イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

118 / 385
03-109話:再会

 さすがに10年以上一緒に過ごしただけあって、3年程度ではエースの気配は忘れてなかった。

 エースの気配は目の前のメシ屋から感じる。

 しかしあれでしょ?ドラムでもお金がなくて、食い逃げしてたわけでしょう?

 たぶん、ここでもまたやるつもりなんだろうなぁ……

 

 私が扉を開けると、別に大きな音がしたわけでも無いのに、店に居る人達が一斉に私の方を向いた。 テーブルに座るエースも私の顔を見た。一度食事に戻り、またすぐに私の方を向く。2度見のその目が驚きに満ちている。

 そういえば私今、変装してたんだっけ。忘れてたわ。

 

「おめェ、もしかして…イオリか?」

「正解!エース、久しぶり!」

「おォ……まぁ、久しぶり!」

 

 少々目立ってしまったらしく、私が店に入ってから少しの間は注目を集めてしまったけれど、食事を勧めているとやがて周囲も各々の食卓に集中していく。その方がありがたい。聞き耳立てられたくはないし。

 

「よく私だってわかったわね?」

 忘れてたけど、現在私は変装中。黒髪で髪も短く、男物の服を着ており、胸は小さくしてる。

 ローグタウンで変装した後、一味のメンバーにも聞いたけど、顔をしっかり見なければ、私だとわからなかったと言っていた。

 確かに一度、食事に目をもどしたけれど、あの一瞬で私かも?と、気づいてくれたのは、さすがエースと云うべきだろう。

 

「一瞬、見逃しそうになったけどな。しかしお前、気配消すのがうま過ぎんだろ?まぁ逆にそれで気づいたんだけどな。」

 あ~なる。そういう事ね。エースもずいぶん見聞色を鍛えたもんね。

 って事は、見た目でルフィが気づけなくても無理はないのか?

 

「しかし、ずいぶんと目立つ入れ墨、背負(しょ)ってるね?」

 その割に、誰も気にしちゃいないけど? 実は私も、扉を開けて店に入った時、なんとも思わなかったんだよね。あまりにも自然な感じに見えたから。

 原作を知ってるから?とも思ったけど、不思議としっくりくるというか、それが普通に思えるというか、見えてるのに見えてない感じと言えばいいのかな?

 まぁ、白ひげの活動範囲は新世界だ。ここはグランドラインとは言え、前半の海のさらに序盤である。白ひげのマークもそんなに有名ではないのだろう。

 

「おう!これはおれの『誇り』だからな!」

 食事を再開したエースの機嫌は上々である。笑顔が眩しい。

 あ、私もその隣に座ってメシを食べてたりする。どうせここの料金も私が支払う事なるんだろうからいいでしょう?

 

「ドラムで、伝言聞いたのか?」

「まぁね。でも、エースに会うのはついでかな?私たちもアラバスタに用が出来たから!」

 凄い勢いで皿の上の食料を消費しながら、エースと私は会話をしていた。

 念のために言っとくけど、エースも私も口を開くのはその中に何も入ってない時だからね?

 ルフィみたいに言ってる事が分からないのは困るから。

 

「こんな砂漠の国に、何の用だよ?」

「友達の手助けの為にね。そっちこそ、何でグランドラインを逆走してんの?」

「……」

 エースが少し真面目な顔になった。

 

「別に、言いたくなければ言わなくもいいわよ?」

「そういう訳じゃねぇけどよ。ところでルフィも一緒に来てんだろ?あいつは?」

 やっぱり言いたくなさそうね。あからさまに話題を変えた。

 

「その内来るんじゃないかな? 『メシ屋ーッ!』って叫んで飛び出してったから」

「はは、アイツらしいな」

 その割に、未だメシ屋に辿り着けてないけど。あいつもゾロと似たようなもんだからね。

 

「もしかして、ルフィを誘うの? 白ひげ海賊団に」

「ま、一応な。そんでルフィが受けたら、お前も来ることになるな」

 やっぱりか。でも。

 

