そんなわけで学校公開もいよいよ最終日、何が起こるかお楽しみに!
3日目、すでに多数のサーヴァントたちが来ていたことで半ばヤケクソ気味に誰でも来いと思っていた藤丸たちにもコレは予想外だった。
「おはようございます、リツカ君」
朝一番、教室で俺を出迎えたのは制服を着こなしたモルガンだった。スラリとした脚が伸びるミニスカートも似合うなとか、普通の制服がまるで高級品のようだなとか、思うところは色々ある。
だけど、コレは言わざるを得なかった。
「なにやってんの我が妻!?」
「我が妻、だなんて。いつも我が夫と呼ぶ私への意趣返しですか? なら名実ともにすべく今すぐ婚姻届を出しに」
「モルガンさん?」
「モルガン陛下?」
瞬間、体感気温が一気に下がる。表面上は穏やかで笑みさえ浮かべたマシュとユゥユゥの呼び掛け、だけどそこに含まれる感情はあの特異点の最下層に匹敵する。
「冗談です2人とも、これからリツカ君と学校で過ごす時間を不要な手続きで無駄には出来ません」
「モルガン、既に夫婦だからってのは無し」
「……ちっ」
危なっ、釘を刺しておかなかったらもう一度あの冷気を浴びるところだった。一先ず感情の温度が平熱に戻った2人と共に自席に着くのだが、やはりここも少し違う。マシュが少し離れた席にいるのはいつもと同じだけど、俺のすぐ後ろにモルガンが、彼女に押し出される形でユゥユゥが1つ後ろの席にいる。
「多分だけど、
「言う必要がありませんから」
「そっかー」
…今日来るサーヴァントによっては俺詰んだのでは?
ともあれこれだけは訊いておきたいので今のうちに尋ねておく。
”モルガン、コレってモルガンの認識をこの高校の生徒にしてるってことで良いんだよね?”
”流石に状況理解は早いですね、その通りです”
”じゃあ、魔術の対象は君だけ?”
”えぇ、私自身に観測者がそうだと認識するような術式を施しました”
その答えに少し胸を撫でおろす。全くのゼロではないとはいえ、生徒が無差別に魔術に曝露した訳では無いようだ。
そして今日も授業が始まり、見学者に混じってサーヴァントの気配も近付いてくる。その大半には似たようなモノが2つ、どちらも中々なことになりそうだ。
「In the all time, anything flow and gone so the world is beauty. わたしはこのように思います」
「So good, Ms.Kyrielight. ビックリするほど素晴らしいフレーズだ」
「お褒めいただき、ありがとうございます!」
ALTの先生に褒められたマシュを見て自分も嬉しくなりつつ、背後からも満足気な視線を複数感じる。教室に来たサーヴァントはバーゲストとブリトマートで、2人ともキッチリとスーツを着こなした姿はキャリアウーマンそのもの。流石にバーゲストは長身故に少し周囲が少し驚いていたけれど、気遣って柔和な表情で居ることとブリトマートが隣にいるお陰で授業の中盤にはソレも無くなっていた。
「Mr.Fujimaru, how did you feel Ms.Kyrielight’s “perspective”?」
「パースペクティブ…?」
先生から指名されるが、パースペクティブの意味が直ぐに出てこず少し考えてしまう。ややあって、カルデアでは語学の授業よりも美術の時に聞き覚えがあったことに思い至った。
「Her view that beauty does not remain the same for eternity is unique, and I agree. 何もかも不変であることは価値を固定してしまうので、新しい美しさを知るためにも変わりゆくことに着目したのは良いと思います」
パースペクティブはパースとも言われる画角、つまりは見方のことだ。普段遣いの略称でないと意味が通じないというのはよくあることだけど、英語だと特に顕著だなぁ。
「Good job Ritsuka. “perspective” は日本語で見方や視点、viewpointやangleのと比べるとより主観的で自分なりの見方だよ。businessやconferenceで自分の意見を言う時使うから、覚え置いて欲しいな」
先生の解説を聞き終え、ホッとしながら席に着くと小さく手を叩く音がする。チラと様子を窺えばブリトマートが嬉しそうにそうしているのが見えた。軽く何度かなのでさほど目立つものではないが、どうにもこそばゆい。
「それじゃあ次は、っともう時間だ。Have a nice day」
「起立、礼」
チャイムを背景に本日最初の授業は終了、幸いというかモルガンも至って普通に授業を受けるフリをしてくれたので今のところは問題ない。ブリトマートとバーゲストの2人が困ったような表情と共に『陛下をよろしくお願いします』と伝えながら頭を下げるのには逆にこちらが申し訳なくなり、『大丈夫だから』と返して見送った。
