フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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すべてが終わったあと、変わった自分と変わらない日常とを過ごすカルデアのマスター・藤丸立香。
いよいよ高校は文化祭シーズン、どんな出し物をするのか決まって、藤丸・マシュ・楊貴妃の3人はどう臨むだろうか。

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第60話 藤丸、文化祭への備え

11月、街がハロウィンからクリスマスに模様替えする中で藤丸たちが通う高校では文化祭の準備が始まった。

 

「全員傾聴、今年の我がクラスの出し物ですが無事に飲食店の許可が出ました! ただし、教室利用なので煮たり焼いたりは制限付きです……」

「粉モン屋台やりたかったー」

「教室だと暖かいから良いよね」

「最近の流行りってナニ?」

 

 クラスの文化祭委員の発表にクラスのみんながワイワイ騒ぎ出す。

 かくいう俺もその1人で、マシュとユゥユゥ共々どんな出し物がいいか話し合う。

 

「先輩、文化祭のお店は初めてなのですがどういった形になるのでしょうか?」

「あたしも先ずはそれから聞きたい!」

「じゃあそれを簡単に説明するね」

 

 2人にざっくりと教室内での飲食店の制約、防火と油汚れの観点からフライヤーの使用が禁止でガスコンロも卓上コンロに限れること、そのため鉄板や網といった調理器具が使えないこと、どうしても必要な時はホットプレートで代用することなどを説明する。

 

「それなら確かに粉物は難しいですね。一度に1人前ずつ作るのがやっとでは、お客さんを捌ききれません」

「だから教室でやる飲食店は事前に準備が出来るお菓子とか、1人前ずつでも手早く出せるクレープとかが多かったんだよね。暖かい屋内で座る、っていう需要もあるし」

 

 粉モンが出来ないことを残念がっていた理由を理解したマシュに記憶を辿って補足する。

 晴れていても肌寒い11月、可能なら暖かい場所でというのは避けられない欲望だ。

 

「外で買って中で食べるって感じなら、 喫茶室(カフェ)よりも 休息室(ラウンジ)が近いのかな? 空間づくりを大切にして、一曲つま弾いてみるのもいいかも」

「演奏だけでお金が取れるレベルだよソレ......」

 

 曲がりなりにも宮廷で楽士以上の腕と称され、しかもカルデアではアマデウスやサリエリとも演奏を共にする彼女の演奏は十分にそれだけの価値がある。

 まだ何もクラスでは決まっていないけれど、ふとユゥユゥが琵琶をつま弾くラウンジを想像する。教壇に掛けた御簾の裏で彼女がつま弾く琵琶の音を聞きながら聴きながら外の屋台で買った飲食物をつまむ。外にはつい足を止めたお客さんもいて、一曲終わっても居座ろうとクラスで出してる飲食物を買ったり次のお客さんともめたり……。

 

「やっぱり演奏はやめたほうが良いね、お客さんが大変なことになる」

「えー、立香君も店員さんで傍に居るからずっと聞かせてあげられますよ?」

「ちょっと惹かれるけど、今回は残念ながら」

 

 聴きたい気持ちはあるけれど、迷惑を掛ける訳にはいかないので今回はお断りを。

 ただユゥユゥはその代わりにと、こんな提案をする。

 

「じゃあ、家に帰ってからセッションしよ? もちろん、マシュさんも一緒に」

 

 それならば良いかとマシュをちらと見て、彼女の方はどうかと確認する。

 

「喜んでご一緒させてもらいますね。先輩とユゥユゥさんほど演奏は上手くないので、歌でがんばりたいと思います」

 

 小さく胸の前でガッツポーズをしたマシュが可愛らしくて、つい笑みを浮かべてしまう。

 そして俺たちが話をしている間にも議論は進んでいて、思い出したように見た黒板には幾つかの候補が並んでいる。

 クレープ、焼きドーナツ、喫茶店、フルーツジュース、食べ物だったり飲み物だったりするそれらを眺めているうち、ふと思いついた事があって手を挙げる。

 

