イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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05-159話:一騎討ち

「政府はまだまだお前達を軽視しているが…細かく素性を辿れば骨のある一味だ。 ― 少数とはいえ、これだけ曲者が顔を揃えてくると後々面倒な事になるだろう。初頭の手配に至る経緯。これまでにお前達のやって来た所業の数々 ― 驚異的な成長の速度… 長く無法者共を相手にしてきたが…末恐ろしく思う……!!!

 

「そ…そんな事急に……!!見物しに来ただけだっておめェさっき…」

 ウソップが、慌てたように言うけれど、海軍の最高戦力にこんな事を言われて、冷静でいられる者は少ないだろう。ウソップ以外も全員が、緊張したように冷や汗を流しているのが伺える。

 

「特に危険視される原因は…………お前だよ。ニコ・ロビン

 

「「……!!」」

 一瞬…青キジの視線が、ロビンの隣の私で止まったような気が…?すぐにロビンへと移った為に、誰も気づいちゃいないけど…

 

「お前!やっぱりロビンを狙ってんじゃねェか!!ぶっ飛ばすぞ!!!」

 

「懸賞金の額は何もそいつの強さだけを表すものじゃない。政府に及ぼす”危険度”を示す数値でもある。だからこそお前は8歳という幼さで賞金首になった。」

 

「………」

 

「子供ながらにうまく生きてきたもんだ。裏切っては逃げ延びて……取り入っては利用して……。そのシリの軽さで裏社会を生き延びてきたお前が次に選んだ隠れ家がこの一味というわけか」

「!!!」

 

「おいてめェ!聞いてりゃカンに触る言い方すんじゃねェか!!!ロビンちゃんに何の恨みがあるってんだ!!!」

やめろサンジ!!!

 

「別に恨みはねぇよ…因縁があるとすりゃあ…一度捕り逃がしちまった事くらいか…。昔の話だ。お前達にもその内わかる。厄介な女を抱え込んだと後悔する日もそう遠くはねェさ。」

「……」

 

「それが証拠に…今日までニコ・ロビンの関わった組織は全て壊滅している

「!!!」

 

「その女一人を除いて…だ……何故かねえ、ニコ・ロビン」

「……」

 

やめろお前!!!昔は関係ねェ!!!」

 

「成程…うまく一味に馴染んでるな」

 

「何が言いたいの!!?私を捕まえたいのならそうすればいい!!!”三十輪咲き”!!!

「!!」

 

「ロビ~~~~~ン!!!やめろォ!!!」

 

「あららら……少し喋りすぎたかな。残念。もう少し利口な女だと買い被ってた…」

 

「”クラッチ”!!!」

 

 ボキッ!!!

 

 音を立てて、青キジがコナゴナになる。

 

「うわー!!死んだー!!!」

「いや…無理だ…!!!おいみんな逃げるぞ!!!逃げよう!!!」

 

「ん~~~~んあァ~~~ひどい事するじゃないの……」

「ギャーギャー~~~~~!!!」

 クザンが草をむしって投げる。そしてそれを媒体にして氷の剣をつくる。

 

「”アイスサーベル” 命取る気はなかったが…」

「……!!!」

 クザンの剣をゾロが止めた。そして、

 

「”切肉”シュート!!!」

 サンジが剣を蹴り飛ばす。しかし、ゾロは右腕を、サンジは左足を青キジに掴まれる。

 

「「!!?」」

 

「ゴムゴムのォ」

 

「ウッ!!」

「ん!!!」

 

「銃弾(ブレッド)ォ!!!」

 

「…バカだなァ…自然系に何の対策もなく突っ込んでくなんて…」

 現在、武装色をちゃんとコントロールして使えるのはナミだけだもんね。どうにもならないわ。

 

「冷た!!うわ!!」

「ぐあァ!!!」

「おああああっ!!!」

 ゾロとサンジは掴まれた部分、ルフィは殴ったその手が凍り付く。

 

「ぎゃあああ凍らされた~~~~!!」

 

「あの3人がいっぺんに……!!!」

 

「「ぐわああああ~~っ!!!」」

 

「た……大変だ!!!すぐ手当てしないと…!!凍傷になったら…!!!手足が腐っちゃうぞ!!!」

 

