砂漠を歩き始めて、すぐに音を上げたのがルフィ・ウソップ・チョッパーだ。
冬島育ちの上にもこもこなチョッパーはそれも仕方が無いと思う。
だから、チョッパーは小さくして外套のポケットに入れた。ちなみにエルもそこに居る。けど他2人は根性の問題だろうから放置する。
反対にあまり堪えてないのがビビである。サンジが聞いてるけど、この国で育ったから多少は平気との事。日陰を歩いているので普段よりも楽だと言うけど、それもすごい話だと思う。
昼の砂漠は暑い!普通は日差しを避ける為、昼間はテントなどの日陰で過ごし、夕方から移動するのが普通なのだが、時間が無いので昼も移動する事になった。でも、さすがにそれは自殺行為に近いので、巨大な傘で巨大な日陰をつくり、その下を歩く。傘の素材は風船と布。風船の中はヘリウムガスなので、風がなければとても軽い。風が吹いたら小さくしてやり過ごせばいいんだし…
これは私の能力と力があって初めて出来る事である。普通なら、風が吹いたら飛ばされちゃうもんね。
ただしここは砂漠である。砂地なので日陰であってもそれだけで暑い。
しかも砂丘が多いから余計に厄介だった。この砂漠では、ちょっとした登山気分を味わった。
例によって、すぐにルフィが腹を空かせた。
ビビに対してゴネまくった挙句、次の岩場に到達したら弁当タイムにするとこぎつけたルフィ。
口には出さないけど、ありがたい。実は私もお腹減ってたのよね。
現金なもので、ルフィはすぐに元気になった。しかも調子に乗って、ジャンケンで勝ったヤツが全員の荷物を運ぶんだとか言い出すし。
荷物はそれなりに多いんですよ。小さくしているモノも多いけど、私がはぐれた場合を想定して、小さくしていない分もあるからね。
でも、この流れはもしかして、ワルサギに荷物全部持ってかれる場面じゃね?
「いくぞー! じゃーんけーん!」
どうしようかな?手っ取り早いのは私が勝って荷物守ることだけど、それじゃあ面白くないよね?
悪徳詐欺師には鉄槌を下さないと!
実はそれって簡単な事なんです。私の能力(エイタ含む)があれば…ね?
「ぽん!」
…結果を簡潔に述べよう。
「重い……重いぞ……じゃんけん勝ったのに……何でだ?」
勝ったからだよ! あんたが言い出したんでしょうが!!
じゃんけんはルフィが一人勝ち。よって荷物持ちはルフィに決定。
ぶつくさ言いながらも、言い出したのは自分だからルフィは頑張ってる。
やがてゴーグルの照準を弄りながら前方確認をしていたウソップが大声を上げた。
「前方に岩場発見!」
岩場発見。そう、それはつまり。
「メシーーーーー!!!」
弁当タイムの到来である。最も熱望していたルフィはもの凄い勢いで駆け出して行く。
やっぱり、体力じゃなくて気力の問題だったか。
私たちとしては、走って無駄に体力を消耗させるのもバカらしいから黙々と歩きながら岩場を目指す。
けれどそう掛からずに、1人でさっさと走り去ったルフィが戻って来る。しかも手ぶらで。
この距離程度なら、見聞色で状況も把握出来る。よし、今が頃合いだ。
私がワルサギへの報復に思いを馳せている間にも、ルフィはどんどんこちらへと走る。
「大変だ! 大怪我した鳥がいるんだ!」
で、チョッパーを呼びに来た、と。
「行かねェと!」
それを聞き付けたチョッパーが私のポケットからひょっこり顔を覗かせる。
元に戻してくれと視線で催促してくるけど、その前に私は1つ言いたい。
「ルフィ、大怪我して動けない鳥がいるって?」
既にすぐ目の前に戻って来ていて大きく頷くルフィに、私は溜息が零れるのを禁じ得ない。
「そうだ!」
何で?どうして?
「なぜに医者を呼びに来たのよ? そのまま狩れば鳥肉が手に入ったのに…」
「……おォ、そうか!」
指摘すると、ポンと1つ手を打った。
「お前ェらの頭には食う事しかねェのか!?」
失敬な。他にもちゃんと考えてるわよ!!ただ、今は鳥を食べたいなってだけのことじゃん!
