さて、種明かしでもしましょうか?
「ルフィ!悪いんだけど、もうちょっと待っててくれる? コイツにすこし、言ってやりたい事があるのよね。……さて、クロコダイル? これ、何だと思う?」
言って、私は懐から『ソレ』を取り出した。ペルに持って来てもらった、あの子電伝虫とは別のもの。それは……。
「それって……国内放送用の電伝虫?」
ビビの訝しげな問いに、私は笑って頷いた。
原作で、麦わらの一味の出航時に、ビビが式典で使ってたアレですよ!
コブラ国王に頼んで、用意してもらったのはこれなんです。勿論これ単体じゃなく、放送の準備も込みで!これを受け取った時にペルに確認したのは、放送準備の事でした。
コイツのマイクをONにすれば、後はもう流れちゃうように準備万端整えて!
「ひょっとして、今までの会話……全部、流れてた……?」
察しのいいビビに拍手!
クロコダイルはまだ訝しがってる……ってか、状況が解ってないようで、それほど様子の変化は見られない。 精々が眉間に皺を寄せた程度だ。
「便利よねコレ。アラバスタ中に声を届けることが出来るんだから。このレインベースにも、首都アルバーナにも。それに反乱軍がいるだろうカトレアにも、ユートピア計画ってヤツの仕上げの地であるナノハナにも……他にも色々。ここが地下階、それも湖中でなければ、アンタも気付けたのかもしれないわね?会話がダダ漏れてるって」
言ってクスクス笑いと共にクロコダイルを見ると、状況を察したらしい。もの凄い形相で睨まれた。
あ~すっきりしたわ! コイツの余裕の崩れた顔が見れて!!
ちなみに今はOFF状態だから音声は流れてないわよ?
具体的に言うなら、『
マイクはピンマイクのように胸のあたりに着けてます。そして耳には受信専用の電伝虫。送信機はレインディナーズ前の柱の根元に置いてある。放送がきちんと流れていたのは確認済なのです。
つまり…
「これまでの悪行、現在進行中の計画の全容……それらが全て、一連の黒幕の口から明かされるのがリアルタイムで流れてたってわけ。しかも、アラバスタ全国放送で!」
出来るだけ邪気の無い笑顔で単刀直入に言えば、部屋中の人間がポカンとした。
「ちょ……どういうこと!?」
真っ先に我に返ったのはビビだった。掴みかからんばかりの勢いで食って掛かってきた。
「私、聞いてないわよ!?」
ええ、そりゃそうでしょ。
「だって、今初めて言ったし」
あっさり言ってみると、ビビは何と言っていいのか解らないといった様子で口をパクパクさせた。
「でも、ビビも見てたでしょ? 私がこれを受け取ってる現場。」
ビビの方でも、それはすぐに思い当たったらしい。
「もしかして、さっきのペルの……」
その通りです。肯定の意を込めて首を縦に振ると、ビビはまだ納得出来ないのか更に言い募ろうとしてきた。
「で、でも! じゃあ何でこれまで教えてくれなかったの!? そういう計画立ててるって!」
「言ったじゃない。うまくやれる事が確認出来たら教えてあげるって。」
「だからって、それが手に入ったなら、その時点で教えてくれたっていいじゃない!」
いや、だから…
「受け取ったあの場で、『敵を欺くにはまず味方から』って言ったじゃん?」
再び邪気の無い笑顔を向けると、ビビは脱力したように崩れ落ちてしまった。あれ?そこまでか?
だってさ、ユナの件で、ビビが腹芸無理だってわかっちゃったからね?
