イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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★一馬★さん、誤字報告ありがとうございます。


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 説得というか、懐柔と言うか…
 彼らは口車に乗せられたって感じかも?
 
 もしかして…イオリはホントは悪い奴?

 とりあえず、彼らが改心します。

 どうぞ!








08-244話:救出と説得

 東の海のとある島にその監獄はあった。そこは海軍支部少将が治める監獄島。

 支部の少将という事は本部でいうところの大佐相当になる。

 まぁ、そんなことはどうでもいいんだけどね?

 

 さて、こんな所に何しに来たのかというと…

 

「案内ありがとね!東の海の監獄の場所なんてわからなかったから助かったわ。でも不思議よね?アーロンを捕まえておける力があるなら、何で8年も放って置いたんだろ?やっぱネズミが悪いのよね!インベルダウンで、もっと(・・・)トッチメときゃよかったわ!」

 ※ネズミはインベルダウンに収監されており、檻の外に出ていたヤツを見つけたイオリは檻に戻して精神的苦痛を与えてやりました。手錠、目隠し、拘束した上での延々続く言葉攻め…。

 結局ヤツは脱出する事叶わずに、しばらく放心してたとか…

 

「ニュ~~~…くれない!ホントにやるのか!?」

「インペルダウンに比べたら、なんてことないってば。これだけ手薄なら騒ぎを起こすまでもないわ!気づかないように、アーロン達だけを脱獄させるのも訳ないと思うわよ?」

 

 ハチに言った通り、アーロン達を脱出させるのは簡単だった。施設内でゴチャゴチャとやるのは看守に見つかる可能性が高くなる為、魚人達を全員気絶させてからアーロン、クロオビ、チュウの幹部連中とカネシロ(船大工)、ピサロ(音楽家)を運び出した。

 他にも10名ほどの魚人がいたが、全員連れ出すと流石に目立つ…今回は諦めてもらう事にする。

 

 現在、噴出貝高速船『マッハ号』は、パージェスの運転で無人島に向かっている。

 

 さて…これからが大事よね?せっかく助け出しても説得できなかったら意味がない。

 私は、天竜人の一件の載った新聞をアーロンに見せた。

 

「バカな…こんな事をすりゃどうなるか…おめェが知らなかったなんて事はあるめぇ!!」

「黄猿が来たわ!このまま(と、海楼石の腕輪を指差し)でもそこそこ戦えたわよ?」

「う…ウソだろ…!!?」

 私が能力者だという事も、訓練の為に普段は海楼石の腕輪を身に着けているという事も伝えておいた。

 

「あんたにウソ言っても意味ないでしょ?そもそも頂上戦争の後、マリンフォードで3大将が海賊をみすみす逃したのは、私が3大将を封じたからだしね?」

「「!!?」」

 

「つまり…おめェは大将よりも強ぇってか?…なるほどなァ…そりゃ部下達が軽くあしらわれるわけだ…」

 

 

 お次の話はコアラの事だ。こいつらショックを受けるかも?

 

 私は、コアラが故郷を飛び出し、世の中を変えるために革命軍に入った事を伝えた。

 

「フィッシャー・タイガーが自分のせいで死んだと、彼女は今でも悔やんでる。だから故郷を飛び出して革命軍に入ったのよ。彼女の怒りの矛先はきちんと元凶に向けられわよ?すなわち『天竜人』にね!!」

 

「…あのガキが…」

 

「あんた達が人間を恨んでるのは『天竜人』が原因でしょ?それはなにも魚人達だけじゃないわ。どの種族にも少なからず奴らを恨んでる者がいる!」

 

 さて、アーロンを懲らしめてやりましょうかね!!

 

「それよりも…あんた達は気付いてるの?あんた達がコノミ諸島でやってた事は、あんた達の大嫌いな『天竜人』とそっくりだったって事!」

「「!!?」」

 

「フィッシャー・タイガーは悲しんでるだろうね。自分が憎む『天竜人』のマネを、よりにもよってあんたがやってたんだから!!」

「!!?…お…オレは…」

 よし!追い打ちをかけるとしますか!

