誰が来ても波乱が起こるサーヴァント、果たして乗り切れるのか!?
学校公開日2日目、無事に終わったとは言い難いがそこまで大きな騒動にはならなかった初日のこともあり、幾ばくか落ち着いて藤丸、マシュ、楊貴妃の3人は教室で1限の始業を待っていた。
「今日は誰が来るのでしょうか?」
「昨日はなんとなく欧州系だったから、またどこかの地域単位とかかな」
「亜細亜系でしたら不夜姐姐が来てしまうかもですね……。うっ、急にお腹が……」
マシュのふとした疑問になんとなく答えると、誰が見ても具合の悪くなったようにユゥユゥがお腹をおさえる。
「はいはい、演技しないの」
だけど俺たちがそんな簡単に体調を崩すはずもなく、苦笑しながらユゥユゥの頬を突けば何事もなかったように頬を膨らませて彼女は拗ねてみせる。
「むぅー、そこは心配するところじゃないんですか?」
「名演でもあからさま過ぎ」
「わたしもそう思いますよ、ユゥユゥさん」
実際、何も知らなければ心配してしまうようなところだがマシュ共々に勝手知ったる仲。頬の弾力を楽しみながら拗ねたユゥユゥをなだめているうちに予鈴が鳴り、ぼちぼちと親や受験を控えた中学生が入ってくる。
今日の1限は現文、カルデアの文筆家サーヴァントは当たり前だけど古典作家なので、新鮮な気分で受けられる授業の1つだ。そんな静かな教室にまた誰かが……。
「なぎこ様の珈琲で少し遅れてしまいましたね」
「まぁまぁ、授業には間に合ったからセーフでしょ」
「ふふ、香子様となぎこ様はいつもどおりですね」
小声で話す3人の声は自分たちにはよく馴染んだもの、授業とは同根にして真逆といえる平安文学女子三人が今日のトップバッターらしい。
(ユゥユゥの勘が当たったかな?)
(当たらなくて良いやつです!)
念話でちょっかいをかけると目に見えてヘコミ、久方ぶりに見るやらかしモードの彼女がなんとも可愛らしい。そして授業はそんな俺達のことを気にせず進み、偉大な先達でもある彼女たち3人に見守られていたことも知らずに無事終了した。
「香子さん、なぎこさん、小町さん、今日はわざわざありがとう」
「マス、ではなくて立香さん、話しかけてきても良かったのですか?」
「海外出身の皆には申し訳ないけど、純日本人の3人なら誤魔化せるかなって」
廊下の片隅、帰ろうとした香子さんたちにせめて挨拶くらいはと声を掛けると『はわわわ』と言いそうな香子さんをなぎこさんが抑えて、2限が始まる前に少しだけ話す時間が取れた。ついでに聞きたいこともあったので、手早く済ませてしまおう。
「3人から見て、さっきの授業の様子をどう思ったのかなって。作家に聞くのも変かもしれないけど、その道の先輩から授業の要点というかを聞いてみたくて」
別に後で聞いても良かったのだけれど、他の授業でも何かの役に立つかもと思って世間話程度に尋ねてみる。まず答えが返って来たのは香子さん。
「そうですね、教師の方が仰った言葉の使い分けについては重要かと。多様な国の言葉を扱えるのは現代ならではですが、万人に通ずる言葉の選び方というのは難しいものですから」
「なるほど」
続いてなぎこさん。
「フィーリングとか? 『いとをかし』と『いとエモし』であたしが感じてることは同じでも、ちゃんマスは違う感じでしょ」
「確かに『いとエモし』だと軽い感じはあるかも。ちゃんとエモいに重さが在るなぎこさんじゃないと、ふざけてるって思いそう」
「流石ちゃんマス、あたしのことよく解ってる」
というわけで最後は小町さん。
「私は心を伝えるために言葉を選ぶこと、かと。なぎこ様のと重なる部分もありますが、感じているモノを素直に表す言葉もまた良いものですよ」
「素直に表す言葉か、だけどそれを誤解されないように伝えるのは難しいよね。うん、3人共ありがとう」
三者三様だけど言葉の持つ意味や相手に伝えようとすることの大切さは共通していて、今日の授業の振り返りとしては十二分過ぎる程のもの。藤丸は礼を述べると、もうすぐ始まる2限に間に合うよう3人と別れた。
「けどちゃんマスも結構大胆だよなー、ガッコでアタシたち3人に声かけるとか」
「そんなナンパのように言わなくても……」
