イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

178 / 385
05-164話:9番目の正義

『事態はもっと悪化する。今日限りでもう…あなた達と会う事はないわ』

 

「…ロビンは、確かにそう言ったんだなチョッパー」

「うん」

 

「今日限りでもう会う事はねェってんだから、今日中に何かまた事態を悪化させる様な事をするって宣言したようにも聞こえる。市長暗殺未遂でこれだけ大騒ぎになったこの町で…事態を更に悪化させられるとすれば…その方法は一つだ…」

 

「今度こそ…”市長暗殺”…」

 

「そう考えるのが自然だな。 - ただし、わざとおれ達に罪を被せてるとわかった以上、これはおれ達を現場へおびき寄せる”ワナ”ともとれる…。今夜また、決行される暗殺の現場におれ達がいたら、そりゃ”罪”は簡単にふりかかる」

 

「ちょっと!!それじゃあもう本当にロビンが敵だって言ってるみたいじゃない!!」

 

「可能性の話をしてるんだ。別におれはどっち側にも揺れちゃいねェ。信じるも疑うも…、どっちかに頭を傾けてたら、真相が逆だった時に、次の瞬間の出足が鈍っちまうからな!事が起こるとすりゃ今夜だ。”現場”へは?」

 

「行く」

 

「行くのは構わないけど…。問題があるのよね。サンジ君はロビンが誰かと歩いているのを見たと言ってたでしょ。アイスバーグさんも、同じ証言をしてるの。”仮面を被った誰か”って、それは私達の中の誰でもない。急にロビンが豹変したのはそいつが原因なのよ!!」

「そいつに悪い事させられてるんじゃないか!?ロビンは!!」

 

「その考え方が”吉”。そいつとロビンが本当の仲間ってのが”凶”だ!」

 

「……かと言って、”仮面の誰か”じゃ、何の手掛かりにもならない。私達の目的は何?」

 

「ロビンを捕まえるんだ!!!」

「!」

 

「じゃなきゃなんもわからねェよ」

「確かに…考えるだけ時間のムダだな。」

 

「いやいや、ちょっとは考えましょうよ!じゃあ、私の集めた情報を伝えておくわね!まずは事実から…。

 ①アイスバーグさんのところにここ数年、政府の役人が来ては怒って帰るってのが何度も目撃されてる。

 ②アイスバーグさんは昨晩、鍵のかかった自宅で撃たれた。ドアや窓から誰かが侵入した形跡は無い。

 ③この島には、私たち(ロビンを含む)以外に大きな気配が5つある。

 ④昨日、ロビンの気配を探った時にありえない距離を一瞬で移動した。その時ロビンの気配と一緒だったのが大きな気配のうち一つよ。それとは別の大きな気配の主とは、ルフィとナミは会ってるはずよ?船大工に襲われたって言ってたでしょ?あの場所に3つの大きな気配が集まってた。最後に、

 ⑤今夜11時に『エニエス・ロビー』行きの”海列車”特別便が出航する」

 

「海列車が出るっていうのはおれも知ってるぞ!時刻表で見た!!」

 

「…まずは事実から…ってェのは他にも何かあんのか?」

 

「あるわよ。次に、仕入れた『うわさ』だけど…」

「うわさかよ!!」

 

「ゾロ!!うわさっていうのはあんがいバカに出来ないのよ?政府が絡んでるときは特にね!!彼らは事実を織り交ぜたありえない話とかをワザと酒場で流すのよ。大抵の場合それらは酒の肴になって広がって、事実に辿り着こうとする者たちの邪魔をするのよ。でも逆に、そのうわさから、見えてくるモノもあるんだから!」

「悪かったよ…で?」

 

「で、うわさっていうのは、

 ①世界政府がアイスバーグさんの持ち物を狙っている。

 ②CPがこの島に入り込んでる。

 CPっていうのは政府の諜報機関の総称ね?私が使ってる六式っていうのは、本来この機関のメンバーが使う技なのよ!」

 

「…イオリの考えは、大きな気配っていうのがそのCPって奴らで、ロビンと一緒に居たのもその一人って事?でも、政府の機関だったらロビンは敵でしょ?」

 

「…結局、どっちに転ぶかはわからねェって事じゃねェか!!」

 

「そうなるわね。私の考えではロビンがCPと協力している事は間違い無いけど、その理由がハッキリしないのよねェ…。」

「だから、ロビンを捕まえるんだろ!!」

 

