イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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06-191話:スリラーバーク

ヨホホホホ!!!ハイどうもみなさん!!ごきげんよう!!」

 場所をサニー号の甲板へと移し、ブルックが一味のメンバーに挨拶をしていた。

 

「私、この度この船でご厄介になる事になりました、”死んで骨だけ”ブルックです!!!どうぞよろしく!!!

 

「「ふざけんな!!!何だコイツは!!!」」

「ヨホホホ、おやおや手厳シィ―!!」

 ゾロとフランキーが揃ってツッコみ、ナミとサンジは項垂れている。

 ウソッチョは震えながら十字架を構えている?いやいや、吸血鬼じゃないから…。

 ルフィは満面の笑顔。

 実は私も笑顔です。

 

 普通にしてるのはロビンくらい?

 

「ガイコツだーっ!!!」

「ガイコツが喋って動いてアフロなわけがねェ!!!これは夢だ!絶対夢だ!!!」

「ホントか!?よかった夢かー!!」

「悪霊退散、悪霊退散!!…」

 

「おや、美しいお嬢さん!!パンツ見せて貰ってよろしいですか?」

「やめんか!セクハラガイコツ!!!」

 ロビンに対してのブルックの発言に、ナミがブーツを投げつける。

 

「ヨホホホホ」

 

「おいルフィ!!こいつは何だ!!!」

「面白ェだろ?仲間にした!!」

「したじゃねェよ!認めるか!!!」

 ゾロが怒ってるけど……。まぁ当然か。

 

「おめェらは一体何の為についてったんだ!!?こういうルフィの暴走を止める為だろうが!!!」

「「面目ねぇ」」

 

「まったくイオリ!おめェがついていながら…」

「何言ってんの!ブルックは楽器が演奏出来るのよ?

 

……それが…なんだ!?」

 

「やっと…やっと……!音楽家代理が返上できるのよ!!

 

「「「お前の目的はそれかァ!!」」」

 ナミとサンジ、さらにはゾロとウソップにそろって突っ込まれたけど…、

 あんた達にはわかるまい!!

 やっと…やっと”代理”が全部なくなる喜びなんて!!

 

 長かった……

 

 フーシャ村を出航してから48日目にして、やっと……

 やっと、代理が全部なくなるのですよ!!

 本職万歳!!

 

 あぁなぜに…こんなにもうれしい出来事だというのに…喜びきれない自分が悲しい……

 なんてこったい!って感じだよ!!

 

 

「ヨホホホ!!まあ、そう熱くならずに!!!どうぞ船内へ!!夕食にしましょう!!!」

「てめェが決めんな!!!」

 

 *--*--*--*--*

 

「いやいや、何と素敵なダイニング!!そしてキッチン!!これは素晴らしい船ですね!!ヨホホホ!!」

「そうさ、スーパーなおれが造った船だ!おめェなかなか見る目あるじゃねェか!」

「オイ!馴れ合うなフランキー」

 

「しかしお料理の方、楽しみですね。私、ここ何十年もろくな物食していないので…もう、お腹の皮と背中の皮がくっつく様な苦しみに耐えながら毎日を生きて来たのです。お腹の皮も背中の皮もガイコツだからないんですけども!!!ヨホホホホ!!!スカルジョーク!!」

「「…」」

 どっ!!

 と、手を叩きながらウケているのはルフィだけ!という状況…。

 四面楚歌でもお構いなしなKYっぷりは、まさにガープ譲りか?

 

 当のブルックは気にしてないみたい。そりゃそうよね…。50年だっけ?一人で霧の中を彷徨ってたのは…

 きっと、誰かと一緒にいられるだけで嬉しいんだろなぁ…

 

「 ― 私、紳士ですので、”食事を待つ” そんな何気ない一時が大好きで…」

 言ってるそばから、ソワソワ感が満載ね?見た目は違うけど、なんだかルフィを見てるみたい…。

 

「ディ-ナ~~~アッ♪ディ-ナ~~~アッ♪」

「メーシ!メーシ!!」

 カンカンカカン♪

 

「カモンッ!!」

 

「うるせェ黙って待ってろ!!!」

「料理長!!ドリンクは牛乳でお願いしますよ!!」

 

「ところでコロボックル」

「あ、ブルックです私、え~と…あ、お名前まだ…」

 

「おれはルフィだ!ところでお前、一体何なんだ?」

 

「どんだけ互いを知らねェんだお前ら!!!」

 

 

「さァ!ガイコツを追い出すのは後回しだ!ひとまず食え!」

 

「んまほー!!おいブルックいっぱい食え!!サンジのメシは最高だぞ!!」

 

「私、何だか…!!お腹より胸がいっぱいで…」

「…」

 

「お嬢さんのお肉、少し大きいですね…替えて貰ってもよろしいですか?」

 ロビンの肉と自分の肉を比べて、ブルックがもの申す!!

