「……」
「なんでしょう?」
私の目の前には、怪獣がいます。今、その怪獣に話しかけられています。
怪獣じゃないのはわかってますよ?なにせ原作知ってますからね!
でも何?その恰好…
まぁね。見た事あります2丁目で。その手の趣味のある方や、肌の手入れとか化粧の仕方とか、すごくうまい人もいるので聞きに行こうとか言われて、連れていかれた事もあるのでね…。
でもまさか、カマバッカ王国以外でこんな姿をした人見るなんて…。
思っていなかった分、衝撃がデカいわ。
知らずにいたら悲鳴上げてるわよ?ルフィは笑ってるけど…
「なんでもないわ。でも、何故に女装を?」
私は平静を装い、イガラムに尋ねた。
「ざぐ…ゴホッ! マ~ママ~♪ …策がございまして」
聞いてみるとイガラムの策というのは、自分が囮になるのでその間にビビをアラバスタまで送ってほしいというものだった。しかも、アラバスタへの『永久指針』を持って行くという。それは策というのだろうか?
いえ、想定通りなんですが…
「いいぞ」
船長のルフィが、ビビをアラバスタまで送り届ける事をあっさり了承した。
「8000万って、アーロンの4倍じゃない! 断んなさいよ!!」
話の流れで、かつてクロコダイルにかかっていた懸賞金額を聞いたナミが、泣きながら叫んでいた。でもさ…
「8000万は、七武海入りして手配が失効される前の額でしょ?バッロクワークスを作ったのは多分その後だろうし、今だったらもっと高額に…」
「もうやめて! それ以上聞きたくない!」
ナミが耳を塞いでしゃがみこんでしまった。でも、ルフィと私のを合わせた額よりは低いと思うわよ?
「どのみち、もう逃げようがないんだから、腹を括った方がいいんじゃない?」
肩に手を置いて言うと、ナミはガックリ項垂れた。顔が知られてしまった以上、ここでビビと別かれたとしても、刺客は襲ってくるからね。
「それじゃあ、出航の準備をしないとね!」
「準備?」
きょとん顔になってるルフィに、私はうなづいた。
「サンジとウソップの回収(酒と食料の回収含む)と、出航準備! 私たちも早く出発した方がいいでしょ?」
言うと、みんな納得してくれたらしい。なので私は2人が寝ている酒場へと向かった。
未だに眠ったままのウソップとサンジは小さくして運びやすくして、ついでに酒場の酒とか食料を集めて小さくして収納貝に入れてたら、外からもの凄い爆破音が聞こえてきた。窓から見ると、空が赤く見えるほどの炎が立ち上っていた。
あの爆発は………
実際に見たら、あの爆発で助かるとか考えられないんだけど…。なるほどそういう事か。敵を騙すには………ってか?
しかし、あの音でも起きない2人もすごいわね。
それじゃ、そろそろ行きますか。何だかんだでそれなりに収獲もあったし。
寝ている2人は甲板に置いて元の大きさに戻しといた。それでも起きないところがすごいけど。飲みすぎじゃんね?
そして私は碇を上げる。 帆はまだ張らない。みんなも来てないし。
碇を上げている最中に、いの1番で飛び込んできたのはカルーだった。流石は動物、生存本能が強い。というか、よくこの船だって分かったわね。私が乗ってるからか?
4人もすぐに来た。カルーがすでに乗り込んでいることを教えると、ビビとナミに盛大にツッコまれていた。
そして全員が乗り込んだことで、帆を張って出航となった。
「追手って何人ぐらい来てるんだろうな?」
ルフィの疑問は当然と言える。ナミやビビは、1000人単位で来てるんじゃないかと言っているけど…。
「そんなに大勢は来てないわね」
私が言うと、注目されてしまった。海王類の件以来、全員私の覇気の事を理解してくれているからね。
「1000人どころか、1人だけよ」
「1人!?」
そんなバカな、と言わんばかりのビビ。少なすぎる、とでも思ってるのかしら?
「さっきの爆発があってから、この辺一帯の気配を探っているけど、1人の気配しか感じない。でも別に、おかしな話じゃないでしょう? 一騎当千って言葉もあるんだし」
正直に言ったのに、ビビから向けられる視線は、とても胡散臭そうなものだった。
なんだかナミまで疑ってる感じ?