「だが、- 確か…世界政府が20年…あの女を捕まえようとして未だムリなんだっけな」

「でも真相を知るにはそれしかないわね」

 

「よし!おれも頑張るぞ!」

 

「じゃあ、行こう」

 

 *--*--*--*--*

 

 私たちは、ドックからちょっと離れた木の上にいた。

 

「ちょっと遠いぞ!」

「あんたは腕伸ばして飛んでけばいいでしょ!騒ぎが起こってからね!」

 

「そうだな、こっちが先に騒ぎを起こしちゃそれを利用されるだけだ」

「凄い数の護衛だ…」

 

「イオリ、ロビンの気配はわかるか?」

 ルフィに言われる前から探してるんだけどね……

 

「それが、見つからないのよ。この島全体を探してみてもロビンの気配は感じられない。けど、昨日ロビンと一緒に居たヤツの気配はわかるわよ?近くの酒場に居るみたい。恐らく、そいつがロビンと一緒に潜入するはず…。」

 

「……」

 

「どうしたチョッパー?」

「みんな武器持ってて、強そうだぞ!!」

「…そりゃ、そうでしょ。海賊だってねじ伏せちゃうのよここの船大工達は」

 

「こりゃあ下手に突っ込んだら大変な事になるぞ!!」

「あんたがそれ言う?」

「…どの口がそんな事言うのかしら…」

 ルフィの言葉に私とナミがツッコみを入れる。

 

「何か動きがあったらすぐ知らせろよ」

「うん、わかった」

 

「おめェもな。」

 ゾロが私に気配を探れという意味を込めて言ってきた。

 でもなぁ……

 

「まだ、だいぶ時間があると思うわよ?」

「なんでそんな事がわかるんだ?」

 

「逆算したのよ。たぶん犯人達は”海列車”特別便…。これに乗ってW7を出るんだろうからね。不測の事態も想定して時間を計算すると、事が起こるのは9時過ぎじゃないかしら?」

 

「今は、7時半か…」

 

「それはおめェの予想だろ?外れたらどうすんだ!!今夜のチャンスを逃したら…何のわけもわからねェままお別れだ。もう二度とロビンを追うアテがなくなるんだぞ!!」

 

「大丈夫よ。予想は予想でも確信に近いから安心してよ。それよりも、私は約束があるから、ちょっと外すわね!9時前には戻るわ!!」

 

「おい!!」

「ちょっとイオリ!!」

 私はカリファとの約束を果たしてから、戻ってきた。

 

 

「ただいま!! ねっ?動きはまだ無いでしょう?」

 

「…ったくおめェは…」

 

「約束って、何だったの?」

「アイスバーグさんの秘書さんとちょっとね。」

「「はぁ?」」

 

「情報収集と状況確認よ!」

「…」

 

「彼女、『ユナ』のファンなんだってさ。ファンクラブにも入ってるんだって。」

「ふうん…」

 ナミにだけ聞こえるトーンで話したら興味なさげに相槌を返してきた。

 

「ちなみに、彼女もCPのメンバーよ」

「「えっ!!?」」

 

「言ったでしょ?確信に近い予想だって。」

「なるほどな…で、情報収集ってのは?」

 

「…うん…。今話しても混乱するだろうから、とりあえず状況を見てから話すわ。」

「???」

 

「さて、これからいつ動きがあるか分からないわよ!チョッパーもしっかり見張って頂戴!私も気配を探るから!!」

「おうっ!!」

 

「絶対捕まえてやるさ!!」

「………」

 

 9時半を回った頃……

 相変わらず、ロビンの気配は感じられない。けど…

 

「チョッパー!!2時の方向の建物の屋根の上を見て!!誰か居ない?」

「あっ!!熊がいるぞ!!」

 

「他には?ロビンはいない?」

「わからねぇ…向こう側にもうひとりいるようにも見えるけど…」

 

 ドォン!!! 建物の左手で爆発が起こる。

 

「!!!」

 

「うわー!!爆発したぞ-!!!」

「……!!」

 

「あっ…」

 

「……うわあ……もうだいぶ騒がしいぞ!!」

 

「あれ?ルフィは?」

「えっ!!?」

 

「…爆発のあとすぐ、飛んでったわよ…」

 頭痛いわァ……あのバカ!ほんとに何やってんの!?

