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本筋
イオリの話に戻ります。
杯を交わして1番態度が変わったのはエースだと思う。もともと年長者としてポリシーみたいなものがあったけどそれがあからさまになった。
私とルフィが『年下の友だち』から『妹・弟』に認識が変わったんだと思う。
なんかね。見てて微笑ましい。私がやたらと上から目線みたいでなんだけど、可愛いんだもん。そう思うのはしかたがない。
しばらくの間、特に問題の無い日々が続いた。
途中ガープの襲来なんかもあったけど、特に問題無し。みんな怪我はしたけど命に別状はなかった。(念のために言っておくけど、これは決して大げさな話じゃないんだよ?あいつのシゴキは普通じゃないんだから!)
私は怪我もしてないよ?別にガープは女だからって手加減はしてくれない。むしろみんなより本気度高かった気がするけど、特に問題なし。
ちなみに聞いてみました。こんな生活環境に放り込んで、しかも定期的にこんなシゴキ(虐待?)をしやがって、ルフィたちが海兵を目指すって本気で思ってるのかって。
答え? 予想通りだったよ! 『わしの孫じゃし』の一言で終わらせやがった。怒る気失せました。呆れるしかない。
他に言うなら、そうそうマキノさんが来てくれた!服くれたんだよ!
そのときにちょっとお願いした。ダダンは別として他はみんな男だからいろいろ話をしたいってね。 なんか、ずっとここで過ごしてると女の子って事忘れちゃいそうでね。ガールズトークしたいな。。。的な事。
「なんだそんな事?いいわよ。いつでもいらっしゃい。」
ちょっとびっくりしたみたいだけど、快く了解してもらえた。短い時間だけど、頻繁にお邪魔させていただいてます。お手伝いしながら、ガールズトークしてる。
ポニーテールにしてちゃんと?ウエイトレスの恰好をして働いていたからか、ちょこっとチヤホヤされました。私が手伝いに来る時はいつもより客が多いと後で聞いた。まぁ売上にも貢献できたのならばうれしい限りですね。
3人は独立国家も作ってたよ。実際は子どもらしい秘密基地みたいなもんだけど、ああいうのって見てるだけでも楽しいよね。
まぁ、そんなこんなで平和な生活を謳歌してたんだけど、私は忘れてはいなかった。この次に起こる出来事を。
天竜人のゴア王国訪問。その予定日がいよいよもうじきという頃合いになって、私はちょっと行動を起こす事にした。 高町に呼び戻された事にしたのだ。
それともう一つ。高町に帰る前にエースとサボにナイフを渡した。ルフィも欲しがったけどそれはダメ!
ナイフは物を切るための道具です。もちろん道具は使い方によってその効果も変わる。
だから二人には、私が居なくなるのでもしもの時に自分たちを守るための『道具』として使ってほしいと言ってそれを渡した。
その際、決して人に向けたり見せて脅したりしないようにと念を押した。
ルフィに渡さなかったのは、この子は人の話を聞かないからだ。どんな使い方をするのか検討もつかない。ヘタをすればそれが原因で襲われることだってある。不測の事態を生む原因はつくらないほうがいい。
これはあれです。火事の時にエースとルフィが縛られた際、いち早く抜け出すため一手です。
でもちょっと不安もある。ブルージャムと対峙したときに使わないかとヒヤヒヤもんだけど、使わないと信じて渡した。
一応もしもの時の為にカザマに見張ってもらうつもりだけれど、それはバレないに越したことは無い。下手に『守られている』と認識されるのはよろしくない。みんなの成長の為にも。それに…まぁそれはいいか。
今回の目的は2つ。
1つ目の目的は、サボの船が天竜人に攻撃される事を阻止すること。
これはサボの船出に立ち会えれば大丈夫。要はその船に近付かなければいいだけなんだから、天竜人ついて教えてあげれば避けれるだろう。
懸念は1つある。サボが革命軍に入れなくなるかもしれないって事。
まぁこれは気にしても仕方がない。天竜人に攻撃される未来を取るか?革命軍に入れないかも?という懸念を取るか?どっちを取るかなんて決まり切ってる。
革命軍に入れなかったら夢に向かって邁進するんだろうし、それはそれでいいんじゃね?とも思うわけ。
革命軍の戦力が…って事はサボが入らないならぶっちゃけ知ったこっちゃない。ドラゴンには悪いと思うけど、そもそも革命軍に肩入れする気はない。
そしてもう1つの目的は、サボが今回出会うはずの人物にある。
ルフィの父、革命家ドラゴンとエンポリオ・イワンコフと接触しておきたい。私が会っておきたいのはイワンコフの方。会っておきたいというか、私の事を記憶に留めておいてほしいと願っている。
ルフィと共に海に出る以上、少しでも役に立ちそうな事には種をまいておきたいって事だ。
サボはドラゴンと会い、その最中でイワンコフはドラゴンを呼びに来ていた。つまりドラゴンとイワンコフ、同時に会える可能性が高い。
ガープにドラゴンの事は聞いているので、私がドラゴンのことを知ってても可笑しくない。その上でドラゴンの子と義兄弟になっている事を示唆すれば、イワンコフの記憶にも残るんじゃないかな?と期待している。
それに私、この顔だしね?たぶん忘れないでくれると思う。
もしそうなれば、インペルダウンでの助力を願い出やすくなるかな~なんて思ってるわけ。
言ってて思うわ。私ってひどいヤツだよね?
