恋人の母から何を言われるのか、英霊と言えども気になって仕方がない。
そんな感じの第6話、お楽しみください。
感想・評価、その他、お待ちしております。
マシュと楊貴妃との関係を藤丸の母親にどう説明するか決まった週の日曜日、善は急げという訳ではないが早速2人は藤丸家を訪ねていた。
「ここが先輩のお家ですね」
地図アプリ上にマークされた場所と表札に相違ないことを確かめて、マシュが手に持ったバスケットを握りしめる。
そんな今日のマシュの服装は白と青のギンガムチェックのワンピースにクリーム色のカーディガンで可愛らしさ溢れる姿、以前にカルデア内で着たときに藤丸が見惚れたマシュの勝負服である。
「マスターのご実家、つまり天子様の住まう御殿も同様。粗相をする訳にはいきません」
その隣で同じく決意を固める楊貴妃は第1再臨の服装にも似たロングスカートのツーピース、露出少なめで清楚さを押し出したスタイルで決めている。
そして、緊張でかすかに震える指でマシュがインターホンのボタンを押す。
ピンポーン♪
『はい、藤丸です』
帰ってきたのは聞き覚えのある男性の声、そのことに安堵して2人の緊張が少しほぐれる。
「先輩、マシュ・キリエライトです」
「ユゥユゥも来ました」
《ちょっと待ってて、いま玄関を開けるから》
インターホンが切れるとすぐに足音が近付いて来る。
そわそわしながら待つとカチャリと軽い音が聞こえて玄関が開かれ、人影が。
「いらっしゃい、マシュ、ユゥユゥ。狭い家だけど上がって」
出迎えたのは藤丸立香、こちらはデニムのパンツに半袖のパーカーという夏らしいラフな格好。
「「お邪魔します」」
2人がリビングに案内されるとすぐ、女性がキッチンから4人分のお茶と菓子を持って出て来た。
顔を見ると目の周りが立香にそっくりで、母親なのだろうと察することができる。
「はじめましてマシュちゃん、ユゥファンちゃん、立香の母の藤丸葉子です。今日は立香の話をたっぷり聞かせてね」
「はじめまして先輩のお母様、マシュ・キリエライトと申します」
「私は楊玉環です」
2人は丁寧に頭を下げて挨拶をするとマシュが手に持ったバスケットを手渡す。
「クッキーを持って来たのですが、よろしければ後で食べてください。私とユゥユゥさんが作ったのでお口に合うかは分かりませんが」
「あら、そんなに気を使わなくてもいいのに。せっかくだし、ココで開けても良いかしら?」
「は、はい、つまらないものですが……」
どんなクッキーが入っているのか期待しながら葉子が取り出した包みにはオーソドックスな白黒チェック模様の四角い物と中央にアーモンドが乗った丸い物の2種類が収められていた。
「えっと、丸いのが私の作った杏仁風味ので、四角いのがマシュさんが作ったチョコとプレーンのです」
楊貴妃にそう言われて匂いを嗅いでみれば、確かにクッキーの香ばしい匂いに混ざって杏仁の甘い香りがする。
マシュと楊貴妃の製菓の腕前を知っている立香はその味を想像して笑みを浮かべ、葉子はその出来栄えに感嘆していた。
「じゃあ、早速いただくわね」
口に運ぶ様子をマシュはカップに口を付けながらチラチラと見る。
恋人の母親に自分の菓子がどう評価されるか、1人の恋する少女として気にならないはずがない。
続いて紅茶で口をリセットさせてから楊貴妃のも同様に、コチラも緊張のおもむきでその様子をじっと見つめる。
「うん、2人共とっても美味しいわよ!」
ほっ、とその一言でマシュと楊貴妃は胸を撫で下ろす。
「じゃあ俺も、いただきます」
そう言ってマシュのから手をつけた立香は幸せそうな顔でそれを味わい、楊貴妃のも口に運ぶと更に幸福度を増した表情を見せる。
「やっぱり美味しい、マシュのもユゥユゥのもどっちも最高」
「先輩、まだ有りますからいっぱい食べてください」
「足りなかったらゴーッと焼いてきます」
そのリアクションが何よりも嬉しいものだというようにマシュと楊貴妃が笑顔を見せ、その様子を見ていた葉子は自身が一番気になっていたことを切り出す。
「それでマシュちゃん、ユゥファンちゃん、カルデアでの立香はどんなだったの? 2人にご迷惑とかお掛けしなかったかしら」
いつの間にか南極に行って3年近く過ごしていた彼女たちに自分の息子が粗相をしていないか、母親としてはいの一番に訪ねたいことだった。
それに答えたのは先ずマシュの方。
「迷惑だなんてとんでもありません。先輩は私の手を握ってくれて、世界に色彩を与えてくれて、どんな時でも私のことを信じてくれました。ですから、私にとってはそれこそ一番大切にする人といいますか……とにかく、先輩はとても立派な方です」
思わず想いの丈を告げてしまい、最後の方は上手くまとめる事が出来ませんでしたが私は言いたいことを先輩のお母様に言いました。
終わって冷静になるとかなり恥ずかしいことを言ってしまったような気がするのですが。
「マシュさん、マシュさん」
「はい?」
「藤丸君が」
ユゥユゥさんにそう言われて先輩の方を見ると、私達から目を背けてどうされたのでしょうか?