「でも男子共と一部女子が見てたの、かおるっちも気付いてんしょ? その状況で話しかけるのがどう見られるかは自明じゃん」
藤丸の背中を見送りつつ交わされた清少納言と紫式部の会話、そこに小野小町が異論を挟む。
「香子様、なぎこ様、あまりにも慣れ親しんでいるので忘れてはいませんか?」
「「?」」
なんの事やらサッパリと疑問符を浮かべた2人に小野小町があることを指摘する。
「立香様にはお側の楊貴妃様とマシュさんやカルデアにいる六恋嫁の皆様方が居て、異性に対するモノとしての好意を余所に向ける余裕が無いのです」
「「なるほど」」
確かに8人に自分の恋愛感情を同じだけ本気で、しかも1人を愛する時と変わらず注ぐとなればそうなるだろう。付き合いの長い2人にとってはいつものこと故に見落としていたが、恋に敏感で付き合いの浅い小野小町は自身のマスターが向ける好意の質の違いに気付けた。
「立香さんにとっては本当に友人に話しかける程度のことだったのでしょうね」
「けどさぁ、見てるだけだった子らにとっては嫉妬モンよ。『あんな美人と仲良くお喋り!? おのれちゃんマス、成敗!』的な」
「カルデアでも人誑しといいますか皆様に好かれてそうなっていますから、想像に難くないのがまた……」
教室に戻った自分たちの主がクラスメイトたちからなんと言われるのか、かしましく喋りながら3人の平安作家は校舎をあとにする。
そんな彼女らの予想通りとなった藤丸は質問攻めを『南極で受けてた国語の通信教育の先生だよ
』などと誤魔化し、次の時間に備える。
「小町
「ううん、今日の授業のことを雑談的に話しただけで何も無いよ」
「ふーん」
同じ世界三大美女と称されるからか特に小野小町となにを話したのか気になったらしい楊貴妃だが、特に差し障りのないことで興味は失せたようだった。
そのまま次の2限目の時間を向かえたのだが、始まる直前に入って来た4人、特にその中の2人が纏う雰囲気によってチャイムが鳴っているにも関わらず教師は授業を始められずにいた。2人の持つ雰囲気やオーラに圧されての事だが、それは一般生徒も同じことで授業を始めるように催促できるような者は誰もいなかった。
そんな教室で一般ならぬ逸般生徒の藤丸とマシュはどうしたものかと悩みつつ、顔を引き攣らせて苦笑いを浮かべるしかない楊貴妃に念話を繋ぐ。
(大丈夫じゃなさそうだけど、耐えられそう?)
(無理ですよ~! 不夜姐姐だけならともかく始皇帝陛下が居られるんですよ!? 粗相どころか身動き一つ迄緊張しまくりですって!)
(先輩、これは非常に大変なことになりそうな予感がします)
果たして3人の胸中を察しているのか否か、武則天と始皇帝は悠然と笑みを浮かべながら藤丸と楊貴妃を一瞥すると教師に急かすような視線を向けた。
「で、ではチャイムも鳴ったので授業を始めます」
マシュと藤丸は慌てて授業を始める教師に気の毒な視線をむけつつ、妙な緊張感に包まれたこの授業がどうなるのか内心気が気でない。
なにせ片や悠久の中国史で唯一の女帝、片や異聞帯とはいえ世界統一を成し遂げた唯一無二の皇帝、楊貴妃があまりにも緊張しているので逆に平静になっているだけで2人も最初はかなり緊張していた。そして何よりもう2人、うち片方の蘭陵王はともかくとしてもう1人の存在に藤丸もマシュも驚いていた。
(まさか、ぐっちゃんパイセンが来るとは思ってみなかった)
(完全に予想外でした、芥さんがこうやって他人が大勢居る所に来られるなんて)
人間、というよりも他者全般が嫌いな芥雛子こと虞美人がこんな所に来るとは考えてもみなかった。昨日以上に何をしてもおかしく無い、そしてソレを本人たちの在り方で圧し通せる面々が見守る授業。何もないことを祈りながら、気が付くと終業のチャイムが鳴っていた。
「では、今日はここ迄にします」
「起立、礼、着席」
終礼を終えてホッとしながら席に着いた3人をあざ笑うようにヒールを鳴らしながら、武則天が楊貴妃の前に立つ。
「な、なんでしょうか不夜姐姐!」
授業中に不作法はなにも、というよりも授業は普段から完全に真面目ではなくとも不真面目にならない範囲で受けているんですけどぉ。というよりも、授業が終わっても何も言わずに見定められてるんです!?