「イオリの力を疑うわけじゃないけど、さすがにそれは少なすぎるんじゃない?」
「いいえ」
私はふるふると首を横に振った。
「間違いなく1人よ。ただし強いわ。Mr5ペアなんて話にならないくらいにね。」
いやマジで、ロビンの気配って結構強いわよ?7900万は伊達じゃないっていうか… でも、最初に手配されてから金額が上がっていないところを見ると、本人の強さはそこまで評価?されていないみたい。
1人わけが解らないって顔をしているビビに、ナミが覇気について説明してる。
ビビはというと、説明を聞いてもやっぱりまだ疑ってるらしい。
まぁそうなるよね。いくらグランドラインとはいえ、原作でも前半の
という事は…しばらくの間、覇気については使う度、説明しなくちゃならないのかな?なんだかすごくめんどくさい。説明書でも作っとこうかしら?
出航後、この後の展開を考えて、舵は私が握ることにした。
航路は川を上るコース。そしてそのまま航路に入るらしい。
メリー号の舵と言えば船内にある。なので私は1人寂しくラウンジにいるわけだ。
途中でデッキが騒がしくなったので、ウソップ&サンジが起きたんだろうと窓から覗いてみると、丁度ナミの鉄拳によって沈められているところだった。あれは説明とは言わないと思う…。
そして、もうすぐ朝。という時間帯になった頃に、メリー号に新たな気配が現れた。
やっぱり来たわね。ロビン…。
「お前、帽子返せー!」
タイミングを見計らい、私がデッキへの扉を開けたのは、丁度ルフィの帽子が盗られたところだった。
「………」
「………」
ラウンジはデッキから見ると2階にあたる。デッキから階段をのぼり、通路を通って扉がある。通路には手すりがあって、そこにロビンが腰かけていた。
当然彼女は振り向いて鉢合わせる事になる。沈黙が気まずいけど… そうね。取りあえず。
「帽子を盗るのはヤメたげて!」
ロビンが手に持ってた麦わらを奪い返した。これはルフィの『宝』だものね。
「イオリ!」
取り返した帽子は即座にルフィに投げ返しといた。
「「!!?」」
デッキにいる者も、ロビンまでが驚いた顔をした。私自身も驚いた。自分の目から涙が流れていたからだ。なぜ涙が出たかと言えば、ロビンの思考を読んだから。
心の奥底まで思考を読んでしまうと、感情移入してしまう事があるらしい。これは不味いかも?
「…あなたは…何を泣いてるの?」
「なんでもないわ。それより、何か用?」
ロビンは今、手を伸ばせば届くくらいの距離にいる。私が聞くと、驚きの表情から一変、探るような視線を向けてきた。おそらく私が自然体だからだろう。何かを納得したようで、ロビンが口を開いた。
「…忠告に来たのよ。このウィスキーピークの次の島の名は、リトルガーデン。あなた達はおそらく、私たちが手を下さずともその島で全滅するわ」
「私たちってことは、バロックワークス?」
私の質問に答えたのはビビだった。
「そいつはミス・オールサンデー! クロコダイルのペアよ!」
知ってるけどね?
そして、ビビの答えを聞き、私はどんと胸を張った。
「言った通りだったでしょ?やっぱり刺客は1人だった!」
「「言ってる場合かっ!!」」
ナミとゾロにツッコまれた。ちなみにルフィは帽子が戻った事に喜んでいて、こっちの話は聞いてない。
「…私の話を聞く気はあるの?」
「何で敵の話を聞かなきゃいけないの?」
私とロビン、2人して笑顔で牽制し合ってます。実はちょっと面白かったりする。
「そう…でも、これは渡しておくわ」
ロビンは下にいるビビに永久指針を投げて渡した。
「それはアラバスタの1つ手前、何も無い島への永久指針。リトルガーデンを飛び越えて行けるわよ。うちの社員たちも知らない航路だから追手も来ない」
その行動にみんなは驚いているけど、ゾロが1人冷静に罠だろうと言っていた。
みんな、とは言っても、ウソップとサンジは事情が解ってないのか置いてきぼりを食らっている感じだけれど…。
そんな中、何の前触れも無くビビの持つ永久指針を壊すルフィ。グッジョブ!
