イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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クラスター・ジャドウさん、誤字報告ありがとうございます。


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03-95話:リトルガーデン

 寝ている間に起こった事と、ビビの事情について聞いた2人の反応は、面白いほど正反対。寝てて良かったと安堵するウソップと、悔しがり、今後に期待するサンジという具合だった。

 正直なのはいいけど、ウソップにはもうちょっと頑張ってほしいと思う。

 

 2本目の航海は、1本目ほど荒れることは稀である。なので私はラウンジで、ウィスキーピークの酒場で集めたブツ(酒と食料)を分別していた。

 栓をあけていないものばかりではく、大量に持ってきたから、あいてるものは同じモノをまとめて詰めなおしたり、中途半端なものは、すぐに食べたり飲んだりする用に分けたりしてたってわけ。

 整理していて思った事は、武器とかも同じように集めておけばよかったという事。自分たちで使うモノだけを残して、アラバスタで売れば、けっこうなお金になったかも知れない。まぁ、そんな余裕はなかったから仕方がないんだけど、ドラムの武器庫からは、いくつかもらう事にしようと、今決めた。

 整理中、なんだか外が騒がしかった気もするけど、私が呼ばれることはなかった。

 特に問題なく航海は進み、リトルガーデンが見えてきたのはブツの整理が終わり、ラウンジをキレイに片づけ終わった頃だった。

 逆算してたわけじゃないけれど、ずいぶんタイミングよく着いたもんだわ。

 

「グランドライン2つ目の島だァ!」

 デッキに出てみると、リトルガーデンが視界に入ってきたことで、沈み込んでるのが約2名。

 それはもちろん、ナミとウソップだ。

 

「リトル…ガーデン…」

「太古の生物…巨人の戦士…」

 なんだか声も掛けづらい。ってか、下手に声をかけない方が、いいかもね?

 

 そういえば、やっぱりナミは”探検家ルイ・アーノートの冒険記”を持っていた。自分でもしっかり確認してた。

 確認したからと言って、事態は好転しないけど…

 まぁ、少なくともその冒険家が無事にその島を出れたんだから、大丈夫じゃね?的な事を軽く言ったら怒られた。

 意外だったのは、ビビがそこまでこの島を恐れていない事だ。胆力はもともと強かったとは思うけど、この2年でさらに鍛えられた気がする。

 Mr9のパートナーを務めてたくらいだから、戦闘力もそれなりに高いと思うし。

 それでも、太古の密林は十分脅威なはずだけど、警戒はしても、過剰に恐れる事はしない。そういう事なんだろう。

 

 ルフィに至っては、どきどき・うきうき・わっくわくっ!!て感じ。ついでに言うなら、サンジはもう弁当を作り終えている。ルフィに急かされた結果であろう。

 

「こんな植物…図鑑でも見たことないわ」

 船が河口から島に入ると、生い茂るジャングルを見渡してナミが呟いた。

 

「やや…やっぱり、太古の…!?」

 ウソップなんて、既に膝が笑っている。

 その時、ジャングルから獣?の声が聞こえ、上空でも何かが飛んでいた。鳥みたいな、爪が鋭い感じのが…

 そうかと思うと、”ドォン”というもの凄い轟音が振動と共に響いてきた。

 

「ま、まるで火山でも噴火したような音だぜ!?」

 正解です。

 

「鋭いわね。」

「へ?」

 

「リトルガーデンには活火山がいくつかあるみたいよ?今のはウソップの言う通り、噴火の音だと思うわ」

 例えとして口に出しただけで、実際に火山があるとは思ってなかったんだろう。

 ウソップはお馴染みの『叫び』状態になっている。

 

 

「冒険!!」

 陸地に船が着くや否や、ルフィが一人で飛び出しってった。

 おいっ!!お前ついさっき、ビビが一緒に行くっていったら『来い来い』って言ってたのに…。なんで一人ですっ飛んでくかな?

 

「ゾロ、悪いんだけど、錨降ろしておいてくれる?あのバカ、ビビを置いてっちゃったから、送って来るわ!」

 なぜゾロに、ビビをルフィの所まで送り届けてと言わないかと言えば、もう皆さんお判りでしょう?

