船を進めると、大型船が見えてきた。
「探索中止!!船へ戻れ!!『ウータンダイバーズ』!!!」
「ウォーホー!!」
「………」
「さっそく変なのに出くわしちまったな」
「でも、あいつじゃねェみてェだぞウソップ」
「ああ、まァそれがよかったか悪かったかは別だがな」
あいつとは、たぶんマシラの事だろう。揉め事はなかったんだから別に問題ないはずなのに、なぜにウソップとチョッパーはマシラにそんなに会いたくないんだろう?
「オウオーウ!!ニーチャンニーチャン!! そっちでゴチャゴチャ言ってんじゃねーぞォ!!」
「ウォーホー!!!」
それにしても…、すごいビジュアルの船だこと…
”MORINOHITO”と書かれた帆が青々と茂った大木につけられてる。
もしかして、あれがメインマストなのかな?
「フン…!!まったく、どこの誰かと思ってハラハラしたぜ。」
「思い切った顔してんな 何類だ?」
「人類だバカヤロー」
失礼なルフィの問いに、ショウジョウは即答で返してきた。
でもその反応…さては初めてじゃないな?
「ウォーホー!!おめェら!!! ウチの大園長を怒らすんじゃねェぞ!!!」
「まー、いーからいーから。おめーら海賊の様だな。知っとるか?”七武海”の一角。あのクロコダイルが落ちたんだ。実力的に言って、そのイスはまさかしておれに回ってくるんじゃねェかって、もーハラハラして待ってるおれだ。」
「へ―…お前、七武海に入りてェのか」
「あ!? とにかくおれのすげェところはどういうとこかって言うと、生まれてこのかた25年、髪の毛を切った事がねェってとこだ。なァお前、びっくりしたか?」
「ばかみてェ」
「うわっびっくりした!!!」
「てめェ 大園長に」
「いーからいーから。まったくお前の解答にはハラハラさせられるぜ。 いーか。おれの怒りという名のトンネルを抜けると、そこは血の海でした」
「どうでもいいけど、おれ達行きてェ場所があんだよ。どいてくれ!!」
ルフィ、あんたねェ…『ばかみてェ』とかって言っておいてそれっすか!?
「あほたれェ!!!ここらの海はこのおれのナワバリだ!!!通りたけりゃ通行料を置いてゆけ!!!」
「何だ”ナワバリ”って。マシラみてェな事言ってやがる」
「そんな事言ってたか?」
ウソップがチョッパーの後ろに隠れながら言う。それにルフィが応えるけどホントにこの子は人の話聞かないよね?
「何ィ!!?マシラァ!? マシラがどうした!!」
「ん?」
「彼がサルベージしてるところを見学させてもらったのよ!面白い人よね?」
ルフィに答えさせるとややこしい事になりそうなので割って入らせてもらった。
「なんだ、”兄弟”の知り合いかぁ?」
「まぁ、そうね! それで、通っていいかしら?」
「最初っからそう言ってくれりゃいいのによォ。いいぜ、通ってくれ。」
その頃、モックタウンでは……
「いや、しかし、驚いたぜ……!!」
「…そこで言うんだよその美女が。そのクリケットという男の居場所を教えなさい」
ロビンの事を話す男が、その女はモンブランが最近見つけた金塊を狙っているのだろうと言い、それをベラミーが聞いていた。
「そのクリケットって男…是非おれも会いてェな。詳しく聞かせろよ………ハハッハァ!!!」
~ ~ ~ ~ ~
メリー号が壊されるイベントはことごとく回避できてる。まぁ偉大なる航路の荒波で通常よりも船にガタはきてるし、多少は修理もしているけど、原作のように航海中に修理するハメにはなっていない。
私たちはのんびりと島の東に向かっていた。
途中、サンジによるおやつの時間を経て、何事もなく目的の東の海岸に到着した。
「着いたわ。地図の場所」
「ここに例の!誰だっけ?」
「モンブラン・クリケット!」
「…その、夢を語る男が住んでるのね?」
「「すげェ!!!」」
見えてきたのは、宮殿のような家…に見えるけど…、実はベニヤ板が張り付けられた半分だけの家だった。
「なんじゃこりゃ?」
「ずいぶんとケチな男らしいな…」
いやいや、そういう事を言ってるんじゃなくて、この家、凄いところに建ってない?