 

「それから…そのうち世間にも知れる事だけど、この前、白ひげが亡くなった。」

「!!?」

 

「病気だったけど、ある意味寿命と言ってもいいと思う。」

「…それが…どうした!!」

 

「分からない?それが何を意味するのか」

「…」

 

「守れると思う?ルフィ程度にやられたあんた達に?」

「お前…自分の船長を…!!?」

 

「あいつはまだまだ弱いのよ。もちろん強くなるし強くするわよ!!で、あんた達はどうするの?」

「…」

 

「それからねェ…」

「ま、まだなにかあんのか?」

 

「シャーリーに占ってもらったんだけど、ホーディ達は近い将来暴走するわよ?」

「シャーリー!!?テメェ、妹に会ったのか?それに何だ!ホーディ達が?暴走!!?一体どういう事だ!!」

 

「自分たちの思想に合わない者を排除するんだって。種族に関係無しに!!」

「!!?」

 

「放っておけば、魚人島の人たちにも多数の犠牲者が出るわ。自分の蒔いた種でしょう?あいつらに人間が憎むべき敵だと教えたのはあんたなんだから!!責任を取りたいとは思わない?」

「てめェのいう事なんざ信用できるかっ!!そんな確証がどこにある!?妹の占いだって100%当たるとは限らねェ!!」

 

「オトヒメを殺した犯人が、ホーディだとしても?」

「「な…何だと!!?」」

 

「すでに奴らは暴走を始めている…。このままいけばそれを止めるのは私たち『麦わらの一味』になるけど?あんた達はそれでかまわない?」

「「「…」」」

 

「アーロンさん!!…おれは、この人に鍛えてもらたい。出来るなら…おれ達の手で魚人島を守りたい!!」

「おれも出来たらそうしたいッチュ…」

 

「ニュ~…アーロンさん!!麦わら達はおれ達の知っている人間達と違うんだ…!アーロンさんと同じで仲間を大事にするんだニュ~!!麦わらやくれないが天竜人を殴ったのだって、おれや人魚のケイミーを助けるためだったんだ!!」

 

「…ナミは…ナミはどうする気だ?あいつはおめェの仲間なんだろ?ハチが許されてもおれが許されるとは思えねェ…!おめェは…ナミを裏切る気か?」

 

「アーロン…?」

「…何だ!!」

 

「あんたはナミに許してもらいたいの?」

「「!!?」」

 

「そ…そりゃあ……」

 

「今となっちゃ、どっちが間違ってたかなんて決まってる!!天竜人の真似ごとをしたおれ達が…」

 ギロッっとアーロンに睨まれ、仲間たちが怖気づく…

 

「おめェらの気持ちは分かった…だがおれは違うぞ!!人間共がおれ達魚人をどう扱ったか、おれは忘れねェ…」

「それは、シャボンディの住人や天竜人や貴族連中、そして海軍でしょう?」

 

「!!?何が言いてェ!!」

「そういう教育を受けて育った連中と一般人を一緒にされても困るって言ってんの!!」

 

「「?」」

 

「たとえば、アーロン…あんたは魚人街で育ったんだよね?そこで子供の頃から人間は敵だと教わり…そしてシャボンディ諸島で迫害にあった…違う?」

 

「…そうだ…」

 

「あんた達を差別した人間は…子供の頃から『人間』とそれ以外の種族を区別する考えを教わって育ったの。」

 それが世界政府のやり方なのかどうかは別として…

 

「それはシャボンディ諸島に残る古い習慣…つまり人間とそれ以外を分けていた時代の考えが残っているからよ。」

 聖地が近いから、いろんな人が訪れている割に新しい風が入りにくいのよねェ…

 

「だから彼らは人間以外を区別する。それがおかしい事だと考える事すらせずに…ね。あの場所では、海賊も人間以外に分類されてる。だから人身売買が今なお平然と行われているの!それは『天竜人』の仕業よ!」

 いやマジで…経営者は変わったけど、結局また同じところでオークション開催されてるもんね…

 

「逆に、あの場所以外の人間は、普通に他の種族と暮らしている。魚人と人間の混血だって大勢居るわ!各国の貴族、王族連中には『天竜人』の考え方を引き継いでいる者も多いのは事実だけど、一般の人にはマリージョア周辺のような教育は行われてないからね。」

 ぶっちゃけ天竜人に憧れる貴族だけだよ?そんな教育続けてるのは…

 

