イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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07-217話:海賊王の副船長

「じゃまた!!ホント気軽に呼んでくれよ!!若旦那達が無事魚人島へ出航できる時までおれ達が手足となるからよ!!」

 デュバルは相変わらず顔を引きつらせてウインクをしながら言った。

 

「おう!!ありがとなお前ら!!」

「もうウインクやめてしまえ…」

 

「お、それと人魚さん、コレね。イオリさんに言われてピーターマンのバカ野郎から奪い返しておいたぜ!!」

「あ!私のリュック、あ…ありがとう!!」

 デュバルがリュックをケイミーに渡す。ウインクなんかしないで普通にしてた方がモテると思うよ?

 

「さァ行くぞ、“人生バラ色ライダーズ”!!」

「イエス!! ハンバラ!!」

 

 送り出すルフィ達…

 

「掛け声がいろいろ変わるな」

「しっくりくんの探してんだろ」

 

「では、急いで中へ」

「ハチを安静にしなきゃ!!」

 

「おい、シャッキー、今帰ったぞ!」

「あら、レイさんお帰り、早かったわね!!モンキーちゃん達よく見つけたわね。」

「ハチの奴が大ケガをしてなァ。すぐにベッドを!」

「大変!!何があったの!?それで、はっちゃんは?」

 

 

 店は「CLOSED」に…。

 

 

「え~~~~~~~~~!!?“海賊王”の船にィ~~~~~~~!!?」

 ルフィあんた、驚きすぎじゃない?あ~、でもコビー達との再会よりはましか…

 

「ああ、副船長をやっていた…シルバーズ・レイリーだ、よろしくな。」

「「副船長~~~~~!!?」」

 ロビンと私以外の全員が驚いているけど…?

 

 名前を知らなかったわけじゃないだろうにねぇ?

 

 シャッキーさんがハチに教えなかったの?と聞くと、ハチは用があるのはコーティングだから、と…

 確かにそうなんだけどね。

 

 まぁ、覇王色を使うレイリーって名前の人で、しかもローやキッドが、フルネームまで言ってたのに、気づかない一味(うち)の連中がニブイとしか言いようがない。気づいていたのはロビンくらいだもの。

 アラバスタのアクアリウムの時といい…本当にこの連中はどうしたもんかね?

 

「 ― あら、気づいてなかったの?」

 ロビンはみんなに言った後、私の方を向き肩を竦めて見せる。

 

「その名前、メチャメチャ知ってる~~!」

「いろんな本に載ってる~~~!!」

 ウソップとナミが泣きながらのたまう。

 

「確かに誰でも一度は聞く名だ」

「…」

 サンジも驚いたように言い、フランキーは言葉もないようだ。

 まぁ、師匠の知り合いと言ってもいい人だもんね?

 

「G・ロジャー、そういうルーキーが昔いた様ないなかった様な…」

 ブルックは煮豆をつまみながら…

 

「何でそんな大物とタコが知り合いなんだ?」

「ハチはな…20年以上前に…私が海で遭難した所を助けてくれた。」

 ゾロの問いにはレイリーさんが答える。

 

「この人の命の恩人なのよ…まだ子供だったけどね。」

 

「以来、コイツが“タイヨウの海賊団”に入るまで仲良くしてた。」

 

「アーロンだろ?」

「…」

 冷蔵庫をあさりながらルフィが言う。微妙に違うんだけどね?

 

「しかしよ!ゴールド・ロジャーは22年前に処刑されたのに、副船長のあんたは討ち首にならなかったのか…?一味は海軍に捕まったんだろ?」

 

「捕まってないわよサンジ!ロジャー以外の海賊王のクルーは誰一人…ね!!そもそもロジャーだって捕まったわけじゃないんだもの!!」

「「え!!?」」

 

…そう、捕まったのではない…ロジャーは自首したのだ…。政府としては…力の誇示の為…あいつを捕まえたかの様に公表したかもしれんがな…」

 

「“海賊王”が自首!!?なんで!??」

 

「…我々の旅に…限界が見えたからだ。」

「…」

 

「…あの公開処刑の日から…4年程前か…ロジャーは不治の病にかかった…

「!!!」

 

「誰も治せない手の打ち様のない病に、さすがのロジャーも苦しんだが、当時海で一番評判の高かった灯台守でもある医師、双子岬のクロッカスという男だけがその苦しみを和らげる薬を持っていた。我々は彼に頼み込み“最後の航海”に船医として付き添って貰い、ついにその3年後、ロジャーの命を取り止めつつ…不可能といわれた“偉大なる航路”制覇を成し遂げたのだ…。