「………」
「一体、どんな夢を語って町を追われたの?」
「くわしくはわからないけど… このジャヤという島には莫大な黄金が眠っていると言ってるらしいわ」
「黄金!!?」
「どっかの海賊の埋蔵金かなにかか!!?」
「さァ…どうかしら」
「掘るのよチョッパー!!”金”が出るわ」
「え!?掘ったら出るのか!?」
ナミの言葉に素直に従い、ザクザクと土を掘るチョッパー
「こんな辺境に一人暮らしかァ…」
「こんにちは―!!おじゃまします!!」
「おめェはイキナリかよ!!!」
ルフィが家に入っていくので、私もその後をついて行く。
「ん?誰もいねェな… こんにちは―!!!」
「ばか、待てって。ヤベェ奴だったらどうすんだ!!!」
原作を知らなくても、この家が半分に割れただろう事は想像できる。なにせ、2階があるのに階段が半分しかないのだから…。
ルフィとウソップは何とも思っちゃいないみたいだけどね。
しかしあれだね。ウソップはルフィと一緒にいると状況判断できないのかな?それとも単にビビってるからかしらね?
人が居ないなら居ないなりに確認すべきことはいろいろあると思うんだけど?
今回は、ここに住む人に話を聞きに来たのだから、家探しする気はないけどさ。
「おい、みんな―留守だ!!」
家の外に出ると、チョッパーに掘らせてる横で切り株のテーブルの上に置かれた絵本にナミが気づく。
「絵本… ずいぶん年期の入った本ね。『うそつきノーランド』だって。あはは」
「ほー。イカスタイトルだな。題材がいいぜ」
「うそつきノーランド!? へ―懐かしいな。ガキの頃よく読んだよ。」
「知ってんの?サンジ君。でもこれ”北の海”の発行って書いてあるわよ?」
「ああ、おれ生まれは”北の海”だからな。みんなにゃ言った事なかったか?」
みんなが喋ってる中、チョッパーは黙々と掘り続けている。
「初耳だな。お前も”東”だと思ってたよ」
「チョッパーうるさいっ!何やってんの?」
「!!」
ナミの言葉にショックを受けるチョッパー。ナミったら酷いわね。あなたが掘れって言ったのに…
私はチョッパーの頭にポンと手を置き、わたあめを与えた。
「いいのか?」
「もちろん!穴掘りごくろうさま!!」
チョッパーはニコニコとわたあめを食べる。和むなァ~
「育ちはな。まァどうでもいいさ。こいつは”北”では有名な話なんだ。童話とは言っても、このノーランドって奴は昔、実在したって話を聞いた事がある。」
サンジが絵本の内容を説明する。
「なるほどね…」
「なに?どうしたのイオリ」
私が独りごちるとナミが聞いて来た。
「もしかして、私たちが会いに来た人は、その本の主人公の子孫か何かじゃないかしら? 主人公『モンブラン・ノーランド』。夢を語る男『モンブラン・クリケット』なにかしらつながりがあると思うわよ?」
「もしかして…、この童話の舞台がこのジャヤって事?」
「たぶんね…」
「イオリは他にも何か気になっていることがあるみたいね?」
ナミに続いてロビンが聞いてきた。
「うん。なんでこの家はこんな島の端に建ってるんだろう?…とかね。クリケットさんに聞きたいことがいくつかあるわ。」
・
・
・
「あわれ、ウソつきは死んでしまいました… ”勇敢なる海の戦士”に…なれも…せずに…」
はぁ…とため息をつきながら本を閉じるナミの視線の先にはウソップがいた。
「おれを見んなァ!!! 切ない文章勝手にたすなァ!!」
「ぎゃああああああああ~~っ!!」
その後ろで、突然ルフィが海に落ちる。そして、そこから人が現れた。
「てめェら誰だ!!!人の家で勝手におくつろぎとはいい度胸。ここらの海はおれのナワバリだ」
「なんなのよ!?実は流行ってたりするの?”ナワバリ”って言葉…」
本日3度目ですけど、その単語!!!
「おい、ウソップ。ルフィを拾っとけ!!」
サンジがウソップに指示を出し、現れた男と対峙する。
「狙いは”金”だな。死ぬがいい」
男がサンジに襲い掛かる。しかし、戦っている最中に男は突然倒れた。
ルフィはウソップに助けられ、私たちは男をつれて家の中へと移動した。
「タオルをもっと冷やしてきて。窓は全開に!」
「潜水病?」
「このおっさん、病人なのか」
「うん。ダイバーがたまにかかる病気だよ。本当は持病になったりする様なものじゃないんだけど…」
チョッパーが診察と治療をしている。
チョッパー曰く、潜水病は気ほう出来て体のあちこちに被害をもたらす病である。そして、場合によっては死に至る病気であると言った。
「おやっさァん!!!大丈夫かァ!!!?」
「!!」
マシラとシュウジョウがやって来た。
「………」
「??」
「あれ?あなた達は…」
私が二人に声をかけると後ろでウソップとチョッパーがバタバタと暴れている。
ホントに会いたくなかったのか?なんで??
