~ 事件から2日後 ~
海列車は通常通り運行されていた。
アクア・ラグナで破壊された町は、ガレーラカンパニーがその修復を請け負ったようだ。
私たちはガレーラカンパニー本社兼アイスバーグ自宅の敷地内に、専用の建物を建ててもらって、そこで過ごしていた。
同じ建物にいると、マスコミが来てしまうからという配慮があったからだ。
「んががが、入るよおめ~ら!!」
「入るよー」
「ニャー」
「ゲロゲロォ!!!」
「ゲロッ!!」
ココロさんとチムニー、ゴンべ、ヨコヅナがやって来た。
ヨコヅナは入り口から入れないらしい。無理やり入ろうとして壁にヒビが入ってますけど?
「ヨコヅナ!!おめー外にいな!!」
気づいたココロさんがヨコヅナをおとなしくさせる。
「ココロさん!」
「全員やっと目覚めた様らね。2日間寝通して、よほど疲れてたんらね。当然らが」
テーブルではルフィが食事中…
「おや、海賊王も元気なもんらね!!」
「ああ…アレは違うんだ」
「違うって何がらい」
「戦いの後、ぶっ倒れてメシを食い損ねるのがいやなもんで、寝たままメシを食う技を身につけたらしい」
「うめーうめー」
そのルフィは、ムシャムシャと音を立てながら皿を積み上げている。
ホントにこいつは…何処を目指しているのやら……
「寝てんのかい!?ありゃ!!!」
「すごーい海賊にーちゃん」
「にゃー」
「起用な男らね…。ログホースの記録はあと2日3日でたまるらろ!これからどうすんらい」
「なかなかいい船が見つからないのよねぇ……。メリー号は直りそうなんだけど、現在の持ち主はウソップだし…。新しい船を造ってもらおうにも、ガレーラの船大工達が気後れしちゃってるし……」
「気後れらって?」
「ええ…。なんでもメリー号よりも優れた船を作る事なんて出来ないっていうのよ!!メリーを評価してくれるのはうれしいんだけど、それじゃ困るのよね…。当分先へは進めそうにないわ!!」
そう言ったナミの顔に暗い影は微塵もない。どこか余裕すら感じられる。
原作ではこの場面、ナミは沈み込んでた。何もかも失ってしまったと思っていたからだ。
けれど、ここでは何も失ってない。荷物は最初に借りた宿から回収して私が持っていたから、お金も無事だし、ベルメールさんのみかんの木も、その他の持ち物も全部無事!!加えて私が売った黄金の事もナミとロビンには伝えてる。
ナミはすこぶる元気である。
ちなみにナミは、私が持っている黄金の総量を知らない。売れた金額が600億だと聞いて驚いていたけど、それがほんの一部であるという事は考えてもいないようだ。
うまくすれば、この後さらに追加されるであろう2400億の事についても言っていない。そもそもルフィの手に付けられた黄金の玉の大きさも、私とルフィしか知らないのよね。柱については私とロビンしか知らないし…。
まぁでも、財布の紐を握っているのも、黄金を持っているのも私だから、何も問題なし!!
「新しい船が手に入ったら、部屋に新しい家具を揃えて…。衣裳部屋なんかもあったらいいわよね~」
いろんなカタログを見ながらあーでもないこーでもないと、ここの所ずっとご機嫌だ。
「言っておくけどナミ!無駄遣いは許さないからね?」
「え~なんでよイオリ!いいじゃない少しくらい贅沢したって!!」
「聞いてる限りだと少しじゃないと思うから言ってんの!!」
「むぅ~~~!!あの1億は私が使っていいって言ったじゃない!それに足りない分は、自分の分け前を使うつもりなんだからいいでしょう!?」
ナミが口を尖らせながらダダをこねる。
「ナミがそういう事しちゃうと、マネする奴が居るのよ!お願いだから自粛してくれる?」
「も~!!そうやってあいつを引き合いに出されたら我慢するしか無いじゃない!!」
「ありがと!!」
「わ…わかったわよ!!」
「どのみち家具は新調するつもりだから、ロビンと一緒に選んでいいわよ?私はそういうの無頓着だから二人に任せるわ。それに、そういうのは必要経費って事で、分け前とは別に考えてるから!!」
「!!…もう……
拗ねた顔が笑顔が加わる。機嫌は悪くないみたいね。よかったよかった。
「今帰ったぞ―っ!!」
チョッパーとロビンが帰ってきた。
「フランキー一家のケガ、看て来た。あとロビンから目を離さなかったぞ!!」
「よし!!ごくろうチョッパー!!」
「ふふっ、もうどこへも行かないったら」
「ロビン!!イオリが家具新調していいって!!一緒に選びましょう!!」
「ええ、いいわよ」
「念の為に言っとくけど、買うのは船が決まってからだからね?」
買ってから、船に入らないとかダメだから!
船に合わせて調整する事は出来るけど、それやっちゃうと製作者が悲しむじゃない?