「受けないだろうけどね」

 私も白ひげ海賊団に興味が無いとは言わないけど、それとこれとは話が別だ。ルフィだってそんなタイプじゃない。エースもそれは解っていたようで、特に気を悪くすることもなく笑う。

 

「だろうなァ。ま、一応だ。けど『白ひげ』はおれが知る中で最高の海賊さ。おれはあの男を海賊王にしてやりてェ」

 本人は、そんな気は無いみたいだけどね? 原作では、ロジャーがラフテルへの行き方を教えてやるって言うのに聞かなかったし…

 しかし、あのエースにここまで言わせるとは、ずいぶんと慕われたもんだわね。

 

「エースって、実はファザコンだったのね?」

 感心して、思った事をポロっと口に出すと、エースがブハッと吹き出した。

 

「ゲホッ!? な、何だいきなり!?」

「白ひげ海賊団のクルーは『白ひげ』にとって我が子同然で、クルーたちも『白ひげ』を『親父』と慕っているって聞いたんだけど……違った?」

「いや違わねェが……どこで聞いたんだ、ンなこと」

 そりゃ、情報源は色々とね。 でも、そうなると白ひげ海賊団は全員ファザコンか?

 

「ゴメン、いきなり変なこと言ちゃって…」

 ジロリと睨んでくるので謝ると、盛大な溜息を吐かれた。

 

「ま、今はおれもそうそう戻れねェけどな」

 しみじみと嘆息するエース。軽い感じに聞こえるけど、実際にはそんなに軽い話じゃないだろう。

 私はちょっと気を引き締めた。

 

「やっぱり気になる。教えてくれない? なんでエースがここに居るのか!!」

 知ってますけど、知っているのはおかしいからね。

 お願いしてみると、エースは一気に真顔になった。

 

「おれは今、重罪人を追ってる……最近『黒ひげ』と名乗ってるらしいが、元々は白ひげ海賊団2番隊隊員。おれの部下だ」

「『黒ひげ』って…ドラム王国を滅ぼした?」

「…そうだ。」

 やっぱりか。原作通りエースはティーチを追っている。

 

「重罪人って言ったよね?それは白ひげ海賊団での事でしょう?いったいそいつは何をしたの?」

「ヤツは海賊船で最悪の罪、仲間殺しをして逃げた……隊長のおれが始末を付けなきゃならねェってわけだ」

 結局、そこらへんは原作通りって事か。まぁエースが強くなってただけじゃ、そこは変わりようがないもんね。

 

「お前の言う通り、そんなことでもねェ限り、おれがこの海を逆走するなんてことはねェよ」

「……」

 だろうね。私としては、この後がどうなるかの方が気になるよ。

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 その後、私たちは他愛もない雑談に花を咲かせながら食事を進める。

 そして、互いに食べ終わった皿をうず高く積み重ね、やがてエースがピラフらしきものを食べている時にアレは起こった。

 

「………………」

 パタンと。

 そりゃあもう糸の切れた人形の如く、何の前触れも無くエースは食事に顔を突っ込んだ。

 要するに、寝た。

 

 けどまぁ、私は慣れてる。久々ではあるけれど前はこんなことは日常茶飯事だったから、気にせずに自分の食事を続けてたんだけど、周囲の人たち、つまりメシ屋の客たちや店員たちにとっては、ただならない出来事だったらしい。突然の出来事にざわめいている。

 

「おい君! その男から離れた方がいい!」

 結構美味い食事を作ってくれる店主が、焦った様子で私に忠告してきた。

 

「砂漠のイチゴを口にしたのかもしれない……危険だ」

 砂漠のイチゴ? 確かそれって。

 

「砂漠に住む毒グモですか?」

 原作でのこの場面で、店に居た客?が話してたわよね? 確認してみると、神妙な顔で頷かれた。

 

「見ろ、食い物を持ち上げたままの姿勢で死んでいる」

 いや、死んでないから!

