イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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03-105話:ドラム島出航

 ヒルルクの研究の成果によって咲いた雪山の『桜』は、とても素晴らしいものだった。

 いやホント、いいもの見させてもらったわ。

 ちゃんと録画もしてました。目を閉じて再生すれば、今見た光景をそのまま再現する事が出来るのだ。もちろんそれが出来るのは私だけ。これを見ながら日本酒飲むのも乙だわね?

 

 チョッパーが泣き止むのを待って、私たちがメリー号へと戻るとカルーとエルが出迎えてくれた。

 桜はまだ咲き続けていて、それをバックに出航準備を始める。ナミは病み上がりなので、ラウンジにビビを付き添いとして待機させている。

 サンジが、2人の分まで働くぞ!!と気合を入れていたけど…

 なんだろう? やっぱり何か違和感を感じるのよね?

 

 船の上には7人と3匹。原作では7人と2匹だったけど、エルが居るからいいのよね?

 

 …ん?

 

 ちゃうやんか!!イレギュラーはエルだけじゃなくて私もだった!!そしたら一人足りなくね?

 

「ねぇ、ゾロは?」

 ハタと気付いて口にすると、出航に向けて忙しなく動いていた全員の動きがピタッと止まった。そして、何かあったのか?と、デッキに出てくるナミとビビ。

 

「「あ」」

 うん、全員忘れてたみたいだね? そして何故いない、ゾロ?

 まさか、寒中水泳に行ったのか? あれ? じゃあ何でカルーがここに?

 

「クエクエ、クエーックエックエ!」

 そのカルーが何か言を訴えている。

 

「ゾロってヤツは川に飛び込んだんだって」

 カルーの訴えを通訳してくれるのは、勿論チョッパーだ。

 

「チョッパー君、カルーの言葉が解るの?」

 ビビの疑問に頷くチョッパー。

 

「おれは元々動物だから、動物の言葉が解るんだ」

 知ってはいたけど、すごいわね。

 私は動物の思考も読めるけど、言ってる事はわからない。考えている事はイメージ的にはわかっても、言葉ではないので細かいニュアンスまでは理解出来ない。映像っぽいから言葉よりも細かい描写が伝わってくる場合もあるけれど、チョッパーが訳してくれるのを聞くほうがわかりやすいかもしれないな。

 動物とのコミュニケーションを考えると、チョッパーは有用かも?

 そして、そう思ったのはわたしだけじゃないらしい。

 

「すごいじゃない、チョッパー! 医術に加えて、そんな能力もあるなんて!」

 ナミが素直に賞賛している。けど、首を捻っているのが約1名。

 

「チョッパー、お前医者なのか!?」

 それはルフィである。当然のことながら、何のつもりでチョッパーを勧誘したんだ、と疑問を投げかけられている。だが。

 

「7段変形面白トナカイ!!」

 答えは至ってシンプルだった。そして、チョッパーにとっては甚だ不本意だったらしい。涙目になっている。

 まぁ、サンジはちゃんと、私の弟弟子だって分かってくれてたから、『非常食』は無くなってたんだし、それくらいならいいじゃないねぇ?

 

「結局その後、ゾロはどうなったの?」

 チョッパーに聞くと、再びカルーと話をしてくれた。カルーがクエクエ言ってるところを見ると、その時の状況を説明してくれているみたい。

 エルはというと、ゾロの話に興味が無いのか、私の服に入り込み、顔を胸の辺りから出して目を閉じている。私もあったかいので好きにさせてる。それにかわいい…。

 チョッパーはカルーの話を聞いて、区切りがついたらしい所でそれを私たちに伝えてくれた。

 

「ゾロってヤツは暫くその辺を泳いでたんだけど、潜ったまま姿が見えなくなったんだって。カルーは飛び込んで探そうとしたけど、エルに止められたって言ってる。『好きで泳いでるんだから放っときなさいよ!私たちまで凍える必要無いじゃない』って、何だか逆らえない笑顔で言われたって」

 

 なるほど、それでカルーが氷漬けになってなかったわけだ。これはお手柄なんじゃないの?