慣れていた視線ゆえにそういったモノに敏感な楊貴妃が、戦々恐々としながら武則天の言葉を待つ。短い時間のはずが永く感じられ、遂にその口を開いた。
「玉環よ」
「はい」
「しかと授業を受けておったの」
「はい、学生ですので」
皆さんの見ている前でお説教だけはご勘弁を、そして何を言われるのでしょうか……。
「色恋に現を抜かしておらぬようじゃし、残り短いがその調子で励むのじゃぞ」
「はぁ」
あれ? 普通に励ましのお言葉と分かり難いですお褒めいただいてしまった? これは一体どういうことでしょうか。
疑問を浮かべた楊貴妃にジトリと視線で圧がかけられる。
「なんぞ不満でもあるのかの?」
「てっきり、お叱りを受けるものと思って」
それがこんな励ましの言葉を貰えるなんて思っていませんでした。
「ほ〜う、そんなに待ちかねておったなら挽くか抱くかくらいは選ばせてやろうかの」
「どっちも嫌ですぅ!!」
鋸も石もやりたい人なんて居ないと思います!
「くっふっふっふ、、冗談じゃ」
「姐姐のソレは冗談じゃ済まないんですよ」
「まぁ良い、学校でのことはあとでタップリ聞かせてもらうかの。精々それまで励むのじゃぞ」
コレはもしや、そっちが本番ですか?
高校、というよりも学ぶ場所全般がこれ程似合わない人も居ないのでは、というのが藤丸の率直な感想だった。
「どうした藤丸よ、砂漠で魚でも見たような顔をして」
「
さすがに始皇帝や朕などとこの場で呼べるはずもなく、本名というか人としての名前で呼べば鷹揚に笑って彼は応える。その姿は汎人類史のそれより遥かに苛烈で徹底的な焚書坑儒を行い、あらゆる知識・教育を民から根絶やしにした異聞の始皇帝とは思えない。
「朕とて時と場所は弁える故に余所の国と民にまで口出しなどせん。とはいえ、お主のように真面目なのも居れば不真面目なのも居るからなー、そ奴らは働かせた方が良くないか?」
「流石にそれはちょっと……。高校卒業で最低限、っていう世間もあるから」
周りに聞こえるように言うことでもないので後半は始皇帝にだけ聞こえるよう小声で伝えれば、『そんなものか』でも言いたげな表情で何度か頷いてみせる。合理を優先する彼らしい考え方だが、彼のように万事見定めて人を配置出来るばかりとは限らない。
「能力の最低保証、それもまた一つの考えではあるか」
「【人】が多いからね、そうなるのも仕方ないということで」
始皇帝に学習姿勢を見定められるなんて経験をしているとは知らない皆には申し訳ないと思いつつ、自分も勉強はもっと真面目にしなければと改めて心に刻む。
その後は徴姉妹やドゥルガー&パールさん、ビーマ、他にもアジア系の皆が授業を見にやって来た。頼光さんが来たときはどうなるかと思ったけれども隣の綱さんがうまく抑えてくれて、だけどその代償を放課後のいま支払っている。
「授業へ熱心に取り組む姿勢、母は嬉しく思いましたよ。御母堂にもカルデアの母として挨拶をしましたし、これからは名実ともにマスターに【カルデアでの母】と私に接して……」
「頼光さんそれ以上はストップ! これまで通り母親的に頼らせてもらうけど、まだ俺の母さんは居るから。頼らせてもらうし、たまに弱い所を見せたりもするけどソレは頼光さんに対してだから」
決して母の代わりではなく英霊・源頼光だからこそ、狂化があってもそこを違えては俺と頼光さんの関係が根本から捻れてしまう。母として振る舞うのも彼女なりの親愛の表し方だから決して嫌ではないけど、楽で望まれるからと母として接することは出来ない。
「マスターは母が、私が嫌いではないのですよね?」
それに悲しい顔をする頼光さんは子に拒絶された母親のようで、というより実際にその認識も混ざっているのだろうけど、そんなつもりは一切無い。
「もちろん頼光さんのことは大好きだよ。だけどソレは母だからじゃなくて頼光さんだから、母っていうのも全部含めて好きだよ」
「まぁ、そんなに好きと言われては恥ずかしいですが安心しました。マスター、これからもよろしくお願いしますね」