「ちょっと待って、ルフィさん!」
今まで少し考え込んでいたビビが、慌てた声を出した。
「その鳥って、まさか!」
二の句が告げずにいるようだったから、補足してあげる事にする。
「ワルサギだろうね」
事もなげに言うと、ビビに食って掛かられた。
「知ってるの!? なら、何でそんなに落ち着いてるのよ!?」
「え、だって」
私はちょっと頭を掻いた。
「ルフィが荷物を放りだして逆走してきてるのを見た瞬間に、手は打ったから。アラバスタ……特に砂漠の生物に関してはちゃんと調べておいたのよ。念のためにね」
はい。ちゃんと手を打ちましたよ。だってしっかり『見えて』ましたから!!
言いながらビビの肩を叩いて宥めると、幾分落ち着いてくれた。
けれどそんな私たちのちょっと不穏なやり取りに嫌な予感を感じたのか、ナミが割って入ってきた。
「ちょっと待って! ワルサギって何!?」
何って、今言ってたじゃん?
「ワルサギは……鳥よ」
「そのまんま!? もう、あんたには聞かないわ! ビビ!」
え~!!何で?どうして無視されなきゃならんのよ?
「ワルサギは、旅人を騙して荷物を奪う砂漠の盗賊よ」
変わって行われたビビの説明を聞いて、ウソップが眼を剥いた。
「そりゃサギじゃねェか!」
「だから、さっきから言ってるじゃん!!」
ワルサギについて聞いてみんなが慌ててる中、ルフィが『のほほん』としか言えないような能天気な顔で笑った。
「なら大丈夫だな! イオリ以上にサギが上手ェやつなんて滅多にいねェから!」
おい!ルフィ、テメェ!!私がいつ、詐欺を働いた?
『詐欺:他人を騙して財物を得る事。』…まぁ、似たような事はしてるかもだけど、善良な人に対してはやってないよ? しかも今回は別に奴らを騙したわけじゃない。あれ?大きさを変えてるから騙してるのかな? まぁいいや。
「でも、手を打ったって、何をしたの?」
尤もと言えば尤もと言える疑問を口にしたのはビビだった。それに私は肩を竦める。
「行ってみれば解るわよ。……そのままサギ鳥も捕まえたと思うからね。」
さぁ、鳥肉鳥肉!
何と言うか、ここまで上手くいくとはね。1羽はともかく、3羽とも捕まえられるなんて、実は私って運がいいんじゃないかと思ってしまう。
「こいつらだ、倒れてた鳥!」
ルフィが『騙された!』って怒ってるけど、お前、今更じゃん。騙されるのなんて。
荷物を置き去りにしてしまったという岩場の陰は、長時間日陰になっていたからか、少しだけ涼しい。
そしてそこでは、ワルサギたちが無様に潰れていた。何で潰されてるのかって? 私たちの荷物でだよ。
この荷物が持ち運び出来るのは、あくまでも私の能力によって小さくしてあるからだ。
そうでなければ、とてもじゃないけど無理な量がある。だからそれを解除してしまえば、ワルサギたちが運び出すなんて出来やしない。解除は離れていても出来るからね。
そして今回は更に良いことに、見ていたワルサギが荷物を持ち去ろうとした瞬間に縮小を解除したんだけど、他の二羽もそろって潰れてた。
もしワルサギたちが知恵を働かせて、その大量の荷物から自分たちが持てる分だけを持って行こうとしてたら逃げられてしまっただろうけど、それはそれで問題無かった。まぁ腹立たしいことは腹立たしいけど、その程度で物資に困るような量じゃない……
それぐらい大量に持って来てる。
さて……。
「海賊のモノに手を出そうとした報い……しっかり受けてもらおうか?」
1番手近で潰されていたワルサギの首を掴んで持ち上げながら、視線を合わせて勧告した。
本来ならばワルサギのような連中は、煮ても焼いても食えないとかって評されるんだろう。
けど、実際の所は焼いたワルサギは美味かった。結構締まった肉してたし。
私たちは今、岩陰で鳥や弁当を食べながら休憩している。
そんな中突如地響きがしたと思えば、砂漠の向こうから大量の砂埃を巻き上げながら何かがこっちに走って来た。
何か、とは言ってもそれは。
「ありゃあ……ラクダか?」
真っ先に口に出したのはゾロだった。あれが見えるのか?目ェいいな、お前。
暫くすると、はっきり見えて来た。それは必死に逃げるラクダとそれを追い掛ける……。
「サンドラオオトカゲ!!」
でっかい紫色のトカゲ。あれがサンドラオオトカゲか。何でも、鋭い鉤爪と牙を持つのに獲物を丸呑みしてしまうことの方が多くて、それは滅多に使われないんだとか。
生物の不思議。生命の神秘? うん、色々可笑しいよね。生物って環境に適応して進化していくモノじゃなかったっけ? 何で使いもしない物が凄くなってんだ?