「藤丸さん、なにかアイデアがあるならどうぞ」

「ちょっと喫茶店と重なるけれど、ベーカリーカフェはどう? 冷凍パンなら手間も少なくてアレンジで個性も出せるし、カフェ要素のコーヒーや紅茶を出せば寒い時には良いかなって」

 

 その後も出し物を決めるクラス会はふざけたものも含めて意見が出され、残ったのはこんな感じに。

 

「クレープ屋とベーカリーカフェ、コンセプトに逆転と仮装」

「では、最後の投票をするので挙手をお願いします。まずは何をやるか」

 

 さて、どうなるのか……。

 

 

 

 文化祭でのクラスの企画が決まり帰宅後に気晴らしの一曲を演奏し終えたわたしたちは、先輩を交えて自分たちが何をするのかを話し合うことになりました。

 

「企画は『逆転ベーカリーカフェ』ですか、何を逆転させるというのです?」

「お客さんと店員さんが逆転というのはないでしょうし、普段はホットのものをアイスで提供するとかでしょうか?」

 

 演奏を聞き終えた後もリビングに残り、わたしたちの話を漏れ聞いていたモルガンさんとコルデーさんが不思議がるのも無理はないその企画を、お2人にもかい摘んで説明しましょう。

 

「今回の逆転は店員をするわたしたち生徒が何かを逆転するというもので、仮装やコスプレに近いかもしれません」

 

 例えば運動系の部活動に所属しているなら文化系、水泳部なら陸上部と分かるような格好をするなどがある。

衣装だけでなく真面目な生徒は少し着崩してカラーワックスで髪を染めたり、極端に簡単なモノでは自分のように眼鏡を掛けている人が外すのもアリで、自分の属性を何か逆転させれば良い。

 そんな説明を終えたマシュは、モルガンの視線が藤丸へと注がれていることに気付いた。

 

「先輩がどうかしましたか?」

「うーん、嫌な予感がする……」

 

 先輩はその視線に困り顔ですが、向こうにいるユゥユゥさんも同じく視線を向けたと思えば、モルガンさんと顔を合わせて頷かれて……?

 一体、2人の間でどのような合意がされたのでしょうか。

 

「我が夫、あなたはどのような逆転をするつもりだったのですか?」

「俺? うーん、髪と瞳を立香の色にしてみようかな」

「た・し・か・にー、ソレも良いと思いますけれど」

 

 ニッコリと、それはもう楽しげな笑みを浮かべたモルガンさんとユゥユゥさんは先輩の腕をそれぞれに抱いて立ち上がらせました。

 

「え? 2人とも何を?」

「「ふふふふふ」」

 

 そしてそのままクローゼットのある部屋に……。

 なるほど、コレが先輩の感じた嫌な予感でしたか。

 

「マシュさん、一体中で何が起きているのでしょうか」

「先輩が逃げて来ないのでそこまで嫌なことはされていないと思うのですが、分かりませんね」

 

 コルデーさんと部屋の中を覗こうかとも思いましたが、施錠されていたので断念してわたしの『逆転』について話すことになりました。

 一応、考えてはいるのですがどう思われるでしょうか。

 

「ふむふむ、パンツスーツですか」

「最初はアルトリアさんたちのようなバトルドレス風の衣装をと思ったのですが、カフェの店員としてあまり相応しくない事に気付きまして。なので、少しだけ男性らしい要素も入ったパンツスーツに挑戦しようと思います」

 

 イメージはベディヴィエール卿のシルバー・バトラーや先輩のロイヤル・ブランドような、細身でカッコいいスーツです。

 

「マシュさんは普段ふわふわした印象ですから、戦闘時のようなキリッとした姿は確かに逆転ですね。いいなぁ、私も逆転したいなぁ、シャルロット・コルデー・オルタとか」

「コルデーさんのオルタ、いったいどうなるんでしょうか?」

「「うーん」」

 

 英霊が大切なナニカを捨てて反転したのが異霊(オルタ)なら、生前フランスの為という感情に駆られてジャン=ポール・マラーを暗殺したコルデーさんは、その義憤や激情を捨てたことになるはずです。

