イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

21 / 385
 結局、原作通りブルージャムに目を付けられることになった私たち。
 サボはダダンのところでエースやルフィと暮らすようになった。

 ここに住んだら?と言ったのだけれど、断られちゃった。
 ※まだ、普通に接してもらえなかった時だからかな?

 まぁ3人とも今では結局ごはんを食べに来るんだけどね?







01-19話:それぞれの夢

 修行と称して、ふだんルフィたちは3人で1日15戦してる。なんで4人じゃないかって?だって私は教官ですから。

 

 原作だと1日100戦だったけど、効率が悪いと思って午前中に一人10戦(相手を変えて5戦ずつ)行い、午後は私が基礎や技や訓練方法などを教えている。教わったことを反芻(はんすう)して翌日の実践で試すという感じで日々を過ごしていた。

 実践で試すことで改善点を自ら見つけ、うまくできない事や、わかりづらいところ。こんなことをしてみたいなどという事を私に聞いて、技に磨きをかけていく。そんな感じ。

 私もやりたい事があるから、時には原作のように試合を多く行う事もあるようだけど、午後には個々に訓練していることがほとんどだ。

 

 対戦結果はほぼ原作通り。3人ともに強くなっているのだから当然結果も変わらない。

 エースとサボが戦うといい勝負になる。でも少しエースが競り勝つ感じ。ただし戦術を駆使できる場面設定を行うと途端にサボが強くなる。体を使う事に長けるエースと頭を使う事に長けるサボ。そんな感じだ。

 ルフィは今のところ、エースにもサボにも勝てていない。ルフィって、モノにできてないゴムゴムの技を使おうとして自爆してるんだよね。せっかく教えた技も基本をすっとばしてゴムゴムの技に組み込もうとするから結局使えていない。

 まぁとにかく、それなりに充実した日常を送ってました。

 

 そんな中、新聞にその記事が載った。

 『天竜人によるゴア王国訪問』である。

 

 ひと月ほど前、カノンはCP0からこの話を聞き、カザマを介していち早く知らせてくれた。

 だからダダン家で取ってる新聞を気にして見てたんだよね。

 

 世界政府の視察団が世界を回っているらしく、東の海なら安全だろうからとジャルマック聖が乗り込んだそうな。うざいから天竜人なんて乗せんじゃねェよ!とか思うんだけど、各国の王族からは光栄だとか言って歓迎されているらしい。

 視察団に天竜人が同行する事は何も問題ないので、それをやめさせることも当然できない。

 結局のところ放置するほかなく、変わりない日常を過ごしていた。

 

 そして……。

 

「食い逃げだー!!」

 

 今日も今日とて食い逃げ(もどき)に精を出す悪ガキ4人組。あれからまた月日が経ち、私たちはすっかり悪童4人組と認識されていた。ルフィもしっかり染まっちゃってるよ!

 

 食い逃げの頻度はせっかく減っていたのだけれど、私の知らないうちに、いつの間にやら増えていた。

 (たぶんあれね。しばらく(うち)に食べに来なくなってたのが原因だと思うわ。)

 後払いでお金はきっちり払っているけど、什器や窓を壊して逃げるもんだから周りにも迷惑なんだよ。

 傍から見ている限りだともどきには映らないだろうから悪童と呼ばれるのも致し方なしだ。

 

 そんないつも通りのある日のこと。ついに来るべき時がやってきた。

 

「サボ!? サボじゃないか、待ちなさい! お前生きてたのか!」

 

 逃走中の私たち……いや、サボに声を掛けた1人の男。でっぷりとした中年親父だ。

 ギクッと表情を引き攣らせるサボを見て、あぁ、あれがあの憎たらしい貴族親父か、と納得した。

 けれどとにかく、その場は他人のフリで逃げ切った。

 

 で、当然こういう状況になるわけですね。

 

 おれたちの間で隠し事があっていいのか、とサボに詰め寄るエースとルフィ。私の事は放っておいてくださいとばかりに、すこし離れて3人を見守っていた。

 

