イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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07-227話:3つの目的

「べべべ…紅ちゃん!!?あなたドゥして!?

「いや、だって…ルフィの事助けてもらっといて置き去りなんて有り得ないっしょ?

 あの軍艦で、ここ(・・)の正義の門を抜けるには、これしかなかったから、原作通り進めてもらっただけで、ボンちゃんを置き去りにする気は最初からなかったのよね!!必要なら、ニューカマーランドにはボンちゃん連れてくればいいじゃんね?

 

「…くれない…貴様ァ!!

 一瞬怯んだマゼランがヒドラを出そうとする。

 

「やめときなさいマゼラン!!ここでそんなの使ったら、仲間の被害が大きすぎるし、さっきでわかったでしょ?私はアンタに触れる事なくこの部屋から退場させる事が可能なの!!それに、まだ聞いてないだろうけど、シャボンディじゃ黄猿と互角に()ったのよ?」

「なんだと!!黄猿殿と!!?」

 マゼランだけでなく、居合わせた海兵およびボンちゃんも驚愕顔だ。

 

「スピードでもアンタは私に勝てないわ!!この意味…当然わかるでしょ?」

 マゼラン自身の動きは遅い。けれど、能力で出す毒の動きは本人の動きに比べて驚くほど速い。

 しかし、当然の事ながら黄猿に比べれば遅い。

 

 つまり、マゼランは能力でもスピードでも私に劣る。直接触れずに戦える以上、マゼランに勝ち目はないどころか、ヘタをすれば味方を傷つけるだけになるわけだ。

 

「ぐっ…」

 

「そんじゃ、私たちはおいとまするわね?」

 

「…正義の門は既に閉じた。くれない、貴様!どうするつもりだ?」

 

「あ~そうだったわね!みんなにはちょっと眠っててもらおうかな?」

「「!!?」」

 

  ― ドクン ―

 

 ボンちゃんも含めてマゼラン以外の全員が気絶する…

 

「ぐぅ!まさか…覇王色…だと!!?

 

「そんな事より、黒ひげの事なんだけど…」

 

 ……

 

 

「!!?…このおれに貴様の話を信じろと?」

 シャボンディでのレイリーさんみたいな事言っちゃって…。

 まぁ、状況的には似たようなもんかもね?

 

「力づくでも良かったんだけど…アンタにはこれ以上ダメージを与えたくないの。下手したら死ぬわよ?」

 

「それでも…この世に悪を蔓延(はびこ)らせる訳にはいかんのだ!海賊よ!!」

 

「私たちはピースメインの海賊よ!!アンタなら知ってるんじゃない?この言葉の定義…」

 

「…世間に流れている情報はともかく…お前達のこれまでの記録(ログ)は聞いている!!それが事実とするならば、なるほど…確かに貴様らはピースメインだろう!だが…それでも海賊は海賊!現在(いま)の定義では政府(われら)にとって貴様らは悪なのだ!!」

「そんなアンタだからこそ生きていてもらいたいと思うのよ!!今の世界政府・海軍において、アンタみたいにきちんと物事を俯瞰して見ることの出来る人は少ないんだから!!でもまぁ、現在の定義からすると、見逃せって言っても真面目なアンタにゃできそうにないから、やっぱり眠っててもらおうかな?」

 

  ― ドクン ―

 

「!!?」

 

 マゼランはその場に崩れ落ちた。

 

 私はマゼランを小さくすると彼の部屋へと運び、もとの大きさに戻した。

 その後小さくしたボンちゃん(絶賛気絶中)を持って、門の向こう側へと飛んだ。

 

 飛んだ先でウエイバーに乗り、ルフィ達の船を追ったのだった。

 

 ちなみに…

 マゼランが自身の部屋で目を覚ましたのは頂上戦争で黒ひげが登場した頃だった。

 

 

 ~ この時、世界最大の海底監獄インペルダウンより脱獄に成功した囚人の数

   総勢241名

   後に、これがインペルダウンの歴史上、最大の失態と報じられる事となる…。 ~

 

 原作では公表されずに伏せられた、本当の意味で最大最悪の失態となる、Level6の囚人脱走事件は、イオリによって回避されていた。

 主要3名及び猛者20名ほどは捕縛して小さくしてイオリが持ち出していた。

 その他のLevel5、6の者達は、覇王色により気絶…。

 

 黒ひげ達に連れ出されることも、脱獄されることもなかったのだった。

 

 『鬼の跡目』を除いて……

 

 

  ポートガス・D・エース公開処刑まで ―

 

   あと 4時間…!

