これはまだ、ドラム王国が『医療大国』と言われていた頃の話
イオリがこの国を去る3ヶ月ほど前の事である。
医師狩りが始まった事で、病院や診療所の看板はどこにも見えなくなった。診療を続けるにしても、なるべく目立たないようにする必要があるからだ。
この半年の間に、医者の数は半分にまで減っていた。入院患者を抱えていた場所もいくつか潰されている。
医者は国外追放され、患者はお金のある者だけが、イッシー20に診てもらう事が出来たらしい。ただ、その対応は酷いもので、料金はワポルのいい値であるらしく、しかもその時の機嫌次第。少しでも嫌な顔をしようものなら診てもらう事も出来ない。入院していても追い出される事もあるとの事だ。
さすがにワポル一味(と言っていいでしょう。)もイッシー20には直接手を出さない。
当初、ワポルの対応に反抗していた医師もいたらしいのだが、家族を人質に取られてしまい、逆らう事が出来なくなってしまったとの事。
逆らわなければ家族は安全。仕事も研究もさせてもらえるともなれば、あながち悪い待遇ではないのかも知れないけれど、彼らが医者の本分をどう考えているかは疑問が残る。
ちなみに医師狩りにはドルトンさんも参加していた。
私があるお宅の治療を終え、帰ろうとした際に出くわして、彼らは私を捕まえようとした。
他の奴らの時は逃げに徹していたけれど、ドルトンさんが居たので、逃げずにぶん殴ってやった。
「情けないわね!ワポルを
「う、うるさい!お前に何がわかるというのだ!」
他の兵士の目もあるからなのかわからんけども、言い返してくるドルトンさん。
しかし、自分のしている事に疑問を持っている事は疑いない。狼狽えたのがその証拠だ。
一緒にいる兵士たちにしてもそうだ。ワポルに忠誠を誓う者も多少は居るみたいだけど、命令に従っているだけという者が多い。
絶対君主制の国なのだから、それは致し方ない事だと思う。逆らえば自分だけでなく、身内にまで危険が及ぶ訳だからね。
「わかんないわよ!!でも、このままじゃ、前王の時のような国にはもう戻れなくなる!!」
「!!?」
「あんたが諦めたら、国民はどうなるの?ひとりで無理だと思うなら、仲間を増やす事を考えなさいよ!簡単に諦めないで!!」
「……」
その時、ドルトンさんは何かを決意したような顔をしていた。もしかしたらワポルを改心させようと思っていたのかもしれない。
私は、この国の不幸は実はワポルではないと思っている。
ドルトンさんの同僚、チェスとクロマリーモの2人。あの2人こそが諸悪の根源だと思っている。
彼らがワポルを甘やかし、自分たちの良いように国をつくり替えようとしていた張本人のように思う。ワポルをコントロール出来ていたかどうかには疑問が残るけれど…
彼らをワポルに付けた事が、前王の最大の過ちだ。良識のある者に教育係をまかせるか、ドルトンさんだけを御付きの者にしていたのなら、もっとまともに育ったろうに…
彼らがいなければ、ワポルを改心させることも出来たはず。そもそも、今のワポルになっていないと思う。
だからこそ、彼らを排除すべきだと、ドルトンさんには伝えたけれど…。
引き離すのは今更無理だろう。排除するとはすなわち殺す事である…。
つまり…
ドルトンさんには無理だろう。
だからと言って、手助けする気は無かったけどね?
その後も医者狩りは続き、イッシー20以外の医者は、ドクトリーヌ以外この国から居なくなった。
結果として、ドラム島は原作通りと言っていい状況だった。
ワポルのその後も同じであろう。
でももしも、ワポルが改心していたのなら…
ワポルは黒ひげに殺されていたかも知れない。
その場合、ドラム王国は本当に滅んでいた(廃墟と化していた)かも知れない。
ドクトリーヌは逃げただろうか?いや、あの人の事だから戦ったんじゃないかな?
もしかしたら、ドクトリーヌもチョッパーも、黒ひげに殺されていたかも知れない…。
黒ひげは、インベルダウンのLEVEL6に収容され、第2の脱獄者になっていただろう。
そうすると、いろいろ狂ってきただろうなぁ…。
『風が吹けば桶屋が儲かる』的な感じで、1つの出来事による影響がとてつもない変化につながる事もある。
そうなってたとしたら、原作知識が役にたたなくなるってだけなんだけど、考える事が増えるのは、正直嬉しい事じゃない。
だから、これで良かったと思う事にする。
そういえば、ドラム島で遭遇したワポルは27歳だったそうだ。
えっ!!?
って事は…
ビビとユナが
― マジで? ―
ちょっとビックリした。
ってか、あいつ…何歳で王位継承したん?
※注:人の見た目をとやかく言ってはいけません。