「イオリ!!おれ、診療台ほしいぞ!!」
「イオリちゃん!!おれも新しい調理器具が!!」
「だから、まだ船が…」
ガチャッ!!
「!?」
あっ、フランキー登場だ…
「アウッ!!スーパーか!?おめェら!!…全員…全員は揃ってねェか!!まァいい」
フランキーが娘二人を連れて入って来た。
「おめェらに話がある!聞けっ!!!」
私は目を覚ましてくれないかと、寝たまま食事を続けるルフィに目を向ける。
「おい、イオリ!おめェが副船長なんだろ?ちゃんと聞いてくれ!! ― ある…戦争を繰り返す島に…」
「何だ突然!!つまんねェ話ならきかねェぞ」
サンジが割り込み、フランキーに言う。
「うるせー黙って聞け!!!たとえ島に済む人間が砲弾のふり注ぐ戦争を始めようが、島中の人間が死に、廃墟と化そうが…ものともせずに立ち続ける巨大な”樹”何が起きても倒れねェ…人はまた、その樹に寄りそい町を…国を作る」
「?」
「世界にたった数本…その最強の樹の名は、宝樹”アダム”」
「!!」
「木が…何だ?」
話が見えないからか、チョッパーが首を傾げて問いかける。フランキーは話を続けた。
「その樹の一部がごくまれに裏のルートで売りに出される事がある。おれァそいつが欲しいんだが、2億近くするって代物…手が出せずにいた。 ― と、そこへ現れたのが大金をかかえた海賊達…つまり、お前らだ!」
「てんめェ!!おれ達の金でそんなもん買いやがったんじゃねェだろうな!!?」
「まだ話は終わってねェ!いいから聞け!!話を!!おれは昔…もう二度と船は造らねぇと決めた事がある。 ― だが、やはり目標とする人に追いつきたくて気がつきゃ船の図面を引いてた…」
「……!!」
ココロさんがフランキーを見つめている。何か思うところがあるんだろうか?
「おれの夢は!!!その『宝樹』でもう一度だけ!!!どんな海でも乗り越えていく”夢の船”を造り上げる事なんだ!!!」
フランキーが、ドン!という感じで言った。
「『宝樹』は手に入れた!!図面ももうある。これからその船を造る!!だから、完成したらお前ら、おれの造ったその船に乗ってくれねェか!!!?」
「「え?」」
木の話から、そんな話になるなんて誰も思ってなかったみたいね。サンジとチョッパーがビックリしてる。
「じゃ…お前、その船おれ達にくれるのか!?」
「そうだ!おれの気に入った奴らに乗って貰えるんならこんな幸せな事はねェ。元金はおめェらから貰った様なもんだしな」
「すごいじゃない!『宝樹”アダム”』って言ったら確か、海賊王ロジャーの船『オーロ・ジャクソン号』が、その樹で造られてたんじゃなかったっけ?世界一周を果たした唯一の船と、同じ素材ってわけね!!」
「「!!?」」
「おめェ…知ってんのか?」
「私は
「「!!?」」
「そして、アイスバーグさんとあなたがそのトムさんの弟子ってワケよね?次代海賊王になるルフィにとって、最高の組み合わせだと思うわ!!」
「んががが!”参謀”の名はダテじゃねぇんらな。」
「ああ、『オーロ・ジャクソン号』にも負けねぇ、すげェ船にしてみせる!!」
「しょうがらいね…トムさんもお前も…結局同じ職人なんらね…んががががが…」
「そうだな…今なら胸張って死んでったトムさんの気持ちがわかる。」
「お前良い奴だなァ!!貰うぞ!!!ありがとうフランキー~~~~!!!」
「うおー次の島へすすめるぞーっ!!やった~~~~~!!!」
「嬉しい!!ルフィ!!船が手にはいるわよ!!!」
「ぐがーっ」
「私たちがその船に乗るのには1つ…、条件があるわ!!」
「「!!?」」
「ちょっと、イオリ?」
「ルフィに確認しなくちゃならないけど、フランキー!!」
「なんだ!?」
「あなたに、その船のメンテナンスを全て担ってもらいたいの!」
「「!!?」」
「要するに、私たち一味の『船大工』になってほしいのよ!!ルフィはこの島で船大工を仲間にするって言ってたの。あなたが仲間になってくれたら喜ぶと思う。」
「…」
「答えは今じゃなくていいわ!船が完成するまでに決心を固めて、イエスかノーか聞かせて頂戴。」
「…それを断ったら、船にも乗ってくれねぇってのか?」
「さあ?どうかしら…」
「『さあ?』っておめェ…」
「決定はあくまで船長のルフィが下すのよ?私はルフィに提案するだけ!!ただし言っておくけど、ルフィがあなたを仲間にするって決めたら”ノー”と言ってもムダだからね?ここにいる全員がそうだったんだから!!」
「たしかに!!」
― ゾクッ!! ―
「!!?」
私は驚いたように窓の外に目を向けた。
「何!どうしたの?」
ナミがそれに反応して聞いてきたけど…
しまった!!なんてこったい、忘れてた!!!フランキーが来た時点で気づくべきだったのに…!!
