イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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06-204話:”音楽家(8人目)

「さてBGMでも…」

「…お、この部屋ピアノあったのか」

 音が鳴り、ルフィがピアノの存在に気づく。

 

 ピアノの前の椅子に座るブルックの近くには、サンジの姿があった。

 

「そういやお前、楽器全般出来るっつてたな!」

「ヨホホホそうです。楽器は全般いけますよ!!あの…少し話戻りますけど…、実は私も”見ちった”のです…!!お三方の行動に心打たれました」

「……」

 

「仲間っていいですね……!!」

「…お三方って言ってくれんなよ。おれはマヌケをさらしただけだ」

 

「いえ…あなたにも同じ覚悟があった…。何か一曲…いかがです?リクエストがあれば…」

「へェ…何でもいけんのか?じゃあ…」

 

「あ♪ビンクス~の酒を~♪」

「お前今、リクエスト求めたよな!!?」

 ブルックがビンクスの酒を演奏しだす…

 

「”ビンクスの酒”…どこかで聴いたと思ったら…船で時々、唄ってる曲ね…」

 みんなが唄い、踊り出す。

 

「おい!!ブルック!!この曲、たまにイオリが演奏して、おれ達が唄ってんだ!!」

「あなた達もですか?昔の海賊達はみんなこれを唄ってました。辛い時も楽しい時も…!!ヨホホホ」

 

「お前さ、おれの仲間になるんだろ?な!!」

「……」

 

「影、帰ってきたもんな!日が当たっても航海できるだろ」

「…それなんですが、私一つ…言ってなかった事が…」

「何だ」

 

「”仲間”との…約束があるんです。それをまず果たさなければ、私…男が立ちません…!!」

 

ああ!!ラブーンの事だろ!?知ってるよ!フランキー達から聞いたからな!!」

 

「え…。ああ…そうなんです。”ラブーン”…そういう名前のクジラなんですけど… ― ある岬に…」

 

「だからよブルック!!おれ達、双子岬でラブーンに会ってんだ本当に!!」

「…え?」

 

「ん!!ガイコツどうした!?ピアノのテンポが落ちたぞ!!」

 

「あそこで50年、ラブーンが仲間の帰りをずっと待ってるのは知ってた。だから驚いたよ!!あいつの待ち続けてる海賊達の生き残りがお前だってわかった時は…!!」

「……」

 

「そしてお前はちゃんとまだ、約束を覚えてる。これ知ったらラブーン喜ぶだろうな―!!!ししし!!

 

「…ちょ…ちょっと待って下さいよ!!ヨホホ…!!びっくりした……!!唐突で…。あなた達本当に…!?ラブーンに会ったって!?」

「うん」

 

「50年も経ってるのに…!?今もまだ…!!!あの岬で待っていてくれてるんですか!?ラブーンは…!!!ホントですか…?

「うん」

 

「おれ達も証人だ!!確かに会ったぞ」

「ああ」

「!」

 

「…!!元気でしたか…?」

「元気だった」

 

「大きく…なってるんでしょうね…」

「山みてェだったよ」

 

「ヨホホ…見てみたい…私達が別れた時なんかね、…まだ小舟ほどの大きさでかわいかった…ちょっと聞きわけが悪かったけど、音楽好きないい子でねェ…今でも…まぶたを閉じるとその姿が、あ…私まぶたなかった。頭にね…浮かぶんです」

 

 ― ジャアァアン♪ ―

 

「……!!!」

 

「そうですか…!!彼は元気ですか…!!!ウオオオ…!!!

 ブルックが涙を流す…涸れてなかったんだね…

 

「おーいどうしたガイコツ!!ピアノ弾いてくれ!!」

 

「こんなに嬉しい日はない…」

 

 

「最初に…、ブルックの船に乗り込んだ時に彼の頭の中を覗いたの…」

 私は静かに話し出した。

 聞いているのはナミとチョッパー。少し離れてるけどたぶんロビンも聞いている。

 原作で回想として書かれていた場面を私はブルックの頭の中の映像で見た。

 その一部を語って聞かせたのだ。

 

「ビックリしたわ。ブルックが…ラブーンの待ち人じゃないか?って思ったから…」

「…」

 

「双子岬で、クロッカスさんがラブーンの待つ海賊達は”偉大なる航路”から逃げ出したって言ってたわよね?でも、そうじゃなかったみたいなの。彼らは航海中に船長と何人かのクルーが疫病にかかって船を乗り換えた…。ブルック達は新しい船で航海を続けてこの海域に入った。その後はブルックが話した通り!元の船は偉大なる航路から故郷の西の海に帰る為にカームベルトに入ったらしい。その船はその後、消息は不明に…。クロッカスさんが得た情報は、きっとその船の事だったのよ!」

 

「…だから…クロッカスさんは、彼らが逃げ出したと思ったのね?」

 ナミの言葉に私は頷いた。

 

「想像も出来ないわよね…。50年もお互い約束を忘れず、なおかつ守ろうとしてるなんて!!」

 今度は私の言葉にナミとチョッパーが頷いている。

 半世紀前…。私たちは誰も生まれてもいない!ロジャーがまだルーキーの頃の事だ。

 

 ブルックが演奏を再開する。

 またみんな、踊って唄ってる。ブルックは…きっとラブーンの事を思い出してるんだろう。

 

 そして再び演奏が止まる…。

 

「おう何だ何だ!!もっと弾けブルック!!」

「そうだ!!鼻わりばしで踊るんだ!!おれは!!」

 

「ヨホホちょっとお待ちを……えーと」

 といって、頭をパカ!っとあけて中をごそごそと何かを探すブルック…

 

「え―!!?そうなってんのか!!?」

 ウソップとサンジが驚いてる。ルフィは喜んでるみたい?

