イムの娘(いむのこ)   作:槙 秀人

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09-251話:深層へ

 『受光層』を抜けて『薄明層』も終わりかけ…2000m手前くらいの所で、後方からの海賊船が視認出来るほどに近づいた。

 

「六時の方角…あの(モーム)の海獣…!?おい、みんな!!後ろから船らしき影が!!!」

「船!!?」

 

「こっちへ突っ込んでくる!!」

 

 

「突入ゥ~~~!!!」

「モォ~~~!!」

 

 ― ドスゥ…ン!! ―

 

「!!? うわっ!!海賊船だァ!! 離れろ~~!!シャボンが割れる~~!!」

「船を押しつけて来るっ!! ― まさかシャボン越しに乗り込んで来る気じゃ…!! 誰だ、一体!!!」

「…」

 

「乗り込むぞ、野郎共ォ!!」

「はえっ、はえ~~~っ!!」

 

「ちょっと!あんたモームでしょ!?私、わかる!?」

 海賊船を引いて来たのが私の言っていた通りだとわかると、ナミがモームに話しかけた。

 ナミを見てギョッとするモーム…。どうやら昔の事(アーロンバークで飛ばされた事)を思い出したらしい。

 そう言えば、私がモームを蹴飛ばした時って、まだナミはアーロンバークに来てなかったんだっけ…

 そして、ナミの隣にいる私を見て、さらにギョッとする…

 

 ≪ 邪魔なのよ。 ≫

 

 私の姿を見たモームは、その時の仕打ちを思い出したのか、突然ガタガタと震えだした。目には涙も溜めている。

 

 ≪ 消えて…頂…戴!! 嵐脚・乱 ≫

 

「モ゛…モ゛…!!!」

 

「野郎共ォ、おれに続いちゃえ~~~~!!」

「はえ~~~!!」

「わー!! 誰か船に入ってきたァ~~!!!」

 

 濡れ髪のカリブーが先頭を切って?シャボンを突き破り入ってきた。

 

「ケヒヒヒ!!こいつらがあっけに取られてる内にィ~~、船内皆殺しにしちゃいや~~がれェ~~い!!ケヘヘヘ!!」

 

「モォオオオオオ~~~!!」

 私の事を思い出して、恐れおののきモームが逃げ出した。当然繋がっていた船も一緒に移動…

 

「!!? えええ~~~~!!?」

 

「「……」」

 

 状況を把握していないのは、サニー号に降り立ったカリブーのみ…

 

 こいつは覇気が使えないんだね?

 

 周りが見えてないってなんだか可愛そうだなァ… 一人しか居ないって事にまったく気づいていないなんて…

 

「さァ、あいさつ代わりにィ~~~!!ガトリング銃をぶっ放せェ~~!!“麦わらの一味”を全員ブチ殺して…」

 

 しーん…

 

 ? え…

 

「「……」」

 

 

 

 カリブーはフランキーに持ち上げられていた。そのまま海に放り出す構えを取る。

 

「おおよしィィ!!海に放り出しちゃうのだけァ、およしったらばよォウ~~!!それだけはァ、おまいさん~~!!それだきやァ、やっちゃいけねェ!!!人の命をそう粗末にしちゃうモンじゃねェ!!!神がァ!!神が見ちゃってるぜェ!!!そうだろゥ!!?」

 

「調子のいい事言ってんじゃねェよ!! 皆殺しだのガトリング銃だの言ってたろ、てめェ!!」

 フランキーに放り投げられて、ギャホ!!っと、変な叫びを上げるカリブー。

 

「お前、どこの誰だ!?今の海賊船の船長だよな。」

 欄干にぶつかり、倒れたままのカリブーにゾロが問う。

 

「ややや!!滅相もねェ、おれは船長なんかじゃねェよゥ!!おれぁ、その… あいつらの鉄砲玉としてコキ使われてたのよォ!! あァ、もうウンザリだあの船は…!! そうだ、丁度いい!!この船に少しの間乗せちゃってくれねェか!?なァ、頼む!!」

「…」

 

「え…なあ、コイツ、少し可哀相な奴かも…」

 相変わらず素直なチョッパー…いい子感が増している気がする…

 

