「…わかった、首は…やるよ…!ただし身代わりの…このおれの命一つで、勘弁してもらいてェ…!!!」
「!」
「…まだたいして名のある首とは言えねェが…!! ― やがて世界一の剣豪になる男の首と思えば取って不足はねェ筈だ!!!」
「……そんな野心がありながら…この男に代わってお前は死ねると言うのか?」
「…そうするほか…今、一味を救う手立てがねェ…!!!船長一人守れねェでてめェの野心もねェだろう…!ルフィは、海賊王になる男だ!!!」
「……」
「…待て待てクソヤロー」
「!」
「…おめェが死んでどうすんだよ…!!ハァ…!!てめェの野望はどうした…バカ!!…オウでけェの…!!」
「!」
「オイ」
「こんなマリモ剣士よりおれの命とっとけ…!!今はまだ海軍はおれを軽く見てるが後々この一味で最も厄介な存在になるのは…この”黒足のサンジ”だ。さァ取れ…ハァ…こちとらいつでも身代わりの覚悟はある…!!ここで”死に花”咲かせてやらぁ…!!!…オイ、みんなには…よろしく言っといてくれよ…悪ィがコックならまた探してくれ…!!」
- ドスッ!! -
「!!!」
ゾロが柄で、サンジの脇腹を払う!
「……!!…てめェ…」
サンジがゾロの肩をつかむ…が、すぐに力尽きてその場に崩れ落ちた。
「後生の頼みだ…」
「…」
「却下!!それはダメよ!」
「「!!?」」
ゾロと…くまも驚いているようだ。揃って私の方を向く。
「船長の代わりは副船長と相場が決まってるの!!懸賞金もほとんど同じ…。私なら、当然不足はないでしょう?」
「おめェ!!バカなこと言ってんじゃねぇ!!」
「くれない…イオリか…。なるほど、確かに貴様なら政府の誰も文句を言わんだろうな…!」
「おい待て!!身代わりは…」
「あんたの野望は、あんたひとりのもんじゃないでしょうがッ!!」
「!!?」
「あんたがそれを諦める事を…私は絶対に認めない!!」
「ぐっ!!」
ゾロが膝から崩れ落ちる…
イオリはフッと表情を緩めた。そしてゾロを見ながら呟いた。
「誰かが犠牲になるんなら…私が一番適任よ!そもそも私は本来ココに…………それに…幸いにもここで…必要なメンバーは”全部”そろったからね……」
「な…何言ってんだ、お前…!!?」
「……」
くまが倒れている一味のメンバー達を見回す…
「…これで、”麦わら”に手を出せば、恥をかくのはおれだな。」
「恩にきるわ!」
「…おれがやる事を信じろ、約束は守る。]
「その点は心配してないわよ!私はあなたの素性を知ってるの!立場も理解してるから遠慮もいらないけどね!!」
「!!?…イオリ、おめェ…まさかこいつも知り合いってんじゃねェだろうな?」
「残念ながら知り合いじゃないわ…。会ったのも今日が初めてよ。」
「…なるほどな…。さすがは”参謀”の名を冠するだけの事はある…。ならば遠慮はすまい!!”くれない”!お前には地獄を見せる…!!!」
くまがルフィを持ち上げる。
「!!?」
「もとより…覚悟の上よ…!!」
この先に何があるのか、私…知ってるもの!!
くまが、ニキュニキュの掌をルフィにあてる。すると…
― プクー… ―
ルフィから何かが放出された。
ポンッ!!
という音と共に、大きな肉球の形をした何かがそこに現れた。
「今…こいつの体から弾き飛ばした物は、”痛み”だ。そして”疲労”…モリア達との闘いで蓄積された全てのダメージがこれだ。身代わりになるというなら文字通りお前がこの苦痛を受けろ!ただでさえ死にそうな今のお前がこれに耐え切る事は不可能。死に至る」
「…」
「おれにも…試させろ!!」
「こらっ!!」
「…試してみろ…」
くまが大きな肉球から小さな肉球を取り出しゾロに飛ばす。それがゾロの体に入った途端…
「うわっ…ゲフッ!!!…オ…ァ…ぐわあぁぁぁぁぁ!!!」
ゾロが悲鳴をあげて、口から血をふき倒れ込む。
「ゲフ!ゼェゼェ…ガハッ…ハァハァ…」
「…バカ…!もう、余計な事しないでよ…!まったく…怖くなっちゃったじゃない!!」
「…辞めるか?」
「ハァ…辞めないわよ!!」
私は辺りを見回した…。
ゾロがあれだもんねェ……。さすがに声を上げないでいられる自信無いわ…
「場所だけ変えさせてくれる?…ここで叫び声をあげるのは、さすがに忍びないんでね…」
みんなから離れた場所に肉球を移動してもらった。そこにはゾロもついて来た。
「ついて来なくていいのに……」
私は嫌そうな顔をゾロに向けた。
「身代わりが許されねェんなら…せめて、見届けさせろ!!」
「…はいはい…ハァ…。そんじゃ、いくわよ!!」
私は肉球に手を入れた
「いい仲間を持ってる…さすがはあんたの息子だな…ドラゴン…。しかし、あの
…声一つ上げやがらねェとは…
「…ねぇ……肉球…なくなった?」
「お前…まさか!…見えねェのか?」
「目の前が…真っ赤…になっちゃって…さ…」
「…終わった。全部消えたよ…」
「そう……」
サンジが駆けつけて来るのがわかる。こんな状態でも見聞色は使えるらしい…
「!いた…!!!おどかしやがって…!!?」
ゾロに近づこうとしたサンジが私に気づく。
「イオリちゃん!?オイ!マリモ!!どうなってんだこりゃ!!あの七武海はどこに…!!」
さらに近づき、私の足元の血を見て驚いている…
「なんだこの血の量は!?イオリちゃん!しっかりしろ!!マリモォ!!アイツはどこだ!!!ここで何があった…!!?」
「……なにも!!!…な゛かった!!」
ゾロのセリフだけど、代わったからには言っておかないと…ね?
