Mr3の館で少しばかり時間をくってしまった関係で、ルフィ達の気配はドリーの住処とは違う場所に移動していた。どうやら既に事が起こって終わった後らしい。
私たちがまず合流したのは、ルフィとゾロの2人。放っておくと、どこかに行ってしまいそうな気がしたからだ。
「まったっく、遅ェんだよ!もう終わっちまったぞ?」
そういうゾロの顔は、なにやらホッとしたように見えた。
案の定、迷子になりかけていた感がある。同じところをぐるぐると回っていた感じ?
なんでそんな事がわかるかと言えば、そこにMr3が倒れているからだ。
Mr3の顔にはルフィの履く草履の後がクッキリと…。ご愁傷さまです。
数体のMr3の蝋人形があちらこちらに置かれているので、ここが原作『ドルドルの館』って事?
見上げると空が見えるけど…
「「そいつはなんだ?」」
ルフィとゾロの視線の先には、白い虎猫『エル』がいる。
サンジと同じ様な反応だった為か、エルは唸る事なく大人しく、お座りしながら2人を見てる。この子、ほんとに賢いわ。
「みんなの所に着いたら説明するわ。」
今、説明すると、ナミ達と合流した後にまた説明しなきゃならないからね。ただし、ルフィからは船でこの子を飼う許可は取っておいた。
~ ~ ~ ~ ~
ゾロから多少の話を聞きながら、しばらく歩いて、残りのメンバーの居るところに辿り着いた。
大火によって蝋を熔かしたわけではないようで、どでかいキャンドルセットは残ったままだった。捕えられていたというナミとドリー&ブロギーはもう解放されている。
私たち…というか、私の足元を見て、ナミとビビが悲鳴を上げた。
「「え~、ちょっと! 何それ、かわいい!!」」
ちなみに、エルは元の1mサイズではなく、サンジが見た時から、子猫サイズにしてました。
猛獣ですから1mでも、カルーなんかは命の危険を感じてしまうだろうし、ナミ、ビビ、ウソップだって襲われる危険もある。まぁ、この子は賢いからそんな事しないと思うけど、野生の動物は甘く見ちゃいけないものね。
ルフィなんか、さっき噛まれてたし…。
状況の整理の為に、巨人2人も加えて話をした。
なぜに私らの到着を待たずにMr3と対峙したかと言えば、ナミが捕まってしまったからだった。ちなみに決闘で力尽きた巨人2人も捕えられたらしい。
なにげにすごいなMr3。いくら疲れていたからとはいえ、巨人2人を一度に捕まえるなんて。
原作では、バギーの所へ行ってから、能力じゃなくて智謀で勝負してた感があるけど、能力を鍛えてたらもっと上に行けんじゃね?
いや、別に…鍛えてやる気はないけどね?
ウソップの話によると、二度目の決闘が行われた際に、ナミがルフィやビビと今後の事を話し合いたいと言い、ルフィ達の所へと向かう事になったらしい。
ところが道中で恐竜に追われ、逃げている最中にナミが消えた。(恐らく誰かの蝋人形に近づいてしまったのだろう。)
ウソップはナミが恐竜に食われたと思ってパニックに陥っていたが、ゾロがウソップを見つけて合流し、とりあえずルフィ達の所へと向かった。ゾロは迷子だったらしいとは、ウソップ談である。
ルフィ達と合流したウソップが、事の次第を話したところ、既に追手が来ている事を知っていたビビが、ナミが捕まったのでは?と思い至る。
そして、ルフィの『かん』により、Mr3の場所を突き止め退治した。
という事らしい。
恐らくだけど、ルフィは既に見聞色の覇気を発現していると思う。悪意を感じて敵に辿り着く的な?
それとも見聞色でなく、ロジャーのように万物の声を聞ける力の片鱗なのかな?