「………いい仲間に出会ったな…… ― しかしお前は…お前だ、ニコ・ロビン」

 

「違う…私はもう……!!!」

 

「あれ?…イオリは!!?」

 ナミがつぶやくと同時に、クザンがロビンに覆いかぶさる。

 

「!!!」

「ロビン危ねェぞ!逃げろォ!!!」

 

「私は…」

 

「…武装硬化!!」

「「!!?」」

 

「ロビンちゃん!!!!」

「…………!!!」

 

「うわあああロビ~ン!!!」

 

「……」

 

「お前ェ~~~っ!!!」

 

「……わめくな…ちゃんと解凍すりゃまだ生きてる。ただし…体は割れ易くなってるんで気をつけろ。割れりゃ死ぬ。たとえばこういう風に砕いちまうと…」

 

 クザンが拳を振り上げる。

 

「!!!」

 

「ウゥ!!!やめろ!!!」

「ロビン!!!」

 クザンが凍ったロビンを殴ろうと、拳を繰り出す。ルフィはロビンを抱えて拳を避けた。

 

「ハァ…あ…危ねェ!!」

「……」

 

 今度は踏みつけようとしたところを間一髪、ウソップがロビンを抱えて逃げる。代わりにルフィがクザンに踏まれた。

 

「ぐへ!!!」

「ギャーギャー!!」

 

「……!!」

 

「うおおおお」

「やったウソップ~~~~っ!!!」

 

「何だってんだオイ…」

 

「く!!!ウソップ!!!チョッパー!!!そのまま船に走れ!!!手当てしてロビンを助けろ!!!」

 

「わ!!わかった!!!」

 

「やめとけ。その女は助けねェ方が世の為だ」

 

「!」

― ガンッ ―

 

「う!!!」

 ナミが天候棒で青キジに殴りかかる。青キジは片手でそれを受け止めた。

 

「お言葉ですけど、そういうのの集まりよ、海賊なんて」

 

「よくわかってんじゃねぇの……!!どいてくれるかおねーちゃん」

「あっ!!!」

 

「ナミさん!!!」

「………!!!」

 サンジとゾロが再び青キジに襲い掛かろうとして構えた。

 

「待った!!!お前ら!!!」

「!!!」

 

「「ルフィ!!」」

「お前ら手ェ出すな。一騎討ちでやりてェ!!この勝負、おれとお前で決着をつけよう!!

 

「構わねェが……連行する船がねェんで……殺して行くぞ?」

 

 

 ~ その頃 メリー号では… ~

 

「息……!!なんてできねェよな」

「仮死状態にあると思うんだ」

「急がねェと死ぬんじゃねェか!!?」

「でも急にあっためたらわれちゃうし……!!熱は体内から取り戻さなきゃ!!」

 

「いいのか!?これで本当に…」

「わからねェでも…!!こうするしか…!!」

「わからねェで済むか!!ロビンの命が賭かってんだぞ!!!」

「だけどおれ!!!こんなに!!!全身凍っちゃった人間見た事ねェもんっ!!!青キジは…そりゃ…まだ生きてるって言ったけどおれにはそっちの方が不思議なくらいで…!!!」

 

「泣き言言うな!!お前にどうしようもなきゃもう誰にもロビンを救えやしねェんだぞ!!!お前はこの船の船医なんだぞ!!!」

「わかってるよ!!!少し黙っててくれよ!!!」

 

 無言のままシャワーと桶とでロビンに水をかけつづける二人…

 

「……!!」

「……!!」

 

「チョッパー!!!」

「!?」

 しばらくすると、船の外から声がした。

 

「ああっ!!!え!!?何で!?お前達っ!!?3人か!?」

 

「ハァ…ハァ…!!」

「話は後だ、すぐにおれ達は引き返す。この凍った手足をどうにかしてくれ!!!」

 

「ああっよし!!えーと……!!すぐその固まった所を水で溶かさなきゃ…!!でも今シャワー室ロビンが…」

 

「ロビン大丈夫!?」

「まだ何とも」

 

 ドボボーン!!!