 

「おれ達も行くぞ!!」

 

「イオリ!まだロビンの気配は感じないの?」

「…残念ながら…」

 

「イオリ!おめェはここに残れ!!ロビンの気配がわかったらそこまで行って何としてでも捕まえろ!!全員一緒に行動するより確実かもしれねェ!!」

 

「…わかったわ。みんなも無茶はしないでよ?」

「ええ!」

 3人が木から下りて、アイスバーグさん宅へと急ぐ。

 

「あっ…言っとけばよかったかしら…。ルフィが建物の間に挟まってるって…」

 その頃、3名は正面玄関で船大工の団体さんとご対面していた…

 

 

 どうしようかな…

 今、ロビンはアイスバーグさんのところにいる。部屋には二人だけだ…

 

 私は自分を小さくして二人の居る部屋へ飛んだ。

 

 

 9時45分…。アイスバーグさんの寝室にCP9のメンバーが全員揃った。

 

「帰れ!!!おめェらに渡す物などない!!!」

「……なくては困る…」

「ポッポー、クルッポー」

 鳩のハットリが牛の仮面の肩にとまる

 

「!!?」

 

「まず、何から話せばいいのか…」

「!!?」

「死にゆくあなたに」

 ルッチが仮面を外す…

 

「………」

「あなたにはがっかりさせられた」

「ルッチ!!…という事は、カク、カリファ、そしてブルーノか…」

 

「…よくわかったのう。しかし、あんたが悪いんじゃぞ…政府が大人しく申し出とるうちに…渡さんからこうなる」

「 - できる事なら、あなたを傷つける事なく、この町を思い出にしたかった」

「頑固さも師匠ゆずりか……」

 

「お前ら……政府の人間だったのか!!」

「そう…我々には潜伏する事など造作もない任務……しかし、あなたの思慮深さには呆れて物も言えない…!!!それにしても気になる…驚きが少ない。気づいていたのか?」

 

「…ンマー、うわさを聞いたのさ…CPという政府機関から我が社に潜伏している者が居ると…」

 

「…うわさ…?」

 

「そんな事はどうでもいい。古代兵器プルトンの設計図、そのありか…多くの犠牲者を出す前にお話し下さい」

 

「我々が潜伏していたのは5年…ご安心を、仕事は手を抜かずにやりました。」

「……」

「意気消沈…とまではいなかいようですが、心中お察しします。しかし、我々がこの件に費やす時間も…制限時間を迎えましたので目的遂行の為ここで最善を尽くす気構え。あまり考えの無い抵抗ならばしない方がよろしい。」

「……」

 

「『CP』という名は先程の口調からするにご存知ですね?…俗にいう『CP1』から『CP8』まで。世界に8つの拠点を持つ政府の優れた諜報機関。政府の指令でどんな場所のどんな情報も探り出す」

 

「…知っているさ - だが、『CP8』の事までだ」

「そうでしょう。…しかし我々は『CP9』存在するハズのない9番目の『CP』は、ある特権を持っている為、…世の明るみには出られない」

 

「………!!」

 

「あくまで”正義”の名のもとにですが…我々は政府に対して非協力的な『市民』への…『殺し』を許可されている」

「身勝手な……!!正義と名のつく殺しがあってたまるか!!!」

 

「世界政府は一部…考えを改めたのです。兵器の復活を危惧し続けるより、-いっそ兵器を呼び起こし、この大海賊時代に終止符を打つ”正義の戦力”にしようと…!!!」

「………」

 

「-しかしあなたはそれに協力しようとしない…今もなお世界中で海賊達から被害を受け続ける人々を、あなたは『救わない』と言っているんだ」

 

「話にならん…!!兵器が復活すれば世界はその力を奪い合う。被害は拡大する一方だ…!!」

「あなたは政府を信用していない様ですね、アイスバーグさん」

「おれァ”人間の性”を…知っているだけだ小僧…」

 

 - ドガンッ!!! -

 

「!!?」

 

「慎みたまえ…いつまで上司のつもりでいる!…カク…脈をとれ…」

「ハァ…ゲホ!!!……!?」

「失礼」

 

「アイスバーグさん。先ほど実は我々に一つ仮説が生まれました…あなたはただ、それを聞いてくれればいい…きっとあなたの血が真相を答えてくれます。」

 

