イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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04-148話:”箱舟”

「戦士ワイパー。言ったじゃあないか…”やめておけ”と……!!」

「………!!ガフッ……!!!」

 ワイパーがひざをついたまま吐血する。ムリもない。”排撃”は諸刃の剣とガン・フォールも言っていた。

 

「ホラみろ。哀れなもんだ…戦士ワイパー」

「…おれの名を…気安く呼ぶな!!!」

「ん?」

 

「800年前…この都市の存亡を賭けて戦った、誇り高いシャンドラの戦士達!!その末裔がおれ達だ!!ある日突然故郷を奪われた、”大戦士カルガラ”の無念を継いで、400年!!!先祖代々、ただこの場所を目指した!!!やっと…やっと辿り着いたんだ!!」

 

「……」

 

 ”フ―フー…”と、荒い息をしながら満身創痍のワイパーが立ち上がる。

 

「……」

「お前が邪魔だ」

 エネルが無言で錫杖を振りかざし、ワイパーのシューターを破壊した。

 

「あっ…」

「ウグ…!!!」

 立っているのがやっとだったワイパーが、それを避けられるはずもなく……

 ワイパーは、その場に倒れた。それでも再び立ち上がる。

 

「さっきのは効いたぞワイパー。海楼石とはくだらんマネをしてくれた。並の人間では”排撃”など放つは自殺行為。それを撃って立ち上がるとは流石じゃあないか。…だが、相手が悪い!」

 

 ドドン!!と、錫杖で太鼓を叩く。するとバチバチと音を立てて太鼓が変化する。

 

「3000万V…」

 

「太鼓が鳥に……!?」

 

「”雷鳥(ヒノ)”!!!」

 

 三度(みたび)、私は電撃を軽減させるべく動いて、ワイパーに武装硬化を施した。

 

「!!?」

 

 鳥の形をした雷が、ワイパーを突き抜ける。自身の武装硬化じゃないからダメージはゼロにはならないけど、原作よりかはましだろう。

 

 ワイパーは叫びにならない叫びを上げてその場で崩れ落ちた。と、ゾロが動いた。

 壊されたワイパーのシューターを拾い、エネルに向かう。

 

「…これに海楼石が入ってんだな」

「………!!」

「貴様もか青海の剣士」

 ドドン!!と、またも錫杖で太鼓を叩く。

 

「やらなきゃやられんだろうがよっ!!!」

「”雷獣(キテン)”!!!」

 

 今度は太鼓が狼のような形に変わり、ゾロを襲う。

 またも、私は電撃を軽減させるべく動き、同じくゾロに武装硬化を施した。

 

「!!?」

 

「あァ!!!」

「ウゥ」

「ゾロ!!!」

「グァアアァア!!!」

 ゾロもその場で倒れた。

 

「ウソでしょ……ゾロまで……」

「大丈夫…死んじゃいないわ……」

「…イオリ…なんとかならないの?」

「みんなを守りながらっていうのは流石にムリね。まずはあいつをここから離れさせないと…」

「…」

 

 エネルがナミに向かおうすると、ワイパーが立ち上がった。

 

「……なぜ立つ。どうせ死ぬのだ。楽に逝けばいいものを」

「…」

「永らえてどうなる…これに耐える意味があるのか」

「……!!」

 

「ハァ…ハァ…」

 

「400年と…言ったか?お前達が故郷奪還の戦いを始めてから…。だが、ここへ辿り着いた戦士はお前1人。直、この国も青海へと堕ちてゆく…。今さら目障りなだけだぞ。なぜ立ち上がる……!!」

 

「…先祖の為!!!」

「……少しはマシな答えを期待した。もはや意識も定かではあるまい」

 

「あの人…どうしてこんなになってまで…」

 

「大戦士カルガラには…」

「え?」

 

「異国の大親友が居たんだって…。ある誤解のせいで2人はケンカして、その親友がジャヤを出航した直後にその誤解が解けて…。カルガラは海に向かって『また来い』って叫んだんだって…。その声を聞いた親友は『必ず来る』って答えたらしいわ。そしてカルガラは誓ったの。『鐘を鳴らして君を待つ!!』ってね。でも…その誓いは果たせなかった…。」

 

「…それって…」

 

「無念だったと思うわよ?(ここ)からだって鐘の音は、青海に届いたんだろうからね…。」

「…」

 

 ワイパーの真上に、稲光が走る。

 私は咄嗟にワイパーに向かって念動力を発動させる!!