 

「!!」

「何!?」

「え…」

 ゾロとサンジが海に飛び込んだ。

 

「ぷは…!!これでいいのか!!?」

「!!ちゃんと低温で溶かしたら…患部を摩擦しながら船に上がってきて!!ナミはロビンの方手伝ってくれよ!!」

 

「うん!!ねぇチョッパー、こっちにイオリはいないの?」

「え!!?」

 

 ウソップとナミが交代してしばらくするとロビンの表面の氷が解けた。するとロビンが呼吸を始める。

 

「よかったロビン、気が付いて…」

「…イオリが…助けてくれたの…エネルの時と一緒…」

 

「やっぱり……突然居なくなってたからおかしいと思ったのよ。」

「じゃあ、イオリはまだあそこにいるのか?」

 

 

「何でお前らここに!?ルフィは!?青キジは!!?」

「……一騎討ちがしてェんだと…!!」

 

「一騎討ち!?おめェら…それで…!!ルフィとイオリを置いて来たのか!!?」

 

「 ― 船長命令だ…っておい! イオリはこっちじゃねェのか?」

 

「こっちってなんだよ!!イオリは戻って来てねぇよ!!ってかおめェらいくら船長命令でも…!!!そりゃねェだろ!!!お前ら薄情すぎやしねェか!!?そりゃねェよ!!」

黙れ!!!”一騎討ち”だぞ!!!

 

「!!!」

「わからねェのかお前には!!!」

 サンジがウソップの胸ぐらを掴んで壁に押し付ける。

 

おいやめろ!!こんな時に!!! 今……一味の瀬戸際だ。この決断があいつの気まぐれだろうと何だろうと、もしもの時はそれに応えるだけの腹ァくくっとけ!!!」

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

「ウゥ……!!!」

「やっぱりおめェは…変わり者だ」

 

「うおォあああ~~~~~~っ!!!」

 ルフィがクザンさんに向かって走る。掌打を避けて相手を真上に蹴り飛ばした。

 予想の範囲内だったらしくクザンさんには焦りは見えない…

 

 ルフィは空気を吸い込み、風船にした体を捻り、地面に向かって空気を吐き出し、回転しながら空に舞う!

 

「ゴムゴムのォ…暴風雨!!!」

 

 クザンさんはルフィの技を難なく躱して剃刀で一気に間合いを詰める。

 

「”アイスタイム”」

「!!!」

 ルフィは凍結された。

 

「はい!!クザンさんの勝ちィ~~~!!」

「!!?」

 私の声を聞いてクザンさんが驚いている。

 そうですねェ~? 私が気配を消す事と、相手(敵)に合わせて見聞色の相殺を行う事は、癖になっちゃってるのです。だからクザンさんは、私がここに居ることに、まったく気づいてなかったらしい。

 

「まいった、ハメられた…。”一騎討ち”をうけちまったからには、この勝負おれの勝ちで、それまで…!!そういう事か…?」

 コクコクと頷く私。青キジはため息を漏らす。

 

「これ以上、他の奴らに手をだせば、ヤボはおれだわな…。なァ、お前ェんとこの船長は、本気でおれに勝つ気でいたのか?」

「簡単に負けるつもりは無かったと思うわよ?まだまだ荒削りだけど武装色も使えてきてるしね!」

「…成程。さっきの技をまともに受けてたらおれもやばかったかもな…」

 そう言って、クザンさんは私に向き直った。

 

「だが、これだけは言っとくぞ。お前達は…この先ニコ・ロビンを…、あの女を必ず持て余す。ニコ・ロビンという女の生まれついた星の凶暴性をお前達は背負いきれなくなる。」

 

「ねぇそれ…本気で言ってる?」

 

「……あの女を船に乗せるという事は…そういう事なんだ!!モンキー・D・ルフィ! イオリ!!