 確かに変な体勢だけど。放っておいたら窒息するかもだけど…

 

「砂漠のイチゴを口にしたら、数日後に突然死しちまう……しかもその死体には数時間、感染型の毒が巡るんだ。離れた方がいい」

 いやだから、勝手に殺さないでよ。

 でもまぁ、説明するの面倒くさいし。

 どうせすぐにエースも起きるでしょ?

 

「それより、おかわり貰える?」

「「人の話聞いてんのかァ!?」」

 本当に美味いからおかわりを頼んだのに、返ってきたのは手厳しいツッコミだった。

 しかも話してた店主だけじゃなくて、周囲の全員から?

 

「ぶほ!?」

 どうやら苦しくなったようで、エースが起きた。

 

「ん…おぅ」

 キョロキョロと顔を拭くものを探していたようだったから、持ってたハンカチを渡しておく。

 

「ふぅ。いやー、まいった……寝てた」

「「寝てたァ!?」」

 再びツッコミが!?

 

「あり得ねェ、食事と会話の真っ最中に!?」

「しかも続きを噛み始めた!」

 何を驚く?

 食べてる途中で寝て起きたんだから、そりゃ再開するでしょうよ。

 

「何だ、この騒ぎは?」

 もぐもぐと食事を続けるエースに聞かれたから、答えておく。

 

「この店はコントの練習場なんだって。ツッコミの強化特訓してるんだよ」

 原作でエースがボケて言ってた事を、ちょっと変えて言ってみました。それにこの人たち、マジでツッコみ体質な感じだもんね。

 

「「んなワケあるかァ!!」」

 いやいや、マジで!!なんならツッコミのプロ集団とでも言っとこうか?

 

 けど私としても、いきなり隣で寝られると突っ込んだ皿の中身が飛んでくるからあまり嬉しくはない。なので再び寝ようとした時には止めました。

 そんな騒動も経て、エースが私より先に食事を終わらせた頃のことだ。

 

「……よくもぬけぬけと公衆の面前でメシが食えるもんだな」

 外で騒ぎを聞いたんだろう。たしぎも一緒に居た気がするけど、入って来たのは一人だ。

 

「白ひげ海賊団2番隊隊長、ポートガス・D・エース」

 来ましたね。スモーカーが。でも私には気付いてないみたい。変装してるし、顔もみられてないからね。とりあえず、私は無視して食事を続ける。

 でもスモーカーが来たってことはそろそろかな?

 

「し、白ひげ海賊団!?」

「そういやあの背中のマーク、見たことあるぞ!?」

 まぁ、そうなんだよね。背中のマークさえなければ、スモーカーもエースに気付かなかったと思うんだけどな?

 まったく、どんだけ『白ひげ』好きなのさ?実の親父を嫌ってる反動で、白ひげの事を慕いまくってたりするのかな?

 

「名の知れた大物がこの国に一体何の用だ?」

 スモーカーは忌々しげだ。まぁ確かに大物だもんね。

 

「……探してたんだ。弟たちをな」

 1番探してるのは『黒ひげ』だろうけど、その辺の詳しい事情をわざわざ海軍に伝える気は無いんだろう。

 椅子ごとクルッと振り向いたエースは不敵な笑みを浮かべている。私は自分の存在がバレると色々面倒なことになりそうな気がするから、食事を続けることで振り向かないことを誤魔化す。

 でもその様子を横目で眺めてはいた。

 睨み合うエースとスモーカー、その緊迫した空気に飲まれて静まり返る店内。

 そんな中1人堂々と食事を続ける私は相当浮いてる気もするけど、今度は誰もツッコまない。

 それどころじゃないからだろう。ピリピリとした空気が流れている。

 

「で? おれはどうしたらいい?」

「大人しく捕まるんだな」

「却下。そりゃゴメンだ」

 そりゃそうだろう。海賊が捕まれと言われてあっさり捕まるのなら、そもそも大海賊時代になんてなってないだろうし。

 スモーカーの方もそれは解っているから、エースににべもなく断られても気落ちなんてしていない。

 

「ま、そりゃそうだろうな……おれは今、別の海賊どもを探している。正直お前の首なんかには興味は無ェ」

 いやいやダメでしょ!スモーカー?