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

「イオリ!おめェ、どこ行ってたんだ?」

「ちょっとインペルダウンに用があってね…!」

 

 私が船にたどり着いた時には、ルフィとバギーのケンカも海軍との通信も終わった後だった。ボンちゃんの名を叫び、ひとしきり泣いた後でもある。

 ルフィがボンちゃんにまた助けられたと言い、私がインペルダウンに居たなら助けてもらえばよかったと言っていた。

 

「…」

 電伝虫使えないくせに、どうやって頼むつもりやねん?

 

 ちなみにボンちゃんはポケットの中で絶賛気絶中である。

 さて…どのタイミングで起こしたらいいだろう?

 

 

 そうだ!それよりルフィに言っとかないと!!

 

 私はメシを食いに行くというルフィを引き止めて真剣な面持ちで話しかけた。

 

「ルフィ!イワさんも言ってたけど、今から向かう場所は、今までとはレベルが全く違う戦場よ!!」

「おう!」

 

「よく聞きなさいよ!!弱音吐かない!迷わない!!この2つをしっかりと頭に刻みなさい!!」

「お…おお!!」

 本当は、もっとちゃんとした言葉で言いたいんだけど、簡潔に言わないとコイツ忘れちゃうもんね?

 

「場所は海軍本部…ガープも居る!!彼は海兵…戦場では敵という事になる!!そこら辺は私に言われなくてもわかってると思うけど!?」

 

「ああ分かってる!!おめぇも、本気出すんだろ?

「まぁね…。言ったでしょ?こんな時の為にずっと鍛えてきたって!!」

 

”世界最強”になるんだもんな?ししし…」

「…」

 ん…?

 

「まぁ、それは別にいいんだけど…」

 なんだろう? 今…何かが… 引っ掛かった… ような…?

 

「エースはあんたが助けなさい!!私は出来る限りサポートするから!!しくじるんじゃないわよ!!?」

「わかった、まかせろ!!よしっ!そうと決まったら腹ごしらえだ!!」

 ルフィは食堂に向かって走っていった。入れ替わる様にジンベエが来た。

 

「やっときちんと話ができる。お前さんがイオリさんじゃな…ルフィ君からも話は聞いた。エースさんとは4人兄弟らしいのう?」

 

「エースから聞いてると思うけど、私たちは義兄弟よ。あなたの事はアラバスタでエースから聞いてるわ。メチャクチャ強いケンカ友達が居るって楽しそうに話してくれた。」

 

「ワシもおまえさんの話は聞いとる。エースさんが自分より数倍強いとも言っておったが、おまえさんを見た時、少し疑っておった。じゃが…マゼランを退けたと聞いて信じる気になったわい。それにエースさんは嘘が下手じゃからな。…ところでおまえさん、赤髪と何か関係が?」

 

「さあ?」

「!?」

 

「本人にも聞いた事があるんだけど、分からないってよ!否定も肯定もしないでやんの!まったくやんなっちゃうわ!」

「…」

 

「ちなみにインぺルダウンに来る前に彼にも会ってきたわ!」

「赤髪と!?」

 

「そんな事より、あなたに会ったら一つ言いたいことがあったのよ!!東の海の事でね。」

!!…アーロンの事か…」

「そうよ!」

 

「ルフィ君には言えんかったが…そうじゃな。わしゃ甘かった。最低でも1年に1回は会うべきじゃった。」

「あなたのその見通しの甘さのせいで、一つの島が長年苦しんだ。うちの航海士もその一人よ!!」

 知人という事で言えば、母娘3人だけどね!

 

「なんと!!そうじゃったのか!!?」

 

「そのうち会ったら謝ってやってほしい。きっと許してくれると思うから…」

「…そりゃぁ…すまん事をした…」

 

「本当は、本人に謝罪させるのが一番なんだけどねェ…」

 

「…おまえさんは…」

「ん?」

 

「いや…是非とも謝罪の機会を貰えるとありがたい。」

「少し先になると思うけど、私たちが魚人島に行く頃がいいかもね…」

「少し先?」

 

「何にしても、まずはエースを助けないとね!!」

「そうじゃな…」

 

 

「あなたには言っておくけど、この戦いで、私には目的が3つあるの!」

「…?」

 

「第一優先はもちろんエース救出!!残りの目的2つがこれを邪魔するようなら迷わず捨てる!2つ目は白ひげを死なせない事!エースを救出したら撤退する。いえ、させる!!3つ目は黒ひげを仕留める事!!まぁ、これはあいつが現れなければ叶わない事だし、私じゃなく白ひげがケジメをつける為にやりたいことみたいだけどね?」

 私もやる事やるけどね!!場合によっては、それでティーチが私を襲うかも?

