船は今、最高速度でアラバスタを目指している。
これはアラバスタ王国を目指す麦わらの一味の数日間の話である。
ちなみに、リトルガーデンからドラムとはでは1日ちょっと、(2/19出航~2/20到着)
ドラムからアラバスタまでは、丸8日を要する。(2/21出航~3/2到着)
同じくらいの距離なのに、さすがは偉大なる航路ってか?
~ エピソード1 姉弟弟子 2月21日 夜 ~
歓迎の宴の最中の事…改めて、私はチョッパーと挨拶を交わした。
ドラム城で料理を手伝ってもらった時は、全くと言っていい程、話をする事が出来なかった。
私の能力を見せた時はすげーすげーと言って喜んでいたけど、それ以外は緊張しっぱなしで言葉を交わすどころではなかったのだ。
「そんなに緊張しなくてもいいわよ?とりあえず、挨拶しましょうか?私はイオリ。7年くらい前までドクトリーヌに医術を教わってたの。つまりあなたの先輩ね。」
「お、俺…僕?はトニー・トニー・チョッパー。トナカイです。ヒトヒトの実を食べた。先輩、お願い、よろしくします。」
緊張が解けてないわね? この子、慌てたり、緊張すると文法めちゃくちゃになるからなぁ…
「ねぇ、ドクトリーヌから私の事、どんなふうに聞いてたの?」
「すごく強くて、やさしくて、海賊で…えっと、それから…」
ふむふむ、それで憧れていたと…
「目が笑ってなかったら、笑ってる時、本気で怒っているから気をつけろって!!」
「へぇそう……あのババぁ!!」
「……」
口調は怒っているというのに、チョッパーには微笑みが向けられていた。いわゆる笑いながら怒るというヤツである。
怒りの矛先がチョッパーではなかったので、口撃を受ける事はなかったが、ドクトリーヌが気をつけろと言ったイオリの微笑みを始めて間近で見て、チョッパーは震えていた。
ドクトリーヌとはまた違う恐ろしさを持つ先輩に、なぜか憧れを強くするチョッパーであった。
~ エピソード2 重要な任務 2月21日 深夜 ~
宴が終わった後の事… 私はマストの上でエルと向き合っていた。
「いい? これは重要なミッションよ!!」
「がう」
真顔の私に対して、神妙に頷くエルが居た。
「しくじれば、私たち全員の命が危険に晒されると思いなさい。」
真面目な話、これはしっかり対処しておかねばならない事なのです。今後の為にも絶対に!!
「あなたがすべきことはただ1つ。持ち場に『敵』が現れたらすぐに私に知らせる事!!間違っても自分で何とかしようとしちゃだめよ?」
「がう」
解った、と言いたげにまたも頷くエル。
よし、これで準備はOKだ!!
今夜は私が見張り番。毛布に包まりながら双眼鏡を片手にマストの上で寝ずの番である。
まだ冬島ドラムの影響下なのか、波はとても穏やかだ。寒いけど、雪も止み、天候は安定しているので、
原作では、ウソップ、チョッパー、カルーが共犯になっていたけど、主犯は間違いなく
なにがって? つまみ食いに決まってるじゃんよ!
あの事件が起きたのは、ドラム島を出航してからすぐの事だ。つまり今日、ヤツならきっと
事が起こったのは真夜中のことである。
数分前に水平線を見渡して異常が無いことを確認していた私は、狭い見張り台で寝転びながら夜空に浮かぶ月を眺めていた。
そして内心で、月見酒も良いなぁ…。とか考えていた、その時。
「がう!!」
真下からエルの声が聞こえて、私は起き上がった。
やはり来やがった。
エルの近くに気配は一つ。他のヤツ等は来ていない。つまり、『敵』は一人である。
現場は冷蔵庫の前。そこに『ヤツ』はいた。
「………………」
気配も音も消していたとはいえ、ここまで接近しても気付かないなんて、そっちに意識が向いているからに相違ない。
私はギリギリと新聞を丸め、思いっきり振り上げた。そして…
「何やっとんじゃお前はぁ~~!!!」
「うぉおう!?」
スパコーンと『敵』のどたまに叩きつけた。
チョッパーの歓迎会を兼ねた宴の最中もその後も、サンジはキッチンとデッキを行ったり来たり。冷蔵庫には普通に食材を入れていた。
普段、冷蔵庫には飲み物しか入っていないのだが、食糧庫の収納貝から出したものを、宴の際に使いやすいように冷蔵庫にサンジが入れていた。宴の片づけをしている時にルフィが、冷蔵庫をじぃっと見ている事に私は気づいた。そして、ピンときたのだ。
あ、コイツやる気だ。って…
躾けましたよ?ルフィが私の家の冷蔵庫を空にしたのは1度や2度じゃないからね?