革命軍なんてサボが入らないんだったら知ったこっちゃないなどと言いながら、インペルダウンで助けてもらおうと種を蒔く。って最悪よね?
まあ別に気にしないけどさ。
~ ~ ~ ~ ~
サボが家に戻ったのを見計らい、私はサボの家を訪れた。
服装は貴族の女の子用。普段、カノンが着ているようなものだ。
なんで、カノンの服を着ないのかって?ほとんどが
見る人が見たら天竜人ってバレバレな感じなので、高町で他の娘の着ているのを見てそれより少し高価な感じの服にした。裏地は高級品だったりするけどね。
一緒に万能の面をかぶった分身も来て、明日のパーティーに招待されている事を言って驚かれていた。ステリ―も紹介され、サボに義弟がいた事を知る。
帰って来たばかりで、汚いから風呂に入っているからと言われ、帰される事になってしまった。なにか気に入らなかったんだろうか?
まぁ、サボの家も部屋もわかったので、少ししたら行ってみようと思いながらその場を後にした。
~ ~ ~ ~ ~
「でかしたぞサボ!王族と結婚できなくてもさっきのあれとお前が一緒になれれば我が家は安泰だ!!」
「何言ってんだ?」
「知らないのか?あの
「…」
サボはイオリを『あれ』と物扱いするこの男に頭にきていた。
~ ~ ~ ~ ~
「いいのか?こんなところに居て」
なんかふてくされてる感じを受けるけど…私が
「それって嫌味?私が
「居候みたいなって言ってたけどな?」
私はミニ化してサボの部屋に忍び込んでいた。サボの部屋の机の上で椅子に座るサボと向かい合っている。
「ほんとの事よ?ところでサボって他にも義弟がいたのね?びっくりしちゃった。」
「おれもだよ。今日初めて知ったんだ。びっくりしたよ。」
「一緒だね?」
「…うん」
あら、照れちゃった?(やっぱりサボってチョロいんじゃないの?)
「ところで、サボ。この格好って…どうかな?」
クルッと回って見せてみました。さらに照れちゃうかしら?
「い、いいんじゃねぇか?おれは、ふだんの恰好より…す…、似合ってると思うぜ?」
「お、おぉ…素直に言ってもらうと、うれしいやら照れるやらだわね。」
「イオリでも照れる事あんのな?」
「そりゃそうでしょうよ!私をなんだと思ってるわけ?」
「はは、わりィわりィ!」
よかった、ようやくちょっとサボが笑ってくれた。
「まじめな話、何しに来たんだ?おれに話があるんだろ?」
さすがはサボだ。話が早い。
「私の家族はほとんど家に居ないの。あちこち飛び回ってるらしいからね。あの家はお手伝いさんの物みたいな感じで居場所がないのよ。だから
とりあえず、サボを納得させるだけの理由は用意した。イムは見たことないし、カザマはあちこち飛び回ってるし、あの家には雇った給仕さんが住んでて、私の部屋以外は居場所が無い。うん、ほぼウソは言ってない。
「私が連れ戻されたのは視察団が来て、開かれるパーティに連れていかれるからなんだけど、サボはどうして連れ戻されたの?」
「どうしてって、この前見つかったからだろ?」
「あれって、もうずいぶん前だよね?私たちって結構有名じゃない?だから私も簡単に見つけられて帰ってこいって話になったわけだけど、なんだって急にサボが連れ戻されてるのさ?おかしくない?」
「…それは、確かに変だな。」
サボが難しい顔で考え込んだ。まさにその時だった。
「お兄さま、いるかよ」
さっき会った時とは明らかに違う口調でステリ―の声がした。
私はというと。
「ぐぇっ!」
ハッとしたサボに咄嗟に握られて、潰されそうになっていた。カエルが踏み潰されたときのような声出しちゃったよ!