まぁ、今考えてみたところでわからないけど…。
しかし…
結局ゾロは、巨人の元にはたどり着けずに迷子を続けていたという事か…。話を聞きながら、実は私は引いていた。
一通り話を聞いたので、今度はこちらの話。
Mr3の住処にて、サンジがMr0と電伝虫で会話をして、任務は完了したから追手はもう必要ないと伝えた事。さらに、アンラッキーズも退治した事をみんなに話した。
サンジが何か言いたそうだったけど、私としては一つお願い聞いてもらっているのでね。
微妙な顔をしていたサンジだったけど…
「サンジ君、お手柄じゃない!」
「ナミさん!もしかして惚れ直しちゃった?」
ナミにそう云わると、いつもの調子に戻っていた。
私は、エルの事をみんなに説明した後、巻き込まれたドリー&ブロギーに対して謝罪した。2人は犯人であるMr3には怒りを覚えていたけれど、私たち、特にビビには『気にするな』と言ってくれた。
それよりも、いくら疲れていたとはいえ、捕まってしまった事を恥じており、助けてくれた事への感謝を述べていた。
さらに、ウソップに提案して、ドリー&ブロギーを含めた全員で記念撮影を行った。
ちなみにカメラは映像貝。
言うまでも無く、写真はオイモ&カーシー対策だ。エニエス・ロビーに行くことになれば役に立つことでしょう。ウソップの言葉での説得でもいいけど、写真があれば確実じゃんね?
「さて、それじゃドラムに向かいましょうか!!」
私の後ろでは、ルフィがせんべいパーティーだと騒いでいる。
おめェ船長だろうが!『出航』って言えや!
「そうだ、オイお前!”狩り勝負”の事ァ忘れちゃいねぇだろうな」
サンジがゾロに向かって言った。やっぱりやってたんだ狩り勝負。
「それならおれの勝ちだ!こんなデッケェサイを狩ったからな!」
「てめェ、そりゃ食えるんだろうな?」
サンジはティラノサウルスを狩ってたもんね。
「じゃあ、比べてみましょうか?」
と言って、収納貝から、2人が狩った恐竜を並べてみた。ルフィが涎を垂らしながら覗き込むそれは、ゾロの狩ったトリケラトプスとサンジの狩ったティラノサウルス。そして私の狩った数匹の恐竜だった。
2人の狩った恐竜を比べてみると、大きさ的にはサンジのほうが大きいけど、重さはゾロのほうが勝っている。そんな感じ。
勝敗を付けるのは難しそうだ。デカいというのは大きさ?重さ?
「「……」」
「どうしたの?」
なぜか2人は固まっていた。その視線の先には、私の狩った恐竜が…
「これが一番でっけェな!重さも一番じゃねェか?」
ルフィが何気なく言った一言に、場の空気が凍った。
「「…負けた…」」
「え!?」
なぜか2人は揃って項垂れていた。何が”負けた”やねん?
「別に、私はその狩り勝負に参加してないんだけど?」
私は単純に、恐竜の肉をもっと食べたかっただけなのよ!それなのに…
「「下手な慰めはいらねェ!!」」
2人に揃って怒鳴られてしまった。
結局、狩り勝負の勝者は何故か私という事になった。
項垂れてる2人は悪いけど、不毛な2人の争いに巻き込まれた感がひどいんだけど?
何で怒鳴られなきゃならんのか。あたしゃ、被害者だよほんと…
そして錨を上げて出航。川を進んで、島の西側へと向かう。この先に、島喰いが居るわけだ。
しばらく進むと、島の出口が見えてきた。その河口の両岸で、海に向かって立つ2人の巨人…。
「この島に来たチビ人間たちが…」
「次の島に辿り着けぬ最大の理由がこの先にある」
ドリーとブロギーが、真面目な顔で言葉を繋ぐ。
「友の『海賊旗』は決して折らせぬ!」
「我らを信じてまっすぐ進め!」
「わかった! まっすぐ進む!」
2人の言葉にルフィが頷く。それとメリー号が島から出たのはほぼ同時だった。
「「別れだ。いつかまた会おう」」
変化はすぐに現れる…。
「見て! 前!」
ナミに言われるまでもなく、船のすぐ前で勢いよく海が盛り上がる。そして海中から姿を見せたのは、見上げるような超巨大金魚。
「あれが『島喰い』か…」
現れた巨大金魚のあまりの大きさに、口からは感嘆ともいえる言葉がポロっと漏れていた。
単純な大きさだけで言うなら、ラブーンの方がデカい。でもラブーンはクジラで、こいつは金魚。恐らく海王類でもない、ただの金魚。それがまぁ、何を食ったらここまでデカくなれるんだ?