 その時は私が闘っちゃっていいよね?

 

「まさかとは思うが、オヤジさんとも会って来たんか?」

「察しがいいわね。その通り!!」

 

「なんとまぁ…そこまで手を回しとるとは…」

 

「戦いは実際にぶつかる前から始まってるの!!最終的な勝敗の8割は戦闘が始まる前に決していると言っても過言じゃないわ。小さな戦いであれば残り2割で逆転も可能だけど、規模が大きくなるほどそれは難しくなる!だからこそ準備は大事なのよ!!あまり理解してもらえないけどね。」

 今回のように大きな戦ともなれば、数や戦力だけでなく策も大事になってくる。しかも戦場は相手の陣地。準備万端整えて待ち構えているに違いないのだ。そこに力のみを頼りに殴り込むのは、いくら四皇でも無謀というものだろう。

 原作では、ある程度の戦力を残しておくのが策だった感じだけど、あんなもん、相手だって準備できるっしょ?

 手札の多いほうが勝つ…では、戦の準備としては弱い。敵の手札を出来るだけ知る事も重要なのだ。

 私には原作知識があるけれど、それがなくとも海軍が何をしようとしているかを調べる事は出来る。その為に、カザマが居るのだし、情報源(F-RONP)だってあるんだから!!

 

「幸いにも、白ひげは理解を示してくれたわ。この戦争の目的はあくまで救出!それ以上は望まないって事も含めてね!!」

「…さすがは参謀というべきか。ようわかった!!お前さんの考えではワシはどう動けばええんじゃ?」

 

「ルフィのサポートをお願いするわ!私もサポートするけど、他にもやることがある上に、何が起こるかわからないからね?」

 

「彼にも借りを返さねばならんからな…まかせてもらおう!!」

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

 そして、マリンフォードの正義の門が近づいた…

 

「さて…どうしたもんかのう…」

 ジンベエが門を見ながら呟いた。10数分もすれば、たらい海流で門の前を通り過ぎてしまう。

 それまでになんとか門を開かなければならないからだ…

 ルフィが私に何とかならないか?と言いかけた時にそれは起こった…

 

「開いた!!?」

「どういうこっちゃい!!」

 

正義の門が勝手に開いていくぞ!!さっき通信で門は開けねェって言われたのに!!」

「動力室はおそらくマリンフォード!!一体誰が…!!?」

 

 後ろではバギーと3と囚人たちが何やらコントを繰り広げている。ルフィも驚いてるみたいだけど…?

 

「まさか、これもおまえさんが?」

「さすがにそこまでは手は回せないわよ。まぁ、知ってはいたけどね」

「「!!?」」

 

「インペルダウンで黒ひげ達と会ったじゃない?あの中の一人に催眠術を使える奴が居るみたいでね…。あいつらがマリンフォードからインペルダウンに行く際に『正義の門』に軍艦を確認したら全て”通せ”と”催眠”をかけておいたらしいのよ!!」

 

「なるほど。という事は、奴らは戻ってくるつもりという事じゃな?」

「この戦争で、白ひげを殺すつもりらしいからね!」

「なんじゃと!!?」

 

「黒ひげの目的は2つ。白ひげを倒す事で自分の強さを世間に知らしめること!おそらく白ひげの命とともに、四皇のイスも取ろうってハラね!!そして2つ目は…”グラグラの実”の能力を奪う事!!」

 

!!?ヤツはそんな大それた事を考えとったんか!しかし、黒ひげは既に一つ実を食っとるはずでは?」

 

「そもそも悪魔の実を2個以上食ったヤツなんて、実際には居ないんじゃないの?」

「!!?」

 原作の中で騒いでる奴がいたけど、あれって都市伝説じゃないの?

 いや、実際どうか知らんけど…

 

「もっとも、ヤツの思い通りになんてさせないけどね!!

 

 

 

 

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