酒場にて…
「この『モックタウン』は……海賊達が落としてく金で成り立つ町だ。海賊達は稼いだ金を湯水の様に使ってくれるからな。」
酒場の店主がナミに説明してくれた。店内は満席。かなりの賑わいである。
「ケンカや殺しは”日常”だが、無法者達も町の人間には滅多に手を出さねェ。金があろうと接待する者がいなきゃ楽しめねェだろう?」
「だけど、ほんとやな感じよこの町…」
ナミはアイスティー。私とゾロはビール。ルフィはドリンクとチェリーパイを食べている。
「ワハハッ…。そう思うのがまともだろうな。だが、あいにくまともな奴の方がこの町では珍しい。4日もありゃ”記録”は貯まるから、ゴタゴタに巻き込まれねェウチにここを出るんだな」
「4日か…じゃ、2日も居られないわね…。ねぇおじさん」
「オォイ!!おっさんっ!!!」
「オイ、オヤジィ~~っ!!!」
ルフィとそのとなりの大男がカウンターをバンバン叩きながら叫ぶ。
「ん? どうした」
「?」
2人は口をそろえて言った。
「「このチェリーパイは死ぬほど」」
「マズイな!!!」とルフィ。
「ウメェな!!!」と大男。
「「ん? ……」」
睨みあい、空気がビリビリと震える。
続けてドリンクを飲み干すと…
「「このドリンクは格別に」」
「うめぇな!!!」とルフィ。
「マズイな!!!」と大男。
「てめェ、舌オカシイんじゃねェのか」
「お前、頭オカシイんじゃねェのか」
またも睨み合う2人。店主は困惑顔だ。
「…まァおれはコックじゃねェからどっちでもいいんだがよ…」
その後2人は土産合戦を始めたが、私たちは買い物に来たわけじゃない。そもそもルフィは金を持っていないクセになにをしてるんだか…。
「「何だお前やんのかァ!!?」」
「何でケンカになってんだお前ら!!!」
怒鳴り合う2人をゾロが諫める。
「ルフィ!!約束したでしょ!!?それに肉何十個も買って帰るお金ないわよ!!買出しじゃないんだから!」
ナミもルフィの暴走を止めようと口を挟んだ。
「おめェ…海賊か…!?」
「ああそうだ!!」
「懸賞金は」
「7000万!!!」
「7000万!!へぇ…そうかい。そりゃすげェな。」
どうだとばかりに胸を張るルフィ。周りの連中の驚きとは逆に大男、黒ひげは納得顔だ。
「となりのおめェも高そうじゃねェか。どこぞの大物にも似てるみてェだしよ。」
「私の事? 私の懸賞金は6500万よ。悪いけど、まだ”億”は超えてないわ!」
「…」
「ほらほら。てめぇはコレ持ってさっさと帰んな!!チェリーパイ50コだ。」
不穏な空気を感じたのか、店主が黒ひげを追い出した。
黒ひげと入れ替わりでベラミーが現れる。なんだよめんどくさいなぁ。来ないと思ってたのに…
「”麦わら”を被った海賊がここにいるか?」
「ベ…!!!ベラミーだァ!!!」
「へェ…お前が…?7千万の首か…”麦わらのルフィ”それと…隣の女が6千500万…”紅髪のイオリ”か?」
「何だ…?」
「お前らに用みてェだなルフィ、イオリ」
「ねェ。ベラミーって…さっきホテルを貸し切ってた奴の名前じゃない?」
「…そうね。さっき手配書見せたでしょ?あいつが”ハイエナのベラミー”よ!」
「5500万だっけ?イオリよりも低いんでしょ?」
「懸賞金で言えばね。でも気配からするとアイツよりゾロのほうが上よ?」
フンと、ゾロはさも当然という顔でジョッキを空にする。
私は原作を思い出し、少しイラっとしていた。
しかも仲間まで一緒に来やがって…
「聞いたか。あの麦わらのチビ、7千万だと…」
「隣の女が6千500万だと?」
「ホントかよ…」
「あれが…?」
「でっけー奴によく合うな今日は」
「おれに一番高ェ酒だ。それとこのチビどもにも好きなモンを…」
「なんだ、お前いい奴だな!」
ルフィが飲み物を飲むと、ベラミーがルフィの頭に手を伸ばす。
「「!!?」」
原作では、ルフィを頭からテーブルにたたきつけられる場面だけれど、私がベラミーの手を掴んで止めた。
何しようとしやがったこのヤロウ的な感じで…
捕まれた腕を振り払い、ベラミーが私を睨む。
「邪魔しやがって!このクソ
「…別に…私が設定したわけじゃないけどね?」
しかも、おめェの知ってる金額はたぶん古いだろうしね。(はたして、いくらになってるんだろう?)