「この船の進路をお前が決めるなよ!!」
「そう。残念」
残念と言ってるけど、むしろ楽しそうなロビン。
用件は本当にそれだけだったらしくて、ロビンはそれを確認するとさっさとカメに乗って行ってしまった。
船を降りる際、怪訝な顔を私に向けながら…
「あの女…何を考えてるのかさっぱり解らない」
去っていくロビンを見送りながら、ビビはがっくりと膝を付いている。確かにロビンの行動は端から見ると意味不明だ。罠じゃないとしたらバロックワークスの副社長らしからぬ行動だし、罠なら罠でもっとそれらしく、効率よく引っかける方法がいくらでもある。
「ずいぶん豪華な会社ね、バロックワークスって。社長が七武海のクロコダイルで、副社長が『悪魔の子』ニコ・ロビンだなんて」
「えぇそうね…って、ニコ・ロビン?」
頷きかけ、途中で首を傾げるナミ。不思議そうな顔をしているのはゾロやビビも同じだ。
「それって、ミス・オールサンデーのこと?」
ビビが困惑しながら見上げてくるので、私は頷いた。
「そう。手配書で見たことがあるのよ。確か懸賞金額は7900万ベリーだったかな?」
7900万、とみんなは瞠目した。
「クロコダイルと殆ど変わらないじゃない!」
ナミが悲鳴のような声を上げた。
「そうね。…20年ぐらい前に、8歳かそこらで手配されみたいよ?」
別にさっき目の前で言ってもよかったんだけど、そうしなかったのは変に警戒されたくなかったからだ。
「おい、状況を説明してくれよ! 何がどうなってんだ?」
「ミス・ウェンズデー、もしかしてお仲間に!?」
ウソップは必至だ。サンジは…ビビが船に乗っている事で状況はどうでもいいらしい。
とりあえず、2人に事情を説明する。話の途中でナミがふと私の方を見た。
「そういえば、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
もしかして、泣いてた事かな?あんまり言える事じゃないんだけど…
「さっきあの女が言ってたじゃない、私たちが次に向かう島リトルガーデンは随分危険なところだって…何か知らない?」
なんだ、リトルガーデンのことか。でも…
「何で私に聞くの?」
知ってるけどね?だからわざわざクロッカスさんからいろいろ薬をもらったんだし。しかも変な見送りの言葉まで頂いちゃったし。
「あんたは、アラバスタのことだって知ってたじゃない。だからリトルガーデンの事も知ってるかな?って…その名前、どこかで聞いたことがあるような気がするんだけど、思い出せなくて…」
なるほど納得。それでは説明するとしますか。
「確かに、行った事は無いけど、知ってるわ。どういう島かと言うと、古代生物が住むような太古の島よ」
「…つまり? どういう風に危険なの?」
「分かりやすく言えば、ジャングルでトラが血塗れになって倒れるような島って事ね!」
要するに、命の危険があるということである。聞いただけだというのに、ナミは口から魂が出て来そうになっていた。
「太古の生物って、何だ?」
それまで黙って聞いていたルフィが首を捻っている。何って言われても、太古の生物と言ったら最初に思いつくモノは…
「恐竜とかかな?」
私の目的もそれだったりする。
「!!つまり何だ?」
「
「冒険!!?」
と、ルフィが目を輝かせた。
「サンジ! 朝メシ! それに海賊弁当!!」
気が早い…とも言えないのよね。今は朝だし、昼頃にはリトルガーデンに到着する予定だし…。
冒険と聞いて、ルフィはもう大喜びだ。遠足前の小学生な感じ?
これだと、島に着いた途端に飛び出していきそうな感じがするわ。
「そういえば、何で『リトル』ガーデンなのかしら?」
魂が戻ってきたナミに聞かれた。太古の生物と言われれば比較的大型の生物を想像するだろう。けれど、答えは簡単だ。
「その島に、巨人族の戦士がいるからよ。巨人から見れば、ジャングルだって小さな箱庭みたいに見えるでしょ?確か探検家ルイ・アーノートの冒険記にもそう書いてあったわよ?」
そう答えると、ルフィがさらに顔を輝かせる傍らで、再びナミの魂が抜け出そうになっていた。
いざ、リトルガーデンへ!