 胸がいっぱいでも腹は減ってるって事だね?

 

「おかわりあるから自分の食えよ!!!」

 サンジに怒られてますけど…

 

 でもまぁ、みんなブルックの存在には慣れてきたみたい?

 ウソッチョはまだ無理っぽいけど…

 

 

 食事が終わると、ブルックは自分の事を少しだけ話した。まずは悪魔の実の事だ。

 

「ヨミヨミの実…!?」

「やっぱり悪魔の実か…」

 

「そうなのです!私、実は数十年前に一度死んだのです!!」

 

「まず、顔を拭けよ。どう食ったらそんなに汚れるんだ?」

 サンジの疑問はもっともだと思う。顔からナプキンまでメチャクチャ汚れている。

 見てなかったからわからんけど、久しぶりの料理が嬉しくて、こすりつけてたりするんだろうか?

 

「ヨミヨミの実とは”ヨミがえる”。つまり『復活人間』というわけで、二度の人生を約束される、なんとも不思議な能力でしてね!!」

 話しながら、爪楊枝でチッチッ、シーハーシーハーと歯を掃除…

 

「私その昔、海賊だったのですが、ゲップ!!あ、失礼…。私の乗っていたさっきの船で仲間達と共にこの”魔の海”へ乗り込んで来たのですが…”ブッ!!”あ、失礼… 」

 

 ゲップやおならもお構いなしだ。国や地域によってマナーは異なるけど、これら全てがOKのところはないと思う。

 

「てめェにマナーってもんを、たたき込んでやりてェ…!」

 サンジの意見は誰もが同意するところだろう。でもまぁ、許容範囲だ。

 それに原作知識だと、本来のブルックはこんなにひどくない。

 おそらく今は、うれしくてはじけちゃってる。そんな状態なのだと思う。

 

「運悪く…恐ろしく強い同業者に出くわしてしまい、戦闘で一味は全滅。当然、私もその時死んでしまったのです!!生きてる間は、ただカナヅチになるだけのヨミヨミの能力でしたが、ついにその日!実の能力が発動しました。私の『魂』は”黄泉の国”より現世に舞い戻ったのです!!すぐに自分の死体に入れれば甦れる筈が、私の死んだこの海はご覧の様に霧が深くて迷ってしまい、霧の中、魂の姿でさ迷い続けること一年!!自分の体を発見した時にはなんと”白骨化”していたのです!!!びっくりして目が点になりましたよ。目玉無いんですけども!!!ヨホホホ!!!」

 

「マヌケだな~!ゾロみてェな奴だな!なはは…」

「あのな…」

 

「それで喋るガイコツの完成か!白骨でもちゃんと蘇っちまうところが”悪魔の実”の恐ろしい所だな!」

「もう、半分呪いじゃねェのか?その”実”はもう役目を果たしてカナヅチだけ残ってんだろ?」

 フランキーとサンジが言うけれど…

 悪魔の実はね…?能力者の”ソウゾウ”(りょく)如何によって、出来る事は広がるのですよ!覚醒だって1回だけとは限らない!!

 

「しかし、白骨死体にふつうは毛は残らねェよな…?ガイコツがアフロって…」

「毛根、強かったんです!!」

 ゾロの疑問にブルックがキッパリと言い切った。

 

「まぁ…何でもいいが…」

 

「じゃ、お前オバケじゃねェんだな!?つまり!!人間なのか?人間じゃねェけど!!」

「ええ、私オバケ大嫌いですから!!そんなものの姿見たら泣き叫びますよ私!!」

「あんた鏡見た事あるの?」

 ナミが手鏡をブルックに向ける。

 

ギャー!!やめて下さい鏡は!!」

「!」

「?」

 

「え!?おい、ちょっと待て!!」

 ウソップが声を荒げてブルックを抑え込む。そして、チョッパーと一緒に鏡を覗き込んだ。

 

ギャアアアアアア、鏡は…!!!」

「!!」

 

「お前、何で…!!鏡に映らねェんだ!!?」

 

「ほんとかー!!?スゲーな!!!」

「……」

 

「バ…吸血鬼(バンパイア)か!!?」

 ルフィと私、ゾロとロビンはそのままに、他の連中がブルックから距離を取る。

 

!!?い…!よく見りゃお前…”影”もねェじゃねェか!!!

