イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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03-108話:アラバスタ上陸

 本日は2月26日。ドラムを出てから5日目である。

 

 今日は朝からルフィとウソップが並んで釣りをしている。別に食糧難でもないのに釣りをしているのは、単なる趣味なのだろうと思う。

 不思議よね?落ち着きがない割に、ルフィは好んでよく釣りをする。

 エサはカルーだ。本来のエサはルフィが食べちゃったから。いや、ウソップもちょっと食べたらしいけど。

 当然、そんなことをしてタダで済むわけがない。

 

「あなた達、カルーに何してんのよ!」

 何か釣れたかと様子見に来たビビが、驚いて2人に制裁を加えている。

 けれどビビ? 2人に制裁を加えるのはいいとして、どうしてカルーを助けてあげないのかな? カルーも怒ってるわよ?

 と、そうこうしている間に前方に煙のようなものが見えてきた。

 

「あれは何?」

 ビビもすぐに気付いたらしい。その声に反応して、ルフィとウソップもそれを見た。

 

「何だありゃ」

「わたあめかな」

 なんで、そうやってすぐに食べ物に結び付けるかな?

 

「イオリ!あれ何だ?」

 ルフィがくるっと振り向いて聞いてきた。なぜそこで、私に聞く?と思わないでもないけど、知っているので答えてあげる事にする。

 

「ホットスポットじゃないかしら?まぁ、危険は無いから大丈夫よ。」

「食えるのか?」

 私たちのやりとりの中、ビビが船内に入って行った。多分、ナミに意見を聞きに行ったんだろう。

 ちなみにカルーは餌にされたままである。

 

「マグマのせいよ。あの辺には海底火山があるんじゃない?」

 ちょっと詳しく説明したら、ルフィは一瞬で興味を失っていた。食べられないから…。

 

「海底に火山があるのか?」

 いつの間にか出て来たらしいチョッパーに聞かれた。見るとチョッパーだけじゃなく、ナミも出てきている。

 

「海底火山はあちこちにあるわよ」

 言うとナミも頷いていた。

 

「むしろ陸上よりもたくさん、ね。こうやって何千、何万年後にはこの場所に新しい島が出来るのよ」

 時の流れは偉大よねぇ…。

 

「何万年後って……おれ、生きていられるかな」

「そこは死んどけよ、人として」

 ルフィが能天気な事を言うと、ウソップがツッコミを入れていた。

 外に出て来たナミ達とは逆に、私は船内に足を向けた。

 

「私は中に入ってるわ」

「え?」

 ヒラヒラと手を振ると、ナミが意外そうな声を出した。

 

「ホットスポットには危険は無いって、自分で言ってたじゃない」

 まぁ、そうだけど…

 

「危険は無くても、ホットスポットの蒸気は硫黄臭いからね。中で本でも読んでるわ」

 硫黄の匂いはあんまり好きじゃない。それは本当だけど、私が船内に入る理由は別にある。あの蒸気に突っ込んだタイミングで、Mr2……ボンちゃんと遭遇する事になるからだ。

 それなりに強い気配を感じるから、たぶん間違いないと思う。

 

 ラウンジにハンモックを広げて仰向けに揺られながら本を読む。腹の上ではエルが寝てる。

 この子、本当に私にべったりだ。肌触りがいいから許すけど。あと可愛い。

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 Mr2との遭遇(私は会ってないけど)からまた更に4日の航海を経て、アラバスタ到着は目前となっていた。何故なら…

 

「海ねこ!!」

「「っぎゃぁぁぁぁぁぁ!!海獣だ~~~~~っ!!」」

 今まさに海ねこが出現したからです。

 

 何度も言うけどこの船は別に食糧難にはなっていない。だから、目の色を変えて捕獲に走る必要なんて無い……。

 

「メシだぁ!!」

 ……はずなんだけど… 何なんだろうね?

 あいつ(ルフィ)は未知の生物を見たら取りあえず食べてみようと考える習性でもあるのか?これはもしかして、ガープの教育の賜物か?

 でもエースもサボも、そこまでではなかったような気が?

 

「進路よし、と……」

 ナミに至ってはガン無視だ! スルースキルを発動していた

 

「メシー!!」

「ダメッ!」

 ビビがルフィをぶっ叩いて鎮めた。その手にはなぜか金棒が握られている。

 ねぇビビ…それ、どっから出した?