今度は一転して嬉し恥ずかしな赤面で微笑んでみせた頼光さんは一先ず落ち着いたようで、俺と家族で食べるようにと夕飯のオカズを作りに台所に向かう。
だけど、今度はその代わりにじっとりとした炎が背後に迫る。
「マスターさん?」
「カーマちゃん」
ぴたりと背中に身体を合わせたのは六恋嫁の番外と云うべき例外、愛がすれ違うのを承知で俺を愛したい魔王な女神。
「マシュとユゥユゥが居るんだけど」
チラと視線を送った先の2人が抗議の視線を返し、短い火花がカーマとの間に散る。散る。そこに何らかの取り決めがなされたのか頷いた3人はそのまま、つまり俺はカーマに抱き着かれたままとなる。
「今夜はコッチに泊まりますのでマスターのお家にもお邪魔しますね、そこで愛についてじっくり語りましょうか」
思いっきり拗ねている、頼光さんとの会話の内容がよほど気に入らなかったらしい。
「20時頃にはわたしとユゥユゥさんがお迎えに行きますから、それまでカーマさんをよろしくお願いします」
「あんまりヤリ過ぎちゃダメだからね?」
「ヤリ過ぎるも何もないと思うんだけど……」
ヤッタこともゼロではないとはいえ20時でしかも自分の家でそんなことをヤルつもりは無いけど、カーマちゃんだからなぁ。襲われないとは言い切れないし、コッチから襲わせる方法なんて幾らでもあるだろう。
「ふふっ、夕食から20時まで立香さんは我慢できますか?」
「我慢するよ」
俺の自制心、よほど低く見られてる?
いやぁ、更新久しぶりで申し訳ないです。
ちょっと4月後半から6月頭まで自宅に戻れていなかったもので……。
FGOのイベントや奏章Ⅳ、新規サーヴァント、グランドクラスなど色々ありましたね。
そして新規イベント落涙の翼、テュフォン可愛いですね(*'ω'*)
そしてすみません、フェスの黒姫可愛すぎ問題が発生しました、個人的にドツボです。
皆さんも総勢100騎のなかから踏み止まれなくなるのが出てくると思いますので、お互い気を確かに持ちましょう。
そんな訳で今回の雑語り
藤丸立香
今回はアジア系のサーヴァント中心だったのでそこまで心配はしていなかったが、色々と尋ねたいことが出来たので色々と訊いてみた。頼光さんの母ムーヴは嫌じゃないけどそこに偏り過ぎて関係が拗れてしまうのは怖い、距離感が難しい。
カーマとは愛されたり愛したり、受け入れて欲しいのに一方的なのを受け止めて欲しいので恋人というかは愛ある女友達みたいな爛れ気味な関係(ちゃんとマシュ楊+六恋嫁公認)。
「愛されるなら愛したい!」
源頼光
アフター軸においては平常時は狂と槍が混ざったような状態(狂寄り)、藤丸に対しては主従でありカルデアにおける母。正しく藤丸に実母が居ることを認識しながら正しく狂って自分が藤丸の母であると思っている。
カーマ
ご存知の通りビーストな愛の女神。一方的に愛してカケラくらい愛されたいというのは、愛されただけ愛したい藤丸と噛み合わないため恋人認定はされていない。だけど本物の愛で恋なので例外的に藤丸に手を出してもマシュと楊貴妃、六恋嫁から拒絶はされない公認愛人みたいな関係。
藤丸とは互いに自分の愛を受け入れてほしいけど受け入れてくれないのも好きという捻れた関係。
楊貴妃
流石に義理の家族と偉大過ぎる初代が授業を見に来るのはキツかった唐の寵姫。帰宅後に武則天からちゃんと授業の内容を覚えているか口頭試問されていた(ギリギリ合格)。
カーマに対してはさっさと愛を受け入れてしまえば楽なのに、と見初められの先人として少し突き放し気味。
マシュ
今回はアジア系メインだったため空気になってしまった。カルデアで母といえば色んな経緯もあってブーディカな娘、頼光は日本文化の先生。
カーマに対しては互いの愛を両立させられないことをもどかしく思いつつ、そんな二人なりの愛も1つのカタチと認めている。けど過剰なのはメッ、らしい。
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