イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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04-145話:空の戦い

「この国の…歴史を少し………話そうか…」

 とても静かに、ガン・フォールがそう告げた。

 

「………」

 

「我輩…6年前まで”神”であった…」

「頭打ったかおっさん!!」

 

 アァアアァアアアァ…

 

 失礼な発言をかましたウソップは、ピエールに噛まれて血まみれに………

 今ここにいるメンバーは、誰も昨晩の私とガン・フォールの話を聞いてないから、なんも知らんのよねェ…

 

 ガン・フォールは”神の島”の歴史について話してくれた。突然現れた巨大な大地。空の者は、それを神から与えられた聖地とあがめた。そこに住む者の事などお構いなしに…

 喜び勇んだ空の者は、聖地に住む先住民者(じゃまもの)を排除しようと、大地を巡る争いが始まった。

 先住民者(シャンディア)たちは抵抗したが、(ダイアル)による戦力差はいかんともしがたく… 結局、島から追い出されてしまう。

 

「”空の者”が私欲の為に彼らの故郷を奪い取った…。以来400年、シャンディアと空の者との戦いは今だ止まぬ。シャンディアはただ故郷を取り戻そうとしているだけだ。」

 

「…それ……ちょっと切ないわね」

「「じゃ、おめェらが悪ィんじゃねェかよ!!」」

 

「………」

 

 アァアァアァアァアァアァ… 

 

 ハモりながら余計な事を言った2人はピエールに噛まれて血まみれに………

 

「そうだな。おぬしらの………言う通りだ…」

「…ピエ…」

 

「そう、単純な話じゃないでしょう?確かに400年前に空の者が”大地”を奪った事は悪い事だけど、当事者達は誰も残って居ないのよ?今となっては、空の者にとって”神の島”は大事な場所になってるんでしょう?その逆に、シャンディア達の中にだって空島を故郷と思っている者も多いんじゃない?」

 

「そうか!400年も経つんだものね…」

 

「まぁ、だからと言って、シャンディア達に”大地”を諦めろとは言えないけどね? 私たちが首を突っ込む話しじゃないけど、なんとか共存は出来ないものかしらね?」

 

「……あァ薬を…すまんな、頂こう……」

 

「…エネルは? 何なの? ”神・エネル”」

 

「我輩が神であった時…どこぞの空島から突如兵を率いて現れ、我輩の率いた『神隊』と『シャンディア』に大打撃を与え、”神の島”に君臨した。…6年前の事だ。『神隊』は今、そのほとんどがエネルによって何やら労働を強いられている。詳しくはわからんが。……だが、シャンディアにとっては…神が誰であれ状況は何ら変わらぬ。ただ故郷を奪還するのみ」

 

「その、”故郷を奪還するのみ”のシャンディアが何でおれ達を狙ってきたんだ?空へ来たとたんに」

 

「今、労働を強いられていると言った『神隊』。時に船を手に入れ逃げ出す事があるのだ。 シャンディアにとっては当然敵である。逃さず排除しようとする…!!それと間違えられたのだろう!!」

「何だ、間違いで命狙われちゃたまんねェな」

 

「我輩、『空の騎士』となったのも、そんな脱走者を他の空島へ無事逃がしてやる為でもあるのだ。犯罪者ゆえ、もはやエネルの目の届くこの国にはおれんでな」

 

「聞いてりゃ”神・エネル”ってのはまるで恐怖の大王だな」

 

「コラコラコラ、お前滅多な事言うもんじゃねェぞ!!?全能なる”神”は全てを見ているのだ!!! き…聞こえたんじゃねェか!?今」

「お前はいつからスカイピアの人間になったんだよ」

 

「恐怖か…いや、それより性質が悪い。エネルはお前達の様に国外からやって来る者達を犯罪者に仕立て上げ、裁きにいたるまでをスカイピアの住人達の手によって導かせる。これによって生まれるのは国民達の”罪の意識”」

「……」

 