 サボは言いにくそうにしてる。当然だ。ウソを吐いてました!なんて告白するのには勇気が必要だもんね。

 私は出会った時にその事を知っている。サボと約束したから黙っているけど、この状況なら私から話してしまったほうがいいような気がする。

 でも、知っていたという事をそのまま打ち明けるのはちょっとまずい。きっとエースは私が知っていたのに自分が知らなかった事にショックを受けてしまうだろうからだ。

 

 だから…

 

「……サボって、貴族の子なんじゃないの?」

 私はそれを知らない事として話を切り出した。それまで黙ってた私が口を開いたことで、注目がこっちに集まる。

 

「どうして……?」

 サボの顔がちょっと青くなってる。何で言うんだ的な感じも見て取れる。でもこのほうがいいでしょ?

 

「私は元々、サボがゴミ山出身の孤児だとは思ってなかったわよ?だって、教養があったから。」

 最初から孤児だと思ってませんでした的な感じで、苦笑と共に言ってみた。

 ルフィなんて普通に村で生活してたのに、ダダンのところに来た時は読み書きがなんとかできるレベルだった。

 まぁ、それは本人が勉強をしなかったからかもしれないけどね?

 

 詰め込みではあっても日本における識字率は100%といわれている。けれどその感覚は、この世界では通用しない。

 決して低いわけではないだろうけど、100%なんてあり得ない。特にゴミ山……グレイターミナルは、スラムよりも酷い生活環境だ。そこに成長してから流れ着いた大人ならともかく、子ども、それも孤児が字を読めるなんて不自然だ。

 

 そんな中サボは、エースやルフィよりずっとしっかりとした読み書きができていた。サボは他にも、航海術とか医術とか、広く浅くだけど色んなことを知ってた。冷静に考えれば不審な点がいくつもある。私がそう思っていたとしてもおかしくないわけだ。

 

「だから、言ってた経歴は事実と違うんだろうなって思ってた。で、さっきの男は身なりから見て貴族。口振りからして、アレはサボの父親でしょ。違う?」

 

「違わ……ない」

 サボは力なく項垂れた。

 

「気付いてたなら、何で言わなかったんだ?」

 少し疑いの目で私を見るエース。おれの親父の事と同じで知ってたんじゃねぇのか? って感じかな?

 でも言わない。サボとはすぐに友達になったので、素性なんて知らなかったもん!と言わんばかりにしらばっくれた。

 なにより、

 

「貴族のおぼっちゃんだろうとゴミ山の孤児だろうと、サボはサボだからね。」

 そうとしか言い様がない。そもそもエースにも言った。親が誰であろうとエースはエースだって。

 

「…ゴメン、ウソ吐いてた」

 俯いて唇を噛み締めながら謝るサボ。

 それを聞いた3人の反応は大きく違ったけれど。

 私は当然、知ってたし、そもそも気にしてないから変化ナシ。ルフィも謝ったならいいとあっさり許した。

 反対にわだかまりを残したのはエースだった。

 

「貴族の家に生まれて、何でゴミ山なんかに……」

 本当にショックなのはそこじゃないだろうに…。

 警戒心の強い人間ほど、1度信じた人間にはとことん気を許す。だからこそ、その相手に隠し事をされたのが悲しいんだと思う。

 もしサボがウソを吐いたのがくだらない理由だったりしたら、しばらくヘコみ続けるだろう。でもサボがゴミ山に来たのは、貴族としての人生に耐えられなくなったからだ。

 サボが語る高町での生活。地位や財産にしか興味のない両親、王族の女と結婚できなければクズ扱い。

 私が言うのはアレだけど、もしも聖地に生まれていたらサボよりはまだましか…と思っていたかもしれない。

 

「お前らには悪いけど、おれは両親がいてもずっと1人だった」

 そうね。孤独というのは何も周りに誰もいないって意味じゃないからね。

 

 サボの告白でエースが納得したから、ぎこちなさが消えたのはよかった。

 結局のところサボが求めてるのは自由。だから海賊に憧れている。自由に世界を見て周り、それを伝える本を書く。それがサボの夢。

 

 その発言に触発されたのか、エースとルフィも自身の夢を語った。

 エースは名声を手に入れて世界に自分を認めさせる事。

 

 ねぇエース?本当に、本気でそう思ってる?