 

「食べちゃダメなの! アラバスタで海ねこは神聖な生き物だから。」

 意識してやったかどうかは知らんけど、しっかり覇気を発動したようで、ルフィはたんこぶこさえてデッキに伏している。たぶん、ビビの言葉は聞こえてないんじゃないかな?

 ……って。

 

「チョッパーに法螺話を吹き込むんじゃねェ!」

「ぶへっ!?」

 

 背後で、ウソップが何故かチョッパーに『カームベルトで大型海王類と戦った』とかいう法螺話を吹き込んでいたので制裁(踵落とし)を与えておいた。

 格好つけたい気持ちは解るけど、限度ってもんがある。

 

「法螺なのか!?」

 チョッパーは、ルフィに負けず劣らず純粋だ。すっかり信じちゃってたんだね?

 何とも言えないショックを受けた表情をしている。

 

「そんな顔しないの!ほら、わたあめあげるから!」

 チョッパーを仲間に入れる前から、わたあめいっぱいつくって置いたのよね。それをあげたらチョッパーの機嫌は治った。ウソップ?あいつは寝てるみたいだからそっとしといてやろう。

 そんな中、船の後方を見ていたゾロの皮肉げな声が聞こえた。

 

「後ろに見えるアレも、アラバスタが近い証拠だろ」

 その視線の先には、バロックワークスのマークが入った船が大量に並んでいる。

 アラバスタに向かってるんだろうけど、帆にあんなに堂々とマークを入れるなんて……

 『秘密』犯罪結社じゃなかったっけ?

 まぁそれはそれとして、確かに数は多い。10隻以上はある。乗っているのがビリオンズだとすれば、数はおよそ200人。けど、いくらウィスキーピークの賞金稼ぎよりは質がいいとはいえ、所詮は雑魚だ。

 

「一々相手にする必要は無いわね。」

 ポツリと呟くと、他のみんなも頷いていた。

 

「要はクロコダイル、それにオフィサーエージェントたちさえ倒してしまえばいいんだから」

 

 

 左腕に×印を付け、その上から布で巻く。

 

「そんなに似ちまうのか? そのマネマネの実で変身されちまうと」

 きっちりと固く布を巻き付けながら、私と同じくその現場に居合わせなかったもう1人、サンジが疑問の声を上げる。

 

「そりゃもう、『似る』なんてもんじゃねェ。『同じ』なんだ。惜しいなー、お前らも見とくべきだったぜ」

 けれどそのウソップの意見にサンジは眉根を寄せる。

 

「おれはオカマにゃ興味ねェんだ」

 興味ないだけならいいんだけどね?苦手だったら大変よ?あなた、オカマとものすっごく縁があるから…。

 

「見とくべきって言うけど、そのおかげで私たちの顔は今のところメモリーされてないわけだしね」

 苦笑しながらウソップを見た……ら。

 

「スミマセン! 敵と一緒に踊ってゴメンナサイ!!」

 ……何故か土下座せんばかりの勢いで謝られた?

 

「そりゃあ、あれだけ死線を彷徨わされれば……」

 私の不思議そうな顔に気付いたのか、サンジが微妙な顔で答えをくれた……あれ、私ってばやりすぎた?

 …何かに怯えてるように下を向き、小刻みに震えるウソップは見なかった事にしときましょう。

 

「なぁ、おれは何をすればいいんだ?」

 しまった!ウソップが沈んでしまったので、チョッパーの素朴な疑問に答えるヤツがいない。

 

「自分に出来ることを精一杯やればいいのよ。決して無理はしないようにね!」

 なので私が答えてみた。微妙に名言奪ってゴメン。

 

「おれに出来ることか……わかった!」

「クエ!!」

 チョッパーも、カルーもやる気になってくれた。

 

 そのまま船を進ませると、やがてアラバスタの港へと近づいて行く。なにげにこの航海が一番長かった気がするわ。そのおかげで、みんなの修行も出来たし、原作よりも力を増していると思う。ケガとかも少なくて済むんじゃないかな?