「うわー!!!本当だ!!!お前は実は何者なんだー!!!」

 

「……」

「……」

 

「…ズズズ」

 ブルックがお茶をすする…

 

「いや、落ち着くとこかよ!!!」

「こっちは騒いでんだぞお前の事で!!!」

 

「全てを一気に語るには…私がこの海を漂った時間はあまりに長い年月…!!!私がガイコツである事と…影がない事とは全く別のお話なのです。」

 

「……」

 

「続く…」

「話せ!!今っ!!!」

 

 

「”影”は…数年前、ある男に…奪われました。」

「…奪われた?」

 

「マジかよ…」

 

「「…”影”を…?」」

 私とロビンは、ある男を思い浮かべていた。

 

「お前が動いて喋ってる以上、今更何言おうと驚かねェが、そんな事があんのか?」

「あります。”影”を奪われるという事は、光ある世界で存在できなくなるという事で、”直射日光”を浴びると私の体は消滅してしまうのです!!同じ目に遭った誰かが太陽の下、消えていく所を目の当たりにしました…!!それはもう、身の毛もよだつ光景でした。ガイコツなのに…。”光”で地面に映るハズの”影”がない様に、鏡や写真などに私の姿が映る事もありません!つまり私は光に拒まれる存在で!!仲間は全滅!!”死んで骨だけ”ブルックです!!どうぞよろしく!!ヨホホホ!!」

 

「何で明るいんだよ!!!さんざんだなお前の人生!!」

 

「なのに”コツコツ”生きてきました!!骨だけに!!!」

「「うるせェよ!!!」」

 

「ヨホホホホホホホ!ヨホホホホホホホ!」

「おいおい、どうした大丈夫か」

 

「今日はなんて素敵な日でしょう!!!人に逢えた!!!

「「「!」」」

 

「今日か明日か、日の変わり目もわからないこの霧の深い暗い海で、たった一人舵のきかない大きな船に、ただ揺られてさ迷うこと数十年!!私、本っっ当に淋しかったんですよ!!!

「……!!」

 チョッパーが、『淋しかった』のワードに共感してる…

 

「寂しくて、怖くて…!!!死にたかった!!!」

 その言葉に、サンジ、ウソップ、ナミが真剣な顔になった。

 

「長生きはするものですね!!!人は”喜び”!!!私にとってあなた達は”喜び”です!!!ヨホホホ!!!涙さえ涸れていなければ泣いて喜びたい所!!」

「……!!」

 

「あなた方が私を仲間に誘ってくれましたね!!本当に嬉しかったのです。どうもありがとう!

 ルフィが笑ってる。私はちょっと微妙な顔をした。

 

「だけど、本当は断らなければ!!」

「「おい!!何で(だ)よ!!」」

 

「先ほども話した様に、私は”影”を奪われ、太陽の下では生きていけない体!今はこの魔の海の霧に守られているのです。あなた方と一緒にこの海を出ても、私の体が消滅するのも時間の問題。私はここに残って”影”を取り返せる奇跡の日を待つ事にします!!ヨホホホ」

 

「何言ってんだよ水くせェ!!!だったらおれが取り返してやるよ!!!そういや誰かに取られたっつったな!誰だ!!?

 

「……!!」

「どこにいるんだ!!」

 

「…あなた本当にいい人ですね。驚いた!! ― しかし、それは言えません」

「まぁ、予想は付くけどね。」

 かなり大きなヒントも出てたしね?

 

「本当か!誰だよイオリ!!」

 

「ん…まぁ、私も確証があるわけじゃないんだけど…」

 

「いけません!!さっき会ったばかりのあなた達に、”私の為に死んでくれ”なんて言えるハズもない!」

 

「…なんだか、このやり取りって……とっても覚えがあるんだけど…?」

 ナミが怪訝な顔でつぶやいた…

 

「敵が強すぎるって事か?減るもんじゃなし、名前を言うくらいいいだろ?」

 

「いいえ、言えません…。当てもないのです!!ヨホホホ…私の第二の人生が終わるまでに会えるかどうかもわかりません。もし次会った時にはと…私も戦いをハラに決めていますが」

 

「イオリ!!おめェならそいつがどこにいるかわかんじゃねぇのか?」

「さぁね?…でも、探す手間は省けるんじゃないかしら?」

 

「え!?それはどういうギャアァアアアァア!!!