「んなわけねェだろ!!全部ウソだよっ!!」 

「え~~、全部ウソ~~!?」

 

「さすがウソップ…相手の嘘を見抜くのは上級者ね!」

「お…おうよ!これくらいはな…」

 

「ななっ、なんてこったァ~~くれない大参謀の~、姐さん~~じゃねェのよゥ~~!!」

 

「こいつは『濡れ髪のカリブー』。懸賞金一億超えのルーキーで、さっきの船の船長よ!!」

「マジかよ?こいつもなんかの能力者なのか?」

「こいつは自然系『ヌマヌマの実』の能力者!!」

「!!?」

 

「ねえちょっと!さっき船を引いてた海牛、どうしたの?」

「おっとォ…こりゃあ…ん~~カ~ワイ子さん~~、アンタァ…“泥棒猫”だなァ~~~?」

 

「何ちゅう下種な目でウチの美女航海士を見とるんじゃあ!!!」

 サンジがカリブーの顔面を蹴りぬく

 

「ジャボ!!! …オオ…!!」

 武装色もサマになってるわね。インパクトの瞬間に鉄塊を加えればヴェルゴにも対抗出来そうな気がする。

 

 カリブーをふっ飛ばし、私とナミにグーサインを送る。

 

「イオリちゃん!自然系にも完璧だったろ!!ナミさん!!これで大丈ブッ!!」

 ありゃりゃあ… また鼻血出してら…

 

「もう面倒くせェな、お前それ!!!」

 ウソップのツッコミに、ナミは引きつった笑いを浮かべていた。

 

 本気でサンジが哀れに思えてきちゃったわ。

 ナミの恰好を原作と同じにしたところで、飛ぶほど鼻血は出さないだろうし…。さらに引かれる結果になりそうで、それも可哀そう…

 ホントにどーしましょうね?原作通り、しらほしに会うまでこのまんま?

 だとしたら、私がカマバッカに行ってたの意味なかった?

 

 

 カリブーはせき込みながらナミの問いに答える。

 

「…アレは、ただその辺でとっ捕まえた海獣だ…!!ああいうのに船を引かせるのが… 上級者の海中航行なのよォ!!」

「…!! え~~!? そうなのか!? 海獣、どっかにいねェかな~~」

 

「…ちょっと、ルフィ、あんた何を企んでんの!?」

「おいナミ!“記録指針”と少し違う方向へ進んでねェか?」

 

 私が渡したロープで縛られたカリブーはルフィに棒でつつかれてイタズラされている。

 力が入らないので自分が縛られているのか海楼石だと分かったのだろう。原作ではよからぬことを考えてたけど、そんな余裕も無いみたい。

 そもそもロープから抜けることも出来ないだろうからね。

 

「―ええ、大丈夫。指針より“南西”へ進むのが正しい航路よ」

 

「何でだ!?真っすぐ進んだ方が早ェに決まってんじゃねェか!」

 ルフィが疑問を口にする。

 

「なんか私、少し肌寒くなってきましたよ!?あ!でも私…」

「お前、骨だから肌ねェのにな!」

「!!!」

 誰も気にしちゃいないけど、今のやり取りでブルックが一人静かに落ち込んでるわよ?

 オチをチョッパーに取られたからかな?それとも人に指摘されるのがイヤとかか?

 どーでもいっか!!

 

「真っすぐ進んでも、海流に攫われて、下降しきる前に海山や海底火山に突き当たっておしまいだって…。」

 ナミがルフィの疑問に答えてる。魚人島に行くルートはいくつかあるけど、ほぼ確立されている。

 場合によっては時間がかかる、1番安全なルートをレイリーさんは教えてくれていた。

 私だけだったら、最短ルートを通るけどね。

 もっとも一人だったら船で移動する必要も無いんだけど…

 

「えー!? 火山!? 海底コエーよ~~!!」

 チョッパーが言ってるけど、アラバスタ行く時にホットスポットに出くわした時の話、覚えてないのかな?