 

「”神の裁き”!!!」

 ズン!!

 

「!!? わァっ!!」

 爆風に煽られて倒れている者達が飛ばされる。ワイパーは念動力で飛ばしたので直撃は避けられたはず。

 

「…ゾロ、ロビン…!!」

 

 

「…貴様1人だぞ…残ったのは…」

「!!?」

 エネルがナミに近づく。

 

「ナミ、とりあえずコイツの言う事に従って!!」

「…私…あ…私…!!…連れてって下さいっ…!!」

「!……」

 

「ついていきます!!あなたに…夢の世界っ……」

 

「ヤハハハハ…よかろう、ついて来い。それでいいのだ。恐怖に支配されぬ心というものもまた、時に難儀なものだ…」

「……!!…え…ええ本当ですね…!!」

 

「何だ、それを持って行く気か…?」

 ナミがウェイバーを引きづっていくと、エネルが振り向き言って来た。

 

「いえ…あ…ダメなら…別に…!!」

 

「……我々が行く場所では使えんと思うが…いいさ…好きにしろ…」

 

「あ…ありがとうございますっ…お…お気に入りで…これ」

 

 

 地下への階段を進む。しばらく進むとそれはあった。

 

「…デカイわね…」

「え!!!これは…」

 そこには巨大な船が置かれていた。6年かけて、神兵たちに造らせたのだろう。

 いったい、何人で行くつもりだったのかしらね?

 

「驚くのも無理はない。世界唯一!!この舟は私のみが操れる舟だ」

「……」

 

「動力を”雷”とする。エネルギーは有り余っているがそれを必要量、機械的に伝達できる物質がほしかったのだ!!」

 

「鉄でいいじゃないのよ!…って、無いのかそれも空には…」

「……」

 それにしたって、無駄に金を使いすぎじゃない?

 電気の伝達は良くても、飛ぶ船だとしたら浮くのに効率が悪すぎる。

 

「それがこの島に眠っていた”黄金”だ!!!この国の住人共は幸せだぞ…死ぬ間際に世にも珍しき”空飛ぶ舟”を目のあたりにできるのだから!!…ヤハハハハ」

 

「……!!」

「箱舟”マクシム”!!!この舟で我々は”限りない大地”へ到達する!!!ヤハハハハハハハ!!!」

 

「…もの凄い黄金………!!!」

「これ…飛ばすつもりなのよね?だったらもっと効率よく金を使って軽くすりゃいいのに…。これは…無駄な分は削って、貰っちゃおうかしら?」

「何言ってんの!!…まずはコイツから逃げることを考えてよ!!」

 

「…エンジェルビーチの例の娘が…どうやらエンジェル島で騒いでいるようだ…」

「えっ!?…コニス!…まさか…コニスなら私達の船にいるはず」

 

「外でも色々騒ぎが起きているのだ…小さいイザコザだがな。ヤハハハ…」

 

「…あ…あなた達のその”心綱”っていう力は人物まで特定できるんですか?」

 

「私の場合は特別だ。”心綱”に加えてこの雷の体で電波を読み取り会話を聞くのだ。どこぞで下らぬやり取りが聞こえれば、裁きを与える。この国一国分の距離くらいはわけはない。」

 

「別に威張るほどのことじゃないわよ。私にだってわかるもんね!」

「……」

「よかったわ。コイツらが覇気を鍛えてなくて…」

 