「あんたがフィッシャータイガーのように海賊ではなく、冒険家として世界を見て回っていたら…、彼の話だけでなく、実際にその目で見ていたら…あんたの考えも少しは違っていたろうにね?」

「…」

 

「それから、『人間共がおれ達魚人をどう扱ったか…おれは忘れねェ…』って言ったけど、あんた達に対して同じことをコノミ諸島の人たちが思っていると、考えた事は無い?」

「当然…だろうな…。だが、それがどうした!?」

 

「彼らがあんた達の事を許すと言ったら…どうする?」

「あぁっ!!?バカかてめェ…!あそこの人間共がおれ達にどんな仕打ちを受けたか知らねェ訳じゃあるめェ!!親を殺された奴だっている!村だって潰したのは1つや2つじゃねェんだぞ!!あいつらがおれ達を許す?そんな事が出来る訳が-」

「許すって言ってたわよ?」

 

「!!?」

「「えェッ!!?」」

 

「ここに来る前にコノミ諸島に行ってきたの。魚人島の事、天竜人の事…そして『太陽の海賊団』の事…。あんた達に関する話をして来たわ。あんた達のした事は(・・・・)許せないって言ってた。どんな理由があろうと家族を奪われた人たちがそれを取り戻す術はないからね…。でも…彼らはあんた達を許すと言ってたわ。もちろんあんた達が心を入れ変えれば…という条件付きだけどね!!」

 

「ゆ…許すだと?…おれを?…おれ達を?…ば…バカ言ってんじゃねェぞ!!そんな事が…」

 

「本心はわからないけどね…でも、彼らはこうも言ってた。」

 

『憎しみの連鎖は誰かが止めなきゃならない…』

 

「ってね…」

 

「…」

「「アーロンさん…」」

 アーロン達は、在りし日のフィッシャー・タイガーの言葉を思い出していた。

 

『おれ達が恨みのままに人間達への復讐を始めれば、その後生まれるのは更なる人間からの復讐っていう悲劇だけだ!何の罪もない未来の魚人族が目の敵にされるだろう』

 

 それが…『憎しみの連鎖』…

 

 そもそもおれのやった事がまさしく…何の罪もない人間を目の敵に…

 

 

「おれは、『天竜人』が憎い…タイの兄貴を裏切った人間が憎い…だが…そんな憎いバカ共と同じ事をしてた自分にも腹が立つ!!そんな自分が…恥ずかしい!!

「…」

 

「おれは…人間共は皆、おれを嫌っていると思ってた…!許されるなんて…全く思っていなかった…!おれが許せねェと思ってるのに…!!何だってんた…人間ってヤツァ…!!理解されるなんて…思ってなかった…。それがどうだ?こんな小娘が…!!あのガキが…!!おれは…おれは何なんだ…おれがしてきたことはいったい何だったんだァ~~~~~!!?

 

「アーロンさん…」

 

「ナミは?…ナミもそう言ってたのか?」

 クロオビが私に聞いてきた

 

「今は修行期間なの。あんた達を私が助けた事も彼女はまだ知らないわ。2年後に、魚人島に向かう時に再会する予定だけど、その時話すかどうかも決めてない…」

 

「ナミは関係ねェ…!要はおれ達がどうするか…!そうだろ?『くれない』!!」

 

「そうね。で…どうするの?」

 

 全員がアーロンを見つめる…

 

「おれ達で、魚人島を守れるくらいに強くなりてェ…!!おれ達を鍛えてくれ!!出来るか『くれない』!!」

「それは、あんた達次第よ!!ただし、猶予は2年も無い!ビシビシ行くから覚悟なさい!!」

 

「もちろんだ!!おめェらもいいな!やるぞ!!」

「「おー」」

 

 …後日…アーロン達はこの時の言葉を後悔する事になる。…それは地獄のような日々の始まりであった…

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

【アーロンの手記】

 

 最初は強くなって仕返ししてやろうという気持ちが無かったわけじゃねぇ…

 だが、強さの次元がまるで違う事を知った…

 

 諦めたというより、いつの間にかタイの大兄貴やジンベエの兄貴に感じるようにイオリの姉貴を尊敬するようになっちまってた。

 

 相手は人間なのに…とは思う。が、イオリの姉貴は人間だけでなく、どの種族に対しても対等だった。

 嫌がることも恐れることもなく、いつも自然体で居た。

 

 おれは強いから、それが出来ると思っていた。

 だが違う…姉貴はそもそも真っ白なんだ!!