「女の武器でも使ったんじゃねェのか?政府の役人にケツでも振ってよ?なぁ、おまえら!!」
後ろでは、ベラミー一味の一部が笑っている。何人かは顔を青くしてるみたいだけど?
「図星だろ?女のくせに粋がってんじゃねェぞ?」
「………」
しかし、なんだろうねコイツは… どっちがふざけてやがんだよ!!
あ~ダメだ……もうねェ…怒りを
少しムッとした感じのイオリの顔が、だんだんと笑顔に変わってゆく…
「あっ!!」
ルフィがイオリの表情を見て声を上げる。
「なんだ?」
ベラミーが首を傾げる。
「ちょ、ちょっとイオリ!!?」
「ナミ下がれっ!!もう、おせェ!!」
ナミとルフィは何を騒いでいるのかな? ねェルフィ、何が遅いの? 意味わかんないんだけど?
ゾロはゾロで、何で壁際まで下がってんのよ?
まぁいいや! 今はそれどころじゃないもんね!!
このバネ野郎にしっかりとお灸を据えてやらねェとな!!!
「……」
店内が静まり返っていた。今、この島でもっともイカレていると言われている懸賞金5500万の男が、暗黒を背負って正座させられていた。
「もう…二度と、女性蔑視は許しません!!」
「…ス…スミマセン…もう言いません。…生まれてきて…ゴメンナサイ……」
「「べ…ベラミー!!」」
ベラミーの仲間たちが悲痛な声を上げる。顔が青ざめているのはどうしてかしら?
あらやだ、
そういえばティーチの気配が消えたわね。ベラミーを叱り始めたときはあったのに…?
「……」
ルフィの顔色もすぐれない。ゾロとナミはなんかホッとしてる感じ?
「も…もう、イオリ。あんたそれなんとかならない?これじゃ話も聞けないわ!」
「別にいいじゃない。ベラミーに聞くわけじゃないんだし。」
『それ』って何よ?ベラミーが女性蔑視発言したから叱っただけじゃん?
「…そうね…。ねぇおじさん。私達、”空島”へ行きたいの。何か知ってる事はない!?」
「…!!!」「!!?」「…!!」
「ウソでしょ…?」
「何言った今…あの女」
ナミが”空島”と言った途端、店の空気が一変した。
「?…”空島”へ行く方法を…」
「?」
「どわっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
「ぎゃぁっはっはっはっはっはっはっは!!!」
「ハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」
「!!?」
「ぐあっはっはっはっは…”空島”だと…!!!」
「うわっはっはっは!!勘弁」してくれ!!!」
「?」
「な、何よ…!!だって記録指針はちゃんと空を指してるのよ!!?」
「!!!」
「……!!」
「ぶわっはっはっは、ロ…ロ…!!”
「ひゃあっはっはっはっはっはっは!!!”記録指針”ってのは…すぐイカれちまうもんさ」
「!」
ナミが顔を赤らめた。
「ハハッハハハハッハハハハハ…!!」
「…」
「オイオイ…まいったぜお前らどこのイモ野郎だよ… そんな大昔の伝説を信じてるのか? 空に島があるって?? ハハハ…!!一体いつの時代の人間だよ…。”偉大なる航路”の変わった海流は今、次々と解明されてる。”突き上げる海流”もその一つだ。」
「?」
「そういう海流がある事も知らねェんだろうな…。その海流の犠牲になった船は空高く突き上げられ、そのまま海へたたきつけられる。何も知らねェ昔の航海者は船が降る奇怪な光景を見て”空島”を思い描いた。『きっと空にはもう一つの世界があるんだ』…!! ハッ!!バカな。 現象には全て理由があるもんだ。」
「……」
「”夢”の理由なんざ今に全て解明される!! 呆れたぜ…お前らをテストして”新時代”への船員に加えてやろうと思ったのに、とんだ妄想野郎だ…」
これ以上喋らせておくと際限なく調子に乗りそうな気がする。しょうがないなァ、コイツは…。 さっき叱られたばかりだってのに…
「へぇ…なぁんだ。ここは”夢を見ない奴らが集まるところ”って聞いてたんだけど、とんだ間違いね。”現実を見る勇気の無い臆病者が集まるところ”っていうのが真相だったなんて、驚きね!!」
私の言葉に、酒場が一瞬にして静まり返る。そして…
「なんだと、てめェ!!」
「おれたちが臆病者だと?」
怒号が飛び交った。私はそれらを制するように冷ややかな目で酒場を見渡した。
「まずひとつ!!」
再び、酒場が静まり返る。
「”記録指針”がすぐにイカれるって? 聞くけど、この中の誰か一人でもイカれたって事を”証明した”奴はいるの?」
私は酒場にいる連中を見回した。私に目を向けられたものは次々と視線を逸らす。
「いないみたいね?要するにあんたらは指針が自分達の力で確認できない方角を指したの見て”イカれた”って言ってるだけなんじゃないの?」