「己の行動に罪を感じた時、人は最も弱くなる。エネルはそれを知っているのだ。『迷える子羊』を自ら生み支配する。まさに”神”の真似事というわけだ。…食えぬ男よ…」

 

「…エンジェルビーチへ着いた時はここは楽園にさえ思えたのに、とんでもない…。かつての黄金郷もえらいトコへ飛んできちゃったものね……」

 

「…おおそうだ。おぬしらその…昨夜から騒いでおるオーゴンとは一体…何なのだ?」

「…え??」

 

「空には存在しないモノだから知らなくても当然ね。簡単に言えば高価な金属よ。青海では高値で取引されてるの。……!?」

「どうしたのイオリ?」

 私が突然島の方を見たからか、ナミが私に聞いて来た。

 

「実は今朝から、シャンディアが大勢”神の島”に入って来てたのよ。どうやら戦闘が始まったみたい。」

 

「なんと…!おぬし”マントラ”も使えるのか?」

「使えるわよ?生まれつきでね。青海ではそれを見聞色の覇気って言うの。」

 

「おぬしらに初めて会った時、我輩が傭兵をかって出たのは、青海人では”空の戦い”についてゆけぬと思ったからだったのだが…」

「”空の戦い”?」

 

 

 空の樽の上にダイアルを置いて、サンジがハンマーを持つ。

 

「……」

「見ておれ」

 

「何の為にやるの?こんな事」

 

「やればわかる。その貝を思いきり砕いてみよ」

「砕けないけどね」

 

「「??」」

 

「そーっとだぞ!!サンジ!てめェ甲板に穴でも空けやがったらタダじゃおかねェぞ!!」

 

「思いっきりやればよい」

「てめー他人の船だと思ってテキトーな事言うなァ!!!」

 

「大丈夫よサンジ、思いっきりね!」

「イオリまで、何言ってんだァ!!」

 

「…わかった。イオリちゃんがそう言うなら大丈夫だろ?」

「待て~~!!!そんなに振りかぶらなくても」

 サンジがハンマーを大きく振り上げ振り下ろす。

 

「!!?」

 が、樽の上で、そのハンマーが止まった。

 

「?」

「……何やってんだ。いくら加減しろって言ってもそれじゃおまえ…下の空樽すら割れてねェじゃねェか…」

 

「…いや、おれは思いっきりやったぞ? 甲板に大穴空けるつもりで振り下ろしたんだ…!!」

オイ!!

 

「なのにこの貝に……まるで衝撃を吸い込まれたみてェに…」

「「え!??」」

 

「だから言ったでしょ?」

 さすがサンジは察しがいいわね。

 

「では、貝の穴を空樽に向け、裏の殻頂を押してみよ……」

 

「サンジ…」

「ん?」

 

「気をつけてね!」

「?」

 

 ボンっ!!!

 という音とともに樽が木端微塵に吹き飛んだ。

 

「!!?」

 

「きゃ!!!」

「きゃ~~~~っ!!!!」

「うおォっ!!!」

 ナミとウソップが爆風に驚き、衝撃で空樽とは逆方向に飛ばされたサンジが欄干に頭をぶつける。

 

「「………!!」」

 

「それが、”衝撃貝(インパクトダイアル)”。与えた衝撃を吸収し、自在に放出する。本来、手の平に手袋やバンテ―ジで固定して使用するのだ。正確にヒットすれば威力は並みの人間を、死に至らせる力を持つ。」

 

「…ウソップ、こりゃあ」

「…ああ、あのダンゴ神官、これを使ってたんだ」

 

 ”打撃とは違う…衝撃!!!”

