イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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03-96話:決闘

「いただきます!」

「おぉ、遠慮せずに食え!」

 私の目の前には、ブロギーが焼いてくれた恐竜の肉が置かれている。ものすっごくデカい。どのくらいデカいかというと、私の身長よりも大きかったりする。

 マグロ包丁を持ってきたので、それで切り取り食べる事にする。

 

 ブロギーが船の近くに現れた後の流れは、ほぼ原作通り。

 酒を持っていると私が答えると、ブロギーは満面の笑みを浮かべ、しかし突然声を張り上げた。

 見ると、ブロギーの後ろには恐竜が…。どうやら噛みつかれたらしい。

 振り向きざまの戦斧(オノ)の一振りで恐竜を狩ると、肉が手に入ったからもてなすと私たちに向かって言った。それに私が二つ返事で応えたってわけ。

 当然、ナミとウソップは止めに入ったけど、私は肉を食したいので譲らない。一人でも行くと宣言したら、項垂れながら2人もついてきた。

 

 ちなみに肉は、ナミとウソップの前にも置かれている。けれど、2人の視線は肉ではなく、人骨(たぶん他の骨もあると思うけど)の山に向けられていた。

 あ~、あれは知らなきゃ怖いわね。仕方がないなぁ…

 

「ブロギーさん、あそこに積まれた骨の山って私らみたいな人間でしょ?何で死んじゃったの?」

 2人の恐れを取り去る為にと、私が質問してあげた。ナミとウソップは食い入るようにブロギーさんに視線を向ける。

 

「ああ。ある者は恐竜のエサに、ある者は暑さと飢えに、ある者はおれ達に攻撃を仕掛けて来たので返り討ちにした。まぁ理由は色々だが、人間にはこの島での1年は長いらしい」

 

「1年、って……この島の記録が貯まるための時間?」

 巨人への恐れはどこへやら、1年という言葉に驚いたナミがブロギーに尋ねる。ブロギーは大きく頷いた。

 

「そうだ」

 あっさりとした答えを聞いた瞬間、ナミは驚愕の表情を浮かべる。

 

「ウソでしょ!?」

 その間にアラバスタが滅んじゃうじゃない!!?

 続くセリフはそんな感じだろうか?

 

「記録を貯めるのに1年もかかるとは思わなかったわ。そんなに待ってられないから、ルフィに言って、一旦ドラム王国に行きましょう!」

 と言って、私はポーチから永久指針を取り出した。

 

「これ! 永久指針じゃない! 何でこんなの持ってるのよ!?」

「永久指針? これが?」

 驚くナミと、物珍しげに見るウソップ。

 

「私の医術の2人目の師匠の居る場所よ。グランドラインに入る前にルフィにそこに行って船医を勧誘しようって言ってたの。記録(ログ)が溜まる期間が島によって違うから、長くて我慢でき無い時には使えるかな?とは思ってたけどね。それに、ドラム王国の次の記録(ログ)はアラバスタだから、寄り道というわけでもないからいいんじゃない?」

 1年も待たずに島を出れると喜ぶナミの傍らで、ウソップは何か腑に落ちない顔をした。

 

「でもよ、それなら、初めからそのドラム王国ってとこに行けばよかったんじゃねェか。こんな危険なところになんて来ずによ!」

 やっぱり質問されちゃった。それでは答えるとしますかね。

 

「記録指針で進む事を船長のルフィが優先していたのが一番かな?双子岬でウイスキーピークを選んだからここに来たわけだしね。ルフィは『気に入らなかったらもう一周するからいいよ!』って言ってたけど、ナミは全部回りたいでしょ?」

「えっ!私!!?」

 驚くナミに私は頷いて見せた。

 

「グランドラインに入る前にナミが言ってたじゃない。世界地図を書く為には、いろんなルートを通る必要があるでしょう?ルフィの考え通り、記録指針通りに進むのは、ナミの夢の実現への道でもあると思ってたわけよ。」