「…」
「んなわけねェだろ!!おいマリモ!!こりゃあどういう事だ!!なんでイオリちゃんが!!」
「…こいつが『なにもなかった』っつってんだ。…なにも…なかったんだよ…」
「サンジ……私は…ね……副船長…なのよ!!…わかる…でしょ?」
「わ…わかんねェよ…なんだってイオリちゃんが…」
「…」
「…ごめん…もう無理…ちょっと寝る……」
倒れ込んだイオリをゾロが支える。
「ぐっ!!?」
すでにイオリの意識は無い…
「イオリちゃん!!」
「!!?…こ、このバカ女!!こんな時まで…てめェ!何やってやがる!!!」
「てめェ!!マリモっ!!!イオリちゃんに何てこと言いやがる!!!どけっ!!おれが支える!!!」
ゾロを押しのけ、サンジがイオリを抱える。
「うぉっ!!えっ…!!?」
「わかったかグルマユ!!…こいつはこんな時まで訓練してやがったんだ!!一味が…いや、
「な…何だよこれっ!!100kg以上あるんじゃねェのか…て…てめェは知ってたのか?イオリちゃんがこんな重り着けてるってこと…」
「…ああ…昔、こいつから同じ物をもらったからな…訓練の時に着てたのは知ってた…」
「ウソだろ…!!?おれ達はそんなハンデのあるイオリちゃんにも勝てねぇって事か!!?ってか、このハンデであの七武海と互角にやり合ってたなんて…この娘はどんだけ強ェんだよ?」
「!!…それだけじゃねェみてェだ…」
「ま…まだ何かあんのか?」
「今気づいたが…その腕輪な…たぶん海楼石だ。」
イオリの左腕にはめられている腕輪を指さしてゾロが言う。
「海楼石!?能力者の力を奪うっていうあれか?」
ゾロが黙ってうなずく
「ルフィも同じ形のヤツを着けてるが…色が全く違う。」
「ルフィは、力が1/4になるとか言ってたっけ?」
「ああ…多分コイツのはそれ以上だろうな…。まったく…信じられねェ事だがよ…」
「…」
「政府が気づかねェのも無理はねェ…!実の所、おれ達だってこいつの強さの一端しか見えちゃいねェんだ!!」
「マジかよ……」
ゾロとサンジはイオリの重い服を脱がせた。さすがにこの状態での重りは体に負担が大き過ぎると判断したからだ。
「お前が…世界一の剣豪になったら、倒しに来る…」
「…なんだよそれ?」
「ガキの頃、こいつがおれに言ったんだ。こいつの目標は『世界最強』になる事なんだと…。だから世界一の剣豪も倒すんだとよ。」
「…なら、鷹の目…ミホークを倒しゃいいんじゃねぇのか?」
「つまり、それはおれに譲るって事なんだろうな…」
「…」
「ハッキリ言ゃあ、既にこいつはミホークにも勝てる強さを持ってると思う。だが…」
「だが?」
「思い出しちまったよ…。おれが一度も勝てなかった幼馴染が言ってたんだ…。女は世界一にはなれねェって親父に言われたってな!今日こいつがこんなんなったのは弱かったからじゃねェ…!まさしく
「…」
「…ずいぶんと、好き勝手…言ってくれるわね?」
「イオリちゃん!!気がついたのか!!?」
「…サンジ…悪いんだけど水…もらえないかな?」
「あ…ああ!!ちょっと待っててくれ!すぐ持ってくる!!」
サンジが船の方へと走っていく…
「ジャケット…脱がせてくれたんだ。ありがと…ちょっと重かったのよね」
「…バカが…」
「次は…ちゃんとやるわ!もう二度と…女だからとか言わせない!!同じ轍は踏まないわ!絶対にね!!」
「…そうかよ…!いいからおめェはまだ寝てろ!!また七武海とかが現れたりしたらたまらねェからな。そんときゃ、おめェにも戦ってもらわねェとこっちの身が持たねェ…!」
「了解…わかったわ。」
イオリはすぐに寝息をたてる…ゾロはイオリを抱えて歩き出した…