まだ間に合う!!今からでも……あ~!!でも、コビーも来てるのかァ……
どーしましょー?
― ドカァ…ン!!! ―
爆音と共に壁が砕けた。
「!!?」
「え!!?」
「何だ…!!!」
「誰だァ!!!」
「お前らか……”麦わらの一味”とは」
あ~あ…来ちゃったよ……。
どこか遠い目をしている私を見て、ナミが言葉を失っている。でも惚けてる場合じゃないのよね?
私はすぐさま身構えて、どんな行動をとられても対処できるように気を引き締めた。
「モンキー・D・ルフィと、
「くかー…っ」
ルフィってば……危機感ゼロね…
あれ?見聞色発現してなかった? あー…無理か… ガープに悪意は無いもんね?
無いからこそ、余計に厄介なんだけどさ…
「海軍…!!!」
フランキーとサンジ、チョッパーが構えてるけど…ムリだと思う。
この人メチャクチャ強いのよ?スピードがまるで違うんだから!
「くかーっ」
「起きんかァ~!!!」
― ドカァン!!! ―
「!!!?」
「ルフィ!!!」
「い!?痛ェ~~~!!!」
「痛ェ!?何言ってんだパンチだぞ今の!ゴムに効くわけ…!!」
サンジが何かに気づいたように私を見る。
武装色?とその目が問いかけている…。私は黙って頷いた。
「愛ある拳は防ぐ術なし!!」
ヒョウの被り物を取って顔を露わにするガープ…。いやぁ~1年ちょっとぶりかしらね?
「ずいぶん暴れとる様じゃのうルフィ」
「げェ!!!じ…じいちゃん!!!」
「えェ!!?じいちゃん!!?」
「イオリ…あの人、もしかして…」
ナミに聞かれて私は頷いた。ナミは知ってるもんね。ルフィの祖父が何者なのか…
「ルフィお前、わしに謝らにゃならん事があるんじゃないか!?」
「……!!」
「この人が…英雄”ガープ”!!」
「ハァ…」
私は覚悟を決めてガープのほうに歩きだした。
「!!?」
ガープがちょっとビックリしてる。
よし!今がチャンスだ!!
こういう時はいきなり謝るより最初にお礼を言ってから謝ると効果が高い…。
「ありがとう!コノミ諸島にちゃんとした大佐を配置してくれて!!ココヤシ村の人たちも喜んでたわ!!」
「「!!?」」
「それと、ルフィと一緒に黙って海に出ちゃってごめんなさい!!」
私がルフィを連れ出したわけじゃないから、謝るのはちょと違う感じがするけれど、1年ほどガープの事を避けてたし、なんか私を探してたみたいだからとりあえず謝っといた。
しっかりと、腰を90度に曲げて頭を下げる。顔を上げた時に見たガープの顔は晴れやかだった。
「やはりイオリ…お前じゃったか。ココヤシ村の駐在ゲンさんから最初に電伝虫があったときはビックリしたぞい?まったくホットラインを何だと思っとるんじゃ!?おかげで月一でココヤシ村まで飲みに行く羽目になったわい!!」
そう言って、ガープは嬉しそうに笑っていた。飲み友達ができてよかったわね?
「ちょっとイオリ!あんたココヤシ村と連絡取ってるの?」
「連絡があったのよ。ちゃんとした大佐が配属されたってね。なんでも本部の大佐らしいわよ?ガープが飲みに行く事になってるみたいだから、そういう事になったんじゃない?」
「…」
「ちなみに連絡をくれたのはノジコよ。私の番号教えてといたから。」
「いつのまに…」
私は肩を竦めて見せた。そして、小さな声で続ける。
「実のところ、これまで立ち寄った島では同じようなことをしてるのよ?何か変わった事があったら連絡をしてほしいって言ってね…。どこかで起こった出来事がどんなふうに関わってくるかはわからないけど、情報は収集しておいて損はないからね。ちなみにカヤは医者を目指してるそうよ。」
「抜け目ないわね…」
「で、お前はどうなんじゃ?」
ガープがルフィに詰め寄る。
「てめっ!!イオリ!!きったねェぞ!!」
― ゴン!! ―
ルフィのたんこぶの上にさらに鉄拳が落ちる
「痛っっってェ~!!!」
「なんじゃお前は!!ちゃんと謝ったイオリになんてことを言うんじゃ!!」
「だってズルいじゃんかよ!!なんだってじいちゃんはイオリに甘ぇんだ!!」
「当たり前じゃ!!イオリはいい子で、お前達がハチャメチャなんじゃろうが!!」
お前達…っていうのはエースとサボも入ってんのかな?
誰も気にしちゃいないみたいだから別にいいんだけどね?
でも、ハチャメチャなのはお互い様のような気がする…
私からしたら、むしろガープのほうが酷いんだよ…