黙ってたほうが自然と緊迫した雰囲気が出せるって思ったのよ。
「? どういうことだ?」
……未だに解ってない様子のルフィは、放っておこう。
ちゃんと解ってくれたらしい面々が檻の中で説明してくれてるし。
さて、クロコダイルに詳しい状況を教えてやろう。私は耳につけていたイヤホン型の小さな電伝虫を取って見せた。
「これは、受信専用の電伝虫。これと対になってる送信用の電伝虫はレインディナーズの外の橋の柱付近に置いてある。ここでの会話は全て、クッキリはっきり流れていたのは確認済よ? で? 何だっけ? アラバスタ崩壊後、国民の支持を得て国を頂く……だっけ? どうやって得るのかしらねェ、国民の支持」
ニッコリ。
そう擬音が付きそうなぐらい鮮やかに微笑んでやった自信がある。そしてそれは成功してたようだ。
「……外道……」
檻の中でゾロが冷や汗かきながら呟いてるけど?
今のタイミングだと、クロコダイルにじゃなくて私に対して言ってるの?
いやいやちゃうでしょ!ちがうでしょ!?今の本気で言ったでしょ?何言っちゃってるわけ?
外道はクロコダイルじゃんよ?あたしゃコイツを弄り倒してるだけだっちゅうの!!
しかも何?ナミとウソップがゾロの言葉に頷いてんじゃん!?
「その声、思い出したぞ!騙しやがって、クソガキが!!」
「あら、騙される方がバカなんじゃなかったっけ?」
さっきまで、アラバスタの国民を散々そう言ってバカにしてたわよね?
しかしまぁ…凄い青筋ですこと。 大丈夫? 血管切れて失神とかしちゃわない?
まぁそれならそれで、一件落着だから楽でいいけどね?
「殺す!」
「いいわよ掛かっていらっしゃい!ただし、私もタダで殺られるつもりは無いわよ?」
と言いながら、私は海楼石の手錠をこれ見よがしに指でクルクルと回した。
「殺される前に、これをお前に掛けてやる!この店の前には既に群衆が押し寄せてる。私を殺した後、無事に逃げ出せるといいわね?」
能力無しで、数百人を相手取れるかどうかはわからない。けれど無事では済まないだろう。それにクロコダイルには時間が無いのだ。スモーカーがここに居るのを見ればわかる通り、海軍も動いている。となれば、放送を聞いて応援を呼んでいるかもしれない。
クロコダイルにとって、一番まずい事は、今ここにビビと一緒に居るのがバレる事。放送が嘘だと言い訳できなくなれば、計画は確実に潰れることになる。
私より、自分の方が強いと思っていても、手錠を付けられる可能性がゼロでない以上、バカでなければそんなリスクは犯さない。それに、クロコダイルはユートピア作戦が開始
もしも襲ってきたならば、そんなバカをルフィに相手させる必要もない。ここで沈めて終わりにするだけだ。その上で、捕縛したコイツを連れて、ビビと一緒に反乱軍を止めに行けば、アラバスタのイベントは終了である。
工作員? そんなモンは簡単に捕縛できますよ。だってあいつら、わかりやすくBWのエンブレム付けてんだもん。
「どうする?リスクを覚悟の上で、私を殺してみる?」
私が言うと、クロコダイルは舌打ちして、攻撃態勢を解除した。
ここでのクロコダイルの最大の失敗は、外との連絡手段を持っていなかったことだろう。
原作でもそうだったけど、子電伝虫を持っていたのはロビンで、クロコダイルじゃない。
全てのエージェントに最終計画を通達した今となっては、すぐに水没させる予定の部屋に普通の伝電虫を置いておくとも思えない。余裕がアダになったってワケだ。
「クソガキが! よく覚えておけ。お前は殺す! 必ずだ!!」
負け惜しみにしか聞こえないけど? まぁ、この場は私の勝ちって事で…
「残念だけど、それは無理ね。だってあなたは、ルフィにぶっ飛ばされるんだから!」
ルフィはずっと前から言っていた。そもそも組織のトップ対決だもんね。
だから私はアラバスタ乗っ取り計画を潰す事にだけに注力してたんだから。
「クハハ!」
何がおかしいのか、クロコダイルは嘲るように笑った。
「『麦わら』だと!? あんな小物に、このおれが!?」
「何も可笑しくなんかないわね。ルフィは海賊王になる男なんだから!!」
フン、と鼻で笑い返してやると、クロコダイルの笑みが消えた。
「言うじゃねェか……だったらこの状況、どうするつもりだ?」
クロコダイルは懐から1本の鍵を取り出す。あれは……。
「檻の鍵!?」
私たちのやりとりを、半ば目を点にしながら見ていたビビが声を上げた。もっとも、声を上げたのはビビだけだったけど。
どことなく白けた空気に気付いてないのか、クロコダイルは鼻を鳴らした。そして鍵を放り投げると、それは足元に開いた穴へと落ちて行く。
「檻を開けたきゃ開けるがいい……もっとも、おれがうっかり落としちまったがな」
何も知らないクロコダイルはともかくとして、焦った様子で穴の下を覗き込むビビは、まさか忘れてたりするんだろうか?