 

「ク…ク…クロッカスさん!!?双子岬の…!!お懐かしい…!」

 懐かしい名前にブルックは身震いする。そういえば、ブルックにはクロッカスさんの事、話してなかったっけ…

 

「じゃあクロッカスさんはその3年間だけ海賊をやってたのね!」

 

「キミらが会ったという事は…まだ元気でやっとるか!クジラを可愛がっていてな…。クロッカスは何やら…探したい海賊団がいると乗船を承諾してくれたのだが。」

 

「ブルック!!それ、完璧におめェらを探しに海に出たんじゃねェかよ!!」

「ク…クロッカスさん…そんな事までして…!!?」

 ウソップが驚いて声をあげる。ブルックは、オイオイ泣いてる…

 

「あいつはたったの3年の船員(クルー)だったが、紛れもなく我々の仲間だ…!!!この歳になると…また会いたいもんだな…」

「…」

 

「 ― で、海を制覇した後は…?」

 サンジが話の先を即す。

 

「そこからだ…ロジャーは世間から“海賊王”と呼ばれる様になった…。何もずっと海賊王だったわけじゃない…死にゆく男に称号など何の意味もない。 ― だがロジャーは喜んでいたな…何事もハデにやらかす事が大好きな男でね…。宴もそう…戦いもそう…。己の先のない未来にも一計を案じ、楽しんでいる様に見えた。 ― やがて『船長命令』により、ロジャー海賊団は人知れず解散し…全員バラバラに…。一人、また一人、姿を消した。共に命を賭けた仲間達は今や、どこで何をしているかほとんどわからない。 ― そして解散から一年が過ぎた頃…。ロジャーは自首し…逮捕され…、あいつの生まれた町“東の海”のローグタウンで公開処刑が発表された。あの日の広場には…今、海で名を上げている海賊達の若き日のそうそうたる顔ぶれが並んでいたと聞く…。海賊王の処刑に世界が注目していた。 ― 私は…行かなかったよ…。あいつの言った最後の言葉はこうだ…

 

『おれは死なねェ(・・・・)ぜ…?相棒…』

 

 

「世界政府も海軍も…驚いた事だろう…。他の海賊達への“見せしめ”の為に行ったはずの公開処刑の場が、ロジャーの死に際のたった一言で「大海賊時代」の幕開けの式典へと一変したのだからな…!!」

 

 ― おれの財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ…!

   探してみろ…この世の全てをそこに置いてきた…!! ―

 

「残り数秒…僅かに灯った“命の火”を、奴は世界に燃え広がる“業火”に変えた。あの日ほど笑った夜はない…!あの日ほど泣いた夜も…酒を飲んだ夜もない…!我が船長ながら…見事な人生だった…!!」

 

 しんみり聞き入るシャッキーさん…。

 ナミは生唾を飲み込んだ…

 

「なんかスゴイ話聞いちゃったみたい…。当事者から聞くとまた別の話みたいね…!」

「じゃあ…まるでこの海賊時代は意図してロジャーが作ったみてェだな!」

  ウソップが言う

 

「…そこはまだ(・・)…答えかねる…ロジャーは死んだのだ。今の時代を作れるのは、今を生きてる人間だけだよ…!!

 そう言ってレイリーさんはグビグビと酒をあおった。

 

 でも”まだ”…なんだね?

 もしかして…”いずれ”があるのかもしれないのかな…?

 

「あの日、広場でロジャーから何かを受け取った者達が、確かにいるとは思うがね…。キミのよく知るシャンクスもその一人だろう。」

 

「え?おっさん、シャンクス知ってんのか!?」

「…」

 

「“東の海”ならバギーという海賊も知らんか?」

 

 その名前にナミとゾロは苦虫を潰したような顔になる…

 

 

「アレは二人共ウチの船で見習いをやっていた。」

「え―――っ!!シャンクスは海賊王の船にいたのか!?」

 ルフィは驚きのあまり、口に入っていた食べ物を吐き出した。

 

 あれ?あんたはバギーに聞いたんじゃないの?

 あ~…そういえば、バギーはシャンクスと同じ船に乗ってた同士としか言ってなかったのか…。

 ルフィはシャンクスがロジャーの船に乗ってたって事を知らないもんね。みんなは知ってるんだろうけど…。

 

「何だ…聞いとらんのか…10年程前か…この島でばったりあいつと会ってな、トレードマークの麦わら帽子と…左腕が失くなってた…」

 

 それを聞いてグサッと来たルフィが食べ物をのどに詰まらせそうになる。

 

理由(わけ)を聞くと嬉しそうにキミの事を話すんだ…!!」

「?」

 

 

『レイリーさん、おれァ本当に驚いたよ!!“東の海”に…!!ロジャー船長と同じ事を言うガキがいたんだ…!!船長のあの言葉を…!!

