フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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藤丸、マシュ、楊貴妃の3人が通う学校の公開日、予想通りに次々訪れるサーヴァントたちだが今のところは一見平穏。
とはいえ、ずっとそのままで終わらないのが彼の持って生まれた星……。
という訳でままならない公開日の1日目後半戦、始まります!


第55話 藤丸、授業を受ける その2

 学校公開日の初日前半戦、所々にサーヴァントが居ることで学校中がどこか浮足立ったようになっているが藤丸たちは平常運転。

 マシュとランスロットが少し揉めたが父娘らしい平和な内容で、昼休みに入って校外の人間が減った校舎内は平和なものである。

 

「今のところは巌窟王とマリー・オルタ、ランスロット、ダディに新所長とコヤンスカヤが教室に、他にも10人くらいが通りすがりに外からって感じだね」

 教室内はチラ見して、外は気配というか魔力の感じだったり、ふと見た拍子にいた姿を思い出しながらコソコソ話。

 帰宅部の俺たちは6限までだから、あと何人か見に来るのだろう。

「このペースでいくとトータルで50名ほどが公開日の間に来られるようですね」

「それでもカルデアの皆様の1割しかない狭き門ですよ? 誰が来るか決まったのが奇跡的って感じです」

 ユゥユゥの言葉にマシュと揃ってウンウンと頷く。流石にちびっこ・ハイティーン組は見た目年齢で相応しくなかったり明らかに普通からかけ離れた姿の皆、そもそも人間嫌い、言葉が通じないなど最初から洩れているのがいるとしても2割以下。相当に揉めるはずのコレを決めたであろうダヴィンチちゃんには惜しみない賞賛を贈りたい。

「でも、なんやかんやで一定の傾向は見えてきたような気はするね。父親・母親属性、上司属性、社会人属性、そんな雰囲気を持ってる皆が来てる気がする」

 サーヴァントの属性はあまり関係なく、多少容姿がどうであっても違和感がなく騒ぎを起こすことのデメリットを理解して踏み止まれる人達。王様系サーヴァントに多いデメリットを踏み倒そうとする人たちは今回選外だったのだろうか。

「だけど今日のお昼も美味しい、2人のおかずが相変わらずいい塩梅」

 肉じゃがと春雨サラダが今日の2人のおかずのメインで、俺は昨晩作った簡単な筑前煮モドキを献上している。今日は肉じゃががユゥユゥで春雨サラダがマシュの気配、はっきりした感じの味付けと少し柔らかめの春雨がそうだと囁いている。

 ある意味で愛妻弁当なこれを毎日食べられ幸福を文字通り噛み締めつつ、美味しそうに俺の料理を食べる2人に心が和む。

「やっぱりこういう時間が一番だね」

「そうですね、あとは立香君にあーんとしていただければ」

「んぐっ!?」

「ユゥユゥさん!? そして先輩は大丈夫ですか?」

 急に放り込まれたユゥユゥの爆弾発言に危うく咽そうになった背中をマシュがさすり、ユゥユゥ本人もまさかここまで反応するとは思っていなかったのか慌ててお茶を差し出してくれる。

「だいじょうぶ、大丈夫、マシュもありがとうね」

「いえ、大事にならなくて良かったです。ですけどユゥユゥさん、此処は学校なのでお互いに自重の約束ですよね」

「もちろん冗談です! けど、立香君があんなに反応するとは思わずについ……」

 笑顔の凄みが一段と強烈なマシュの言葉に何度も首を縦に振るユゥユゥがなんだか可笑しくて、お茶を受け取りながらつい笑みがこぼれる。

「マシュもそのくらいでね、ユゥユゥは約束破るようなことしないのは知ってるでしょ。けどユゥユゥも程々に、いきなり言われたらマシュも俺もビックリしちゃうから」

「はい、驚かせてすみませんでした」

 軽く頭を下げたユゥユゥを見てマシュの表情が柔らかなものになる。

「いえ、それでしたら大丈夫です。わたしも少し、オーバーに反応し過ぎたかもそれません」

 一先ずこの件はここまでとして、お昼の続きを食べよう。

 

 