 エースと私ら比べたら、優先すべきはエースじゃんよ!

 別にエースをスケープゴートにする気はないけど、お前、何言っちゃってんの?

 いや、まぁ確かに、グランドラインに私らを追って来たのは知ってるけどね?

 でもでもそれはそれ、これなこれって考えんじゃねぇの?

 

「んじゃあ見逃してくれ」

「そうはいかねェ」

 私が見える範囲はエースまで。スモーカーは視界に入ってないけど見聞色で戦闘態勢を取ろうとしている事はわかる。

 ここは店内だぞ?

 やめてほしいな。私まだ食べてるのに…。

 

「おれが海兵で、お前が海賊であるかぎりな」

 海兵だって言うなら周囲の迷惑考えてくれ。こんな所で能力を使おうとするな。

 

「つまんねェ理由だ……楽しくいこうぜ」

 エースお前、挑発してるだろ!

 …ん?

 

「ゴムゴムの~~~~~~~」

 あ~、遠くの方から微かに声が聞こえるぞ。知った気配が近くに来てる。

 でもエースとスモーカーは互いにけん制し合っているから気付いてない。

 

「エース」

 私は少し食べるのを止めて隣に声を掛けた。

 エースはスモーカーから意識は逸らさず、でも顔はこっちに向けた。

 

「? 何だ?」

「ご愁傷様」

 一瞬、『どういう意味だ?』というような表情を浮かべるエース。

 でもそれは本当に一瞬だった。何故なら。

 

「ロケットォ!!!」

「ぐはぁ!?」

「うおぉ!?」

 次の瞬間には、弾丸の如く飛び込んできたルフィにスモーカーと一緒に吹っ飛ばされたから。

 

 見事に纏めて吹っ飛ばされた2人のせいで、店の壁には大穴があいた。

 

 しかし、2人とも自然系なのにあっさりと吹っ飛ばされたね。

 結局、自然系も万能じゃないってことか。

 油断大敵って事だね。

 

 片や、やっとメシ屋を見付けたと大喜びするルフィと、唖然として声も出ない周囲の人々。

 

 エースが居た場所が吹っ飛ばされたので、私は自分の食事の皿ごと、席を左に移動した。

 なぜかって?

 私の左隣にルフィに座られると、戻って来た時にスモーカーにバレそうだから。

 

「おっさん、メシメシメシ!」

 ルフィは、ナイフとフォークを両手に持ってテーブルをガンガン叩きながら催促している。

 それにしても、いくらメシ屋に辿り着けたのがうれしいからって、人を突き飛ばしておいてそれをまったく気にしないのは、人としてどうなのさ?

 確かに吹き飛ばされたのは海兵と海賊だから、別にいいんだけど…

 

「あぁ……でも君、逃げた方が……」

 顔を引き攣らせてそう忠告しながらも、注文された料理はしっかりと出してるあたり、ここの店主は商売人としても料理人としてもプロなんじゃないかな?

 でもコイツ…エースと同じで、お金持ってないよね?

 あ~…って事は、ルフィの分も私が払うのか?

 まぁ、コイツの分は取り分から引いとけばいいか。

 

 美味い美味いと言いながら食事をかき込むルフィ。そんな中でも店主は控え目に逃げろと言い続けている。

 

 1度は吹っ飛ばされたエースがぶち抜いた壁の穴をくぐって戻って来る。

 それを見た店主や他の客たちは慌てて逃げる。

 まぁ、誰だかバレちゃったからそうなるよね。

 

 見るからに苛立っていたエースだけど、自分を吹っ飛ばしたのが誰だか解ると途端に笑顔になった。

 

「おい、ル」

「『麦わら』ァ!!」

 次いでその後ろから現れたスモーカーに邪魔されたけど。

 