 

「よし!」

 一同で円を組み、布を巻いた左腕を突き出しあう。

 チョッパーがわざわざ台に乗って高さを合わせているのが微笑ましい。

 

「これから何があっても、左腕のこれが仲間の証だ!!」

 ルフィはその宣言に続き、号令も掛ける。

 

「じゃあ、上陸するぞ!」

 そう、すぐに上陸だ。

 まずは物資調達の傍らで、使わない武器とか、ローグタウンで売り忘れた宝とか換金したり、エースを探したりとか、地味に忙しいわね。

 そうだ、ローグタウンでそうしてたように変装しとこうかしら? そうすればサンジや変形したチョッパーのように、刺客に狙われることも無いだろうし、手配書でバレることもない。気楽に行動できるようになるものね!

 

 これからのことを考えていたけど、続くルフィの言葉に少し脱力した。

 

「メシ屋へ!」

 あんた、船でちゃんと食べてるでしょうよ!!なんでそんなに飢えとるん? 燃費悪すぎ!!

 

「……あと、アラバスタ」

「ついでかよ!!!」

 本来の目的であるはずのことがまるでついでであるかのような発言にウソップがツッコミを入れていた。ナミもいろいろ注意してるけど、無駄だと思うわよ?

 

「うれしそうね?」

「うん!」

 ビビが包帯をギュッと握って嬉しそうに微笑んでいた。そうよね。この2年…、仲間なんてイガラムしか居なかったんだろうから…。

 さて、私は取りあえず、上陸前に変装しましょうかね。

 

 案の定というか何というか、上陸した途端にルフィは『メシーーーー!!』と叫んで、弾丸の如く飛び出して行ってしまった。

 私が覇気で探せるもんだから、誰も気にしちゃいないけど…。

 ナミくらいかな?高額賞金首だって事を私みたいに自覚してほしいって言ってるのは…

 でもまぁ、ルフィだからね。

 

 上陸した『ナノハナ』という町は香水で有名というだけあって、確かに多少匂いがした。とはいえ私はチョッパーのように鼻がいいわけじゃないから、少し香る程度でしかないけど。

 ルフィが飛び出した後で、Mr3の船が近くの入り江に泊まっているのを発見。原作通りで良かったと言うべきか?

 

 ところでMr5ペアはどうしたんだろう?脱出できたんだろうか?

 

 さて、上陸したのはいいものの、アラバスタはバロックワークスの巣窟である。しかもMr3が来ているという事は、私たちが生きているとバレるのも時間の問題。似顔絵を書かれた者は顔を隠す必要がある。ビビに至っては、王女だからそれでなくても顔が知られている。

 なのでビビ・ゾロ・ナミ・ウソップには布をかぶせて町に入り、物陰まで急ぐ。ある意味、余計に目立ってるけど…。

 

 私は変装したので大丈夫だと思う。なので普通に歩いてる。

 ちなみにエルは船番だ。というのも、あの子も鼻が利くので香水の匂いが嫌なのか上陸したがらなかった。縮小を解除したので、猫サイズではなくそれなりに大きな虎である(およそ1.5m)。

 不審者が来たら退治するようにとも言ってある。ただし、無理はしない事とも言っといた。

 

 ナノハナは見た感じでは特に不穏な空気も何も無い。人も多いし、店も立ち並んでいる。

 特別ピリピリもしていないし、この町を見ただけじゃ、内乱状態だなんて予想できないだろう。

 さて、まずは何をするべきかと言えば、それはユバへ行くために砂漠越えをするのに必要な水・食料などの物資調達、それにこの国の庶民の服に着替えて目立たなくなること。

 物資に関しては、私の能力を使えば通常よりも多く装備できる。ルフィがいる以上、水にしろ食料にしろいくらあってもいい。むしろ不安が尽きないぐらいだ。

 ただ、大量に仕入れようと思えば金もより必要になる。

 なのでまずは服の調達をサンジとチョッパーに任せ、私は別行動を取らせてもらって、手持ちの財宝やら武器やらを換金する事にした。

 私も道すがらで自分用に外套を買って着ておいたけど。中の服を着替えてなくても、外套を着てボタンもキッチリ留めておけば当座はどうとでもなる。

 店に着いたら着いたでローグタウンの時よりはモノが少なかったこともあり、短い時間で取引が成立した。金額もローグタウンの時の1/3程度だったしね。

 

 元の物陰に戻ろうかと思うったら、みんなは換金所近くまで移動していたようで、そこに向かってみる。

 そこには、ゾロ・ナミ・ウソップ・チョッパーがいた。しかも、何やら難しい顔で大きな壺の後ろに隠れている。

 声をかけるとゾロ以外の3人がビクッと震える。

 何をそんなに怯えているのやら…

 

「イオリ! 海軍がいたのよ!」

 なるほどね。それで怯えている…って、おかしくね?