「マシュさんのべた褒めに恥ずかしくなってしまったようで、お母様の前であれだけ褒められては仕方ないかと」
耳元でそう補足する楊貴妃の声にはなんとも言えない同情と気まずさが混ざっており、目の前の事態にどうしたものかマシュの思考がぐるぐる回る。
「先輩!?」
慌てて恥ずかしい思いをさせた謝罪をしながら立香に言い訳を重ねるマシュを葉子は微笑ましく見つめているが、あまりその様子を見せていても仕方ないので続けて楊貴妃が立香についての話をする。
「寧ろ私は藤丸君に迷惑を掛ける方で……。初めて会ったときも皆さんが一段落したところで騒動を起こしてしまいましたし、それ以外でもふーやー姐姐、お姉ちゃんのことや集まりの後始末だったり、藤丸君には助けてもらってばかりでした」
戦闘や護衛のようなサーヴァントとマスターとしての関係にある事を除けば楊貴妃は立香に迷惑を掛けることも多く、その度に収拾をつけてもらってばかりだったことが思い出される。
もちろん邪神の眷属としての初対面だったにも関わらず自分を受け入れ、あまつさえ恋人として隣に居て良いのが最も大切なことだが、コチラにいる間恋人はマシュの特権。
しばし片想いの少女を演じる楊貴妃は少しだけ封をした言葉で、その想いを葉子への言葉の最後に付け加える。
「そして、私が一番大切にしたい人です」
「青春って感じでいいわね。それで、立香は?」
「俺?」
急に話を振られた立香は母親が自分に何を尋ねようとしているのかを少し考える。
さっきまで話をしていたのはマシュとユゥユゥから見た自分のことだった、ということは逆に自分から見た2人のことを聞きたいのかな。
「うーん、マシュはカルデアで初めての友達で、挫けたり諦めそうになった時にいつも支えてくれた。俺がカルデアで頑張れたのは本当にマシュのおかげで、欠かせないパートナーっていう感じかな」
マシュに言われたレベルのは恥ずかしかったので言葉を選びつつ、それでもマシュへの想いはできる限り素直に伝える。
カルデアの廊下で出会ってすぐマスターとサーヴァントとなって7つの特異点と7つの異聞帯を巡り、それ以上の数の冒険を時に傍で時に離れて繰り広げた。
……最後は少しだけ望まれない結末になったけど。
「ユゥユゥは最初の1年が終わってしばらくしてから初めて会って、騒動もあったけどそれ以上に俺のことを笑顔にしようとしてくれた。たまにやり過ぎちゃうこともあったけど根は真面目で一生懸命な頑張り屋さんかな」
最初の出会いは色々あったけどその過程でそうなった理由も分かって、そのあとはちょっとした騒動がありつつも邪神から霊基の過半を奪還した時、俺を天子様ではなく藤丸立香として好きになってくれた。
そんな彼女に惹かれていたのも事実だったからマシュと一緒に告白された時、2人とも自分の恋人にしたいなんて初めての欲が出てしまった。
「なるほど、2人共大切な子なのね。ちなみにどちらかの子とお付き合いとかはしているのかしら?」
「「「!」」」
来た、と3人は思った。
年頃の男女が親しくなればそう思うのも無理はないことで、母親として息子の恋人が気になるのは当然のことだろう。
想定はしていたし回答も在る、それを告げる最後の確認として立香がマシュと楊貴妃に目配せすると微かに笑みを浮かべて2人は頷く。
「実はカルデアに居た時、告白されてマシュとは恋人として付き合っています。ユゥユゥとはマシュとそういう関係だって分かった上で告白されて、好意を向けられている友人っていう感じの、チョット変わった関係です」
肉親とはいえ交際を報告するということで自然と敬語になってしまった。
実際はマシュとユゥユゥから同意を得た上での3人カップルだが、日本の倫理観とは合わないため隠すしかない。
「……そう。マシュちゃん、立香になにかされたら何でも言ってね。ユウファンちゃんも立香よりも良い人に会ったら遠慮なく次の恋に行くのよ」
やはり完全には納得していないようだが、この3人が良いと言うなら外野がとやかく言うことではないと葉子も変な批判はしない。
そういった真面目な話はそこで終わり、その後はカルデアで立香がどんな生活をしていたかを中心に和やかな時間が過ぎた。
フォーリナー好きにとって、イマジナリスクランブルとお栄さんの幕間は必修科目。
そして始まったアケコラボ、ドラコ―参戦やPU2等に今から期待が高まりますね。
よろしければ、感想・評価など頂けるとありがたいのでそちらもよろしくお願いします。
どこが好きとか、一言レベルで構いません。
感想・評価送るのはハードル高いですかね?
-
メッチャ高い、無理
-
高い、勇気がいる
-
少し、何書けばいい?
-
興味がない
-
高くない