 取り出したのは(ダイアル)

 

「これは昔、ある商船から買った”音貝”というもので、音を蓄え再生できるという珍しい貝です」

「おれ、それ知ってるぞ!!」

 ブルックは知らないだろうけど、既に世間じゃ一番知られてる(ダイアル)なのよ?

 

「ご存知ですか…私、ラブーンに会ったらこれを聞かせたいと肌身離さず持ってるんです!」

 

「何か録音してあるのか?」

 とウソップが聞く。

 

「”唄”です。死んだ仲間達の生前の唄声…!!我々は『明るく楽しく旅を終えた』という…、ラブーンへのメッセージ!今かけても構いませんか?」

 

「おー聴きてェ!!そりゃラブーン喜ぶだろうな!」

 

「では…」

 カチッ…ブルックが音貝のを操作すると、演奏が流れ出す。ピアノと数種類の弦楽器…

 

「ん?この唄なら一緒に唄うわよ!!」

「おー!!」

 

 音貝からの生オケに、ここにいる全員の唄声が重なる。大合唱だ…!!

 

 

「おーいガイコツ……」

「もー唄わねェのかァ!?もっぺん行こう!!もっぺん!!」

 

「わははははは」

 

「ヨホホホホ…。かつて仲間達と共に命いっぱいに唄ったこの唄…ルンバー海賊団”最後の大合唱”…。暗い暗い霧の海を一人さ迷った50年間…。何度聴いた事でしょうか…。一人ぼっちの大きな船で……この唄は…唯一…私意外の”命”を感じさせてくれたのです。 ― しかし、今日限り私は新たな決意を胸に、この”音貝”を封印します。封印~~~!!!

 

「え―っ!!?やっぱそうなってんのか!!?」

  取り出した時と逆の動作をしただけでしょうに…!!

 さっきより驚いてんじゃん!?

 

「ラブーンが元気で待っていてくれてるとわかった…。影も戻った。魔の海域も抜けた…!!この貝に蓄えたみんなの唄声は、もう私一人が昔を懐かしむ為の唄じゃない!!…これはラブーンに届ける為の唄!!!辛くない日などなかった…。希望なんか正直見えもしなかった。でもねルフィさん…私!!!生きててよかったァ!!!本当に!!生きててよかった!!!

 

「そらそうだ」

 

「今日という日が!!!やって来たから!!!」

「……!!」

 

「あ、私仲間になっていいですか?」

「おういいぞ」

 

「!!?」

 

 ええええええええ

 

「さらっと!!!」

「入ったァ~~~~~!!!」

 

「ふふ!!」

 

 えええええええええ

 

「でも歓迎~~~っ!!音楽家♪」

 

「バンザーイ」

 

「音楽家♪死んで骨だけ音楽家♪」

「念願の音楽家♪」

 

そうか!!…揃ったってのはそういう事か…!」

 

「ん?どうしたサンジ?」

「いや…なんでもねェ」

 

 わあぁぁぁ!!!

 

 ブルックを胴上げする、男ども(ゾロ以外)

 

「その軽さもおめーのいい所!!」

「ハイッ!!骨だけにィ~~~~~っ!!!」

 

「でひゃひゃひゃ…おんもしれ~~~っ!!!」

「わかったから…」

 ヘラヘラしながら顔を向けるルフィに、ナミは呆れたように言葉を返す。

 

「また賑やかになるわね…うふふ…」

「なんでこういうの(・・・・・)集まるの?ウチって…」

「こういうのて…」

 ナミが辟易とした表情で言ってますけど?

 

 …ブルック、フランキー、チョッパー?の事?

 

「ガウッ!!?」

「アンタは可愛いからこういうの(・・・・・)の中には入ってないわよ~!」

 エルを撫でるナミ…。

 って事はチョッパーも入ってなさそうね…

 

 そうなると、サンジやウソップは入ってんのかな?

 

 …私は…入ってない…わよね?

 

「何だか知らないけど景気いいわねナミゾウ!!」

「「わかんねェけどカンパーイ!!」」

「まーね、ありがと」

 

 さて…次はシャボンディ諸島か…

 

 ルフィについていけるのか?それとも別のところへ飛ばされるか…

 

 航海開始前とは違っていろいろと考えてることもあるのよねェ?

 

 

 

「改めまして!!!」

「!」

 といってブルックが片膝をついて手配書を差し出す。

 

「手配書!?そういやお前、賞金首だったっけな!」

 サンジが思い出した様に言った。

 

「はい!!申し遅れました…!!私!!死んで骨だけ、名をブルックと申します!!お察しの通りフダツキでございます。通称”鼻唄”のブルック!!懸賞金『3300万ベリー』!!昔とある王国の護衛戦団の団長を務め、その後ルンバー海賊団船長代理”音楽家兼剣士”。今日より麦わらのルフィ船長にこの生命!!お預かり頂きます!!皆さんのお荷物にならぬ様に!!骨身を惜しまず頑張りますっ!!!ヨホホホホホ~~~

 

 ウオオオオオォ!!

 

「よーしもいっちょ乾杯だ~~~!!!」

 

 

 

 

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