「 - まず、我々に”ニセ物”の設計図を掴ませるという行動。ここに疑問を感じる。-あなたは犯人が政府の人間だと推測して”ニセ物”のありかを示した。-だがもし、そうではなく、ただあなたに恨みを持った者達があなたを殺しに来ただけだった場合…本物の設計図は所有者を失い、もはや伝承する事ができなくなってしまう…その可能性を考えないほどあなたはバカじゃない。-それをわかっていながら、なお今夜、本物の設計図を誰にも渡そうとしないという事は実はもう…誰かに託してある」

 

「……」

 

「少なくとも……もうあなたの手元にはない。-そう考えられる。これはまだ可能性です。勿論…どこにも確証はないし…この5年、我々が監視・調査した範囲でもあなたの行動から取れる証拠もない…さらに”設計図”を託される者には相応の腕も必要。」

 

「無駄じゃ、暴れるな…」

「……!!」

 

「-さて、仮説を続けましょう。面白いのはここからです……先程、我々が掴まされた”ニセ物”の設計図……よく見ると設計士のサインが入っているのですが」

「!!………」

 

「『トム』『アイスバーグ』『カティ・フラム』最後に社名”トムズワーカーズ”あなたはニセ物で、敵を出し抜いたつもりかも知れないが、まさか敵がこんなにも身近に潜伏しているとは思わなかった。それが誤算。ただ設計図を狙っただけの昨日今日の侵入者にとってはこんなものはただの紙クズでしょうが…ところが5年、この町で暮らした我々にはこの設計士の名前は興味深い…」

「………!!」

 

「伝説の船大工、トムの率いる『トムズワーカーズ』は実に謎の多い造船会社。かつてこの島にあったハズだが名簿も戸籍も存在しない。あなたがトムの弟子だという事を割り出すだけでも一苦労したものだ。政府の先報によればトムの弟子は二人しかおらず、ひとりは8年前の事故で死んだと、政府の人間がしっかりと確認している。 - ハズだった…」

「!」

 

「-しかし、私はこの『カティ・フラム』という名を聞き憶えている… - 4年程前になります」

「ハァ………!!」

 

「ガレーラカンパニーの門をくぐり、あなたを訪ねてきた男がいた。彼は一度だけその名を名乗った…!!」

 

「 - 私も憶えています。」

「わしもじゃ……」

 

「つまり、トムのもう一人の弟子『カティ・フラム』は生きている。……今もこの町に…」

「………!!!」

 

「『フランキー』と名を換えて!!!」

「……!!!」

 

「間違いなさそうじゃな…まさかあいつとあんたにそんな繋がりがあったとは」

 

「フランキーは確かに…調べても調べても素性の知れない男だったが…”解体屋”であの横行ゆえ、鼻にもかけていなかった…成程、事実からしか生まれない我々の予測の中に”死人”の関与は絶好の死角。フランキー一家ならば材木を造船所に売りにやって来る。うまく申し合わせれば設計図を受け渡すチャンスはいくらでもあった…改めて思えば最も怪しまれない距離を保った隣人と言える。あなたの手元に設計図がないのならさっきまでの強気な態度も納得。託した相手があなたの唯一の弟弟子ならばガレーラの職長の誰にも託さなかった事にも納得…これで予測は一本の線になり、 - 更にあなたの波打つ血がそれを的中だと告げた!!!」

「!!!」

 

「なに…あなたに罪はない…これだけ色々なことが起こる夜に動揺を隠せなくなるのは、血の通った人間ならば当然……」

 

「今日まで世話になりましたね。あんたはもう用済みじゃ」

「急いでフランキーを捜しましょう」

 

「てめェら…!!!」

 

 その時…”ピキ…!!!””ミシ…!!!”壁と扉が不穏な音を立てる。

 

「!?」

「?」

 

「…やっと来たわね…」

 

「「!!?」」

 元の大きさに戻ってベットの奥の壁に寄りかかりながら、私はひとりごちた。

 部屋にいる全員が私のほうを向く。

 

「イオリ!!?」

「えっ!?…まさか、”(くれない)”!いつの間に!!?」

 

「うりゃああああああ!!!」

 ルフィが壁を蹴破り、そしてゾロはドアを十字に斬って部屋に乱入してきた。

 

「!!?」

「ロビンはどこだ~~~~!!!」

 

「ルフィ」

「ルフィ!!!」

 

「邪魔を」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。