ジャングルに入り、最初に遭遇したのはゾロだった。
ゾロは、トリケラトプスのような恐竜を引き摺っていた。どうやら狩ったらしい。
「イオリじゃねェか!」
ゾロ?…何てあからさまにホッとした顔してんの?
「丁度良かった、道を見失っちまってよ」
ズリズリと恐竜を引き摺りながら私に寄って来るゾロ。なるほど…
「なんだ、迷子か」
「その言い方やめろ」
他に何と言えと?
「目印が役に立たねェんだ。おれは確かに『つるの巻いてる木を左』に進んでんだぜ!」
………それ…目印って言っちゃう?
「それは確かに役に立たないでしょうね。このジャングルにある木の殆どがつるを巻いてるんだから。」
生暖かい視線と共にそう言うと、ゾロはあらぬ方向を向いていた。
「ルフィ達はあっち…って言っても途中で迷うか…」
つるの巻いた木を左、何て覚えるようなヤツが自力で目的地にたどり着ける気がしない。
「お前、バカにしてんのか?」
よくもまぁそんな事が言えるわね? 別にバカにしちゃいないけど…
「ゾロあんた…。自分が方向音痴だって自覚を持ちなさいよ!」
認めたくない気持ちはわかるけど、自覚しないと改善しようもないんだよ。そもそも改善が可能かわからんけども…
1度送って行くべきだろうか? 私はとっととサンジの方に行きたいんだよなァ…
「ん? あれはナミじゃねェか?」
ふと視線を移すと、ちょっと離れた場所で、木に寄りかかるナミのようなモノが見えた。私よりも先にゾロが気が付いた時点でソレはナミではないんだけどね?
「待った」
私はナミもどきに近付こうとするゾロの服を掴んで止めた。
「あれはナミの様に見えてナミじゃない。生き物の気配がしないから。」
蝋人形で誘き寄せて、そのまま蝋で捕まえようってか? 姑息なヤツめ。
「嵐脚!」
私の放った嵐脚によって、ナミもどき、もとい蠟人形は吹っ飛ばされて、そのまま奥の木にぶつかって壊れた。
「何だ、ありゃあ?」
そういえばゾロに追手の話をしてなかったわね。
「バロックワークスの追手がこの島に来てるのよ。今の所実害は酒樽1個だけ。」
「なんだと!?まさかダダンの酒じゃねェだろうな?」
少し驚きながらそうだと言うと、ゾロが怒りをあらわにした。どうやらゾロも、あの酒はお気に入りだったらしい。
「ウィスキーピークでも会った2人組はもう倒してあるんだけど、Mr3ペアってのがまだ何所かにいるらしいのよ。ちなみにMr3はドルドルの実を食べた蝋人間なんだって。あのナミもどきは蝋人形ぽかったから、多分そいつの仕業ね。」
「ぶっ殺す!!」
おやまぁ、そんなにですかい? まぁやる気になってくれる分には問題ないからいいんだけど…
「それで、そいつはどこに居んだ?」
おめェ、一人で行く気かよ?どんだけ怒ってんの?
「え~っとねェ…私は今、みんなを集めてるとこなのよ。とりあえず、あんたはルフィの所に行ってなさいな。って言っても無理だから…」
「…」
どうしましょう? ゾロは戦力的にも、まとめ役としても頼りになるけど、この迷子癖だけはお荷物だよねェ…
あぁ、丁度いい目印があった。
巨人の決闘は、今私たちがいる場所からも見える。あれを目印として行けばいい。
「あそこで戦ってる2人。片方がドリーでもう片方がブロギーって言うんだけど、ドリーの住処にルフィとビビが居るのよね。戦いが終わってから案内を頼めば連れて行ってくれると思うから、あそこまで行って、決闘が終わるまで待ってたらいいわ!」
いくらゾロでも、流石に巨人2人を見失いはしないだろう。多分…。
私には別の目的がある事を知ったので、提案自体はゾロも受け入れてくれた。
ゾロの狩ったトリケラトプス(←勝手に決定)は小さくして収納貝に入れた。
そして、ゾロと別れた私はサンジの気配を目指す。
ドリーとブロギーはしばらくの間さっきの戦いと同じように打ち合いを続けていたみたいだけど、やがてほぼ同じタイミングで2人揃って静かになった。
73467戦73467引き分け、ってトコかな?
~ ~ ~ ~ ~
ゾロに巨人の所へ向かえと言ったのは、目印が明確ならたどり着けるだろうと思っての事だ。けれど、若干の不安もある。何故ならゾロは原作で、目の前を走る人の後すら追えない状態だったからだ。不思議なのは、敵を追う時は問題ないのに、味方の後をついて行く事が出来ないとは、これいかに?
考えたところで答えは出そうにないけどね。
リリスとかに言ったら研究素材にされるかも?
え?そんなの研究して何になるのかって? そりゃ、原因を突き詰めて改善するんですよ。
まぁ、500年先の科学の力をもってしても、解明できない謎はあると思うけどね?
それはともかく、サンジの気配に向かってみると、メリー号に辿り着いた。
「イオリちゃん!よかった!船に誰も居ねェから、何かあったのかと思って!!」
探しに出ようと思っていたが、せっかく狩った恐竜を、どうしたものかと悩んでいたらしい。
「じゃあ、それも小さくしとくわ」
肉用の収納貝に入れておけばいいものね!