まぁ、4度目はなかったかな?3度目の時にしっかり叱ってやったから!!
エースとサボが必死に私を止めたっけ。よく覚えてないけど…
だから今日、エルを見張りに立てたんだけど、予想通りというかなんというか…
航海中の船というのは当然ながら食料が限られている。
ミニ化して大量に積み込んでいるから、冷蔵庫を2,3度空にされようと実際には問題にはならないけれど、だからと言ってつまみ食いをして良いという事にはならない。例え船長であろうとだ!
よって私はこの夜、ルフィをぐるぐるに縛り上げた上で見張り台から宙づりにして、
『一晩、ミノムシの刑』に処したのだった。
~ エピソード3 製薬の本 2月22日 午前 ~
強請ったモノとして手に入れた『製薬の本』は、エイタで見る事も出来る。というか検索機能が凄いので、私は
すごく喜んでくれた。そして、仙豆も数粒あげました。
本の中に材料として出てくるけど、伝説級の代物だから、手に入る事は殆ど無い。だからだろうか?チョッパーが酷く驚いていた。
仙豆はずいぶんたくさん収穫した。そのままだと腐ってしまうだけなので、普通ならば薬品に変えなければならないけど、収納貝があるから、瓶詰めにして保管している。
仙豆の木はなかなか大きくならず、収穫量もさほど変わっていない。
ちなみに2、3粒植えて、木を増やそうと画策しているけれど、5年くらいでやっと芽が出て、十数年かかってやっと5cm程度のかろうじで苗木と呼べる状態になった。
収穫できるようになるまでには、もう2、30年くらい必要なんじゃないかな?
~ エピソード4 覇気の習得 2月22日 午後 ~
「例えば、鉛球に武装硬化を施した場合…」
ウソップに、パチンコを構えてもらい、鉛球に武装硬化を施して、海に浮かべた樽に向かって打ってもらう。
― ドゴオォォォォン!! ―
巨大な水しぶきを上げ、樽が粉々に飛び散る様を見て、打った本人であるウソップを含め全員が驚愕している。
「あ、あれ…おれがやったのか?」
「武装色が使えると、パチンコだってすごい威力になるでしょ?かなりの戦力アップになると思うんだけど?」
大砲と威力がたいして変わらない。機動性を考えるなら、すごく有用な気がする。
「す…すっげぇー」
ルフィが騒いでいるけど、お前には散々見せたし説明したはずなんだけどな?
