イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

149 / 385
閑話:とある小説をマネた結果

 珍しく、リリスが会社を訪ねて来た。

 アポなしだけど、私の部屋に通してもらった。

 何やらすごく落ち込んでいる様子。その手には、とある小説本を持っていた。

 

 その小説の作者はもちろん(?)イオリ。

 つまりは元の世界のベストセラー。言ってしまえば要するに盗作本である。

 

 小説のタイトルを見て、ユナは、

 

 《そう言えば、今は空島に行ってるんだっけ?》

 

 なんて事を考えていた。

 

「どうしたの?ずいぶん浮かない顔をしてるけど?」

「この小説が、めっちゃ面白いのが悪いんじゃ!!」

 いやいや、面白かったんならいいじゃんよ?

 

「面白かったからつい、同じモノを作ってみたんじゃが…」

「同じモノ?」

 一体何をつくったってのさ?

 

「これなんじゃがな…。まぁ、わしが落ち込んどるのはこれとはまた、別のものが原因なんじゃけど……」

 と、リリスがポケットから取り出したのは、緑色の丸い石。ペンダントになっていて、表面にはUの文字のような紋章?が書かれている。

 

 カンのいい方ならもうお分かりだろう。

 小説のタイトルは『天〇の〇ラ〇ュ〇』。

 リリスが作ったモノというのは『〇行石』だ。

 

 はっきり言って、これが単なる石なら問題ない。

 けれどこの子はベガパンク。これが単なる石のハズがない。

 しかもさっきの言いようからして、問題なのはこれとは違うモノなのだろう。

 

「…まさかとは思うけど、別の『もの』っていうのは…、城の方とか?」

「……」

 無言のまま、頷くリリス。

 

 図星かいッ!!

 

 えっ!マジで? マジであれ作ったの?

 

「それはそれで凄いと思うわよ?」

 そういえば、反重力装置は開発してたんだっけ?

 

 えっ!?もしかして…

 そのペンダントを持ったら本物と同じく飛べるとか?

 

「ねぇねぇリリス、もしかして…、そこに行けたりしたりする?」

 私が目を輝かせながら聞くと、リリスはとてもすまなそうな顔をした。

 

「いや…作ったんじゃがな…。それはその…実はもう…無いんじゃ……」

「?」

 

「だって、実際にそこに行ったら…やりたくなるじゃろ?思いっきり、叫んでみたくなるじゃろう?」

「やりたくなるって…えっ!…まさか…!!?」

「………」

 顔を背けながら、リリスはゆっくり頷いた。

 

 小説通りに作りやがったという訳だ。

 コイツの事だから、細部までこだわって、何もかもを忠実に再現しちゃった訳だ。

 そして、そこに行ったら、名場面? の通りにやりたくなっちゃったわけね?

 

 まぁ、気持ちはわからんでもない。

 

 

「バ〇ス!!」

 

 ー ビクッ!! ー

 

 私が言うと、リリスが驚いたように私に視線を向ける。

 

「じゃろ?」

 

 じゃろ? じゃねぇわ!!

 

 おめェ、それ作るのにいくら注ぎ込んだ?

 時間だってかなり費やしただろうが!! あ゛ぁっ?

 

 せめて、公開するなりなんかして、費用回収してから壊さんかい!!

 

 ってか、滅びの呪文で滅ぶように作んじゃねェよ!!

 

 

 くそう…私も見たかった。私もそこに行ってみたかった!

 そこで『バル〇!!』って叫んでみたかった!!

 

 

 リリスはリリスで、壊した事はもちろん、作った事すらも他の猫から非難されたらしい。(たぶん、私と同じ事を思った猫もいるはず…)

 そもそも彼女の本来の仕事は資金調達である。

 なのに、何を無駄遣いしてるのだと責められたとの事。

 

 

「今日はとことん飲むわよ!」

「もちろんじゃ!」

 

 2人でやけ酒飲みました。

 

 

 

 




空島編なので?
ちょこっと書いてみました。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。