さっき、ゾロの狩った恐竜も入れたし、私が狩った数匹も既に入っている。
「ところで、イオリちゃんの足元のは?」
サンジが目を丸くして、私の足元にいる白い虎猫を指さした。
「ガルル…」
「
私が言うと、虎猫が口を閉ざした。
「エル! この人は仲間のサンジよ。仲良くしなさい?」
「ガウ!」
「へェ…賢いな。コイツはどうして?」
私は事情を説明した。
ここに来る途中、私は何度か恐竜に襲われ返り討っていた。その中の1匹に虎の親子が襲われていたらしく、結果的に助けた事になってしまった。
親虎は既に殺されており、子虎も傷を負っていた。大きさは親が2m越え(3m弱)。子の方は半分ほどの大きさだったので、まだ成獣になっていないと思われる。
このままジャングルに放置することは死を意味する。助けてしまった以上、責任を持つべきだと思い連れて来たのだった。
ルフィに確認して問題なければ船で飼うつもり。成獣になったら、この島に戻してあげてもいいかもね?
ちなみに親虎は土を掘って埋めてあげた。この子の傷は、ポーションで治してあげた。その結果かどうかはわからないが、ものすごく懐かれたという訳である。
エルというのは、子虎に付けた名前。元の世界のペットの名前だったりする。
「エル。お前は運がいいな。」
「?」
「あ、いや別に…深い意味は無いけどさ。イオリちゃんは面倒見がいいだろ?ルフィのお守りをしてるくらいだから。」
あ~なる。そういう事ね。
「そういう意味では、この子のほうが手はかからないと思うわよ?」
「確かに。」
サンジは少し笑いながら納得顔で頷いた。
「ところでナミさんやビビちゃんは?」
「次の行先が決まったから、とりあえず私が全員集めて回ってるのよ。」
「記録がもう溜まったのか?いや…それなら船にみんなを集めるか…」
サンジって、こんなにちゃんと考えられる子だったっけ?
それにナミやビビほど私にはデレてない気がする。いや別に、めんどくさくないから、これでいいんだけどね?
「ここの記録が溜まるのには1年かかるんだって。」
「マジか!?…え、じゃあどうやって?」
私はルフィとビビに説明した事をサンジにも説明した。ついでに追手が来ている事も…
「なるほどね。だからみんなを集めて、そいつらを撃退するってわけか。」
「という事で、みんなの所に行きましょう!!」
~ ~ ~ ~ ~
「なんだこりゃ?」
サンジと一緒にルフィ達の所へ向かっていると、ジャングルの中には似つかわしくない、四角い白い建物を発見した。
「たぶん、Mr3が建てたんでしょうね。これだけ硬そうな素材なら、恐竜に襲われても大丈夫そうだし…」
建物を叩くとずいぶんと堅そうな音がした。建物の中には気配は無い。つまりは留守という事だ。
扉には鍵は掛かっていないので、とりあえず、2人で中に入ってみる事にする。
「ずいぶんと、立派な紅茶セットが置かれてやがるな。」
「きっと、Mr3が好きなんじゃない?それより、組織に関する情報とか、ボスとの連絡用の電伝虫とかないかしら?」
ちょっと家探ししたところ、王女と麦わら一味抹殺の指令書。キューカ島の永久指針。Mr3と書かれた電伝虫。 などを発見した。
持ち物に名前(?)書いとくなんて、児童かな?
それに、指令書って読んだら燃やすんじゃなかったっけ?
とりあえず、アイテム2つは持って行こうかと思っていたら、電伝虫が鳴った。
「ヘイまいど!こちらクソレストラン……ご予約で?」
サンジが咄嗟に受話器を取って応対した。
『ふざけてんじゃねェバカヤロウ!てめェ報告が遅すぎやしねェか?』
Mr0のセリフはもっともだと思う。バラティエでは、そんな応対しとったん!!?
「……報告…?」
サンジが私の顔を見た。
「王女と麦わら一味の抹殺の事じゃない?そうよね、Mr0!」
『なんだ、ミス・ゴールデンウイークもいるのか。で、どうなんだ?』
サンジに目配せをして、私が会話を引き取った。
「指令なら完遂したわよ。私たちは今、キューカ島に向かっているの!」
『…なるほどな。仕事嫌いとは聞いてたが、休暇に行くときは饒舌らしい。とにかく任務遂行ごくろうだった。休暇を楽しみにしているところ悪いが、アンラッキーズがそちらへ向かっている。任務完了の確認と、アラバスタへの永久指針を持ってな!』
やっぱりね。Mr0はエージェントと会った事が無いらしい。素性を秘密にしているらしいから、そうだろうとは思ってたけど、男女のペアならいくらでもごまかせそうな気がする。
「アンラッキーズなら、麦わら一味にやられちゃったわよ?」
電伝虫に向かって言った後、小さな声でサンジには本当にやっつけた事を伝えた。その際、奴らが持っていた永久指針が壊れてしまった事を伝え、みんなには黙っててほしいとも言っといた。
『なんだと!?』
「アラバスタへの永久指針なら王女から奪ったから、数日休暇を楽しんだ後、アラバスタに向かうわ。それじゃあね!!」
― ガチャンッ! ―
通話を切った電伝虫は、小さくして収納貝に入れた。これで、Mr0とMr3の連絡手段は無くなった。今の会話がウソだとバレるまでには、しばらく時間がかかるだろう。
「イオリちゃん?」
私が小さくガッツポーズをしているのを、不思議そうに見ながらサンジが声をかけてきた。
「とりあえず、これで私たちへの追手は来なくなるはず!!Mr3への刺客は差し向けられるかもしれないけどね?」
「なるほど、確かに。」
きっと、ミス・ゴールデンウイークに対してMr0ことクロコダイルは腹を立てた事だろう。うまくすれば原作通りの展開になるかもしれない。
ダメならダメで、仲間のしるしは別の方法で付ける事にすればいい。
「この事もみんなに知らせなくっちゃね!」
あとはMr3ペアを倒せば、この島でのイベントは完了だ!
私たちは、Mr3の仮の住まいを後にして、ルフィ達のところへ向かうのだった。