 

「修道院で暗殺者として育てられた、冷酷で感情を持たない女性暗殺者はどうでしょうか」

「女性暗殺者、その響きが既に良いですね! 綿密な計画で標的を暗殺して、ソレが革命の行先を左右する……。はぁ、私みたいな行き当たりばったりとは、まさに逆転(オルタ)です」

 

 自分の何気ない言葉に理想的な暗殺者を想像したコルデーが落ち込んだ姿を見て、マシュが慌ててフォローする。

 

「そんなことはありませんよコルデーさん、わたしと先輩だって行き当たりばったりでしたから。その、たまたま巡り合わせが良かっただけで、コルデーさんのように何か逸話を残すこともなく終わっていた可能性も、沢山ありました」

 

 人理焼却の時はキャスターのクー・フーリンさんや岩窟王さん、ベティヴィエール卿、ウルクの皆さんや賢王ギルガメッシュ、レムナントミッションではジャンヌ・オルタさんに武蔵さん、皆さんが居たからこそ勝つことが出来た。

 そして人理漂白は常に薄氷の上での戦いで、必死にあらゆるものを手繰り寄せて使い切って、ようやく五分の戦いでした。

 

「周りの誰にも相談出来ない中、1人で成し遂げたコルデーさんは十分に立派な英霊だと思うのです」

「……本当にそう思いますか?」

 

 弱気なコルデーさんに、わたしは力強く首を縦に振って応えた。

 

「はい、わたしだけでなく皆さんがそう思って、何よりも先輩、立香さんがそう思っています」

 

じっと考え込むように目線を落としたコルデーさんが再び顔を上げたとき、その表情は少し柔らかくなっていました。

 

「マシュさん、まだちょっと自信は無いですけど、オルタのことを考えるのは一度止めます。それに、マシュさんの服装の話が途中でした、はい、そっちの話をしましょう!」

「そうですね。楽しい話をして、難しい話は忘れてしまいましょう」

 

 暗くなってしまった話題を一先ず横に置き、タブレット端末や雑誌を開いてわたしのスーツについてアレコレと話を。

 基本的にはレディースではなくメンズのブリティッシュスタイルで重厚感を持たせて、ただし学園祭の企画なので高級感は抑えた布地や仕立てにするつもりです。

 

「このデザインはどうですか?」

「良いと思います、これをベースにネクタイやシャツをカジュアルなものにしましょう」

「えへへ、マリー王妃のおかげで少しはファッションも分かっているんです」

 

 そのままコルデーさんと話すことしばし、一段落ついた内容をまとめてハベトロットさんに送ると先輩たちも部屋から出てきました。

 先輩は少し疲れているようですけれど楽しげで、ユゥユゥさんとモルガンさんはとても楽しげで肌も心無しかツヤがあるような。

 

「この玉環、天子様の艶姿をしかと目に焼き付けました。っていけない、つい貴妃モードになっちゃた」

「我が夫も思った以上に乗り気でしたね、もしや最初から?」

「まぁ、全く考えていなかったわけじゃないから。初日次第で2日目には、ってところ」

 

 やはりといいますか、3人も話していたのは先輩がどのような格好で店員をするかとおいうものだったようですね。

 

「先輩、どのような逆転をなさるのですか?」

「うーん、いまは秘密。ここで話しちゃうと面白くないでしょ?」

「私も気になります、ユゥユゥさん教えてくれませんか?」

「ふふ、いまは秘密かな♪」

 

 なにやら先輩の逆転については秘密のよう、ならわたしも詳細は当日まで秘密にしましょう。

 

「それでは先輩、細かいところはお互いに秘密ということで」

「りょーかい。ところで、ユゥユゥの逆転はどうしようか?」

「あっ、そういえばあたしのこと何もカンガエテナカッタ」




いつも読んでくださりありがとうございます。

いや、新イベントは少し謎が多いですが平和そうな開幕でよかったです。
なにより、新礼装のぐだが笑顔なのが嬉しくて嬉しくて(*^^*)

よろしければコメントなどよろしくお願いします

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