イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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 エースとサボは知らないけれど、私たちがやってる食い逃げは、本当の食い逃げではない。
 なぜなら料金をちゃんと支払っているからだ。
 私が!

 私が居ない時は本物だけどね?
 だからだろう。二人の事を知っているのにお店に入れて、料理を出してしまうのは。

 あれ?ひょっとして…、
 連絡がきちんとなされていない事があるのは、まさかそのせい?






01-15話:食い逃げ(もどき)

 私たちはたまに食い逃げ(もどき)をする。二人は前からしてたらしいけど、私と知り合ってからはその回数は減ったらしい。なぜかと言えば私の家で食べてるからだ。

 私の能力を知ってる二人は、狩りの獲物の半分を私の小屋において行くようになった。収納貝を見せてから狩りの頻度が上がったような気がする。能力で小さくしたものを収納貝に入れておけば大量にあっても腐る事がないからだ。

 収納貝は作った料理を入れておく事もできる。閉めると外界と隔離され時間の経過も止まるため、作りたてを入れておけばいつでも出来立てを食べる事が出来るのだ。

 最近は弁当を作って持っていくという事も少なくなり、グレイターミナルだろうが訓練する山の中だろうが出来立ての料理を自分たちをミニ化してたらふく食べるのが習慣となっていた。

 もちろん料理を作るのも私。だってサボもエースも焼くだけなんだもの。焼いて塩をかけたらはい、できあがり。ってな感じ。まぁね。素材の味を楽しむならばそれもいいでしょうけど、そればかりだと、さすがに飽きる。

 料理の腕は今のところは普通かな?一応分身の一人が料理の修行で世界を周る予定にしてるけど、今のところは元の世界で培った腕をふるっている感じ。エイタ(タブレット)があるのでレパートリーには苦労していない。ここには存在しない調味料もレシピにはあったりするけど、それは工夫次第で似たようなものをつくればいいだけの事。料理はレシピ通り作れればおいしくできるけど、冒険は必要よね?時々失敗するけどさ。

 

 今日は久々に3人で食い逃げ(もどき)をしたのですけれど…、

 

「食い逃げだー!!」

 憤怒の形相で叫ぶレストランの従業員。必死で逃げる私たち。うん、私はこれが演技だって知ってるけどね?言わないけど。

 な~んて思ってたら、どうやら追ってくるおじさんはうまく伝わっていなかった人みたいで、なかなか追うのを諦めてくれなかった。

 

「オイ、二手に別れるぞ!!」

 走りながらエースが提案してきた。

 

「サボ、おれが囮になるからイオリを連れて先に行け!!」

「分かった!」

 

 私が一方的に庇われているのはなんでだろうな?別に二人に比べて足が遅いってわけでもないのに(むしろ速いよ?)

 まぁ、年下だからしようがないけど。

 

「こっちだ、イオリ!」

 サボに腕を引かれて、私たちは脇道に逸れ、そのまま(サボの)全力疾走でその場を離れたのだった。

 

 しばらく走ってもういいか、と思ったのはそれから10分ぐらい経ったころ。

 

「エースは大丈夫かしら?」

 私が言うと、サボは肩を竦めた。

 

「エースだからなぁ。多分、心配するだけムダってモンだろ」

 うん、私もそう思う。むしろ、あの従業員をボコボコにしてないかの方が心配だ。しかもバレたら嫌だなという事もある。

 

「どうする?探す? それとも、先にグレイターミナルに戻ってる?」

 あんまりうろうろするのもなんだしね。

 

「戻ろうぜ。エースだって、先に行けって言ってたし」

 サボのその判断に納得して、私たち2人は先に町を出たんだけど、それは正しかったのか間違ってたのか、よく解らない。

 

 エースがグレイターミナルに戻ってきたのは、私たちよりも大分遅れてのことだった。驚いたのはエースが何かボロボロになってたこと。いやもう、マジでビックリしたわよ。そこまでひどい怪我は無さそうだったけど、全体的に小さな傷をたくさん作ってる感じ。

 

「どうしたんだよ、エース!?」

 サボも目を丸くしていた。けど、当のエースはえらく不機嫌だった。

 

「…何でもねぇよ」

 いや、それ明らかにウソだよね!?そんなボロボロで不機嫌で、何も無かったなんて誰も信じないからね!?

 

「あのおじさんに捕まっちゃったの?それでシメられたとか?」

 に、してはおかしい。もしそうならこうして戻ってこられるとは思えない。それにこの不機嫌さも、『捕まってしまった苛立ち』というより『何かすごく腹立たしいことがあった』かのようだ。あれ、もしかしてバレちゃった?でもなんか違う感じ…

 

 エースは笑った。明らかに無理矢理と解る笑みを浮かべた。

 

「だから、何でもねぇって言ってんだろ?イオリ!先に帰るぞ。サボ、またな!」

 

「え、ちょ、おいエース!?」

 

 その急な様子にサボが慌てたけれど、エースは私にも構わず、ずんずん歩いていった。

 

「私も帰るわ。またね、サボ!」

 

 私は少し迷ったけれど、もう何も聞かないことにした。その気になれば見聞色を使うという手もあるし、それでもムリなら透視だってね。でも…それはやめておこうかな。

 

 仲間に使うのは、基本NGだ。どうしようもない時以外使わない方がいい。それは自分が相手の立場だったら嫌だと思うから。仲間だったら自分が嫌だと思うことを相手にしちゃいけない。これは私の基本ルールだ。

 でも、まぁ基本だから…破ることもあるかもだけどね?とりあえず今回はやめておこうと思う。

 

 それにたぶん、原因はあれだと思う。うんあれ!超ムカつく(やつ)

 でもきっと、聞いても、エースは答えてくれないだろう。それは、エースにとっての私が年下で守るべき庇護対象だからだ。

 私のほうが強いよ?でもそれは関係ないみたい。ポリシーのようなものだと思う。年長なんだからしっかりしないと的な?

 だからエースは、多分意地でも私に弱音なんか吐かないし傷ついた様子も見せないだろう。

 

 どうしようかな?確か、原作ではガープと話してた気がする。もしかして来るのかしら。しばらく待ってみて来ないようなら別の方法を考えよう。この状態なんか嫌だし。

 

 

 

 

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