いや、ひょっとしたらサンドラオオトカゲ同士の縄張り争いとかに使われるのかも?
まぁ、そんなことはどうでもいい。それよりもだ。
「恐竜の肉は美味かったわよね。アレも美味いのかしら?」
「何!?」
食い意地では無く、純粋に興味を覚えたからこそ出た疑問だったんだけど、その呟きをルフィに聞かれていたらしい。見てみると、目をキラキラさせていた。
「美味ェのか、アレ!」
いや、私は『美味いのかな?』って疑問を口にしただけであって、一言もアレが美味いだなんて言ってないんだけど? ……って。
「トカゲーーーーー!!」
聞いてませんね。
涎を垂らしそうな顔でバヒュンとトカゲに向かって飛んで行くぐらいに、聞いてませんね。
しかも。
「ゴムゴムの~~~~~バズーカーーーーー!!!」
ドゴォン、と。サンドラオオトカゲは倒れた。
一撃必殺ですね。ゾロやサンジの出番も無いぐらいに、クリーンヒットしましたね。
「……あいつの食欲はどうなってんだ?」
ごめん、サンジ。また料理して頂戴。コックとして。
何だかんだでサンドラオオトカゲも結構おいしかった。
砂漠のど真ん中で出くわしたラクダは鞍を背負っていた。なのに、チョッパーが通訳してくれたところ、通りすがりのヤサラクダだと言っている。さらにこのラクダ、助けてもらったことには感謝しているものの男は乗せない主義なんだとか。当然ながら、それでみんなが納得するわけがない。
ラクダはルフィ・ウソップ・サンジによってリンチされる羽目に。…こらこら。
「やめなさいよ!」
殴る蹴るの暴行でこのラクダが再起不能にでもなったら本末転倒だと思い、私は割って入らせてもらった。それに、男は乗せないとはいえ、女性陣は乗れるわけでしょう?ナミとビビに乗ってもらえばいいじゃない?
「2人乗りだから、少なくともナミとビビは乗れるでしょう?あんた達は、訓練のつもりで歩きなさい!!」
私も歩くつもりで言ってみた。
ゾロとサンジは黙ったけど、ルフィとウソップは不満たらたらだった。黙殺したけどね。
その後ラクダはナミによってマツゲと名付けられた。ゾロに一番変だぞとか言われてたけど、原作通りにそうなった。
マツゲに乗ったのは結局ナミとビビ。私も乗るか聞かれたけど二人乗りだから、とりあえず私は遠慮した。ルフィがナミに『か弱い女の子をこれ以上歩かせる気?』って詰め寄られて、しかもサンジもそれに同調した。さらにサンジは、イオリちゃんが乗らねェのにおめえが乗るな!って怒鳴ってた。
砂漠の船という足も手に入れ、私たちはさらに砂漠を進む。
~*~ 言い訳という名のQ&A集② ~*~
Q:砂漠越えの際、荷物を縮小して収納貝に入れていかなかったのはどうして?
A:原作では、持って移動する事を考えて、ギリギリ3日分の荷物にしていましたが、イオリの能力があるので、もっと多くの荷物を持って移動しています。ただし、ドラムでドクトリーヌと話していたように、イオリは居なくなる(はぐれる危険性を訴えた)事を考えて、ある程度の荷物は縮小せずに持って行く事にしました。 なので、見た目の量は原作とあまり変わらないか、多いくらいです。
収納貝を使わないのは、収納貝の数に限りがある事と、使っているところをルフィに見せたく無いからです。
※ルフィは収納貝の存在も、使い方も知りません。だから、船で食料が無事なのです。
ちなみに、予備の食料を2つの収納貝に入れて、イオリが持ち歩いています。
Q:みんなを縮小して、イオリが運んだら速いんじゃね?
A:今後、船で航海しなくなっちゃうので、出来ません。
Q:メリー号を小さくして、持って行かなかったのは?
A:事が終わった後、ロビンが乗るからです。