イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

273 / 385
09-250話:心に留めておけ

 サニー号は海中を順調に航行(潜水)中…

 

「海面がもうあんなに遠い…!!」

 ロビンが海面を見上げてつぶやいた。

 

「絶景だ!!潜水艇でもこんなワイドな窓はつけられねェもんなァ!!」

 フランキーが言う。

 

「沈んでくぞ~~!!どんどんどんどん!!本当に水入んねェのか~~!?心配だ!!」

 チョッパーが不安を口にしてるけど、レイリーさんを信用しなさい!大丈夫だから!!

 

「人の住む世界が遠のく感じ…ドキドキする…!!」

 神妙な顔でナミがつぶやき、

 

「ちゃちゃ…ちゃんと地上に戻れんのかァ!?おれ達…!!こ…恐い訳じゃねェんだけど…」

 ウソップは相変わらず、(キモ)の小さい事を言う。

 

「海はキレーだな~~!!」

 ルフィはあいかわらずのKYっぷり。

 

「ヨホホ~~、ちょっと横見て下さいよ~~!!」

 

「樹!!! いや、根っこだ!!」

「 ― そうだ、考えてみりゃ、シャボンディ諸島はでっけェマングローブなんだよな…」

「圧倒的大自然~~~!!」

 

「おれは一度見た」

「乗り間違えた船でな!!黙ってろ!!人が感動してんのに!!」

 ゾロの発言にサンジがツッコミを入れる。私としては見知った光景なんだけどね?

 

「そんな事より後ろになんかいるぞォ~~~!!!」

「樹の後ろにでけーのいる~~!!」

 ウソップはビビりすぎだよ。チョッパーはそういうのに引っ張られちゃうんだよねェ。

 

「この根が海底まで続くなんて…大きすぎて言葉にならない…」

 ロビンの意見には同意したい。海中には巨大な柱のようにマングローブの根がそびえ立ち?、魚達が泳いでいる。

 

「ワクワクすんなァ~~!!! 海中の大冒険!! 夢みてェだ!! おっ!魚っ!! 掴めそうだぞ!? このっ!!」

 

 ルフィがばふっ!!っとコーティング部分につかまり、両手両足でぐりぐりとコーティングを開こうともがく!

 

「!!」

 それを見て、ウソップが目を剥く!!

 

「こっちにもウマそうな魚がいるな。」

「!!?」

 と刀を抜こうするゾロを見て、こっちはチョッパーが目を剥いた。

 

 そして…

 

「やめんかァ、てめェら!!!」

「シャボン玉割れたらどうすんだよっ!!!」

「「しばくぞ、コンニャロー!! 二度とすんな!!!」」

 ルフィとゾロは数段のタンコブをこしらえて甲板に沈んだ…

 

 おおっ!!ウソップの武装色も様になって来たみたい!!

 チョッパーは鉄塊も覚えてくれたみたいね。刻蹄はけっこうな威力になってるんじゃないかな?

 

「 ― ナミさん、コイツラがバカやらねェ内に、コーティング船の注意事項なんかを…。」

 

「そうね、サンジ君!レイリーさんにメモ貰ってるから。じゃあみんな!! 説明を…」

 

「(な…生身のナミすわん!!)」

 サンジは目をハートにしながらダラダラと鼻血を流していた。

 

「!!?」

 それを見て、ナミが驚き気持ち引く…

 

 さらに、そのナミの反応を見て、ショックを受けたサンジが沈む…

 

「…」

 う~ん…鼻血で飛んで出血多量にならないようにと、訓練場と同様の格好でカマバッカに行ってたんだけど…

 こんな事なら鼻血で飛んだほうがみんなに心配されてよかったかもしれないわねェ…

 

 あれ?もしかしてこれって私の責任なのかしら!!?

 

 ある意味ゴメン、サンジ…

 

 でも、血液のストックはしてあるけど、飛ぶほど鼻血出したら足りなくなるのよねェ…。同じ血液型を持った人が確実にいるって言いきれないので、これは仕方のない措置だったのよ!

 うんうん…。

 

「お前…どうしたんだよ!!サンジ!!」

「鼻血ダラダラ垂れ流すなんて…女に弱くなっちまったのか?お前らしくねェぞ!!?」

「シクシクシクシク…」

 膝を抱えて暗黒を背負ってうずくまるサンジ…

 

「不憫な…2年の間に女性大好きサンジさんの身に一体何が…!?この分では念願の人魚さん達にも、引かれてしまう可能性が…」

 あっ、ブルックの言葉にさらにショックを受けたみたい?

