんでしたから”

”あら楊貴妃、これでもマスターの心象世界では共闘したこともあるの。目的が一致するなら協力する程度には悪くないのだけれど”

“それは失礼しました、マリー王妃”

ユゥユゥさんの言葉にマリー・オルタさんが心外だといった雰囲気を滲ませながら応じましたが、気分を害されたわけではないようです。

クスリと悪い笑みを浮かべて、マリー・オルタさんは巌窟王さんを引き連れて教室を出ていかれました。

「とりあえず俺たちに接点があるっていうのは、誤魔化す方向みたいだね」

「でもでも、不夜姐姐やランスロットさんは私たちの親というか保護者なのであまり他人行儀なのも良くないですよ」

「確かにそうではあるのですが時と場合によると言いますか、お父さんとはその……」

普段通り、いえ、ちゃんとしていれば何の問題も無いのですが、女子生徒に言い寄られているならともかく教師の方に声を掛けている所など目撃した時には他人として振舞うほかないかと。

「ユゥユゥの言うことも尤もだし、そこは臨機応変にということで。マシュもランスロットには優しく、せめて女性に声を掛けたのを見ても無視しないであげて」

「努力はしますが、理由次第ではこうでも?」

ぐっと握り拳を作った私に、先輩は苦笑しつつも『程々にね』とだけ言ってくださりました。

そうして話していれば休み時間も終わりとなって3時間目の授業、ある意味英霊の皆さんにとって鬼門の世界史ですが近代史なので大丈夫なはずです。

「そして戦後の復興においてアメリカの方針変換を受け~」

どうしても気になってしまって少し普段よりも集中出来ないでいるうちに授業も中盤、先生の言葉に気もそぞろとなって今日のまとめと質疑の時間となったところでまた誰かが。

「あっ」

長身と見合うスーツ姿は本来とても気品があるはずなのにどこか不安げな表情とそわそわした態度がそれを台無しにして、どなたかのお母様らしき方に声を掛けられて申し訳なさそうに断っているのがやや可哀想にも見えますが妥当なところです。

「もう、お父さんたら」

小声でそう呟きながら自分の頬が緩むのを感じてハッとして、首を振って授業に集中します。

「それじゃあキリエライト、日本の戦後復興が工業中心になった理由について短くまとめられるか」

「は、はい。えっと、戦後の日本はおもに」

直後に先生から指名されて答えますが、どうにも緊張して普段よりも喋りが硬くなっている気がします。

その原因は背後から感じる不安そうな気配で主はお父さん、そんなにジッと見なくても大丈夫ですし心配しなくても良いのに決して嫌と思えない自分が居て、むず痒い気持ちを早くなくしてしまおうと早口で答えを終えました。

「以上です」

「うん、良くまとめられているな」

その言葉にホッとして席につくと背中に感じていた不安そうな気配も落ち着いて、振り向かずともお父さんが安堵の表情を浮かべているのが目に浮かびます。

恥ずかしくも嬉しく感じるそれがくすぐったくて、先輩とユゥユゥさんが何も言わずにいるのが余計にそう感じさせます。

授業はそのまま進行して終わりのチャイムが鳴って見ていた方々も教室を出て行きますが、最後まで残っていた何人かにお父さんは含まれていました。

「お父さん」

「や、やぁ、マシュ」

わたしのお父さんとして来ているなら堂々としていれば良いものを、どこか所在なさげにしている姿は円卓の騎士とは思えません。

普段の子供を知らない何処にでもいるような父親そのもので、本当はもっと恰好良いはずなのに情けなく見えてしまいます。

「何か至らない所が在っただろうか? 教室に入って最初のご婦人に声を掛けられたのはちゃんとお断りしたし、授業中も静かにしていたのだが……」

その言葉や態度がどうしても気に入らないわたしはお父さんの腕を掴んで廊下に出て、人気の少ない角まで連れてきてしまいました。

「マシュ、やはり来ない方が良かったかい? 気分を害したなら謝るが、どうしても普段の」

「違います。ちょっと恥ずかしい気持ちはありましたけど来てくれたのは嬉しくて、でもお父さんがそんな不安そうに見守られるともっと落ち着いて欲しかったと言いますか、堂々と見守って欲しかったと言いますか」

こう、胸を張って『わたしのお父さんです』と言えるような、自慢の父としての姿で居て欲しかったのです。

それだけではなくて、わたしはそんなに心配されるほど未熟なのかなとか、お父さんへ見栄を張りたい気持ちもありましたし。

「それは済まなかったね、マシュ。君の父親として、誇れるような姿を見せることが出来なかったようだ」

「でも、来てくださってありがとうございます。お父さんが来てくれたのは、本当に嬉しく感じました」

お説教、というよりも父親の格好いい所を見てもらいたい見栄と恥ずかしさはあれど、やっぱり来てくれたのは嬉しかったのです。

わたしの中からギャラハッド卿が去って尚、わたしのことを娘と呼び扱ってくれるお父さんが来てくれたのですから。

「なら、次の時間はもっと落ち着いて見守ることとしよう。ここに来れなかったバーサーカー霊基の私にも、君がちゃんと普通を楽しめていると伝えられるように」

「そうしてくださいね、お父さん。それと女性にはちゃんと! お断りを! 勘違いさせては駄目ですから」

それだけは今日見た範囲内で合格でしたので、是非とも続行してもらわないといけません。

「分かった、分かったから……」

お父さん、本当に分かってますか?

 

 

授業が終わると同時に何処かへ行ったマシュとランスロットを追いかけてみれば、何やら不満な様子のマシュがランスロットをお説教中。

盗み聞きするつもりはなかったけど、もっとちゃんとして欲しかったというのは漏れ聞こえた内容から理解出来た。

「難しいお年頃、というものですね」

「どっちかとお父さんが好きなだけだと思うよ?」

好きだからダラシ無い所を見たくない、好きだから格好良い所を見たい。

血の繋がりも無いしサーヴァントとしての親子関係も無くなったけど、それでもカルデアのランスロットはマシュを娘だと、マシュもランスロットを父親だと思っている。

他人同士が親子でいるのに、互いがそうだと思って好きでいる以上の条件はないだろう。

「良いですね、親子って」

「だね」

さて、無事に話が終わりそうだから先に教室へ戻るとしよう。

「ふーやーちゃんはいつ来るんだろうね」

「不夜姐姐の前でちゃんとしていなければ駄目、けど普段と違い過ぎても駄目、難しいです」

「別に不真面目なわけでもないし、大丈夫じゃない?」

実はユゥユゥ、授業態度はいたって普通である。

苦手な理系科目もちゃんと受けるし課題もこなす、真面目にずっと教科書・板書を見るとまではいかずとも教師に目を付けられるようなことも無い。

「でも姐姐ですから、女帝感覚(センス)的なもので『玉環、おぬしナニ真面目ぶってるのじゃ』とか言われそうな気がして」

「女帝センスが何かは分からないけど、ソコはある程度まで身から出た錆ということで。多少はフォローするけど真っ当な意見は、ね?」

「そーんーなー」

少しテノチっぽい口調になったとあとから気付きつつ、どうにかふーやーちゃんをなだめて欲しいと言うユゥユゥに纏わりつかれながら俺は教室に戻ったのだった。

 




と言う訳で始まりました学校公開日の初日前半戦
誰が来るのか楽しみにお待ちいただければと思います。

年末はBOX回してレイドして、年が明けたら魅力あふれるサーヴァントたちのイベントでとFGOは楽しんでおります。

面白いと思ったら☺の1つでもコメントに書き残していってください。

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