 

「古代の空島にはさらに凄まじい貝が存在したと聞く。”排撃貝(リジェクトダイアル)”という絶滅種はこの”衝撃貝”の10倍もの放出力を誇ったそうだ。だがその強すぎる衝撃は使用した本人の命さえ危ぶめるという諸刃の刃…さすがにほとんど使われる事はなかった様だがな……」

「…そんな危なっかしい貝があるのか……!!!まるで兵器じゃねェかよ」

 

「ていうか先言っとけ!!!ビビっただろ!!!」

 

「だから言ったじゃん。気をつけてねって」

「あんな直前じゃムリだって…」

 とりあえず、散らばった樽の残骸をサンジと2人でセッセと片付けた。

 

「”貝”ってもっと日常的なものなのかと思ってた」

「そうだとも。 ― だが人が便利と思う物には必ずそれに反する悪用方法があるものだ。使う人間次第でな。貝はきわめて便利であるが…それゆえ戦闘に用いればそれだけの力を生んでしまうのだ。例えば…料理をあたためる”熱貝(ヒートダイアル)”でさえ、槍に仕込めば自在に高熱を発する”熱の槍”と化す。例えば…火を貯える”炎貝(フレイムダイアル)”… 鳥の口内に仕込めば、世にも珍しい”炎を吐く鳥”を生む」

 

 一応、原作で出て来た貝は絶滅種以外は全て手に入れたけど、商品として売り出している中には無いモノもある。

 衝撃、斬撃は、武器としての要素が大きいので一般には(・・・・)売り出していない。

 雲貝は今の所使い道も無い。

 排撃、噴風は、1個ずつしか無かったので、リリスに渡さず養殖すらしていない。

 

「そういや、そんなのチョッパーが話してたな。イオリが倒したんだっけか?」

「 ― それが”空の戦い”……!!」

 

「そうだ。貝の種類すら知らぬ青海の者では見極める事もできん。数ある”加工雲”も然り…。空の戦士達は、それらを鍛錬により使いこなす。知らぬ者では手に負えまい。かく言う我輩も、もう少しで”加工雲”の餌食になるところであった。」

 

「その上、神って奴と神官…あと2人は、イオリちゃんと同じく見聞色…こっちじゃマントラってったっけ?それが使えるってんだから厄介だな。」

 

「”心綱(マントラ)”か…あれは我輩も使えるわけではないのでな。おぬしらのほうが詳しいようだが? 我輩が知るところでは、マントラとは聞く力だと言われている。何やら人間は生きているだけで体から声を発しているらしいのだ。」

 

「声?」

「うむ…それを聞く事で相手の次の動きもわかるという。さらに鍛えるとより広域まで声を聞ける様になる…。神官共は”神の島”全域 ―  エネルはこの国全域までその力が及ぶ。あの力ばかりは得体が知れぬ…」

 

「気配に敏感ってだけじゃなく、動きの先も読めるのか。すげーな。」

「見聞色っていうのは、見る力と聞く力の事なのよ。見る力っていうのは気配だったり姿かたちだったりね。聞く力っていうのがマントラに通じるのかな?意識を集中すると考えている事が喋っているかのように聞こえようになるのよ。」

 

「なんだとォ?じゃあイオリにはおれ達の考えてる事が筒抜けって事か?」

「その気になればね?言ったでしょ?意識を集中すればって。やればできるけど、仲間に対してその力を使うなんてことは基本的にはしないわよ。まぁ、私の中のルールだけどね?」

 まぁ、基本的(・・・)にですけどね?

 

「…」

「それでも心配なら、早く見聞色を身につける事ね。同系の覇気は相殺する事ができるって言ったでしょ?」

 

「相殺じゃと?」

「ええ。同系の覇気は打ち消し合う事が出来るの。だからエネルも神官も私の事は察知出来てないはずよ?」

 

「…シュラがおぬしに気づいておらなんだのはそういう事だったか…」

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

 

「サンジ君~~~!!!」

「サンジ!!!ギャ~~~!!!ギャ~~~!!!」

 私が席を外している間にエネルが来ていたらしい。サンジが飛び掛かってヤラれていた。

 

「サンジ!!」

「サンジ君」

 

「うお…お!!おいっ!!!しっかりしろよ!!!サンジ!!!おい!!!」

「ピエ~~~~~!!!」

 サンジの気配は弱ってはいるもののシッカリしてる。とりあえず問題ないでしょう。見た目が黒焦げになってるけど、心配ない。

 

「……!!!おいっ!!!心臓の音が聞こえねェぞ!!!」

「うそ…」

 いやいや、ウソップ?