サボが隠してくれようとしたことはよく解るし、勝手にここに来た私が悪いって事もよくわかるんだけどさ。
出来れば、もうちょっと優しく扱って欲しかったな。
「今、誰かと話してなかったか?」
キョロキョロと不思議そうに部屋を見渡すステリー。誰かって、明らかに私の事よね?
「…気のせいだろ」
サボはぶっきらぼうに答えた。バツは悪そうだけど、ルフィのように『ウソ下手っ!』ってほどじゃない。
今はどうでもいいことなんだけど、私の知っている限りではウソの上手さはルフィ<<<<<エース<<サボだと思う。
私は…考えるだけ無駄よね。そもそも言えない秘密があるんだし
ステリーは訝しんでいたけれど、実際今この部屋にサボ以外の人間は見当たらない。
見聞色なんて持ってないでしょうから私を見つける事は出来ない。でもすぐに気を取り直したらしい。
コイツは何をしに来たんだ?単にサボを馬鹿にしにきただけなのか、と思うのに充分な罵詈雑言。
相手を見下し優越感に浸る。相手を貶めて自分を優位に見せる。なんて情けないんだろう。こいつが優秀?これが貴族?
…あ~、天竜人はもっと酷いんだった。お手本があれだと王族貴族もこうなっちゃうのかな?
所詮人も水も上から下に流れるのよね。
それよりも、大事なのはコイツが言ったただ一言だ。
「グレイターミナルが火事に!?」
聞き捨てならない不穏な言葉に、サボはステリーの胸倉を掴んだ。
ちなみに私は、ステリーがベラベラ喋ってる間にサボのポケットに入っている。
ステリーは少し苦しそうだけど、コイツの苦しみなんて知ったこっちゃ無い。
「そうだよ…もう何ヶ月も前から決まってる!!」
この国の汚点は全て燃やすんだ、というステリー。ゴミもそこに住む人々も、全て纏めて。
私は、だったらまずお前が燃えちまえ!と不覚にも思ってしまった。
今それを知ったところで、高町から何かができるわけでもない。それでもいてもたってもいられなかったんだろう。サボは部屋の窓から町へと飛び出した。ポケットの中の私も一緒に。
~ ~ ~ ~ ~
ルフィとエースは2人、独立国家へと戻っていた。これまで3人で暮らしてきたためやけに広く感じるが、2人にはそれを気にするだけの余裕はなかった。
ブルージャムに、忘れてやることがサボのためだ、と言われ何が本当にサボのためになるのか解らなくなってしまったため今は様子を見ることにしたものの、心配や不安は拭いきれない。
本当に珍しいことだが、そのせいで2人とも夕食があまり喉を通らなかった。
勿論、サボ本人の葛藤など2人、特にエースはよく解っている。それを思えば止められなかったことが酷く悔しいし、その心中を察して胸が張り裂けそうでもある。
とはいえ、高町にはイオリが居る。きっとサボの助けになってくれているに違いない。それがエースにとってのわずかな光だった。
また、ブルージャムが言っていた『仕事』のことも引っ掛かっていた。詳しいことは解らないけど、あの時のヤツらの顔を思いだせば絶対碌なことじゃないだろう。
エースは、この間イオリに渡された小さなナイフを取り出した。自分がいない間ルフィを守る為と言って渡された道具。
決して人に向けたり見せて脅したりしないように…そう言って渡されて以来、常に持ち歩いている。
これまで、イオリとのその約束は守ってきた。だから今回も、使わなかった。もし取り出していたらブルージャムのヤツらはどんな対応をしてくるか解らなかったからだ。
自分だけならいい。けれどもしルフィに万一のことがあったら。そう思うと、どうしても踏ん切りがつかなかった。そうでなかったなら、例えブルージャムの反撃を受けようと、後でイオリに怒られようと、出来る限りの死力を尽くしてサボを行かせなかったのに。
けれどもし、明日ブルージャムがルフィに何か妙なことをしようとしたら。その時は、それこそ自分が盾になってでもルフィを守ろうと、そう決意したのだった。
大事な友達を、弟を失うかもしれない。それはエースにとって何よりも恐ろしいことだった。