イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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エクスプローラさん、誤字報告ありがとうございます。


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03-127話:ボンちゃん

「今夜!?」

「そう」

「ここ出るのか…」

 お風呂から上がった後、私たちは寝所としている部屋で、この国からの出航について話し合っていた。

 

「ま、おれも妥当だと思うぜ。もう長居する理由はねェからな。」

「…そうだな。海軍の動きも気になる。」

「…」

 

「ルフィ!お前が決めろよ」

「よし!も一回アラバスタ料理食ったら行こう」

「すぐ行くんだよバカ野郎!!」

 ゴゴゴン!! 全員に殴られるルフィ。

 

「ぐあ…!!!」

 

 

 

 一方、アラバスタ城内では…

 

「どうしましょうイガラムさん……!!」

「すぐに彼らに伝えねば…!!」

 

「ああ勿論だ。しかし、これは大変な事になってきた。 無事にこの島を出れるとよいのだが…」

「なんという手回しの早さ…!!!」

 チャカとペル、イガラムの3人が騒いでいる。原因は新たな手配書だ。

 

「この額ならば、『海軍本部』の”将官”クラスが動きだす…!!」

 

 『麦わら』  モンキー・D・ルフィ 懸賞金1億4千万ベリー

 『紅参謀(くれないのさんぼう)』 イオリ        懸賞金1億3千万ベリー

 『海賊狩り』 ロロノア・ゾロ    懸賞金  7千万ベリー

 

「…もう後には退けんぞルフィ君…!! 君達は…”七武海”の一角を落としたのだ!!!」

 イガラムが寝所へと走る。

 

「大変ですぞ!!!」

 ドアを開けると、窓の外を眺めるビビだけが居た。

 

「…!? ビビ様…!!」

「……」

 

「彼らは…!!?」

「なあに?イガラム…そんなに慌てて…」

 イガラムの手には3枚の手配書が…

 

「ルフィ君達は…どこへ…!!?」

「海よ? 海賊だもん」

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

「ん―…快適だ」

「砂の国ともお別れか…おれ様を筆頭に大変な戦いだったなァ。…おいルフィいつまで食ってんだ!」

「アラバスタ料理は最高だぞ。サンジ、今度作ってくれよ。」

「ああ、おれも興味があってな。テラコッタさんにレシピをもらってきた。香辛料も少しな。」

 ゾロ、ウソップ、ルフィ、サンジが話してる。

 

「……ナミ?……」

「………」

 ナミがずっと俯いているのをチョッパーが心配してるけど…

 

「ナミ!!肉一コやろうか?一コだけ!」

 ルフィも心配してるみたい。ルフィが食べ物をすすめるなんて余程の事なんだけど…

 

「…ナミさん。…ビビちゃんの事だろう…?気持ちはわかるよ…でも…考えたって始まらねェ。…そりゃ、あれだけ仲良くしてたんだもんな。…だけどホラ、顔を上げなよ…」

 サンジも心配してる。

 ウソップとゾロも神妙な顔してるけどさ?

 あんた達なにか勘違いしてません?

 

「私…諦める…。ビビの為だもんね…10億ベリー」

 

 ― ドカァン!! ―

 

 まるでコントのような音が鳴り、私とナミ以外の全員がズッコケました。

 ズッコケながらもウソップは、ナミにツッコみ入れていた。

 

「っったりめェだァ!!!!」

「金の話かよ!!!」

 ゾロとルフィが怒鳴ってますけどねぇ…

 私に言わせりゃ勘違いしたあんたらが悪いんだよ!

 

「うわー!!ウソップが落ちたァ!!」

 超カルガモから落ちたウソップを剃刀で拾い上げ、元に戻した。

 

「って、おめェは何落ち着いてんだァ!!」

 え~、何で助けてあげたってのに、私が怒鳴られなきゃならないの?

 

「なによもう!せっかく助けてあげたのに…」

 もう、落ちても助けてやんねーかんな!

 

「ナミ!!てめェ紛らわしいマネしてんじゃねェぞ」

「? なに騒いでんの?あんた達。ビビの事なら心配したって仕方ないでしょ?」

 

 

 

 宮殿では…

 

「カルー!!カルーはおるか!?」

「クエ~~?」

 

「ムダよイガラム」

 

「なぜです。せめて自分達の立場を教えてやらねば…!!」

「カルガモ部隊に送らせてるから…いくらカルーでも追いつけないわ。 ― それに同じよ」

「何がです!?」

 

それ(・・)を知っても彼らは喜ぶだけで、何も変わらない。みんなの事なら平気よ。さァ出てって私眠るから。 明日は早いんでしょう!?」

 

「しかし……ア…ああ…そうです…そうでした。明日は国中にあなたの声をお聞かせせねば」

「わかってる。おいでカルー。一緒に寝よ」

「クエ」

 

 部屋を出るイガラム。

 