 

 10年程前っていう事は、まだウタを救い出す前の話よね?その頃だと、シャンクスは私の事をどんな風にこの人に言ったのかしら?

 オークション会場でのセリフでは、私とも会いたかったって言ってたけどさぁ…。

 まさか…闘りたいとか思ってたりして?

 

「シャンクスが君に話していない事まで私がべらべらと喋るわけにはいかんのでな… ― とにかくここまでよく辿り着いた…!!“新世界”であいつはキミを待ち侘びているだろう。」

「…」

 

「…そうか!!そうかな!!…おれも会いてェなァ~~~!!」

 

「 ― さて、状況も状況、船のコーティングの依頼だったな。私も今の本職を果たすとしよう…」

 

「ニュ~~そういや、コーティングってすげェ金がかかるんだけど!」

「いやァいいんだ、ハチ。お前の友達から金は取らん。」

「よかった。ありがとうレイリー」

 

 原作では一味の活動資金は切迫してた。だからみんなも喜んでいたけどね…でもダメじゃんね?

 レイリーさんにはこれからもお世話になるんだし、ここはきちんと払っておこうと思う。

 

「ダ・メ・です!!コーティングがこの島での本職なんでしょう?だったらきちんと請求してください!!今日だってお金が無くてオークションに掛けられる側にいたんじゃないんですか?それに魚人島でもコーティングが必要になるんですから相場も知っておきたいですし!」

 

「うふふ…レイさん!叱られちゃったわね!?」

「…わかった。それでは終わったら請求させてもらおうか。ところでイオリ君。君らの船まで一緒に来てくれるか?」

「もちろんです。私も少し、お話したいことがあるので!」

 

「…そういえば、オークション会場で、イオリにも会いたかったとか言ってなかったか?」

 ウソップがレイリーさんに問いかける。ってか、ココで振る?

 タイミングが悪いんだけどなァ~

 

「…そうだな。確かにそう言った。…シャンクスに聞いてからずっと……会ってみたかったのだよ…キミに!!

「…」

 

 突然、店内の空気が重くなる。

 

 - ゾクッ ー

 

 そこに居る全員に悪寒が走った。次いで、レイリーさんの表情が鬼のように変わろうとするのを見て、私は止めた。

 

レイリーさん!!ここでは(・・・・)やめておきませんか?ヘタをするとみんな(私とあなた以外の)気絶しちゃいますよ?」

「「!!?」」

 気絶するだけならいいけど、過剰な覇王色を浴びると、場合によっては障害が残る事だってある。

 

 私が言うと、レイリーさんの表情が緩んだ。と同時に店内の空気も和らいだ。

 

「わはははは!すまんすまん!!私とした事が…。どうにも血が騒いでしまってね。」

 あぶね~て!!

 ってかあんた!シャンクスから私の事、なんて聞いたの!?

 そもそもオークション会場で、老兵だとか、平穏に暮らしたいとか言ってたじゃんよ?

 

 しかしまぁ…老いたとはいえ、さすが冥王という事かしら?

 持久力はどうか知らないけど、気配の大きさだけで言えば、3年前に会った時のシャンクスよりも上だ。

 

 でも、この人やっぱり、見聞色の相殺だけでなく気配を抑える術も身に着けているらしい。

 

 この技術…実はけっこうメジャーなものなのでは?

 

 気配抑えて、相殺使われたら、場合によっては見つけられない敵もいるかも知れないって事?

 見聞色…もっと鍛えんとあかんじゃん?

 

《ありゃりゃ?それってマズくね?》

”なんなら、パワーレーダーで見つけますよ?気配を抑えたモノも感知できますからね!!”

 

《何それ、マジで!?》

”マジです!!”

 

《いやいや…それって逆に私を見つける事も出来るんじゃ?》

”大丈夫です!!ベガパンクの開発したソレは見聞色の代わりになるモノで、気配を抑えている場合には測れません。ワタシのは反則機能(わざ)ですので!!”

 

《…おめーは…一体……》

 優秀って一言で片づけていいのかこれ?

 

 ってか、ベガパンクもパワーレーダー開発してたのね?

 

 なるほどね、だからレイリーさんは見つからないんだ!!

 

 

 それにしてもコイツ…

 

 反則機能(わざ)……多くね?

 

 

 

 

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