 というわけで少し騒いだ昼休み明けの5限目、予鈴が鳴るとぼちぼち保護者や中学生も教室の後ろに入って来たが妙にデカイ人影が1つ。

「ほらムッシュ、大きいんだからもう少し詰めてよ〜」

「これはこれは失礼を」

 そして女性が親しげにそのデカイ男性に声をかけるが、やり取りが聞こえていた藤丸は渋面を浮かべていた。

「秩序を壊す愉しさを知ってるのが来ちゃったか……」

 堕落大好きモレーちゃんがペアなのはマイナスとマイナスかけたらプラスみたいな発送かもしれないけれど、カリオストロと組ませるなんて目立ちすぎでしょ。

「でかっ」

「胸板スゴイ」

「隣の眼鏡さんは秘書とかかな」

「静かにするように」

 もうざわざわとクラス皆が騒いでるし、先生も注意しながらさすがに表情が引き攣っている。2m近い長身ムキムキの白長髪の男が微笑みながらクラスを眺めているとなれば仕方のないことだけど、その隣にいるニヤニヤ顔の眼鏡美人(外面だけ)と合わせて教室内にいる全員が意識を向けている。

 当然、外国人風の人が多いにしても特に目立つ人がこの教室に来たのは何故かと微妙にざわついている。

「この式からの導出が出来る者はいるかな?」

 物理の授業ということで式の変形、テスラに習った範囲なので解けるけどやる気のある人に任せよう。

「ふむ、そこの黒髪の学生さん? 一つやってみてはいかがでしょうか」

「かっ!?」

 穏やかな微笑みのまま―――伯爵があなたを指名する、と俺の中にイデさんが居たら言いそうな状況そのままにカリオストロが先生を無視して俺を指差す。こんなの良いんですかと先生に視線を向けると少し考え込むような素振りをして、こう言われた。

「そうだね、他に挙手してる人が居なかったし藤丸くんで」

 先生、威厳と自信たっぷりに微笑みながら言われても部外者の意見を聞かないでください。いくらカリオストロがそういうの上手い詐欺師でも駄目だと思います。

 仕方無いので前に出るついでに、それとなく2人の方を見るとカリオストロは愉しそうに穏やかな微笑みを浮かべ、モレーちゃんは苦笑しつつも愉快げ。さすが混沌・中庸と秩序・悪、場を掻き乱してもそれ以上は何もせず、それを好ましく思わずとも人が困るのは好きか。

「あとでお願いね」

好好〜(ハオハオ〜)

 そんな2人に軽くお仕置きすることをユゥユゥに頼み、やや緊張しながら黒板に書かれた式を変形していく。途中で使う公式を教科書で確認しながら導出した式はキレイな形にまとまり、学者系サーヴァントの皆が数式に美を見出すのも少しだけ理解できる。

「先生、どうですか?」

「うん、うん、ちゃんと出来てるね。途中式も変になってないし、お疲れさま」

 一先ずこれで一息、と思っていると軽い拍手のような音がした。その源はやはりカリオストロで、白手袋で覆われた手が軽く何度か叩かれている。

”あとで灼くから”

”お手柔らかに陛下”

 少しばかり悪ふざけの行き過ぎた彼へ物騒な会話を目線だけでこなし、それでも微笑みを崩さないカリオストロに呆れと苛立ちの視線を向けて席に付く。あとは特段変わりなく、次の6限に来たジークフリートとクリームヒルトにジークを加えたゲルマン竜殺親子が典型的ツンデレを見せ、生暖かい雰囲気に包まれて今日の授業は終わった。

 

 