 

「逆らえない笑顔でって……やっぱイオリが連れてきた虎なだけあるな」

 なにそれ!ウソップ、どういう意味よ!! そして何でみんな納得してるわけ?

 

「……とにかく。そうするとゾロは、泳いだままどっかに行ってしまったって事ね?」

 でも、そっか。原作でゾロがここに居たのは、雪崩に巻き込まれてビビとウソップと合流したからだ。

 雪崩が起こったのも、ビビとウソップが城に行かずに麓に居たのも、ルフィがナミを背負ってドラムロッキー登山に行ったから。

 ここではそんなバカな事はせずに、みんなでロープウェイで上った為に、雪崩も起きず、ゾロが仲間と会う機会も失われたってわけね。

 つまり、ゾロを一人にすると、こんなアメイジングでアンビリバボーな事になるわけだ。

 ってかさ、あいつ船番してたんだよね?

 

 マジ?もしかして、ゾロに一人で船番頼めないの?

 ウソップダメじゃん?ナミダメじゃん?ルフィもダメじゃん?

 って事は、船番一人で出来るのは、私とサンジとチョッパーか?

 半数以上がダメダメなんてあり得ねェ…大丈夫かこの一味!?

 

 私は一人、この一味にショックを受けていた。

 

 けれど、みんなはゾロがどうなったかを考えていたらしい。

 

《…………………………》

 多分、ついさっき仲間入りしたチョッパー以外の全員が同じ結論に辿り着いている。ゾロがどうなったかなんて考えるまでもないものね?

 でも誰もそれを口にだしたりはしない。呆れて物も言えないとはこういう状況をさすのだろう。

 けど、空気の読めない勇者はどこにでも居たりする。

 

「なんだ、ゾロのヤツ。迷子か」

 勇者……ルフィは実にあっけらかんと結論を口にした。

 何だか考えるだけで疲れてくるような気がしたのは、きっと私だけじゃないはずだ。

 それに、今の一味のメンバーだと、私が一番疲れる事になる。なぜならゾロを探す事が出来るのは現在私しか居ないからだ。

 うん、決めた!みんなに見聞色を鍛えてもらう事にしましょう!これは私にとって急務である!!みんなの覇気を鍛える理由がこれっていうのはどうかと思うけど、そんなん知るか!悪いのは全部ゾロだ!!

 

 

 その後。

 私が気配を探って見付けて連れ戻しました。その間、他の皆は出航準備を続けていて、戻って来たら、すぐさま出航できました。

 予想通りゾロは迷子になっていて、森を彷徨ってた。出航前に気付いて良かったわ。危うく置き去りにするところだった。

 でも、朗報もあったりする。何とゾロが稼いできたのだ!

 船に戻ったゾロが懐からいくつかの財布を取り出した時なんて、ナミは感激で涙ぐんでいた。話を聞いてみると、それはワポル一味の兵士たちの物。それならまったく問題なし!ピースメインに反してないからOKです!

 しかし納得。簡単に、奴らを捕縛監禁できたのはそんな理由があったのね?

 

 取りあえずゾロには、その労いと、忘れかけてゴメンね♥! の意味も込めて、現在メリー号にある中で1番高価で味のいい酒を1本、瓶ごとあげといた。そういえば、ゾロもヒルルクの桜は見たってさ。

 

 ちなみに、ワポルから得た情報っていうのは、宝物庫って言った時に奴が思った事です。宝は全部持ち出して、あの船に積んであるって事。

 頂いちゃおうかと思ったんだけど、ドルトンさんに、『国の復興の為に役立ててほしい』と言っておいた。

 まぁ、武器庫からいろいろ頂いちゃったしね?

 もちろんナミには言ってない。たぶん怒られるだろうから…

 

 ドラム島を出航した私たちは、お約束の宴会に雪崩れ込んだ。

 主にチョッパーの仲間入りを祝しての宴だ。

 誰も聞いている感じはしないけど、ウソップが口上のように乾杯の音頭をとっていた。

 

「新しい仲間に! 乾杯だァ!!」

《カンパーイ!!》

 

 目指すはアラバスタ。

 ルフィと私にとっては、義兄の待つ国である。

 

 

 

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