「まさに神にふさわしい能力よ…ヤハハハ…せいぜい逃げまどえ空の者達…!!!スカイピアの終焉だ…空に舞う天使達の宴…!!! おい貴様…!突如足場を失う人間達の形相を見た事があるか…!?ヤハハハハハハ!!!」

 

「……!!」

「趣味悪っ!!…最悪だなコイツ……!?」

 

「……」

 

「…ねぇ、どうしたの?」

 私がハッとしたのをナミが気づいて聞いて来た。

 

「ルフィとアイサの気配が感じれる。ヘビから出れたみたいね。」

「!!」

 

「…いや、何でもない……」

 ナミの声が聞こえたのか、自分への質問だと受け取ったエネルがナミに答える。そして欄干のほうへと歩き出す。

 

「エネルも気づいたみたいね。生き残り5人の中にあいつはいなかったからきっと戸惑ってるんでしょう。」

 ナミもエネルを追って欄干へと向かう。

 

「やはり…生き残った5人の…誰でもない様だ…」

「…」

「実に不愉快…私の”予言”は外れだったというわけか…」

 

「あの場で5人って言ってた時点で、既に間違いだったんだけどね?」

 

「お前かァ!!!エネルって奴はァ!!!」

「……」

 ナミが欄干に駆け寄る。

 

「ルフィ!!!」

「何やってんだお前…おれの仲間によ」

「? どのゴミの事かな。 口を慎めよ…私は神だ!!」

 

「お前のどこが神なんだ!!!」

 

「ナミ、何も言わなくていいわよ? エネルとの相性は、間違いなくあいつに分があるんだから。」

 ナミがルフィに何かを伝えようとしたけど、私が止めた。

 

「え!? …どういうこと?」

「エネルは雷…ルフィは?」

「ゴム?…そうかっ!!」

 

 ギロリと、エネルがナミを睨む。慌ててナミは口を塞ぐ。

 

「…ヤハハハ…聞こえてきた、天使達の宴…!!住人達がスカイピアの運命を知った様だぞヤハハハ… 足場を失う前に一体どこまで逃げきれるかな」

 

「お前のどこが神なんだ!!!」

 

「今にわかる」

 ルフィが能力をフル活用して上って来る。

 

「……成程…貴様もただの人間ではないらしい……だが… ”超人系”か…話にならん…!!」

 

「うおお!!!」

「おれの前では何もかもが無力っ!!故におれは神なのだ!!! ”神の裁き”」

「!!!」

「ルフィ!!!」

「うわあああ!!!」

 アイサが悲鳴を上げる。ルフィを襲った閃光が壁に穴を穿つ。

 

「…ルフィ…」

「大丈夫よ!…ってか、ルフィは何が起こったか理解してないわよ?」

 

「?」

 ルフィが首を傾げてる。何をされたのか、何が起こったのかもわからない様だ。

 

「うまくよけた様だな……!!!」

「……」

「よけたんじゃないわよ!単に効いてないだけだっちゅうの!」

 ってか、エネルは相手の動きも見えてねェんかい!?

 

 ドドン!! エネルが太鼓を叩く音が響く

 

「6000万V…”雷龍(ジャムブウル)”!!!」

「!!」

 

「ルフィ~!!!」

「だから、心配ないってば…」

 

「?」

 

 エネルがルフィに近づき手を触れる。

 

「1億V!! ”放電”!!!」

「!!?」

 

「まさか、本当に!?…まったく”雷”が効かないの!!?」

「だから、そう言ってるじゃんよ!!」

 

「やめろォ!!!」

「うおァアア!!!」

「!!!?」

 

 ルフィの蹴りでエネルが吹っ飛んだ。物理攻撃が効かないと思っていたエネルにとってそれは不意打ちとも言える。

 ものの見事に吹っ飛んだ。ダメージもかなりでかい!

 

「完全に…”雷”の力が無効化してる…!!!”雷”が効かない人間がこの世に存在するなんて…。きっとエネルでも予想もしなかった出来事。もしかしてルフィは、エネルにとって世界でたった一人の”天敵”」

「……!!?」

 

 

 

 

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