 

「なるほどな。そんなとこまで考えてるとは恐れ入ったぜ。悪かったな。おれはてっきり恐竜の肉が食いてェからだと思っちまった。」

 さすがウソップ。洞察が鋭いじゃない。あぶないあぶない…

 

「失敬ね!そんなわけないでしょう? ま、なんにしても、ルフィに確認して了承を得ないとね?」

 ふぅ……なんとなったわ…。

 

「…せっかくの肉が冷めちまうぞ?さっさと食え!」

「おぉ、そうでした!」

 私たちがすぐにでもこの島を出る事を知り、ブロギーが少し寂しそうに云った。

 それにしても…

 ブロギーの手には私が船から持ってきた酒樽が握られているけれど、樽がコップに見えてしまう。あれじゃせっかくの酒もすぐに無くなっちゃうわね…

 あぁ、そうか! いつものルフィと同じことをすればいいんだ!!

 

「ブロギーさん」

 私は、今まさに酒を飲もうとしているブロギーに声を掛けた。

 

「ん? どうした、娘」

「実は私、悪魔の実の能力者で、その能力を使うと酒も肉ももっとたくさん飲み食い出来るようになるんだけど、やってみない?」

 これはいい考えだと思う。

 飲み食いのこともあるけど、ブロギーが小さくなればナミとウソップも少しは気が楽になるだろう。

 

「そんなことが出来るのか?」

 それなら頼む、とブロギーから了承をもらい、私はブロギーに対して能力を発動した。自分が小さくなったことにブロギーは驚いていたけど、これはあくまで飲食の間だけで、それが終われば元に戻すと言ったら受け入れてくれた。

 ブロギーが小さくなった事で、ナミとウソップの妙な緊張も取れて、今では4人で酒を酌み交わしている。

 よかったよかった。

 

 恐竜の肉は、かなりジューシーで美味かった。やっぱりここに来れてよかったと思う。私のお気に入りの味付けは、今のところニンニク醤油が一番だ。わさび醤油も捨てがたい。お酒の種類で調味料を変えるのもありかも?

 ブロギーはシンプルに塩らしいけど。

 

 私たちの酒の肴は、ブロギーVSドリーの決闘の話だった。

 決闘と聞いて、ウソップは興味深々に話を聞いていた。

 

 2人の巨人が戦いを始めたのはおよそ100年前。寿命が人間の3倍ある巨人だからとブロギーは言っているけれど、単純に計算してみたところで33年相当だ。長いって…

 当人たちは既にそもそもの理由を忘れてしまったらしいけど、戦いを始めてしまった以上は互いに引く気は無いらしい。

 そんな話を聞いている中、この島に並ぶ山のうち、中央の山が爆発した。

 

「おゥ、元に戻してくれ」

 神妙な顔になったブロギーを、元の大きさに戻す。

 

「いつの間にかお決まりになっちまってなァ…真ん中山の噴火は決闘の合図」

 元の巨人に戻ったブロギーは、傍らに置いていた武器を手に取ると歩き出した。

 それを黙って見送ると、向こうの方から別の巨人が1人やってくるのが見えた。

 彼が相手のドリーだろう。

 

「何言ってんの…理由が無いのに100年も決闘だなんて」

 ナミが呆れた口調で呟いているけど、それは違うと思う。

 理由が無かった訳じゃない。エルバフの村の掟とか言っていたけど、実際にはそれもどうでもいいんじゃないかしら?

 

「誇りだ」

 今のはブロギーの声じゃないから、たぶんドリーが向こうにいる、ルフィたちに言ったんだろう。巨人の声というのは本当によく響く。

 

「「オォォォォォォ!!」」

 2人は間合いに入ると、それぞれが己の武器を振り上げ決闘を開始した。

 

「「理由など、とうに忘れた!!」」

 ガァンという武器と防具のぶつかり合いに、ここら一帯の空気が振動した。

 

 

 

 

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