「やっぱり来たか、アラバスタに!」

 私は自分がここにいることを知られたくないので、そっぽを向いて知らないフリをする。

 ルフィはかなり長いこと考えてから相手が誰なのか気付き、それが海兵だと解ると、口の中に詰め込めるだけの食料を詰め込み、まるでリスのような顔をして金も払わずに走り去っていった。

 そしてそれを一目散に追いかけるスモーカー。

 

 普通に考えれば、ルーキーのルフィよりも白ひげ海賊団2番隊隊長のエースを捕まえようとするのが正しい姿勢なんじゃないかなとも思うけど、それは置いといて。

 

「おい待て、ルフィ! おれだァ!」

 そのエースも復活すると店の外へと走り去る。……またもや金も払わずに。

 

「イオリ、後任せた!」

 しかも残った私にそんな言葉を残してだ。

 

「……」

 

「あの、君」

 ポンポンと店主に肩を叩かれる私。振り返ると、彼は何だか乾いた笑みを浮かべていた。

 

「連れの分も含めて……払ってくれるかい?」

 ですよね~

 そうなりますよね~

 

「せめて……食事代ぐらいは欲しいのだがね……」

 そう言う店主の視線の先にあるのは、壁に開いた大きな穴……

 修理費、結構かかりそうですね。

 

 エースとルフィ、そして私。

 大食い3人分の食費は凄まじい額に上っていた。

 原作店主は大打撃だったのでは?

 

 カウンターと壁の修理代+食事代はヤツの取り分から引く事にして、キッチリと支払わせてもらいました。

 修理代よりも3人分の食費の方が高かったのは内緒である。

 

 

 ルフィ・エースにはだいぶ出遅れたけれど、私も外に出た。

 さて、どの程度、話は進んでいるのかな?

 もしかして、メリー号に行った方がいいかしら?

 

 気配を探ると、よく知った気配が集まっているのが2ヶ所。

 

「あっちがみんなで……あっちが2人…か」

 じゃあ、私は2人の方に行きましょう。

 私は路地裏に入って人目を避けると、剃で二人の元へと移動した。

 

 見付けた2人は、路地裏で腕相撲をしていた。

 けど勝負は着かない。何故なら、腕の下に置かれて台にされた水樽の方が負荷に耐えきれずに壊れてしまったから。

 けど、うん。

 

「結構いい勝負だったね」

「誰だお前?」

 終わったところで声を掛けてみると、ルフィがきょとん顔で聞いてきた。

 

 こいつ殴っていい?

 

「私よ!ローグタウンでも見たでしょこの姿!」

 ここアラバスタに着いた時、ルフィは私が変装する前に飛び出して行った。

 だからって、ひと月も経ってないのに忘れるか?

 

「あ、なんだイオリか。何で髪黒いんだ?」

「カツラ!!」

 こいつ、バカじゃん?

 

「ついでにさっき、メシ屋であんたの隣に座ってたわよ?」

 明かしてみるとルフィは随分と驚いてた。

 自分で気づかれないようにしておきながらこんなこと思うのもナンだけど、食料しか目に入ってなかったんだろうね。

 

「……お前ェも苦労してんだな」

 エースが労りの言葉をかけてくれるけど、それは最初からわかってた事でしょうよ。

 私がコイツの面倒を見るって言った時からね。

 苦労とは思わないけど、ときどきめちゃくちゃ『疲れる』のよね。

 主に精神的に。今もだけど…

 

 けどまぁ何にせよ、3人揃うのも3年ぶりだ。私たちは歩きながら話をする。

 手始めは互いの近況報告だ。

 私はもうしたけど、ルフィはまだだからね。

 

 その次にはエースが仲間のことを聞いてきたから、ルフィが個性的な説明をする。

 ルフィの説明は下手だけど実際個性の強い面々だし、会えば解ってもらえると思う。

 それにしても、ルフィの中でウソップって『狙撃手』じゃなくて『嘘つき』なんだ?

 自分で『狙撃手』にする事に決めたって言ってたのに。

 しかもチョッパーは『トナカイ』って、いやまぁ合ってるんだけど、『船医』じゃないんかい!!?