「空を指したらイカれたに決まってんだろ?」
「なんでそうなるのよ。そこに島が無い事を誰も確認してないんでしょ?だったらなんで、そこに島が無いっていい切れるのよ!!あんたらの力じゃ確認出来ないってだけの事でしょう? そもそも、”記録指針”の仕組みを理解してる? こんな単純な仕掛けのものがイカれるなんて事はあり得ない! あんたらは、”記録指針”が自分達の常識から外れた方角を指した瞬間にイカれたという事にして、現実を見ようとしなかった…それだけの事でしょうが!!」
「……」
「ふたつ。私は今日”空に人が集まってる場所”を見つけた。」
「「!!?」」
「この中にもこの島の近海で、昼間が突然、夜のように暗くなったって経験をした人がいるでしょう? 私たちはこの島に来る前にそれに遭遇したの。恐らく、あの上空に村か街がある。はるか上空に大勢の人の気配があったからね。それに、ゴール・D・ロジャーは空島に行ったって話よ。これは元、海賊王のクルーから直接聞いた話だから間違いないわ。彼らがウソを言う意味なんてないからね。だいたい、海底に島があるんだもの。空に島があったって何もおかしくなんかないでしょう?もっとも私はまだ自分で見たわけじゃないから確証は持てないけどね。」
「…」
「みっつ。”偉大なる航路”の何が解明されてるって?誰がそんな事を言ってるのかしら? かのDr.ベガバンクですら、いまだ解明できてない事を誰が解明したって? まさかとは思うけど、シーザーとか言う、兵器オタクの科学者じゃないでしょうね? だとしたらそれはまったくのデタラメよ? ”突き上げる海流”にしたって、いくつかの説があるだけで、実際のところ仕組みはわかっちゃいないわ。 それに今日、200年前に西の海を出航した船が空から落ちてきた場面に遭遇したけど、”突き上げる海流”に飛ばされた船が200年もの間、飛んでいたとは到底思えないけど?」
「……」
「自分たちで調べもしない。確かめもしない…。頭のいいヤツの言うことや納得できそうな理由を見つけては無条件に受け入れて…、真実を知ろうともせず、あまつさえ、それを確かめようとする者をバカだなんだと嘲り、そうやって自分達が臆病者だという事を隠そうとする。なんとも情けない限りね!」
「……」
「私たちは、夢の話をしてるんじゃない。事実を確かめる手段の話をしているの!!だから空島に行く方法を探してる。それの何が可笑しいって言うのさ!!」
「「……」」
「……」
「…わ…悪かった…」
「すまねェ…」
「あ…ああ…だが…おれたちは、そんな事考えたこともねェ…」
「だから…どうやったら空島に行けるかなんて…わかるわけが…ねェ…」
「でしょうね。じゃあ逆に、そういう事を考えるような人がどこかに居ないかしら?」
「そ…それなら…」
私たちは、島の東にいる男の話を聞いた。
酒場を出ると、原作ではいるはずの奴は居なかった。私がベラミーをシメてる時に気配が消えたのは気のせいじゃなかったみたい。
シチュエーションが変わったから、ルフィもゾロも怪我してない。
酒場でのやり取りも全く違うから、ナミもキレてない。奴が居たとしても何も言う事はなかったろうけどね?
何気に、名場面・名台詞だった気がするけど、まぁいっか!
船に戻ると、ウソップ、チョッパー、サンジが出迎えてくれた。ロビンはまだ戻っていないらしい。
「”空島”の話は聞けたのか?」
「ビックリしたわよ。”空島”って名前出した途端、店中が大爆笑…。 結局誰も行く方法なんて知らなかったわ。イオリがいなかったら笑われてお終いだったところよ。」
「でも、知ってそうな人の情報は得られたんだから、よかったじゃない。」
「まぁ、そうね」
「何かわかったの?」
「ああっ!! お帰りロビンちゃん!! お食事になさる?お風呂になさる!?」
ちょっと、サンジ? あんたはいつの間にロビンの奥さんになったのよ?
「ロビン、どっか行ってたのか?」
「ええ。服の調達と… ”空島”への…『情報』でしょ?」
ロビンが地図をルフィに渡す。
「お!!宝の地図だっ!!」
「ただの地図だろ。どこだ?コリャ」
「この島よ。左にある町の絵が現在位置『モックタウン』。そして対岸…東にバツ印があるでしょう? そこにジャヤのはみ出し者が住んでるらしいわ」
「はみ出し者?」
「名前は『モンブラン・クリケット』。夢を語り、この町を追われた男。話が合うんじゃない?」
「イオリ!!」
島の東と聞いて、ナミが声を上げる。私は頷いた。
「私たちも酒場で聞いたのよ。”空島”に行く方法を知っているとしたら島の東に住む男だけだってね。」
次に行く場所が決まった。