 

 そういう想いが強いのは解るんだよ。けどねぇ…。本当に欲しかったのは名声なんかじゃなかったって。原作で死ぬ直前に言ってますけど、私に言わせりゃ違和感が半端ないんだよ。

 何度、頭の中を覗いてやろうかと思ったか知れない。けれど私のルールに則りそれはしなかった。

 一緒に過ごしてみて、エースはそれに気付いていると感じている。ただそれを素直に認められないってだけで…。

 

 だからこそ余計に困ったものなんだけど、どうにかならんもんかね?

 

 私は小さく溜息を吐いた。

 

 

 ルフィの夢は解るだろう。海賊王だ!!うん、原作通り。

 でもその後のセリフには呆れるというかなんというか…

 

「「は??」」

 エースとサボは呆れた様な声をあげていた。

 

 3人は知らないだろうけど、それが可能ならロジャーが既にやってたはずだ。つまり、それは無理って事。

 

 言葉の前半部分を無視すれば実現の可能性は上がりそうだけど、実現したらしたで私にゃ混沌(カオス)な世界が見えてくるよ。

 ルフィ(こいつ)が考えるわけないしなぁ…。どうなっちゃうんだろう?

 

「なっはっはっはっはっは」

「…お前は…何を言い出すかと思えば…」

「あははは面白ェなルフィは!!おれお前の未来が楽しみだ!!」

 

 ……ん? あれ、私見られてる? 私も言わなきゃいけない?

 しかたがないな。

 

「私は、とりあえず世界最強になる事…かな?」

 

「とりあえずで世界最強って…」

「イオリならなれそうだけどな。」

 エースとサボはずっと私が鍛えてきたからねェ…。手加減がかなり上手(うま)くなりましたよ。

 

「とりあえずってどういう事なんだ?」

 ルフィが聞いてきた。答えておきましょうかね。

 

「最初は単に死にたくないなって思ってただけなんだけどね?でも、いろんな人と会って知り合いになってく内に、守りたいなって思っちゃったのよ。でもそれは簡単な事じゃないでしょ?ただ力が強ければいいって事でもないし。だから”とりあえず”なのよ。もちろん道具じゃなく私自身が強くなる事で実現するつもり。 あとはそうねぇ…、サボと少し被るけど、世界を見て回れたらいいかな?色々と面白いものがあちこちにありそうだし。でも別に、海賊団を結成したいとかは思わないかな。海賊は楽しそうだとは思うけど、船長とかには興味ないし。」

 

 守りたいと思うものがたくさんできたからね。でも…本来の立ち位置的にはラスボスサイドなんだよねェ~。

 世界最強になったらルフィ達が苦労しそうな気がするけど。というかラスボスが勝つ未来が見えてしまう。

 

 最悪裏切っちゃえばいいだけの事とは言え、物語的にはどうなんだろう?

 

 

「私はともかく…3人とも船長になりたいってこと? どうするつもり?」

 原作でも言ってたよね。問いかけてみると3人は顔を見合わせた。

 

「それは確かに……」

「サボ、お前はおれの船の航海士かと」

「え~、みんなおれの船に乗ろうぜー?」

 

 あ~ぁ、難しい顔しちゃって…って?

 

「何で私を見てんの?」

 そう、3人揃ってガン見してきてます。なんで?

 

「イオリ!お前は誰の船に乗る!?」

「おれの船だよな!?」 

「おれだろ!?」

 

 …は? あんた達、何言ってんの?

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。