それはそれで、クロコダイルへのフリになるから別に責めたりしないけど…
「? お前ェ、何言ってんだ? そんなモガッ!?」
まず間違いなく余計な事を言おうとしたであろうルフィの口を、ウソップが慌てて塞いでいた。
困ったもんだわ。こちらの情報を敵にわざわざ教えるようなことはしないでほしんだけど?
そんなやり取りをしてる間にも、穴の下ではバナナワニが鍵を飲み込んでいて、ビビは青ざめていた。
ある意味、迫真の演技だわ。クロコダイルがビビを見てニヤリと笑っている。
「それとこの部屋はもう用済みだ。これから1時間かけて水が入り込み、湖の底に沈むだろう」
「どうでもいいけど、さっさと行ったら?」
余裕をかましているけれど、焦ってるのはクロコダイルの方だろう。
クロコダイルがアラバスタを手に入れたいのは、あくまでもプルトンを手に入れる為。万が一。国が手に入らないとしても、プルトンは手に入れたいはず。プルトンさえ手に入れられれば、その後はどうにでもなると思っているんだろう。
クロコダイルはすぐにでも、コブラ王と接触したいに違いない。Mr4ペアとの合流を急ごうと思っているはずだ。
けれど私の発言を聞きとがめたクロコダイルは、また表情を険しくさせた。
「フン……『麦わら』は能力者だ。部屋が沈む前に、当たりのバナナワニを見付けられたらいいがな」
最後まで嘲るのは忘れずに、クロコダイルは体を砂に変えて消えた。気配はあっという間に店の外へと消えていった。早いわね。
「イオリさん!! 早くしないと! 鍵を見付けなきゃ!」
ビビが私の服を引っ張っていた。
たしかに、ビビ1人じゃバナナワニの群れなんて対処出来ないだろうから、私を連れて行こうとするのはわかるけど…。
「ビビ? 本気で忘れてる?」
疑いの眼差しを向けると、ビビは虚を突かれたような顔をした。
「確かに普通なら、海楼石の檻は厄介だとは思うけど…」
私は檻に近付き、その格子の間から手を中に入れ、1番近場にいたナミの肩を掴んだ。
「これだけ隙間が開いてれば、何の問題もないわ!」
能力を発動し、ナミを小さくして隙間から外に出し、また元の大きさに戻した。
ちなみに私、海楼石も小さく出来ます!膨らませた風船とかも小さくできるので、工夫次第で気体も液体もいけると思います!!なので事実上、私に小さく出来ないモノは無いと思います!!!
さらには覚醒してるので、浮いているモノ以外には触れる必要もないんだけどね?
こんな処で、図鑑にも載ってない能力を公開するつもりはないのです。スモーカーも居るしね。
「私には鍵なんて、そもそも必要無いのよ!」
だからこそ、ルフィも私に『出せ』って言い続けてたわけだし。
ビビも私の行動の途中で漸く思い出したのか、ハッとしてた。
でも、ビビ…、グッジョブよ!!
クロコダイルは完全に騙されてたもんね?