 

「ふーん」

 とルフィ…

 

「でも“偉大なる航路”の海流なんて元々デタラメだろ?間違いのねェ流れなんてあるのか?」

「一つだけある…!! みんなコートでも羽織った方がいいわよ、ここから先寒くなるから。」

 今度はウソップの疑問にまたナミが答える。

 

「寒ィとこに行くのか?深海じゃねェのか。」

「バカヤロー、深海の水は冷てェに決まってんじゃねェか!風呂だって熱いのは上、冷てェのは下だろ!」

 ナミの言葉にゾロが疑問を口にする。それに答えたのはフランキー。

 

「そうか!海も同じなら、深海の水も上より下が冷てェのか!」

 

 バイオリンを弾きながらブルックがウソップに続く。

 

「ただ温度差があるだけではありませんよ?海の下層部は「深層海流」と呼ばれる私達は普段目にできない巨大な海の流れがあるのです!それは今ここにある「表層海流」とは全く別の動きをする海流です。」

 

「えェ!? 海流の下に海流があんのか?? おめェ、物知りだな~~!」

「ヨホホ、年期入ってますから!」

 

 フランキーが詳しく説明する。

 

「しかもそれらは必ずどこかで繋がってんだ!! 西へ東へと別れたりくっついたりするだけじゃねェ。 上へ下へと浮上したりもぐったり…まるで巨大な龍の様に、“海流”ってのは途切れることなく世界中を旅してんのさ!」

 

 さらにブルックが繋ぐ。

 

「聞いた話では「深層海流」とはずいぶんとゆっくり海底を流れるそうで… 一度海底へ潜りこんだら、次に陽のあたる海面に浮上するまでに、二千年もの時間がかかるといわれています。」

 

「二千年!?」

「 ―― ええ…それゆえ未知の海流には数々の伝説も漂います。 “怪物”…!! “呪い”…!! “死者の魂”!!!」

 

「え~~~っ!! 深海オバケ出んのか!!?」

「え!? 出るんですか!? コワイッ!!」

 チョッパーが怖がるのはともかく、ブルックは自分が言ったんだろうに…

 

「わくわくしてきた!!! うひゃー!」

 

「さァ わかんないけど ―― つまりその「表層」から「深層」へ潜る“下降流”に私達は乗るのよ! そうすれば「深層海流」の流れる“深海”へ到達できる!!」

「あ!そりゃそうだ!! 頭いいな~~。」

 

「でもよー、その…海が下に潜る場所はどうやって探すんだ??」

「さっきのお風呂の話と同じよ… 海水が冷やされれば海流は下へ向かう…」

 

「成程っ!! それで海流が冷える寒い場所に行くってんだな!!!」

 

「“赤い土の大陸”は言ってみれば地続きの集合体…「夏島」の土地もあれば、「冬島」の土地もある。 今まっすぐに向かってるのは勿論、「極寒の冬島」の気候帯 ―― そこには海流が大きく下へ流れ落ちる為の もう一つの条件が揃っているから。」

 

「え?いったい何だ、そのもう一つの条件とは?? はたして??」

「…」

 私とナミは呆れながらルフィを見た。

 

「…またテキトーに首突っ込んで…本当に聞きたいの?海の「塩分濃度」の話。」

 

「 ―― 昔よく遊んだよな…「エンブンノード」で」

「おれはいつか欲しいと思ってる…「炎分ソード」」

 

「ゾロまで…」

 なんだよ『炎分ソード』って…

 

「そっちいなさい!!」

 

 ナミに怒られた2人は船べりへ…

 

「ゾロ、お前はどこまで飛ばされてたんだ?」

「ああ、それがよ…」

 

 

「塩分濃度が何だって!?おれ達には教えてくれ、海の神秘について!!」

 そして選手交代。ウソップとチョッパーが興味津々のフリ(・・)をする。

 

「へー、熱心なのね~…つまり大きな“下降流”の必要条件というのは『冷たくて重い水』なの! 極寒の地には「海氷」があって、その氷ができる時、塩分は…」

 

「不思議な海流があるってわけだな!!あ~あ…やれやれ…」」

 そう言って、ルフィとゾロに代わり話を聞こうとしていたウソップとチョッパーも船べりへと移動してお茶をすする…

 

 そのお茶、どっから出した?