 ええ、たどり着けないからです。はい。

 ビビとカルーだけで行かせるわけにもいかない。いくらカルーが速いからって、好き勝手動き回ってるルフィに追いつくのは至難の業だろう。

 しかもこの森、ジャングルは、危険がいっぱいの場所である。カルーなんて、ビビに連れていかれる感が半端ないものね。

 頑張れカルー!この経験はきっと君を大きく成長させる!(と思う。たぶん…)

 

「わかった。錨をおろしたら、おれも散歩に出るけどいいよな?」

「いいわよ? この島程度の広さなら、どこに居てもわかるから。」

 ジャングルで迷ったところでゾロなら死ぬことも無いでしょうからね。

 

「あァ?どういう意味だ?」

「わからないなら、いいわよ別に…」

「?」

 首を傾げるゾロは放っておこう。ちなみにゾロの後ろから、生暖かい視線を送っていたのは、ビビを除いた3名である。本人は気づいちゃいないけど…

 

 私はカルーに乗るビビを連れ、ジャングルに入った。気配を探りつつルフィに向かう。

 

 

 

「なんだ、イオリも来たのか?」

 ルフィに追いつくと、満面の笑顔で振り向いた。見ていて微笑ましくなるような笑顔だわ。ほんとに、すっごくうれしそう。

 

「私はビビを送り届に来ただけよ!!まったくあんたは…。着いた途端にさっさと行っちゃうんだもの! この島を説明する時言ったけど、『トラが血塗れになって倒れるような島』なんだから、ちゃんとビビの事、守りなさいよね!」

「おう、まかせろ!!」

 なぜだか、その『まかせろ』は信頼できるから不思議よね?

 とりあえず、ビビをルフィに送り届けた。ので、私は船に戻る振りをして、別の場所へと向かうのだった。

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

 ルフィにビビをまかせた私は、2人が見えなくなったあたりで気配を探り、自分をミニ化した後、月歩で島から飛び出した。

 

 目指すは、『13日の金曜日(アンラッキーズ)』。ウイスキーピークで見かけたラッコとハゲタカのペアである。

 2匹は島のすぐ近くまで来ていた。この島に向かっていたらしい。

 

 この鳥、何気に速いんじゃない? わずか半日で、ウイスキーピーク→アラバスタ→リトルガーデンと巡っているのだとしたら、かなりの速度だし、それに大したスタミナだと感心する。

 まあ、そんな事を言いだしたら切りがないんだけどね? それに、今はそんな事はどうでもいい。

 

 何故に私が彼らの元に向かうのかと言えば、アラバスタへの永久指針の回収と、2匹の捕獲の為だ。

 原作ではサンジが遭遇して、アラバスタへの永久指針を手に入れるけど、この後ドラムに向かうつもりなので、それを阻止する為である。

 サンジの手柄を潰すみたいで悪いけど、五日病の薬は手に入れてるので、原作通りだとドラムに向かう理由が弱くなる。

 

 麦わら一味がドラムに向かわないとどうなるか?

 

 ワポルは国王に返り咲くだろう。そうなれば、ドルトンさんは処刑もしくは幽閉される。ドクトリーヌの身にも危険が及ぶかも知れない。そうなれば、当然チョッパーも無事では済むまい。

 

 原作通りに進めようと思っても、ナミが罹患(りかん)するとも限らない。そもそも薬も無しに五日病になんかになってほしくないし、それを理由にドラム行きを決めたくない。

 

 だからドラムに行く理由は、この島を早く出る為と、元々の計画通り、船医を勧誘する為にしたいと思っている。

 

 この島で記録(ログ)が溜まる期間が1年だとわかり、ドラムへの永久指針を持っている事を教えれば、それは可能と思われる。

 一つ懸念があるとすれば、じゃあ何で、ウイスキーピークを出る前にそれを言わなかったのか?という事。

 何かしら、それらしい理由を考えておかないと、聞かれた時に不味いわね。 正直に『恐竜が食べてみたかったから!』じゃ、間違いなく怒られるだろうから。

 

 

 2匹の処理は簡単だった、極小範囲での覇王色で意識を奪い、小さくして収納貝へ入れといた。

 事が終わったら開放してあげようとは思うけど、組織が崩壊したらこの子らどこに行くんだろうね? どうでもいいか。

 

 これで、この島で私がやらなきゃならない事の大半は終わった。

 あとは、Mr2と遭遇するように(私は会う気ないわよ?)、どうやってMr0にMr3を抹殺するよう仕向けるかなんだけど、さて…? あとは、何種類かの恐竜を狩ろうかしらね?