「!!?」

「おい、何だどうした!!」

 

「ゴ…ゴースト~~~!!」

「!?」

「うわー!!何かいる-!!」

 

 ― ズズン!! ―

 

「わっ!?」

「何の振動だ!!?」

 

「何て事!!まさかこの船はもう『監視下』にあったのか!!?」

 ブルックが外に飛び出す。私もそれに続いた。

 

「やっぱり、あの樽が…?」

「!!?…見て下さい!!前方が門で閉ざされました!!今の振動はコレです!!」

 

「!!?」

 目の前に唇と歯のような形の壁が見える…。あれが門?

 

「これは門の裏側!!…という事は!!船の後方を見て下さい!!!」

「……!!!」

 

「あなた、さっき『樽』って言いましたね?もしや「流し樽」を拾ったのですか?」

「あ…!!拾ったぞ!!!」

 

「お察しの通り、それが罠なのです!!この船はその時から狙われていたのです!!!」

「狙うって!?どういう意味だ!?この船は今ずっとここに停まってたのに…」

 

 船の後方を見る私たちの目には霧の中に島が見えていた。

 

「何で”島”がそこにあるんだよ!!!」

「これは海をさ迷う”ゴースト島”…!!!『スリラーバーク』!!!!

「!!!?」

 

「…」

 なんかねェ…

 スリラーバークに出くわしたら私、もっと驚くと思ってたんだけどな?

 

 いやぁ……W7でアイスバーグさんから島を船にするって話聞いちゃってさ!

 彼が想像している映像がすごいのなんのって!!あれ見ちゃったら、こんなのなんちゃねェわ!!

 イメージで言うと『さらば宇宙戦艦ヤマト』に出て来る『都市帝国』みたいな感じ?

 (あ……これって、古すぎる?)

 

 なんでも私が教えた金輪継のおかげで、島をまるごと船にするって構想が、現実味を増したんだって!!大きな木を集めないでも船が造れそうだって喜んでた。

 

 

「さ迷う島…!?”記録指針”は何も反応してないわ…!!」

「そうでしょう。この島は遠い”西の海”からやって来たのですから!」

 ”偉大なる航路”の島じゃないから、磁気を帯びておらず”記録指針”には影響が無いって事じゃないかしら?

 まぁ、ここで記録が書き換えられても困りもんだし…。念のため、予備は収納貝に入れとこうっと!!

 

「…!!しかし、今日は何という幸運の日!!人に会えただけでなく!!私の念願まで叶うとは!!ヨホホホホ!!」

 タンッ!!と後方の2階デッキから船首へとブルックが飛んだ。20mほど飛んだんじゃないかな?

 

「うお!!何て身の軽さ…!!」

 サンジが驚いてるけど、あんたは月歩で飛べるでしょう?

 

「ヨホホホ!!!そう!!”死んで骨だけ”軽いのです!!あなた方は今すぐ後ろにそびえる門を何とか突き破り脱出して下さい!!!絶対に海岸で錨など下ろしてはいけません!!!私は今日!!あなた達に出逢えてとても嬉しかった!!おいしい食事!!一生忘れません!!!ではまた!!ご縁があればどこかの海で!!!」

 

「おい!!待てブルック!!」

 ブルックが船首から海へと飛び降りる。

 

「おいおい、お前能力者だろ!!飛び込んでどうすんだよ!!!」

 

「!!?」

 

「へぇ…」

 

「ヨホホホホ」

「海の上を走ってる!!!」

「うおーすげェ!!!」

 

「あれくらい、おれだって出来るぞ!!」

 サンジは月歩が出来るんだからそりゃあね!

 !!

 って事は、ブルックも仕込めばすぐに月歩出来るようになるんじゃね?

 

「…!!と…とにかくルフィ!!あいつの言う通りにしましょう!!何が起きてるのかわからないけど!!完全にヤバイわこの島っ!!」

 ナミ、あんた…。いいかげんにルフィの思考回路がわからないかな?

 

「…ん?何か言ったか?」

 満面の笑みで、わくわくそわそわしながらルフィが振り向いた。

 

「「行く気、満々だァ―!!!」」

 その顔を見て、3人(ウソップ&チョッパー&ナミ)はショックを受けていた。

 

 

 

 

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