 暗黒が濃くなってるし…

 

 しかも、サンジがシャボンから海に飛び出さなかったので、コーティングの説明が必要になってしまった。

 とりあえず説明しときましょうか…

 

「まずこのコーティングについて説明しとくわね!!潜る前にコーティングが膨らんで私たちをすり抜けたでしょ?コーティングの主な材料はシャボンディ諸島の樹脂なのよ。」

 

「 ― つまり…シャボンディ諸島のシャボン玉と特性は変わらないのね?」

「そゆこと!!」

 

「冷静にシャボンについて解説するなお前らっ!!」

 ウソップがサンジを気にして私たちに抗議する。けど、説明しとかなきゃならんのよ。

 

「そう!基本的には同じよ!ある程度まで伸びて ― それ以上は突き抜ける。極端な話、船に襲いかかる海獣に向けて銃や大砲を撃ち込んでもシャボンは割れないんだって!」

 

「 ― じゃあ逆に何があると割れるんだ?」

 

「あ~~後ろ!!あれ?…でけぇ魚が慌てて引き返したぞ!!?」

 

 その後も大きな魚や海獣が来ては、サニー号の近くに来ると引き返すという事を繰り返した。

 チョッパーが一人、ポカーンとその光景を不思議そうに見ている中、ナミは注意事項の説明を続けた。

 

「一度に多数の穴が開いたりすると流石にダメみたい。― 例えば海獣や海王類のキバで噛まれたらほぼアウト。― 岩や海溝にぶつかったりして中の船そのものが壊れても、マストや船体の割れ目でシャボンが割れて…それもアウト。 気をつけるのは海の生物たちと障害物ね。中からは余計なことしなきゃ大丈夫みたい。」

 

「そうか、意外と強ェんだなァ!!」

「なんか不思議だ…」

 

「それから、『魚人島を目指す船は到達前に7割沈没する』んだって。」

「「キャアアアア!何が起きるんだよォ~~~~!!!」」

 ウソップとチョッパーが叫び声をあげる。

 

「でも、イオリ君が居るから大丈夫だろう…って何これ?どういう事!!?」

 

「おれの“銃乱射”にかかりゃ、あんな魚の群れ、全部漁れるぞ!!」

「じゃあ、どっちが多く漁れるか勝負しようじゃねェか。」

「「!!?」」

 

「『多数の穴』はダメだっつったろうが!!」

「しばき倒すぞお前ら!二度とすんな!」

 ウソップとチョッパーに怒られ、ルフィとゾロはまた沈んだ。

 

「畜生ォ!! 魚人島にはハチの奴が案内してくれるって言ってたから、もっと安全に行けるつもりでいたよォ!!」

「なぁ、さっきのイオリが居るから大丈夫だろうってなんでだ?」

 

「ちょっとね…海の生物達はけっこう私に気を使ってくれるようになったのよ!」

「「???」」

 

「ししし!! そうだ、おれ弁当いっぱい貰ったんだ!! サンジもああだし、みんなメシにしようぜ~!」

 ※サンジはまだ、暗黒を背負っています。

 

「わーおれ、お腹ペコペコだよー!!」

「ヨホホ~~、私もホネペコ~!」

 

「ナミ、船はもう少し安定してんのか?」

 フランキーがナミに問いかける。

 

「うん、今はまだ大きな海流に乗ってるだけだから。」

 

「全員におれから話しておかなきゃならねェ事がある。」

「うぉ~~~!ロボの秘密かよ~~~!!」

 

「いや…残念だが…ザンネンダガチガウロボ。」

「うおースゲー!! ロボ語!! アニキ~~!!」

 

「島に残されたこのサウザンド・サニー号だが…一年程前、サニー号の存在は海軍にバレ、激しい戦いになり、デュバルはそこでリタイアした。」

「え!? ― じゃあそこから今日まで船が無事だったのは?」

「戦士がもう一人(・・・・)いたからだ…。」

「…」

 

「2年前おれ達を散り散りにすっ飛ばした張本人、“王下七武海”の大男…バーソロミュー・くまだ!!」

「「「!!?」」」

「…」

 

「数日前…おれがサニー号にたどり着いた時ァ…目を疑った…!!」

 

 工具を持ってサニー号の停泊してるところに着いたフランキーが見たものは、体中ボロボロで剣が突き刺さったり、機械の部分が丸見えになったり、悲惨な状態のくまだった…。

 

『――待っていた…』

『!? おめェそこで何を!!』

 フランキーは攻撃態勢を取るが…

 

『…任務完了…』

 そう言ってくまは立ち去ったという…

 

「…」

 

「サニー号には傷一つなかった…。 後でレイリーに話を聞きゃあ…実はあの時、ヤツは戦いの最中レイリーに耳打ちをしてた…」

 

 ≪ おれは革命軍の幹部…縁あってこの一味をここから逃がしたい… ≫

 

「おめェらも薄々気づいてたと思うが…おれ達は命を救われてたんだ!!― そしておれ達が島から消えた後…レイリーを訪ねたくまさんの言う事にゃあ…」

 

 ≪ おれにはもう時間がない ≫

 