「…」

「イガラムさんっ 我々は…何をすれば…」

「ん~~どうも腑に落ちん ……あっさりしすぎている…」

「何です…!?」

「ん~~~…」

「……」

 部屋の外からビビの言葉を聞いていたペルは、一人だけ落ち着いていた。

 

 恐らく、ビビ様は彼らが去るときに何か話をされたのだろう。

 ならばもう…何も心配する事などない。

 

 レインディナーズからここまでという短い間ではあったが、私は彼らが信頼出来る者だと断言できる。

 もしも、ビビ様が彼らと共に行かれるとしても、心配などは不要だろう。

 

「ペル、お前は何を笑ってるんだ?」

「いや、別に…」

「「?」」

 

 

「静かね…カルー…こんな静かな夜は…久しぶり…」

 カルーはすやすやと眠っている。

 

「ここには夜中に食べ物を求め彷徨う船長さんも、夜な夜なトレーニングを始める剣士も…、寝ぼけて枕を投げてくる航海士も……誰もいない」

 

 

 *--*--*--*--*

 

 

 ”電伝虫? 誰から…?”

 ”「ボンちゃん」という…方です。”

 

「『ボンちゃん』…誰だ?」

「誰も知らねェぞ…」

「 ― ですが、友達だと言いはるので……」

 

「Mr2じゃない? 確かあの人、”ボン・クレー”って名前じゃなかったっけ?」

 そういえば…ロビンは大丈夫なのかしら?いきなり動き出したんだろうからビックリしたんじゃないのかな?

 

「…まァ…話してみよう」

「ワナかも知んねェぞやめとけ」

 

『モシモシィ!!?モッシィ!!?がーっはっはっはっは!!!!あァちしよォ~~う!!! あ・ち・シ~~~~~!!!』

「…………」

 ガチャン

 

 と、サンジが切った。

 

『アッ』

 

 すぐさま電伝虫が鳴る。

 

「何だよ!!!」

 サンジが電伝虫のベルに怒鳴っている。すると、受話器をルフィが取った。

 

「おう、オカマか!? おれ達になんか用か?」

『あら!?その声は”麦わら”ちゃんね~い!?アンタ強いじゃな~い!!?あちしびっくらコイたわ!!そーそー”Mr2”ってあちしの事呼んじゃダメよ。電波が海軍につかまったらあちし大変だから!!』

「今、自分で言ったぞ」

 

「用件を言え」

 

『あ…そうそうアンタ達の船あちしが貰ったから!』

「フザけんな!!!」

 そうだよね?貰ったって言われたらそうなるよね?

 ボンちゃんもさぁ…ちゃんと言葉を選びなさいよ!

 

「この野郎ジョーダンじゃねェぞ!!今どこだ!!」

『アンタ達の船の上ェ~~~』

「よりによってコイツ……!!!」

『違~うの、違~~うのよう!!! あちし達……友達ジャナ~イ?』

 

 

 

「サンドラ河の上流にいる…信用できると思うか?」

「一度は友達になったんだけどな…」

「お前ならまたなれそうで恐ェよ」

 

「でも…どのみち行くしかないと思うわよ?」

「そうだな、船を取られてる。おれ達をハメようってんなら…そん時ァブチのめすまでだ。」

「そうと決まりゃ、さっさと仕度だ…」

 

 私たちが荷造りしている間、ビビはずっと下を向いて考え込んでいた。

 そして、荷造りが完了しようとする辺りで、ビビが悲痛な声を出す。

 

「ねえみんな」

「ビビ!?」

 

「…ねぇみんな…私…どうしたらいい…?」

 

 ナミが散々悩んだ挙句、ビビに提案を聞かせる。

 

「よく聞いてビビ。『12時間』猶予をあげる。私達はサンドラ河で船を奪い返したら、明日の昼。12時ちょうど!!『東の港』に一度だけ船をよせる!!おそらく停泊はできないわ…。あんたがもし…私達と旅を続けたいのなら、その一瞬だけが船に乗るチャンス!!その時は歓迎するわ!!海賊だけどね……!!」

 

「君は一国の王女だから、これがおれ達の精一杯の勧誘だ」

「来いよビビ!!絶対来い、今来い!!」

「やめろってルフィ!!」

「行くぞ」

 

「何だよお前ら、来てほしくないのか!?」

「そういうんじゃねェだろ。ビビが決める事なんだ!!」

「……」

 

 ロープをつたって、みんなが下に降りる。最後は私だ。

 

「ビビ…」

 そっと、ビビを抱きしめた。

 

「…イオリさん?」

 ビビがカブりを振る。そして別の名を呟く…

 

「ユナ…」

 じゃあね…。

 心の中でつぶやいた。

 

 ビビの出す答えは知ってる。原作知識だけど…。

 

 でも私たちは友達だから。

 …また…遠くない未来に必ず…ここに来るから…ね!