 あんたが耳当ててるの右の胸だから…。耳をあてるなら中心に当てなさいよ!!

 

「ヤハハハハハヤハハハハハ…バカな男だな…別に私はお前達に危害を加えに来たわけではないというのに…」

「ならば何をしに来た!!!」

 

「ヤハハ冷たい言い草じゃあないか…実に6年ぶりだぞ…!!!先代”神”ガン・フォール!驚いたぞ?まさかシュラが貴様にやられるとはな。」

「……」

 

「ぢきしょう!!!こいつ…サンジを……!!!殺しやがったァ~~~!!!! サンジ!!!サンジ~~~!!!くそォチョッパーがいてくれたら…!!! 何も聞こえねェ…!!!心臓がピクリとも動かねェ!!!おいサンジ~~~!!!」

「待ってウソップ!!!そっち右っ!!!」

 

「ゲッ!!!心臓が動いてるっ!!! よかったなァ生き返って…!!!」

「……」

「でも重症よ!!死ぬかも!!!」

「何ィ!!?えらいこっちゃ!!!大変だ!!!」

「……」

 

 ドクン…!!!

 

「!!!」

「え………!!!」

 おそらくサンジを倒した電撃だろう。ウソップもヤラれた。

 

「貴様…」

 

「黙っていれば……何も…しない……いいな?」

 ナミが頷く。

 

「結構」

 

《何コイツ…何したの今…!!?》

 

「貴様…一体何を企んでおるのだ!!!」

「……6年前、我らがこの島に攻め込んだとき捕らえたお前の部下共は元気に働いてくれているぞ。 腕力もある実にいい人材だ。だがその6年掛かりの大仕事も、どうやらもう終わりに近づいている。 同時に私もこの島に用事がなくなるというわけで、お前に別れの挨拶でもと、ここへ来た。それだけの事…」

 

 しかし…、シュラといいエネルといい…マントラで物を見る癖がつき過ぎてるみたいね。まったく私に気づいていない。まぁ別にいいんだけど…

 

「しかし、このスカイピアの住人共はつくづくめでたい奴らだ。この島をただ”大地”の塊としか見ていないのだからな」

 

「!?どういう事だ……」

「我々がこの島を強硬に奪い取った理由。青海のハエ共がこの島に踏み込む理由。そしてシャンディアが帰郷に固執する理由も相違あるまい。つまり―誰もがこの島で求めるものは一つ!! 全ては遠い過去に青海で栄えた伝説の『黄金都市』”シャンドラ”の名残を欲するがゆえだ!!!」

 

「オーゴン……何だと言うのだ……!!!」

 

「ヤハハ…だからめでたいと言っている。黄金の存在もその価値も…知らぬはこの国に住む当人ばかりよ!!」

 

「くしくもゲームは最終戦。このサバイバルを制した者が莫大な黄金を我がものとする。ヤハハハ… 聞こえるか?賑やかな祭りの騒ぎ。何を隠そう、私も参加者でね…ゆかねば」

 

「待て!!神隊は解放するのか!!?」

 

「…それは、神のみぞ知る事だ」

 

 バリッという音と共にエネルが消えた。雷と化して移動したみたい。

 

「え…」

「待てエネル!!!」

 

「消えた……」

 エネルの奴…!結局、私に気づかないでやんの…

 スピードは、黄猿と同じくらいなのかしら?向こうはかなり鍛えているけど、エネルはそうでもなさそうだ。

 

 気配からするに、ユナがここに来た時よりはだいぶ上がっているようだけど、能力についてはどうかしらね?

 

「サンジとウソップは心配なさそうよ。感電して気絶してるだけだから。」

 倒れている二人を診て、ナミにそう伝えた。

 

 

 

 

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