「おめェらここで何してんだァ!!」
「おやっさんに何をしたァ!!!」
「「!!?」」
「何だお前ら。今このおっさんを看病してんだからどっか行けよ」
「バ、バカ!!まともに話なんか聞いてくれるか!!相手は野生なんだぞ!!窓から全員避難せよ!!」
「ウソップこそ…何言ってんの?」
私は呆れたようにウソップに言った。あんたが慌てるとチョッパーもワタワタするからやめてくんない?
「「いい~~奴らだなあ」」
「聞ィてるよっ!!!」
チョッパーまで一緒になってズッコケてるよ。まったく…
・
・
・
「お前らもここに住んでんのか?」
「まァこのおやっさんの家が『猿山連合軍』の本拠地ではあるんだが、たいがいはてめェらの船で寝泊りだ。」
「おれ達にこの家は小さすぎるからな。ウォッホッホッホ!!」
「お前らがでかすぎるんだよ。まー巨人のおっさん達から見たら耳くそみたいなもんだけどな」
ルフィがマシラ、ショウジョウと話している。
「何であいつらものすごいうち解けてんだ」
「通じるモンがあるんだろうよ」
少し離れた所で会話を交わすのはウソップとゾロだ。
「ルフィ!!気がついたぞ!!」
「起きたか」
チョッパーに呼ばれてルフィが家に入る。
「ひし形のおっさん!!聞きてェ事があんだよ」
「迷惑かけたな。おめェらをいつもの金塊狙いのアホ共だと思った」
「え!?金塊をお持ちなの!?」
「狙うな狙うな」
目がベリーになってるナミをウソップがいさめる。
「おれに…聞きてェ事ってのは何だ?」
「”空島”に行きてェんだ!! 行き方を教えてくれ!!」
「空島? ウワッハッハッハッハッハッハッハ!!!お前ら空島を信じてるのか!!?」
「”空島”はねェのか!?」
「……フフ…さァな…あると言っていた奴を一人知ってるが、そいつは世間じゃ伝説的な大うそつき。その一族は永遠の笑い者だ。」
そう言われて、ルフィは”はっ”とウソップを見る。
「おれじゃねェよ!!」
ウソップは”がぼーん!!”って感じの顔で答える。
「うそつきノーランド。そういう昔話がある」
そう言われて、ルフィは”はっ”とウソップを見る。
「だからおれじゃねェって!!名前違うだろ!!」
「やっぱり子孫だったんだ。そしてここがあのお話の舞台なのね?」
「…じいさんのじいさんの…そのまたじいさんの…おれの遠い先祖さ。迷惑な話だ。奴の血なんざおれには蚊程も通っちゃいねェだろうに… モンブラン家は当時、国を追われ肩身せまく暮らすも、人の罵倒は今もなお続く… だが、一族の誰一人、奴を憎む事はない…」
「………なぜ?」
「ノーランドが類まれなる正直者だったからだ」
「え!!?」
「絵本にあるノーランドの最後の言い訳はこうだ。『そうだ!山のような黄金は海にしずんだんだ!!!』 アホ顔そえて描いてあるが、実際は大粒の涙を流した無念の死だったという。 到着した島は間違いなく、自分が黄金都市の残骸を見つけたジャヤ。それが幻だったとは到底思えない。 …ノーランドは地殻変動による遺跡の海底沈没を主張したが、誰が聞いてももはや苦し紛れの負け惜しみ。 見物人が大笑いする中ノーランドは殺された。」
「じゃあ!!だからおっさんはそのモンブラン家の汚名返上の為に、海底の黄金都市を探してるのか!!?」
「………」
「!!?」
私は咄嗟にウソップの足を払った。ほぼ同時に…
「バカ言うんじゃねェ!!!」
― ドゥン!! ―
ノーランドが叫んで銃をぶっ放す。
「………!!」
「ウソップー!!!」
ウソップの心臓があったあたりの壁に銃弾がめり込んだ。
チョッパーとナミが驚き、ルフィはちょっと怒ってる。当のウソップは目を剥いて涙を流している。
「大昔の先祖がどんな正直者だろうが、どんな偉大な探検家だろうが、おれに関係あるか!!!! そんなバカ野郎の血を引いてるってだけで、見ず知らずの他人から罵声をあびる子供の気持ちがお前らにわかるか!!? おれはそうやって育ってきたんだ!!! だが、そうさ。この400年の間には、一族の名誉の為にとこの海へ乗り出した者も数知れねェ! その全員が消息不明になったがな。 おれは、そんな一族を恥じた。そして家を飛び出し海賊になった」