 

「だから最初から黙って乗ってりゃいいのよ!! バカ!!」

「歌いませんか!? ナミさん!! ヨホホホ~~♪」

 

 海水が凍る時、水が凍って塩はその外に追い出される。そのため海氷の浮かぶ海域の海水は、ほかの海域よりも重くてしょっぱい。塩分濃度が濃くなった冷えた重い海水は下へと向かいやすくなる…

 こう、説明すればウソップあたりには判ると思うんだけど?

 

「ナミ!そう言ってる内に見えて来たわ。」

 ロビンが上から声をかける。

 

「ホント!?」

 

「おっ!!どこだどこだ、不思議海流!!」

「上から下に流れる海流どんなだ??」

 全員が船首へと向かう。

 

「おお、あれか!!す~~げ~~~っ!!」

 

「やりおるな!!大自然!!」

「何だ?ありゃ…」

 

「 ―― あれが“下降流のブルーム”」

 ルフィ、フランキー、サンジ、ナミの順に驚きの声をあげる。

 

「これじゃまるで海中の…巨大な滝だ!!!」

「ず~~~っと下まで海が落ちてく!! ものスゲースピードだぞ!!?」

 

「空島に行った時に乗った、”突き上げる海流”みたいね!」

「おぉ!!そうだった!あれもすごかったなぁ!!」

 

「すごい…!!なんて壮大な流れ…!!直径何百mあるのかしら…!!」

「面白ェ~~~!!」

「話を聞くのと見るのとじゃあ丸っきり違いますね~~!!ヨホホホ~~」

 ロビンのつぶやきに、ルフィ、ブルックが続く。

 

「底が見えねェ!!下は真っ暗闇だァ~~~!!終わりだ~~!!あんな速度じゃ海底に叩きつけられて死ぬーーっ!!」

 ウソップが叫ぶ。まったく、ネガっ鼻は…

 

「本当に平気なの!?この流れに乗って!!」

 

「下降流に近づくにつれて船も下降の速度を増すから心配ないわよ!!船も頑丈だしね?」

「ああ!船の心配はするな!!サニー号は宝樹アダムより生まれた最強の船だ!!」

 

「なんでイオリはそんなに詳しいのよ!!」

「実は、この2年で何度も魚人島には行ってるのよ。魚人島は白ひげ連合のナワバリの一つだからね」

 

「へぇ…エースさんと一緒に過ごしたんだ。でも、あれ?ルフィと一緒って言ってなかった?」

「まぁ、それはおいおい話すわよ」

 

 すると突然、カリブーが叫ぶ。

 

「おい!!“麦わらの一味”!! すぐに引き返せ!! やべェぞ!!! 」

「…何だ…そういやてめェいたな…」

 

「下を良く見ろ!! 怪物がいる!!」

「!!?」

 

 全員が一斉に下を見る。カリブーは冷汗を出しながら続けた。

 

「アレがここに住み着いてるなんて聞いた事がねェ!! …!!『殺戮に飽きる事を知らず…船を狙って大海原を駆け巡る悪魔』!!『人間の敵』!!! あれは…!!! クラーケンだァ~~~~!!!」

「「!!!?」」

 

「うわあァ~~~~!!」

 

「船を何層も握りつぶしてやがる!!! ここ数日で出航した船が餌食になってたんだ!!」

「何ちゅうデカさ!! 怪物ダコ!」

 フランキーとウソップが叫んでる。チョッパーは泡吹いてるし…

 

 確かにクラーケンの腕の間には船が何隻も挟まってるけど、そんなに大騒ぎする事かしら?

 

「どこから来たのか…!! 下降流に乗ろうって船を食い物にしてやがんだ!! こんな話聞いた事ねェっ!! 頼む!! おれも死にたくねェ!! 引き返せ!!” 数日やり過ごせばきっとあの怪物は…」

「うるせェ、黙ってろ!!」

「!?」

 グダグダいうカリブーを一喝するのはルフィ。

 

「いい事考えたんだ、おれ!あいつをてなずけよう!!」

「「は!!?」」

 

 良い顔で、”ドン!!”という感じで言い放つルフィに、一味全員が目を丸くする。

 

 

 

 




カリブーの言う『あの人』が明らかになりました。
シャバにはもう居ないけどね!!

…ちょっと考えないとアカンかも?


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