「2人とも心配し過ぎだと思いませんか、リツカ君? こんなにも学生らしく振る舞っているというのに」
「いやぁ、トネリコならともかくモルガンだと心配するのも分かるというか……」
休み時間、俺の机に腰掛けるモルガンとそんな会話をする。高身長の美男美女たちがデフォルトのカルデアでは比較的普通に思えるモルガンだが身長は170cm、日本人女子高生ばかりの教室では髪色と美貌もあってことさら目立つ。そこに雰囲気が柔和なトネリコならともかく厳格なモルガンとあっては周囲に馴染めるか、何かあった時に彼女がどう動くか心配にもなるだろう。
「なんですかリツカ君、そんなに若い女が良いのですか? 昔は若かったのにとでも?」
「そういう意味じゃないよ。何かあった時にモルガンが誤解されたり、周りから浮いて見えるんじゃないか、ってこと」
「ふむ、そういうものですか。私としては周囲の有象無象にどう思われても良いですが、リツカ君が気に病むのであれば多少は控えましょう」
致し方ないとばかりにそう言い放ったモルガンはやはり彼女らしくて、だけど俺のために控えてくれるというのに申し訳無さもある。
「なんだか我慢させるみたいでゴメンね」
「いえ、今の私はリツカ君と同じ学生ですから。同じ立場として余計な心配を掛けない配慮は必要でしょう」
涼し気に微笑むモルガンが無造作に手を俺の頭に置いた。少しヒンヤリとした、でも触れているうちに熱を帯びていく指先が俺の髪を弄ぶ。
少しくすぐったいような感触に自然と頬を緩めていると、背後からまた違った熱を感じる。ジリジリと身を灼く妖星の焔のような熱、もちろん錯覚だけどその主は俺の背中にピタリと身体を合わせた。
「立香君、直ぐ側に私が居ることをお忘れではないですか?」
「もちろん忘れてなんかいないよ、玉環」
若干の貴妃モードで嫉妬の焔をぶつけて来たユゥユゥを背中で受け止め、彼女を宥めるべく右肩を指して頭を置くよう薦める。すぐにユゥユゥは頬同士を密着させるように頭を載せ、膨れていたソコが萎むのに合わせて熱も収まっていく。
「如何にモルガン陛下といっても、眼の前で仲良くされてるとあたしは妬いちゃいますよ」
「こうして女性を誑かすなんて、リツカ君は本当に人誑しですね」
「反論できないのが悔しい……」
片や妖精で魔女の女王で片や妖星の輝きを持つ寵姫。弄ばれて落胆させないように振舞うのが俺には精一杯だけど、2人を愛すると決めた以上はそれすらも受け止めるのが最低限の務め、だもんな。でも、気のせいかマシュからの視線がしっかり注がれているような。
そんなふうにモルガンと楊貴妃に弄ばれ、あるいは2人に恋人としての務めを果たしている藤丸の姿を少し離れたところから見つめるマシュは、仲の良い女子生徒に当然のことを言われる。
「マシュちゃんマシュちゃん、彼氏が浮気してますぜ。お断りしない藤丸をどうかと思わないん?」
「モルガンさんもユゥユゥちゃんも、彼女がいる男に距離が近過ぎる」
確かに、と思わなくもありませんが2人とも節度は守られています。モルガンさんは頭を撫でるだけですし、ユゥユゥさんも先輩に勧められるまで背後に近付くだけ。さすがに頬を触れ合わせるのはやり過ぎかもしれませんが、嫉妬に膨らんでいた分が萎むと離れています。
「先輩とあの2人の距離感は普段からあのくらいなので気になりませんよ? それにわたしにはそれ以上、帰宅してからですがちゃんと気持ちを伝えてくださいますし」
此方での表向きの恋人としてユゥユゥさんには普段は少し我慢を強いてしまっていますし、少しとはいえ目の前でモルガンさんと先輩の仲睦まじい姿を見てつい、という程度ならセーフとします。
「正妻の余裕だ……」
「あっ、藤丸もそろそろみたいな感じで2人を引き離した」
「ふふっ、心配していただいてありがとうございました」
そして2コマ目の授業が始まる前、先輩は少し気まずそうにわたしへ目配せをして手を合わせましたが、問題無いとの意味でわたしも目配せを返しました。先輩はソレに軽く頷いて目線を戻すと授業の準備を始められました。
そんなわけでモルガン突撃の3日目前半、お楽しみいただけたでしょうか?
挿絵はぽ汰さん https://x.com/conpota7 に描いていただきました。
そして感想少ないのは何故かと頂きましたが作者の謎です(・・?
困ったら顔文字の一つでも残していったください、作者のメンタルが上がります
感想・評価送るのはハードル高いですかね?
-
メッチャ高い、無理
-
高い、勇気がいる
-
少し、何書けばいい?
-
興味がない
-
高くない