 

「あのローグタウンの大佐だ」

 ゾロは落ち着いているような参ってるような微妙な様子だ。ということは多分、たしぎも来てるんだろう。でもそうか。海軍は海軍でもあいつらなら私らの事を知ってるわけか…。でも手配書があるのは私とルフィだけなんだけど?

 にしてもやっぱり追って来たのかスモーカー。原作通りではあるけどね…

 

「へぇ」

「反応薄いな、オイ!」

 ウソップにビシィッとツッコまれたけど、私は肩を竦める。

 

「随分とボロクソに言ったからね。執念深く恨まれてても不思議じゃないわよ。」

 いや~、私ってば色々と要求を突き付けたよね。あ、でもあれ以降『あかがみ』とは呼ばれなくなったし、律儀にも伝えてくれたんだろうか。だとしたら礼を言わないと。

 

「それだけじゃねぇぞ」

 今度は人型に変形したチョッパーが言って来た。

 

「ルフィとイオリを探してる変な男もいた」

 変な男?…変な男、ねぇ… たぶんエースの事だろうけど、

 

「そうだぜ、お前らの手配書を持って探ってたんだ!」

 

「……『白ひげ』のマークを背負ってたぜ」

 元海賊狩りだからか、ゾロはその辺のことにそこそこ詳しい。しかも、その情報でエース確定だ。

 でも、一応確かめておこう。

 

「それってさ、コイツじゃなかった?」

 取り出したのは、エースの手配書。ちゃんと持って来てました、ハイ。

 

「白ひげ海賊団2番隊隊長、『火拳』のエース」

 渡して見せると、4人とも頷いた。よし決まり!

 ちなみに手配額は現在、11億2000万ベリー。原作の倍以上である。

 

「………………クロコダイルより高ェな」

 ウソップが何だか現実逃避をしているかのような目になっている。

 クロコダイルが小物に見える金額だよね? 今この国で1番の高額賞金首ってエースだと思う。

 

「以前、七武海への勧誘もあったぐらいだからね。蹴ってたけど…」

 七武海って称号は『名声』になり得るけれど同時に、『政府の狗』という側面もある。

 そんなものを受けるエースじゃない。

 それにしても久しぶりだな、エース。3年ぶり。楽しみだ

 

「やけに詳しいな? さてはお前、ファンか?」

 手配書を見ながらウソップが聞いてきた。 

 何というか……まるでからかうような口調だけど?

 

「違うわよ。私とルフィには兄が2人居るって言ったでしょ?そのうちの一人が彼よ!」

「「!!?」」

 いや、そんなに驚きますか まぁ驚くか。10億超えなんて、原作じゃ新世界編に入ってからだもんね。

 

「この人が!!?」

 ナミの顔は何だろうね?なんとなくだけど、ルフィに輪をかけたようなとんでもなくはちゃめちゃな男だとでも思っているような気がする。怪訝そうというか、何か怪物でも見るような目で手配書の写真を眺めている。

 ある意味そういうヤツではあるけどね?でもどうなんだろう? 原作通り、少しは礼儀を学んで落ち着いているんだろうか?

 まぁ、会ってのお楽しみかな?

 

「じゃ、そういう事で、私はエースと会ってくるわ!!」

「え!? あ、ちょっと!!」

 エースとゆっくり話そうと思ったらルフィが接触する前の方がいい。さらに言うなら、スモーカーがエースを見つける前が望ましい。

 そう考えると、時間が無いのよね。

 ナノハナでは、エースと海軍との接触以外、大したイベントは無いはずだ。ならばちゃっちゃと行きましょう。

 私はそう考えて、一路メシ屋へと向かったのだった。

 

 

 

 

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