 そんな事を考えながらメリー号に戻ってみると、何故かナミとウソップが泣いて喜びながら迎えてくれた。原作通り、サンジも船から出たらしい。

 

 あれ?別に食糧は不足してないはずだけど…?

 

 サンジって、恋の奴隷のハズなのに、ナミをこんな危険な場所に置いてっちゃうんだ? まぁ無事だったからいいけどさ。

 

「あんたはもう、どこにもいかないわよね?」

「恐竜狩ろうかと思ってたけど?」

 

「バカ言え!こんなとこにか弱い2人を残していく気か?」

「恐竜なら、ゾロとサンジ君が狩ってくるはずだから大丈夫よ!いいからあんたはここにいなさい!」

 言いたい事は分かるけど、それならサンジを止めなさいよ!!

 

「なんだか理不尽な気がするんだけど? まぁ、確かにこの島は危険だろうけど、ウイスキーピークで感じた気配もあるのよね~…」

「「は?」」

 私が言うと、2人は驚いていた。

 

「ま、まさか…、もう追手が来てんのか?」

 

「ウイスキーピークで…って事は、Mr5ペアとか?」

「そうね。それと、その近くに2つ知らない気配があったから、たぶんさらに上位のエージェントでも来たんじゃない?だからそいつらはやっつけとかないと…」

 追手が既にこの島に居る事を知り、ウソップはおろおろし出し、ナミは対応策を考えていた。

 

「ルフィ…は無理だから、ゾロ…は迷子になっちゃいそうだし、サンジ君に言ってやっつけてもらえばいいじゃない!」

 順番が最後だなんて、かわいそうなサンジ…それとも仲間に入った順かしら?

 

「じゃあ、サンジの所へ行っていい?」

「「…」」

 私が尋ねると、2人は顔を見合わせた。

 

「おめェ…、まさかそのまま狩りに行く気じゃねェだろうな?」

「そんな事はしないなんて約束はしないなんてことも無くは無いかも?」

「結局行く気じゃねェかよ!!」

 あらすごい!一瞬で良くわかったわね? それだけ必死だって事?

 

「じゃあ、どうすんの? それとも一緒に行く?」

「「……」」

 2人は、また顔を見合わせた。どうするか悩んでいるみたいで、あーだこーだと言っている。

 あ~あ……。そんな事やってるから、原作通りになっちゃいそうよ?

 

「しかたがないから、私たちも一緒に行くわ!」

 2人が結論を出したのは、既に手遅れになってからだった。

 

「残念だけど、もう無理ね。」

「「?」」

 2人が首を傾げていると……

 

「何が無理なんだ?」

「「!!?」」

 ここにいる3人以外の声がして、ナミとウソップは、目を見開いて固まった。

 その声は普通の人のそれとは違い、重低音で良く響く、とても大きな声だった。

 

 恐らく2人はそれが何者の声だか想像できてしまったんだろう。顔色がだんだんと青くなっていくのが見て取れる。

 

 現在私は、ナミとウソップと向き合って座っている。

 その人は、私の正面に立っている。つまり2人の背後である。

 

 2人は、まるで壊れた人形のようにぎこちなく、ゆっくりと振り向き、そしてまた固まった。

 

「………!!!」

「………!?」

 2人の肩が、たぶん恐怖で震えてる。見えないけれど、涙を流しているんじゃなかろうか。

 

「ところでお前ら、酒を持っているか?」

 2人の想像通り…そこには、巨人ブロギーが立っていた。

 

 

 

 

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