 

  ― ガシャァン!!! ―

 

 私の問いを無視して、青キジはルフィの横に出来た氷柱を蹴り砕いた。

 

「………」

 

「ここでコイツを砕いちまって命を絶つのは造作もねェが…お前たちには借りがある。これでクロコダイル討伐の件、チャラにして貰おうじゃないの。それと…あァ、まァいいや。スモーカーのバカの話は…」

「…」

 

「お前さぁ…ニコ・ロビンの時のように船長は助けなかったのな…?」

 

「そりゃあ『一騎討ち』だからね。船長が決めた事を私が台無しにするわけにはいかないじゃない?」

「…なるほどね…」

 

「まぁでも、本気でルフィを蹴り砕こうとしてたら止めたけどね?」

 

「…おれを、止めれる自信…あんのかお前?」

「さぁ…どうかしら?」

 

「…」

「…」

 

「…残念…一騎討ちを受けてなきゃ試せたんだがな。しかしお前、ほんとに赤髪そっくりだな!?」

「それ…禁句ですけど?」

 

「あ~、悪かった。次から気を付けるから許してくれや。……それじゃあな…!」

「うん。バイバイ!!」

 手を振ってクザンさんを見送る。まあ、またすぐに会う事になるんだけど…

 

 クザンさんが見えなくなったところで、ルフィの様子を確認する。完全に氷漬け状態だ。恐らく仮死状態になっているのだろう。

 

「さてと…」

 私はルフィを低温で解凍すべく、ルフィを小さくして、水を張った大きなタライに入れた。

 

「いたぞ!!」

 そこへゾロとサンジが駆けてきた。

 

「イオリ!おめェやっぱりここに居たのか!!」

「イオリちゃん!ルフィは!!?」

 

「解凍中よ…ほら!ここで!!」

 ルフィを指差して二人に見せる。

 

「…砕かれちゃいねェ!!!」

「よかった…!!よかった!!!」

「急いで船に戻るぞ!!」

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 バンッ!! 扉をあけてチョッパーが姿を現す。

 

「ウウッ…ウッ…!!!」

「!!?」

「ルフィの心臓が……動いた!!!」

 

「やったー!!うおおお~~~~~い!!!」

「ルフィ~~~!!!」

「駄目だ!!まだ駄目!!!入ったら騒ぐだろ!!!」

 

「……おい!!Drチョッパー、おれ何か作るぜ!?」

「ド!!ドドドクターなんて言われても嬉しくねーぞコノヤロー!!!目を覚ましたら…体があったまる飲み物がいいよ。あとでラウンジへ運ぶから」

 

「ナミ、船は?出すのか」

「出さないわよ。船長がアレだし…記録はもうとれてるけど、今日はここで停めましょ」

 

「はふ………」

 ウソップがマストにもたれてズルズルと座り込む。そのままぐてっ…と倒れこんだ。

 

「どうしたウソップ、気が抜けたのか」

 

「………あんな強ェのがこの先…おれ達を追って来るのかな」

「……」

「…おれはただ…バタバタ騒いで終ったよ……」

 

「…寝ろバカ。疲れてんだよお前」

 

 なるほどね…原作ではこれが別れの伏線になるわけだ…。さて、どうしようかな…

 

 

 ラウンジで、みんなで眠る事にした。

 ロビンよりもルフィのほうが重症だった筈だけど、ダメージはロビンのほうが大きいみたい。精神的なものかもしれない。

 

「………」

「眠れないの?」

 小さな声でロビンに話しかける。

 

「ええ…」

「…」

 

「ねぇイオリ…あの後…青キジと何か話した?」

「少しだけね…」

 

「…私の事…何か言ってなかった?」

「…悪口を少し…ね。でも本心じゃないと思うわ。なんだかあなたに思い入れがあるみたい。ずいぶんと口が悪かったけど、ずっとあなたの事を心配していたように感じたわ。」

 

「……ありがとう…なんだか、あなたは私よりも年上みたい…そんな気がする…」

「…なんて答えていいやら…ね……」

「…」

 ロビンは酷く疲れているように見える。青キジと会って、いろいろと思い出す事もあったのだろう。

 それに…

 まだ…一味に馴染もうとしていない気がする。私とルフィ以外はいまだ名前で呼ばないし…

 

「それじゃ年上っぽく言おうかしら?…もう休みなさい…」

「…はい…おやすみなさい…」

「おやすみ…」

 

 遠慮している? 気恥ずかしい? 決してそうではないわよね…。

 多分、恐れているのだろう。拒絶される事ではなく、私たちを傷つけてしまうかも知れないという事に…

 ”バスターコール”というトラウマを何とかできないものかしら…

 

 

 

 

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