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話数がずれました。
『食い逃げもどき』と『エースの憂鬱』のあとがきをまとめて
『エースの憂鬱』の後に 閑話として追加させていただきました。
「おい、イオリ!何の脈絡もなく微笑むんじゃねェよ!怖ェから!!」
これは、ある日の訓練の合間の休憩時間。イオリは思い出し笑いで微笑んだ。それを見た二人(エースとサボ)がギョっとして、目が笑っている事に安堵の息をもらした後のエースのセリフ。
「え~、何それひどい!」
「ちげーよバカ!おめェのそれは2択だから怖ェえんだっての!少なくとも訓練中はやめてくれよ!」
「今は、休憩中じゃない!」
「訓練中のだろ!同じだろ!!」
「う~…。わかった。気を付けるわよ。」
二人は再び安堵の息を漏らす。
「あ、でも強度を上げる時にはやるよ?その方がわかりやすくていいでしょ?」
「なっ!?」
― ガシッ ―
イオリの発言にエースが文句を言おうとしたところ、サボがエースの肩をつかんで
やめとけエース!今はまだ訓練中だ。これ以上イオリの機嫌を損ねるのはマズい。この後地獄が来たらどうするんだ?
その目が雄弁に語っていた。
「ん、どした?」
「な、なんでもね~よ!」
このやり取りでお分かりだろう。二人が見て恐れるそれはCP0の見ているそれと同じもの。顔は違うが効果は同じ。
二人も既に軽くトラウマを埋め込まれている。
しかしエースは知っている。
この微笑みは、何も訓練の時だけではない事を…
恐らく”あれ”を見たのはダダン一家と自分だけだろう。
それは少し前の事。ダダンの家にイオリが初めて訪れた時の事だ。
「あんなところに勝手に家を建てやがって!」
とダダンに言われたものの、
「あの土地もダダンの家の建つこの場所もそもそもあなた達のモノじゃないでしょう?そんな事を言われる筋合いはないわね!」
と突っぱねた。まぁこれは普通のやり取りだ。
エースが見たそれは、想像を絶する。
あの日…、エースが少し席を外して戻ってみるとそれが起こっていた。エースは入り口で立ち尽くす。
イオリがあの微笑みを浮かべながら淡々と流れるように正論を言ってはダダンを叱っていた。反論しようものならそれもまた、屁理屈も加えて言い負かし、さらに追い打ちをかけていた。
最初ダダンが一人叱られていたのだが、手下たちが反論したため流れ弾をくらってしまい一緒に叱られる事になっていた。ダダン達の顔からだんだんと生気が失われていくのがわかった。さすがにマズいと思い、意を決して…
「どうしたんだ?」
と割り込んだところ、
「うん。この人がね?いけない事を言ったから叱っていたの」
と、あの微笑みをエースに向けてきた。
ゾッとした。背筋が凍るという言葉の意味を初めて知った。あの目が脳裏に焼き付くような気さえした。いっそ殺してくれとでも言ってしまいそうな圧がそこに在った。それほどまでに訓練以外で見るあの微笑みは怖いのだ。
イオリが落ち着いた後で聞いてみたところ、エースが席を外した時に、ダダンが言った『鬼の子』という言葉にイオリが文句を言っていたらしい。
いや、あれはそういう事じゃねぇんじゃねえの?ダダンの悪行をつらつらと並べ、その上でダメな所を言い聞かせていたような気がするぞ?
エースは思ったがそれは口には出せなかった。流れ弾をくらいそうで怖かったからだ。
要するにこれは『モラハラ』の強化版とも言える行為だった。しかもイオリは頭の中を覗ける為にその場で起こった事だけでなく過去の所業も含めネチネチと攻めたてる。それゆえ言われる側の受けるダメージは普通の比ではないのである。
イオリの事を本気で怒らせてはいけない。エースはその事をサボにも伝え、二人で固く心に刻んだ。