「どんな弱みを握られてたか知らねェが、奴は“実験体”として海軍によって少しずつ体をサイボーグ化され、『頂上決戦』の前には、完全に人格を奪われる契約を交わしていた。」

 

「 ― でもよ、バラバラに飛ばしてもその後おれ達がどうするかはあいつにわかるハズない!! それでも船で待ってたのか!? 人格も失ったのに!?」

 

「改造の執刀医、Dr.ベガパンクとの間に一つだけ任務をプログラムするという約束をしてたらしい。」

 

 『“麦わらの一味”の誰かが再び船に戻って来る日まで海賊船を死守せよ』

 

「 ― だからこの2年間、奴は本来の記憶もなく…“人間兵器”として過去の自分の命令を全うし、おれ達を待っていた…。」

 

「やり方がメチャクチャすぎる…なぜおれ達にそこまで…」

「“革命軍”・”縁”とくりゃあ、おれにはルフィの親父が革命軍のボスだって事しか思いつかねェな。」

「おれ、父ちゃんの事よく知らねェもん。でも“くまみてェな奴”、やっぱいい奴だったのかー。」

 

「…」

 ロビンがチラリと見てきたので、私は小さく首を振る。情報はなるべく拡散しない方がいい。

 

「実際、おれ達にとって意味のあるこの2年間を…生み出してくれたのはあの男だって事は間違いねェ!! 今となっちゃ、本人にその胸の内を尋ねる事もできねェが、心に留めとけ ―― この一味にとって、バーソロミュー・くまは結果的に“大恩人”だって事をな…」

 

 確かにそうだ…

 

 と、私は思った。

 

 シャボンディで一味が飛ばされていなかったらどうなっていたか?

 想像してみて、私はゾッとした。

 

 その場合、間違いなく『頂上戦争』に”麦わらの一味”が介入していたであろう事を!!

 

 結果は3つ考えられる。

 最上は全員が無事にその場を脱出できる事。

 残る2つは考えたくもない。

 エースを救えないか、仲間の誰かを失うかという想定だ。

 

 実はそれ…あり得ない事では無いのです。

 

 何故なら原作とかけ離れた世界になってしまっていたからだ。

 

 ハンコックは来なかったかも知れないが来ていれば、間違いなく敵だったろうし、ルフィが飛ばされていなければインベルダウンからの援軍も居なかっただろう。

 

 その状態で、仲間を守りつつ、エースを救うことが出来ただろうか?

 

 エースと仲間…

 どちらか一つを選ばなければならなかったかも知れないと思うと戦慄せざるを得ない。

 

 私はその場合、どちらを選んだのだろう?

 

 いや…答えは分かっている。

 だけどその場合…ルフィはどうなってしまっただろう?

 

 シャボンディで見た。皆が消されてしまった後のルフィの悲痛な叫び…。

 原作で見た、エースを失った時のルフィの苦悩…

 

 エースを救えても、仲間の誰かを失った場合…

 ルフィはどう思っただろうか?

 

 そしてなにより…原作とかけ離れたその先の冒険がどうなるのか…

 私には想像が出来なかった。

 

 さらに、その後の事にも問題がある。

 ナミとウソップの戦闘力に大きな開きが出てしまう事だ。

 

 あの時、原作通りに進んだからこそ、今があるのは間違いない。

 最初に飛ばされたおかげで、余計な事をしなくてよかったかもしれない…。

 

「 ― そしてまたいつか出逢う日が来ても、くまはもう心無き“人間兵器”だ…!!」

 

「ありがてェが疑問が残る… ― いつかくまの真意がわかればいいな…」

「話は以上だ。」

 

「 ― あ!サンジ、起きてたのか…」

「弁当食えよ、「女ヶ島」の弁当!」

「女ヶ島…!? くまって奴が果たして恩人か…!? おれがこの2年どこにいたと思う!!? てめェは一体何の修行をしてたんだ、ルフィ~~~!!!」

 

「まーまー、サンジさん、歌いませんか?」

「励ますんじゃねェ!みじめになるわ!!」

 

 

「おや…!?この気配は(モーム)じゃね?」

 

「はぁ?モームって…アーロン一味の?」

「うん。たぶんそうだと思うわよ?」

 

「「アーロン一味?」」

「牛なんか居たっけ?」

 まぁ、私が一瞬で消し去っちゃったからなぁ…

 あんまり印象無いわよね?

 

「でも、なんか後ろから近づいてくる気配はわかる!!」

 

 すごいわね…教本があったからとはいえ、フランキーとチョッパー以外、みんな見聞色を身につけてくれるなんて!!

 まだまだ鍛える余地はありそうだけど、前途洋々かも知れない?

 

 あれ…?

 

 そうするとカリブーは隠れられないんじゃないの?

 

 っていうか、能力抜きなら気配からして、ナミのほうが強い気が?

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。