ゴムゴムの技がモノになって来たのは、エースが出航してしばらくしてからの事。エースが居た頃はマグレ的なものだったし、それすらエースには通じなかった。
普通に攻撃が出来るようになった後は、敵を倒せるように精度と威力を増す必要があり、まずはそれを重点的に鍛えた。
何故に先に覇気を教えなかったかと言えば、今のウソップのパチンコを見ての通り、普通の威力でも、覇気が加わると威力が倍増するからだ。
確かに覇気も自分の力ではあるし、それを鍛える事でさらに威力は増すけれど、自力を鍛える前に覇気の威力に頼ってしまうのはよろしくない。
私も自身を鍛える時は、覇気を使わず自力を鍛えるようにしている。自力が増せば、覇気を加えた時の威力も当然増すからね。
一応ルフィの覇気は、3つとも発現はしていると思う。まだまだ弱いし無意識ではあるだろうけど。だからそれを意識的に使えるようにしていけばいいだけだと思う。
「棒だって、剣だって、拳だって、足だって同じ事よ。こうやって武装硬化する事で強度と攻撃力が増す。さらに言えば能力者に対しての攻撃が有効に成る。特に自然系に対しては唯一の攻撃手段と言ってもいい。」
言いながら、右手に持ったナミの棒と、私の左拳を武装硬化して見せる。
「ルフィ、ちょっとごめんね?」
そういって、軽くルフィの頭を叩く。
「痛てっ…えっ?なんでだ!おれ、ゴムなのに!?」
「あんたはもう……私が言ったことちゃんと聞いてた? 能力者に対しての攻撃が有効になるって言ったでしょ?。だからゴムのあんたも叩かれれば痛いのよ。ガープに叩かれると痛いのはそういうこと!敵が覇気を使えたら刃物じゃなくてもダメージを食らう事になる。今のままならね。」
「なんだ、祖父ちゃんも覇気が使えるのか!!」
…今まで何度も武装色について説明したけど、やっぱり聞いてなかったか…
いや、聞いてても気づかないか。コイツ天然だから。
「今のままってのは? 防ぐ手立てでもあんのかよ?」
「そうね。相手と同じかそれ以上の覇気を身に付ければ、相手の覇気を無効化出来るわ。弱くても使えれば軽減できる。逆に言えば相手の覇気の方が上回っていたら、こっちの攻撃は防がれるって事にもなる。だから鍛えるのよ!見聞色と武装色については、訓練で強くすることが可能だからね。もちろん練度を高めるには個人差も大きいし、得手不得手もあるから、どれだけ強い覇気を身につけられるかについては運次第だけどね?」
ナミやビビも含めて興味は持ってもらえた。私が教えられるのは教本(いろいろな文献をまとめて本にしてみた。)に書いてある事が主だけど、発現した後については、自分の経験から、こうした方がいいとかいう事もレポートにまとめて教本の最後の方に載せている。あとは個人で頑張ってくれって感じかな?
「でも、覇気なんて私達にちに身につけられるのかしら?」
ナミが言ってるけど…
「何言ってんの?武装色ならみんなもう使ってるじゃない!!」
「「…は?…」」
「ナミなんて、ずいぶん前から使ってるわよ? よく考えてみて? ルフィには”普通の”打撃は効かないんだって。」
「「「…!!!」」」
もうお判りだろう。ナミもウソップもゾロもサンジも、ビビだってそう。ルフィにダメージを与えてましたよね?
それは即ち、覇気を使ってる証拠なのです。気づいてないだけでみんな使ってたんだよ?
「あとは、それを意識して使えるようになれればいいだけよ?それが出来るようになったら錬度を高めていけばいいわ。」
「……なんだ…おれ達、覇気ってェのはもっと特別なもんなんだと思ってたけど…」
「使えるとわかれば、取り組む意欲も沸くでしょう? ん…?どうしたの、ルフィ?」
一人だけ面白くなさそうな顔をするルフィ。覇気をみんな使えているという事が気に入らないらしい。
「ちぇー。なんだよ、使えねェのおれだけかよ!」
「何言ってんの? あんたの場合は普段確かめる方法が無いってだけでしょ?ちゃんと使えてるわよ!」
「ほんとか?」
「ええ!」
ドラムでは、覇王色も発現してたしね。見聞色はわからないけど、武装色は戦闘の際にちょいちょい出てる。どのみち頂上戦争の後の2年で身に着けられるんだから、ルフィは問題ないでしょう。
やる気になってくれたところで、私は教本をみんなに配って、かいつまんで要点を説明した。あとは本人次第ってところかな?
もちろん聞かれれば答えるし、訓練に付き合うことだって厭わない。
ちなみに教本は人数分揃えてあります。もちろんまだいないメンバー分もね!