 仲間たちの紹介も一通り終えると、エースから意外な話が出た。

 

「そういやお前ら、知ってるか? サボのこと」

 さすがに白ひげ海賊団ともなれば、そのへんの情報も入って来るか。

 

「知らないわ。新聞にも出ないし、手配もされないし……」

 本当は、一応知ってるけどね?

 言わないけど、情報収集も共有もしてるから…

 

「おれも知らねェ。エースは知ってんのか?」

 ルフィも話題に食い付いている。

 

「あァ」

 やけに真剣な顔つきで頷くエース。

 

「あいつ今、革命軍にいるらしいぞ」

「革命軍? 何だそれ?」

 私は目を丸くして驚いているのに、ルフィはキョトン顔だよ。

 しかも革命軍を知らないらしい。

 

「あんた、もう少し新聞見なさいよ!」

 何日か読めば絶対に目にするだろうし、お前にとっては正に他人事じゃないんだぞ? 

 いや、ルフィは知らないんだから仕方が無いか。

 知ってても新聞読まないだろうし…。

 

 ドラゴンがルフィの父であることなんて当然知っているエースも、ちょっと微妙な顔でルフィを見てる。けど教えない。ルフィが知ったらポロッと口を滑らせるだろうし、だから結局その辺のことには触れずに革命軍についてちょっと説明した。かなり簡単な説明だったけど、聞き終えたルフィは大きく頷いた。

 

「つまり、サボは今海賊やってねェってことだな!」

「うんまぁ……そういうことだね」

 案外ちゃんと理解してくれたらしい。

 まぁ、3人が海賊になろうって言ってた頃は、革命軍は今ほど大きく扱われていなかったから、海に出る=海賊or賞金稼ぎ だったからね。

 選択肢に革命軍があったなら、あの時点でもサボは海賊ではなく革命軍を選んだかもしれない。

 

「じゃあ、お前らの仲間を探すか。また海軍に見付かると厄介だからな」

 話し込んではいたけれど、それほど時間は経ってない。

 海に向かって歩きながらだから、無駄な時間でもないしね。

 エースの言葉を聞いて、ルフィが言った。

 

「アイツら、船に戻ったのかもしれねェな……イオリ、船どこ泊めたっけ?」

 ……何でそうあっさりと私に聞くかな?

 まぁいいけど。

 

「海軍に見つかったんだから泊めたとこに向かっても意味ないわよ。まずは海岸に出ましょう」

 既に気配は捉えてる。

 

 そんなこんなで海へと歩いてたら、道中でビリオンズらしき賞金稼ぎたちに囲まれた。

 でも面倒くさいのでスルーする。

 それでも襲いかかってきたヤツらは返り討ったけどね。

 それ自体は簡単だった、数はあっても質は低かったから。それに私は特に楽だったんじゃないかな?

 賞金首だってバレなかったから、そんなに狙われなかったのよね。

 そしてその集団の親玉らしい男をルフィがぶっ飛ばした頃、私たちは海に出た。

 

「あ、海だ!」

 真っ先に駆け出して、水面を眺めるルフィ。そしてその間にも、賞金稼ぎたちが追いかけてくる。

 でもそんなヤツらはどうでもいい。それよりもすぐそこの海にいるメリー号の方が重要だ。

 

「おいお前ら、先に」

「お~い! みんな~!!」

 先に行け、とエースは言いたかったんだろう。でもルフィは話を聞いちゃいねェ。いつもの事だ。

 1人さっさとゴムの腕を伸ばして飛んで行ってしまった。

 

「……聞いて無ェな」

「ルフィだからね」

 別にいいけど。私は剃刀で行けばいいんだし。エースにはストライカーがあるだろうし。

 

「イオリ、お前も先に行け」

 うん、じゃあその言葉に甘えようかな。

 

「解った。エースも来るんでしょ? 待ってるよ!」

「おゥ、すぐに済む」

 賞金稼ぎたちを見るエースは、どことなく好戦的な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。