「へー。おっさんも海賊なのか」
「別になりたかったわけじゃねェ。ノーランドの呪縛から逃げ出したかったんだ。しかし10年前…… 冒険の末、おれの船はなんとこの島に行き着いちまった。 くしくもモンブラン家を、ノーランドを最も嫌い続けたこのおれだけが行き着いた、絵本の通り黄金郷などかけらも見当たらねェこの島の岬に立つと、これも運命と考えちまう。もう逃げ場はねェ……」
”決着をつけようぜ。ノーランド”
その決断は…
『冗談じゃねェ!!!』
『船長…私たちァあんたの一族の問題につき合う気はねェ』
『どうしても黄金を探すってんなら一人でやってくれ。ここでお別れだ』
自分の船を降りる事に繋がった…
「あるのならそれもよし…ねェのならそれもよし…。別に黄金を見つけて奴の無実を証明したいわけじゃねェ。おれの人生を狂わせた男との、これは決闘なのさ。」
「………」
「おれがくたばる前に…白黒はっきりさせてェんだ…!!!」
あっ、ウソップが復活してる。そして、感動してメッチャ泣いてる…。
「……!!まさに男の……!!」
「じゃあ、あいつらは?さる達は何でここにいるんだ?」
「そりゃ、また海底にかける男達の拳で語る熱いドラマがあったんだろうなァ」
ルフィの疑問にウソップが答えてるけど…
「……… あいつらは絵本のファンだ」
「ファンかよ」
「ずいぶん簡単なつながりね」
「5、6年前になるか…おれの噂を聞いて押しかけてきた。『ノーランドの黄金は絶対あると思うんだ』 ってな。 ―ここらの海は深いんだ………暗く冷たい海中ではよりいっそうの孤独がつきまとう。 おれは一人で来る日も来る日もただ潜って探す日々…。そんな生活の中にズカズカと入り込んで来て勝手におれの手下になって暴れ周りやがる。ああいう一途なバカには正直、救われてるんだ…わかるか…?」
「わかるぜ。そうだよな…本物の同志ってのはただそれだけで心強く……」
「まーでも、さるの話はおいといてよ」
「じゃ聞くな!!!歯ァくいしばれ~~~!!!」
そう言いながら、ウソップはルフィを裏拳で殴ってる。全く堪えちゃいないけど…
「だから……!!」
「あ!?」
ウソップを押しのけてルフィがクリケットさんに詰め寄った。
「おれは”空島”に行きてェんだよおっさん!!!」
「………フフフ、せっかちな奴だ…だから話してやったろ。”空島”の証言者はその『うそつきノーランド』 こいつに関わりゃ、おめェらもおれと同じ笑い者だ。」
「え!?そいつ空島にも行った事あんのか!?」
「残念ながら行ったとは書いてねェが……」
クリケットさんが、何かの本をペラペラとめくる。
「航海日誌…まさか、ノーランド本人の!!?」
「そうさ、その辺…読んでみろ」
そう言って、ナミに日誌を放って渡す。
「すごい! 400年前の日誌なんて……海円暦1120年6月21日快晴。陽気な町ヴィラを出航… ”記録指針”に従い港よりまっすぐ東北東へ進行中の筈である。日中、出会った物売り船から珍しい品を手に入れた。『ウェイバー』というスキーの様な一人乗りの船である…。無風の日でも自ら風を生み出し走る不思議な船だ。コツがいるらしく私には乗りこなせかなった。目下、船員達の格好の遊び物になっている。…ウソッ!!何これ、欲しい~!!」
「いいから先読めよ!!」
「この動力は”空島”に限る産物らしく、空にはそんな特有の品が多く存在すると聞く。”空島”といえば探検家仲間から、生きた『空魚』を見せて貰った事がある。奇妙な魚だと驚いたものだ。我らの船にとっては未だ知らぬ領域だが、船乗りとしてはいつか”空の海”へも行ってみたいものだ。」
「…………」
ルフィだけじゃなく、ウソップもチョッパーも嬉しそうな顔しちゃってまぁ…
「”空の海”だって…」
「ロビンが言ってた通りだ!!」
「それにこの時代じゃ”空島”があって当たり前の様に書いてあるぞ」
「………!!!」
「やっぱりあるんだ!!」
「やった~~!!」
「……」
クリケットさんが静かに外に出ていくのが見えたので、私はこっそりとついていく。