 

 昔、オトヒメが言っていた。『知らないから恐れる』と…

 姉貴はこう言った…『知らないんだから、そういうものだって受け入れるしかないじゃん?』と…

 

 ただし、こうも言っていた…

 

『第一印象は大事だけど、それだけで相手を見ちゃいけないよね?私も反省してる』

 と…

 

 そう言って、おれたちに頭を下げた。

 信じられなかった。自分よりも弱い相手に頭を下げるヤツが居るなんて…

 

 認識が間違っていたら、間違っていたことを認めて訂正する…

 姉貴はいつでも真っ白にそれらを受け入れる。

 

 強いから出来るのかもしれない…

 しかし、強くても出来ないと思う。

 それはきっと、姉貴がそう考えるからこそなんだろう…

 

 見習えないかもしれない…いや、見習えないと思う…

 だが…見習いたいと思う!!

 

 

 姉貴と過ごして変わったことがある…

 

 何より、己を磨き、他者の役に立つ喜びを知った。恐れられるのではなく、慕われ、感謝されるよろこび…

 

 きっとタイの大兄貴は、こんな事を夢見ていたのかもしれねェな…

 

 海賊を生業としてはいるが、以前のようなモーガニアではない。

 魚人島の護衛と、魚人島に向かうモーガニアの殲滅や一般船の航海の護衛を請け負ったりしている。

 

 昔のようにピースメインとモーガニアという定義が復活し、海軍もピースメインの海賊には目をつぶる事が多くなっている。

 新世界では海賊のレベルが格段に違う為にあまり感じないが、反対側の偉大なる航路では特にそういう風潮が目立つ。

 

 鍛えた力が略奪ではなく人助けに役立つ事になるとはな…

 

 おれの強さだが、七武海に入ったころのジンベエの兄貴は超えたと思う。ただし兄貴もまた、麦わらと共に姉貴に鍛えられているようで、格段に強くなっているという事だ。

 恐らくこの差は詰められねェかも知れねぇな…

 

 だが、見てろよ!!おれはまだまだ強くなる!!覇気はまだちゃんと使えねェけど、六式は剃と月歩と鉄塊がほぼ完ぺきに使えるようになった。これで水中でなくても素早い動きが可能になった。

 姉貴が言うには練度を上げればまだまだ強くなれるという…

 

 ちなみにウルトラマリンも使えるようになった。ネプチューン王にも負けねぇくらいのが出来るようになったのは嬉しい限りだ。

 

 もうすぐ2年…

 麦わら達が集結して魚人島を目指す事になるという…

 

 今日一つ、決意した事がある…

 姉貴にどうするかは自分で決めろと言われていた事…

 

 おれは、ナミに謝罪する!!

 

 シャーリーには言っておいた。もしもおれが殺されたとしても、誰も恨むなと…

 シャーリーは涙を流しながら言った

 

『当然よね…でも私は兄さんがそう決心した事を誇りに思う』

 と…

 

 おれは…ナミ達の故郷を不幸のどん底に落とし入れた。ナミを騙し、その人生を奪おうとした。

 憎まれて当然!恨まれて当然…。

 

 あの諸島の連中には、殺されたとしても、文句がいえねェ事をしたんだ。

 

 この1年…他者の役に立って、喜びを得る度にその想いは強くなった。でもそれでいい…

 殺されなくともナミの気の済むまでこの身を傷つけられていい…

 

 おれは…姉貴に感謝している。改心させてくれた事にじゃねェ!!

 

 こんなおれを理解して…そして…

 

 こんなおれの為に…おれを許してくれるように動いてくれた事…

 

 こんなおれを鍛えてくれた事…

 

 人間に対するおれの認識を…理解して…そして否定して…

 

 こんなおれと、根気よく…そして優しく真剣に…向き合ってくれた…

 

 そんな事が出来るのは…姉貴しかいねェ!!

 

 おれはきっと幸せなんだ!

 

 タイの大兄貴が出会えなかった、すげェ人間におれは出会えたんだからな!!

 

 それでいい…

 

 おれは…満足だ!!

 

 

 

 




 アーロンは、根っからの悪人…では無かったんじゃないかな?

 という事で、アーロンは改心して活躍します。(たぶん…)
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