それに、金魚は淡水魚じゃなかったっけ?海水では生きられないはずだけど?それとも海水に耐性がつくとこんなに大きくなれるのかな?
「『島喰い』って何!?」
私の声は、しっかりとナミの耳に届いていたらしい。パニクってる割りに、よく聞き取ったわね。
一応答えておきますか。
「『島喰い』は…でっかい金魚よ(たぶん…)」
「「見たまんまァーーーー!!!」」
私の発言を聞いていたのはナミだけじゃなかったらしい。ウソップも被せてツッコんできた。
「なんでウソップまで。あんたは知ってたんじゃないの?」
「こんなモン知るかァ! どこをどうしたらそんな話になんだよ!?」
え?だって…
「だって、シロップ村でカヤに巨大金魚の話を聞かせてたらしいじゃない。だから私はてっきり…」
出くわしたっていうのはホラだろうけど、実在するってことは父親にでも聞いたことがあるのかと…
ヤソップなら知ってても可笑しくないし、そもそも、こんな巨大な金魚やフンで出来た島のことなんて、普通思いつかないと思うわよ?あんたが忘れてるだけじゃないの?
「あぁもう! 話にならないわ! 舵きって! 急いで!!」
私とウソップのやり取りに見切りをつけて、ナミがみんなに指示を出す。けれどその指示に従う者はいなかった。サンジさえもが動かない。
「だ、ダメだ! まっすぐ進む! そうだろ、ルフィ!?」
いつもなら真っ先に『逃げ』に賛同するウソップが、今回は反対の意思を示して『島喰い』を見つめている。
「うん、もちろんだ」
パニックになってるのはナミとビビ、カルー。震えているのがウソップ。サンジも少し慌てている。
ルフィとゾロは至って冷静。私ももちろん冷静だ。ちなみにエルは私の足元で丸くなっている。寝てるのかな?
「落ち着けって、最後の煎餅やるから」
半狂乱になるナミをルフィは宥めていた。
煎餅を齧るナミはもう涙目だった。
「ナミ。諦めろ」
ゾロは壁によりかかり、腕を組んだまま遠くを見つめている。
そして、次の瞬間…
メリー号は見事に『島喰い』に丸呑みされていた。
「まっすぐ!! まっすぐ!!」
泣きながら呪文のように叫び続けるウソップ。
「まっすぐ!! まっすぐ!!」
ウソップと同じように叫ぶのはルフィ。ルフィは泣いちゃいないけど、必死な様子はウソップと同じだ。
そしてそれが起こった。
私たちが丸呑みにされてからわずか数秒後の事だろう。
大きな衝撃が通り過ぎ、次の瞬間にはもう私たちは暗い腹の中ではなく青い空の下にいた。
「「覇国ッ!!!」」
巨大な『島喰い』に一撃で風穴を開けたであろう技の名を2人が叫んだのがよく聞こえた。
凄いなマジで!この技私も出来るかな? 今度試してみよう!!
しかし、これで懸賞金が1人1億って少なくない?もしかして、今ならもっと高いかも?10倍って事はないかもしれないけど、3億くらいはいくんじゃね?
「うほーっ!!飛び出たーーー!! 行くぞ、まっすぐーーー!!」
まっすぐ、というのは何も『島喰い』を恐れるなというだけの意味じゃ無かったんだろう。そのまた先もまっすぐ、振り返らずに進めということ。
「海ごと斬った…これが…エルバフの…うぅ…戦士の力…!!」
ウソップは震えながら号泣していた。
「「さァ、行けェ!!」」
ドリーとブロギーの豪快な見送りを背に受けて、私たちはリトルガーデンを後にした。
いつかエルバフの村に行こう、と甲板でルフィとウソップが盛り上がっている中、私は一人、島での収穫(恐竜の肉)を、食糧庫にて振り分けていた。
整理が終わり、甲板に出てきたまさにその時、メインマストの方からビビが叫ぶ声が聞こえた。
「みんな大変!すぐに来て!!」
「なんだ?どうしたビビ!」
ルフィが、そしてサンジが駆け寄る。
「ナミさんが…!酷い熱なの!!」