 

「あっ…」

 ビビから離れ、私は月歩でみんなの後を追う。

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

 明日の昼12時…東の港なら…カルーの足で4時間…ここを8時に出れば間に合う…

 

 自分が海賊になるなんて…考えたこともなかった…

 そんな人生の選択なんて、この期を逃したら、もう一生有り得ない。

 

 そういえば、ユナが昔…

 

 ”海賊とかになっちゃうかもね?” って言ってたっけ…。

 

 あの時私は…

 

 ”…海賊って…犯罪者にわざわざなるの?” って言ったんだっけ。

 

 あの時は…海賊=犯罪者って思ってた…

 

 でも…今なら…

 

 クロコダイルのようなモーガニアではなく、ルフィさん達のようなピースメインの海賊になら…

 

 なってもいい…

 

 なってみたい… そう思う…

 

 でも…

 

 王女である事をつまらないと思った事はないし、反乱は終っても…国はまだ大変な時期…

 

「…私が行くなら…あなたも行くわよね…ねぇカルー……あなたは…どうしたい?」

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

「ん待っっっっっっってたわよアンタ達っ!! おシサシブリねいっ!!!!」

 ボンちゃんが見張り台の上に乗って迎えてくれたけど、見事に全員がスルーしていた。

 

「さァ着いたぞ………」

「よ―し荷物を下ろせ。ありがとなお前ら」

「クエー グエー クエエ」

 

「お前達ともここでお別れだ…」

「気ィつけて帰れよ」

「王とかちくわのおっさん達によろしくなァ!!!」

「クエ~~~~ッ!!」

「元気でなァ~!!!」

 

「また…!!…また!!いつの日か必ず会おうなァ~~!!! ― ってちょっと待てやァ!!!」

 無視されっぱなしのMr2が割り込んできた。

 それにルフィが答える

 

「何だよ!!」

「何だよじゃナーイわよ―う!!! そーゆー態度ってヨクないんジャナ~~イ!!?ダチに対して!!」

 

「ダチって何だよ。お前、敵だったんじゃねェか!ダマしやがって」

「ダマしてないわよーう!!あちしも知らなかったのよーう!!! ―でもまァ…もういいジャナイそんな事」

 

「オイ横にずれろ」

 荷物を運ぶゾロがボンちゃんのすぐ脇を通る。

 

「あ、ゴメンねい B・W社は滅んだの。あちし達はもう敵同士なんかじゃない…」

「敵同士じゃなくても何でお前おれ達の船に乗ってんだよ」

 

「はふー、コノスットコドッコイ」

「何だと!!?」

 

「いィい!? あちしが今この船に乗ってなかったら、この船はドゥーなってたと思ってんの!?」

 

「海軍に奪われてたかもね」

 ナミが横槍を入れる。それを聞いてルフィは驚いていた。

 

「かもねじゃないわ!!確実にやられてた!!今この島がドゥーいう状態にあるか知ってる!!?海軍による完全フーサよ!!!封鎖っ!!!スワン一羽も逃げられない」

 

「…じゃあお前…海軍からゴーイングメリー号を守ってくれたのか…?」

「なぜだ!!」

「何で!?」

 ルフィが、ウソップが、チョッパーが、驚愕しながらボンちゃんに問いかける。

 

「友達、だからよう」

 

「やっぱりお前はイイ奴だったんだァ!!!」

「ジョーダンじゃなーいわよーう!!」

「ジョーダンじゃなーいわよーう!!」

 結局、ゾロが思った通りにも一度友達になったルフィ達…

 

 私は少し呆れながら肩を組んで踊る4人を見ていた。

 

「荷物まだある?」

「いや、これが最後だよ」

 ナミは完全にスルーしてる。サンジも同様だ。会話は聞いてるみたいだけど…

 

「 ― つまり、Mr2…海軍の「海岸包囲」によってお前らも島を出られなくなり… 味方を増やそうと考えたわけだな?」

 ゾロが冷静にツッコンだ。

 

「ドキっ!!」

「ボンちゃーん!!」

 

「そうよ!!?こんなときこそ!!!こんな時代だからこそ!!!つどえ!!!友情の名の下に!!! 力を合わせて戦いましょ~~う!!!」

「「「うおおおおお!!」」」

 

「……もお」

 

「よろしくお願いしまーす」

 Mr2の船から声がした。

 

「いたのかよっ!!!」

 ゾロがツッコみを入れていた。

 

 ゾロはああいってたけど、仲間を増やそうと思ったからと言って、メリー号を海軍から守ってくれた事は事実である。

 だからだろう。4人で踊っていてもそれほど怒っていないのは…

 もっとも、ロビンが乗り込んだ後であれば、小さくして、収納貝に入れて置くって手もあったんだけどね?

 

 何故そうしなかったかと言えば、ルフィとボンちゃんに友達になっておいてほしかったからである。

 だから私も呆れながらも何も言わないでいるのです。

 

 

 明日は、いよいよアラバスタともお別れだ。

 

 さて、どうなりますやら…

 

 

 

 

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