「というわけでカリオストロ、何か弁解は?」

 放課後、当然とばかりにユゥユゥとマシュ、シャルロットが暮らす家でくつろいでいたカルデアの皆の前で正座するのは当然、カリオストロとモレーちゃん。

「陛下の不興を買ってしまったようですが、心当たりは……」

「マースター、私まで同罪はヒドくない?」

「モレーちゃんは止めなかった反省なので、良いって言うまで正座ね」

 罪状が明らかなので詰問する必要もないし、減刑ということでちょっとそのままで居てもらう。俺が困っているところを見て愉しんだのなら、ちゃんと対価を貰わないと。

「うへぇ、我がマスターはオヤサシイことで」

 不承不承丸出しながらしっかり脚は正座しているモレーちゃんはさて置いて、未だに微笑むのを詰めていこう。

「で、どうなのカリオストロ? 弁解があるなら聞いたあとに減刑無しの即日決裁だけど。というかマリー・オルタと巌窟王が居るのに良くやるよね」

「黒き王妃と我が宿敵に責められる謂れはありませんとも、ただ少しばかり陛下に活躍の場を与えただけにて」

 あたかも良いことをしたとでも言いたげなカリオストロだが、それに突っ込みを入れたのは新所長だった。

「だからといってね君、勝手に生徒を指名したりしたら授業妨害だよ? 教師が流してくれたから良いけど、他のサーヴァントが真似したら困るんだけど」

「妨害のつもりはありませぬし、教師の方に指名を強制したつもりもございません。誰も挙手せず、陛下でしたら解けそうと思い推薦しただけにて」

 さすが天性の詐術師(プリテンダー)、新所長の追求もああ言えばこう言うでのらりくらりと躱していこうとする。巌窟王とマリー・オルタはその態度に黒炎と断頭台を出して処する気満々、だけど此処であまり派手にされては困るのでどうにか宥めねば。

「2人共落ち着いて、流石にガッツ1回のカリオストロに宝具チェインはオーバーキルだから、そしてリビングじゃ無くても地下室でお願い」

「藤丸、キミ雑な時は雑になったよね? というかこの家の地下ってそんな頑丈なの?」

 少なくとも1発は宝具を撃っていいとも取れる藤丸の言葉にゴルドルフが頬を引き攣らせ、それと同時に地下が核シェルターもビックリな強度を持つことに驚く。

「えぇ閣下、安定した岩盤上に魔術・工学両面の粋を尽くした地下バンカーを設置しております。AN602・ツァーリ・ボンバのフルスペックが至近で爆発しても無事という代物ですわ」

「それってつまり実質的には破壊不能では」

「はい♡ 人間の火力では不可能かと」

「ひぇっ」

 コヤンスカヤと新所長のアレコレは置いておき、今はカリオストロの処分をどうするか。

「カリオストロ、君に反省とかは求めて無いから理由だけは聞かせて欲しい」

「それならば先刻申した通りにて」

「俺に活躍をさせたかった、っていう?」

 本当にそれだけかという言外の追及に巌窟王の黒炎が無言で添えられ、止めるでもない俺の様子に観念したのか呆れたのか、カリオストロが付け加える。

「はい、他に誰かいる状態でやらねばならなくなった陛下の姿、その困惑とせざるを得ぬ活躍を見たかっただけでございます」

 ほら、やっぱりロクでもない動機があった。欺瞞か判らないとはいえ、一応は筋が通ったそれに納得せざるをえない。あとはどんな判決を下すかだけど、ココは……。

「執行猶予付き有罪判決で、モレーちゃんはもう正座解いても良いよ」

「おや?」

「脚、痺れて来てたから助かったぁ」

 コレばかりは本気で予想外というカリオストロを横目に、追撃でモレーちゃんの脚を叩こうとするバッフィーをユゥユゥの侍女たちに任せる。

「有罪はともかく執行猶予とは温情判決ですな」

「此処で執行すると近所迷惑だし、猶予付なら再犯で2回罰せるから巌窟王とマリー・オルタが執行人を喧嘩しないからね」

 それぞれに火刑と斬首を担当する2人に目配せすると不満げながら首肯し、代わってカリオストロに再び黒炎と断頭台を見せる。

「撤回いたします、陛下は冷酷でおらせられる」

「再犯しなければいいだけでしょ」

 一先ず法廷モドキはここまで、カリオストロはきっちりカルデアまで送り届けてもらうと同時に今日の顛末と再発防止は新所長にお願いする。

 また明日もみんな来るわけだし、今日みたいなことはもう懲り懲りだぁよ。

 




という訳でバレンタインなのに授業参観書いている作者です。
ついに始まったバレンタインイベントで楊貴妃登場して歓喜爆発、スクショを撮りまくってしまいました。

サーヴァントたちが入り乱れている高校、クラスメイト達は結構驚いていますが親もいる手前あまり騒いではいません。

よろしければ一言でもご感想など頂ければ……。

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